2009年 10月 06日
かばん関西9月歌会記 【参加者】雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月/玲瓏)、渡口航(短歌人)、福田貢一(北摂短歌の会)、文屋亮(玲瓏)、三澤達世、山下りん(ゲスト)、山田航 今回の兼題は「遊」。「遊ぶ」というお題に、みなさんがとても真面目に、真っ正面から取り組んで下さっていたのが印象的でした。 ・子どもらはただ泥と水転がりて笑ふ球にぞなりて遊べる 文屋亮 元気に遊ぶこどもたちを見つめる歌。「ただ泥と水」「笑う球」という比喩がみごと。自分も一緒に泥団子になってみたくなります。 ・おにごっこおさなきおにがかけてゆく秋のしばふにかぜを生まんと 渡口航 今月初参加の渡口さんの作品。表記のひらがなにも工夫が感じられ、こどもの歓声や足音、草の匂いも伝わってきそうです。 航さん&航さんのますますのご活躍に期待が高まります。 ・白地図の縁にほたるを遊ばせて君のこころはさびしい沼だ 山田航 こちらは象徴的な恋の歌。白地図のように不分明な「君」のこころの領域。ホタルのほのかな光に浮かび上がる「さびしい沼」――。うつくしいイメージをどう読み解くかは、読者にゆだねられているようです。評者からは「縁」と「緑」の文字の類似にも言及がありました。 ・わが夢は哲学の徒になることで現実は眼の疲れた社員 福田貢一 ・虫干しの着物の間にひっそりと祖母が遊びに来たような風 三澤達世 一首目、将来の夢を描くことは、こころ愉しい遊びかもしれません。下句に疲れはにじみますが、そんな自分をおだやかに受け容れている気配もします。 二首目、なつかしさとあたたかさが読み手によく伝わり、多くの共感が得られた歌。着物を大事に手入れするという行為、またひっそりとした風にも気付くというところに、作者の丁寧な生き方が表れているようです。 「遊」という題から、この二首のように日常を真っ直ぐに見つめる歌が生まれたことに、感慨を受けました。 ・千年後発掘された遊園地珍奇な機械をみな不思議がる 雨宮司 千年後にも廃墟ブームはあるのでしょうか。奈良ドリームランドを連想しました。 ・影踏みの影追いかけて追いつけぬ君とわたしの違う悔しさ 山下りん 「君」と「わたし」が違うことが悔しいのか、「悔しさ」そのものが異なるのか。少し読みがばらける点はありましたが、もどかしさが胸にひびいてきます。 ・食べるより遊ぶのが好き正午過ぎ公園の子はまた座り込む 有田里絵 「そうそう、そうなのよねぇ」と女性(母親)の読み手に人気のあった歌。表現に無駄がなく、「また座り込む」もこどもの姿をよく言い当てています。子育ては大変ですが、日々成長してゆく、一期一会のこどもの姿を、すこしずつでも歌に残していってほしいと思います。 ・雲を眺めるわれをすり抜け髪の毛を立てた息子がさつさと出てゆく 十谷あとり (十谷あとり 記)
by kaban-west
| 2009-10-06 08:56
| 歌会報告
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