かばん関西歌会

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2011年 06月 12日

4月歌会報告

かばん関西四月歌会記

【参加者】雨宮司、有田里絵、黒路よしひろ(ゲスト)、十谷あとり
(日月/玲瓏)、野埜百合(ゲスト)、三澤達世

今回の兼題は「お買いもの」。十七首をお寄せいただきました。過
去へ、内面へ、宇宙へ、各人広がりを見せました。

ティファニーのオープンハート・ビーンズを買ったバブルの女子大生みな 野埜百合

コメントが熱かった歌。バブル期の女子大生の共通の持ち物として、ティファニーのオープンハート・ビーンズというブランド品を提示した一首。バブルを表すアイテムとしては成功しているが、
女子大生が皆ブランド品と持っていたわけではなく、「オタクの男性」「大阪のオバチャン」といったくくりのように、反発したくなる読者もでてくるのではないか、という指摘がありました。そもそも、オープンハート・ビーンズの記号がストレートに通じない方も。

革命に必要なもの買いにゆく明日は革命起こる気がして 黒路よしひろ

革命という言葉をつかっているのに、なんだかふわふわした不思議な雰囲気です。その不思議さゆえでしょうか、男女で読みが分かれました。「バズーカ」「ロケット弾」のように具体物を持ってくれば、下句の革命が衝撃的に迎えられるのでは、という男子案。いや、作中主体は革命が「起こる気がする」程度で、実現を熱望しているわけではない、という女子案。やわらかな政治批判もありました。

雨の日の天地書房にひとけなく竹久夢二の絵湿りをり 十谷あとり
セロファンの色なき光花店の花に触れたり風の止み間に

一首目、高得点歌。シンプルな情景描写でありながら、響いてくる歌です。雨の日・天地・湿り、という縁語の並びが美しい、夢二の筆致と湿っぽさは似つかわしいががややつきすぎでは、と賛
否ありました。御題で書店を連想するのはさすが歌人、という驚きも。二首目、繊細な風景描写です。描写の複雑さに難あり、さりげないのにいちばん心に残った、という意見がありました。

遠い星・地球を買った少年が間もなく現地に降り立つらしい 雨宮司

侵略目的ではなく、少年が地球に下り立ったところできっとなにも変わらない長閑さを感じる方、少年が救世主のように思えるという方、SF的設定に読みが広がりました。いつの間にか買われてしまっていたおかしさ、お小遣いで買われてしまったみたい、とも。「・」を使わなくても内容を伝えられたかもしれない、という表現への指摘もありました。

フリスクを噛みつつやってきた女フリスクをまた箱で購う 三澤達世

フリスクという商品名、その繰り返しから「ボールペンはミツビシがよくミツビシのボールペン買ひに文具店に行く」という奥村晃作の歌を連想された方がありました。「女性」でも「男」でもなく、
おおざっぱに「女」と表現したところがマッチしていてよい、という指摘も。「また」は推敲の余地あり。

はじめてのおつかいなのに折り紙のおさいふ雨に濡れてしまった 有田里絵

細部の嘘をつく際のお手本のような歌であるという意見がある一方、事実か虚構かは歌の善し悪しには関係ないが、事実ではないかという意見がありました。子供の体験と心の揺れを見事に掬い取っています。「折り紙のおさいふ」のかわいらしさ、歌のなかに流れる物語性に評価が集まりました。

続いて自由詠の部です。六首をお寄せいただきました。

来年は桜の下で走ろうね赤ちゃんの手にのせる花びら 有田里絵

高得点歌。健やかなれと願う気持ちが真っ直ぐこころに届く歌です。まだ歩きださない子供に話しかける若い母親の情景でしょうか。外で遊べない被災地の子供たちを連想された方も。多くの桜の歌が、咲いている瞬間や一回性を詠ってきたのに対して、来年という未来の桜をも読者に見せてくれるという指摘も。

クロミチは賢者の石を手に入れて短歌ポイント1アップした 黒路よしひろ

賢者の石といえば、錬金術師の垂涎の的。ポイントが1しかアップしないのは割に合わないし、そもそも短歌ポイントは自分にもよくわからない。自分も短歌が上手くなる賢者の石がほしい。手軽に短
歌がうまくなるアイテムを求める虫の良い願いに、賛否が述べられました。書いた作者が一番楽しんだ歌ではないか、という意見も。

太陽と、愛の讃歌を歌いたい。夜の帳【とばり】を抜けるからこそ 雨宮司

復興への願いを読みとった方が多いのですが、あまりに抽象的、盛り込みすぎという意見も。「擬人化した太陽と(ふたりで)歌う」のか、「太陽と愛を称える賛歌を(ひとりで)歌う」のか、句読点
で句切ってもはっきりしないという指摘を受けた作者から「句読点のある短歌を詠みたかった」と明かされ、改作を届けていただきました。

太陽よ愛の讃歌を歌おうか夜の帳【とばり】を抜けるからこそ

回送の文字を光らせ深更のバスは本気の走りを見せる 三澤達世

高得点歌。乗客を乗せていないことで開放されたバスは、安全を気にせず本気の走りを見せます。「本気の走り」というところが車のコマーシャルの常套句的ながら、この歌の面白さの核になっているが、年配の方にはこの使い方は伝わりにくいかもしれないという指摘もありました。

人様の役にもたたず生きてます臓器提供カードに署名 野埜百合

形としては見えないかもしれないけれど巡り巡って役に立っているのではないか、謙遜しているようなだが意外と居直っているようにも読める、と上句に意見が集まりました。臓器提供という立派な行
為とは正反対のモチーフがないと歌として生きてこないのでは、という意見もありました。

さくらばなみずからはるをよろこびぬ国やぶれてとつぶやいてみる 有田里絵

震災を念頭に置いて読まれた歌。国がやぶれたかのような光景のなか、遺伝子の命ずるままに咲く花を見るとき、勝手な思いでありながら花の美しさに救われたような気がするのも確かです。「みずか
ら」が効いていますが「おのずから」でもよかったかも、ひらがな表記であるがゆえに「みず=水」を連想することが可能であるとも。上句で広がった世界を下句でうまく回収していないように思える、ひらがなの多用が効果的という意見もありました。

   三澤達世記
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by kaban-west | 2011-06-12 09:14 | 歌会報告


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