かばん関西歌会

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2012年 03月 09日

2月歌会報告

[平成二十四年二月かばん関西オンライン歌会記]

<参加者>
 雨宮司・有田里絵・ガク(ゲスト)・紀水章生(中部短歌会/塔)・黒路よしひろ(ゲスト)・十谷あとり(日月)・蔦きうい(玲瓏)・冨家弘子(ゲスト)・那由多・野間亜太子・野埜百合・文屋亮(玲瓏)・三澤達世・山下りん(ゲスト、選歌のみ)

 有田さんが出題された「角」が、みなさんの琴線をびしばしヒットしたのでしょう。参加者十三人を数える空前絶後の大盛会となりました。また、五首選ぶのは本来楽しいことのはずですが、今回は苦痛にすら思えるほどハイレベルな歌が集まりました。七万字超の膨大なコメントを編集された有田さん、お疲れ様でした。

【生物の一部としての「つの」】
●落とし角を拾ふつかの間すれ違ひ見失ひしは春の神さま  十谷あとり
●ふれたれば角ひつこめる蝸牛小さきものは葉とともに揺る  紀水章生
●和三盆の馥る切手を売つてゐる壱角獣が憶ふ少女は  蔦きうい

お題「角」が節分の鬼からの連想でしたので、やはり生物の「つの」がまず発想されましょう。最高得点歌の一首目、鹿が落した角をひろう間に軽やかに通り過ぎた春、そこに温かみ、ユーモラスと同時に畏怖、敬虔を感じるとの評も。二首目は、何気ない情景に落ち着きと優しさが感じられて魅力的な歌。三首目、和三盆が馥る切手のイメージが美しい歌。他に一角獣もう一首、鹿の角もう一首、鬼一首ありました。

【物質の形状としての「かど」「かく」】
●バレンタイン前夜のキッチンそわさわと「角が立つつてどういふことなの」 文屋亮
●対なれど重なり切らぬ間柄三角定規の太めがわたし  有田里絵
●角部屋のハウスクリーニング料金が少し高いと知り初める春  三澤達世
●二丁目の角で足踏み朧月は満ち欠けをもう一巡待たむ  野埜百合
●角砂糖溶かして笑う私には闇を飲み干す勇気もなくて  那由多
●角氷琥珀にとけて露となる君の言葉がにじむ一刻  ガク
●角瓶が分相応とハイボール作る傍から飲み干している  雨宮司

 一首目、料理に不慣れな女の子の姿が微笑ましい歌ですが、「そわさわ」という擬態語に賛否両論。二首目、二人の関係を三角定規にたとえたのが手柄、女性に共感者多数ありました。三首目、面白い素材をただポンと投げ出した歌いぶりが人生の機微を表現していると好評。四首目、「角で足踏み」というのが綺麗で心に染みる歌ですが、破調が足踏みや満ち欠けを表現しているとの高度な解釈も。五首目、この勇気とは何か、「清濁併せ呑むだけの度量」「人の気持ちの裏側を受け入れる度量」との鋭い指摘も。六首目、にじんだ「言葉」が何だったのか、「露となる」が失恋を想起させるという意見の反面、恋のはじまりを感じた人も。七首目、淋しげな大人の男の静かな魅力をうたった一首。今回は他にもお酒の歌が多かったですね。他に街角二首、道路の角が一首ありました。

【人間の心性の象徴としての「かど」「つの」】
●今宵またヒト科のメスが角を出すところを見たり酔いの眼【まなこ】で  黒路よしひろ
●角【つの】であるところの毛玉むしる母 茜の空はどこまでも静か   冨家弘子
●ものの角やはらぐるごとく雪ふりつむ護岸工事の蛇篭のうへに  十谷あとり

「角」を心情の比喩として捉えた作品もありました。一首目は怒りの発露として「つの」を使っていますが、意外にユーモラス、やわらかいとの意見も。二首目、いらいらする母親の情念を角に託して鬼気迫る、茜の空がその狂気を象徴しているとの指摘も。最高得点歌の三首目は直接心性を表現してはいませんが、「私の中にも積もってほしい」等、精神的なものをやわらげるという解釈が三人いました。

【自由詠の高得点歌】
●冬空に太つた天使が八百万土俵入りするところ雪まくところ  文屋亮
●呟いた文句を蹴って帰りみち年寄りの犬と月に聞かれた  冨家弘子
●ひつじ柄パジャマの子らを抱きしめたら何も数えぬうちに眠れた  有田里絵
●ファンシーな奴が落としたファンシーな造花が庭でいつまでも咲く  三澤達世

 最高得点歌の一首目、太った天使を力士にみたてたユニークな発想に多くの読者が仰天し、歌の力を称えた大傑作。二首目、冴えない孤独な感じ、よるべない心象が表れていてせつない歌、犬と月が詩情あふれるとの感想も。三首目、キュートで愛らしい歌のなかに、抱きしめることは抱きしめられることに通じるという感触を得た読者もいました。四首目は「ファンシーな奴」に話題沸騰、おもわず住みたくなるような生活感に共感が集まりました。    (記/蔦きうい@四月から講読予定)
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by kaban-west | 2012-03-09 19:55 | 歌会報告


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