2013年 06月 04日

5月歌会報告

「 かばん関西五月オンライン歌会記 」

<参加者> あまねそう、雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、久真八志、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀(選歌のみ)、十谷あとり(日月)、冨家弘子、福島直広、サカイミチカ、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線

今回のお題は「こども」でした。こどもの日があるから、という単純な理由で出題しましたが、実生活において子持ちの人にとっては詠みやすく、そうでない方にはやや詠みにくかったようです。

進行係を有田が担当したのですが、詠草一覧を作成する際に転記ミスをしてしまいました。
ご提出くださったメールの詠草部分のみ、フォントが他と違っていたので、
それを揃えようとして手入力で転記しているうちに間違えてしまったのです。
次の歌が、有田のミスで誤植となった歌です。

★ 保育所のひほひをまとはせ帰りくる子にたまりゆく見知らぬ時間

ところが、この歌が最高得点歌となりました。

ほとんどの方(子持ちに限らず)が「にほひ」だと分かったのは、全体を流れる素直な母性が伝わったからだと思います。女性陣並びに育児経験のありそうな方からは共感を述べる意見が主でした。

男性陣からは、「二句目の助詞『を』を外して字余りを避けるほうがいいのでは」という意見や、「『たまりゆく』と『見知らぬ』の主体が違うので、この二つの語を同時に『時間』にかけてしまうと意味の流れがすっきりしないのでは」という意見がありました。そうそう、「集団生活に入ると平気で『ウンコ』とか言うようになる」という声もありましたね。

「こども」って、終始ごちゃごちゃしているものです。こどもとの暮らしは、いらないものがくっついたり、欲しいものに手が届かなかったり、あれもこれもごった煮になった毎日。そこに放り込まれて、なんとかやっていくのが育児の実質であります。少なくとも有田にはそうなので、この歌の表現技法や表記は気になりませんでした。

短歌の読み手になるとき、たいていの場合は自分の経験をふまえて読み進めます。この歌のコメントを読み返して、歌の中から実感を掴む読みの力の大切さを感じました。もし歌の内容が未経験だったとしても、「そうなのか!私に置き換えてみたら、あの件が近いな」と想像する力がいるのだな、ということです。また同時に、実作者として我が身を振り返りたくなりました。自分にしか分からない歌(意図的な場合は除く)を詠んでいないかな、と。

★ 保育所のにほひをまとはせ帰りくる子にたまりゆく見知らぬ時間   文屋亮

この「にほひ」が正です。
キーボードではNの上にHがあるので「ひ」と「に」を誤入力した可能性大です・・・。
文屋さん、本当に申し訳ありませんでした。改めてお詫び申し上げます。

続いて、兼題よりもう一首。

★乳を知らぬ子らを抱きよせ汗ばんだアリサの耳に首に潮風       冨家弘子

このアリサという女性について、不明ながらも惹かれる人が多数いました。耳と首が並立なのでどちらかひとつでよいという意見も複数。冨家さんの自作註によると、蔦きういさんの左の歌を元にしているそうです。

★アリサよ、わけのわからん理由にて男を捨ててどないすんねん    蔦きうい
(第一歌集『似偽地理学者伝』抄より)

こうして更に不明瞭になったアリサでしたが、今月の歌会をお休みされた蔦さんへのメッセージとなりますよう、七夕さまに願っております。

以下、みなさんの自由詠を挙げます。
初めて読まれる方、四首選ならどの歌を選びますか?再読の方、今ならどの歌を選びますか?

● 恋愛のイロハを通り過ぎてから久々に泣く東京映画   有田里絵

● もう少しだけ騙されてみようかな彼女のタバコ見てみないふり  黒路よしひろ

● 大部屋に入院まずは自己紹介「どこ悪いねん」「痔瘻ですねん」   福島直弘

● 神様のサラダのやうな新緑を食べに行こうか扉をあけて    文屋亮

● 野放図でオーケストラには合わないと岩田耕治がバンドを渡る   雨宮司

● エンジンを止めて峠に息つけば「凍結注意」ただ光おり    あまねそう

● 赤い傘さして屈んで泣いてゐた小さなあなた躑躅だつたの   十谷あとり

● (雲が)「ほら、また聞いてないママの話。反省してるの? ねえ」(動いてる!)  冨家弘子

● 夕立に犬は駆けゆく雨粒の一つ一つを目に追いながら     久真八志

● いつまでも何うでもいいこと憶えてる忘れることを忘れた人だ  兵站戦線

● 天の川わたる小舟の見えさうな青き夜未生のわたしに出逢ふ   紀水章生

● フロートの黄色の連鎖記憶より拾い上げたるすべての海へ    サカイミチカ

● バリスタが淹れる珈琲満ちてゆくカップになって眠りゆく夜    ガク

ご覧のとおり、バリエーション豊かなかばん関西歌会です。
どうぞお気軽にご参加ください。楽しみにお待ちしております。(有田里絵/記)
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by kaban-west | 2013-06-04 12:46 | 歌会報告


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