2014年 03月 03日

2月歌会報告

かばん関西2月オンライン歌会

[参加者]雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、サカイミチカ、佐藤元紀、塩谷風月(レ・パピエ・シアン2)、十谷あとり(日月)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広、ふらみらり、文屋亮(玲瓏、選歌・評のみ)、兵站戦線(かばん/塔)、三澤達世(選歌・評のみ)

今回は兼題「空想上の生き物」のみで行われました。提出された詠草は十四首。いつもに比べて少ないように思えますが、もしも同じ人数が自由詠も提出していたならば二十八首とものすごい数になるので、今回も大盛況と言ってよいでしょう。提出歌と寄せられた意見は以下のようになっています。

ドラキュラのきらいな臭いあれなんて食べ物だっけ(君の口から)   黒路よしひろ
「君」と主体の関係性で読みが別れた歌。敢えて直球で「にんにく臭いよ」と言わないのか、そういう冗談が許せる関係なのか、言うのにそれくらいの機微が必要なのか。もう少しパンチが欲しい、結句の詰めが甘い、という意見も。

夕焼けが開聞岳を焦がしたらミーヨミーヨとイッシーが鳴く  福島直広
こちらは未確認生物である池田湖のイッシーがモチーフ。海を恋しがっている(作者談)というユニークな鳴き声と具体的な上句の情景の美しさ、そして未確認生物ゆえのロマンが溢れる歌です。下句はもう少し大げさな描写でも良かったのでは、という声も聞かれました。

背広姿の河童と銀座行く俺はあぶないのかあやふいのかそれとも    佐藤元紀
高得点歌。日常と非日常の狭間にいるような不思議な雰囲気、下句の破調でも「あぶない」「あやふい」でまとまった韻律に評価が集まりました。更に一歩踏み込んで、続く言葉を想像する方、河童を狂っている現実の象徴と読む方もいました。

チョーク持つ手がとまるときそのひとは光源氏のおとがひ想ふ   とみいえひろこ
兼題を大きく解釈して、架空の人物である光源氏を詠み込んだ歌。学校での一場面ではありますが、下句の具体的な描写によって現実から想像の世界に移行する過程が生きています。おとがひの意味するものや、主体とそのひとの距離感から結句の断定に疑問を呈する方もいたようです。

新月に尾羽絡まり逃げまどう迦陵頻伽の声ぞ悲しき   ガク
仏教において極楽浄土に住んでいるとされる半人半鳥をモチーフにした歌。上句と下句の繋がりが気になるものの、実際にその美声が聞こえてきそうな画そのものの美しさに惹かれた方が多かったようです。

雪女居並ぶように見えてくる美魔女コンテストには行かない    有田里絵
最近は年代の高い美女を「美魔女」と呼ぶ向きがあるのですが、終わりの儚い雪女と組み合わせることで意味深なものを感じさせています。歌としては理屈っぽいという意見もありましたが、それと同じぐらいに、流行り言葉である「美魔女」についてのコメントが多く見られました。

会えぬふたりなれば無用のねたみ悶々と湿原をねむれるモスラ    蔦きうい
賛否両論のみられた上句の変則的なリズム、ネガティブな単語の連続の中に現れるモスラ。不気味なおかつ圧倒的な存在感で高得点をかっさらっていきました。「ふたり」が会えない間に湧き出てくるマイナスの感情をどこかユーモラスに描いているようです。

いなづまで電気ネズミに襲われるような悦楽灼けつくほどに   サカイミチカ
こちらは子どもたちに人気のゲームキャラクター。なのですが、あえて固有名詞を出さなかったことで倒錯的な大人の一面が強調された歌。濃い単語のオンパレードということもあり、いわゆる「つきすぎ」状態になっているという指摘もありました。

核実験しのぎを削る代償にハナアルキ絶えゴジラ生まれる    雨宮司
ハナアルキとは、鼻行類という核実験で絶滅した架空生物群のこと。核実験で生まれたゴジラと絡ませることで強烈な毒を持った風刺歌となりました。核とゴジラの結びつきはやや安直ではないか、上句にもう少し鮮烈なものが欲しかったという方も。

会ひたふて顔よせたふて首のびてろくろッ首になりてたまひき    ふらみらり
畳み掛けるようなリズムと重々しい文語、そしてとどめのろくろッ首と尊敬語で狂気じみた情念を描ききった歌。独特の言い回しには評価が集まりましたが、結句の文法が気になるとの意見も多かったようです。

切れ長の目のユニコーン脚をあげ絵はがきの青をぬけてきさうに   紀水章生
幻想世界を上句で描きながらも、下句の「絵はがき」で見事に現実世界へ着地させた歌。ともすればポエジー過多になりそうなユニコーンというモチーフを現実的に描いた点に評価が集まりました。結句についてはありふれたところに落ち着いてしまった印象も。

人間の心にあれしあやかしの影に怯えて魑魅をはぐくむ    兵站戦線
誰にでもある疑心暗鬼や心の闇を魑魅に託し、古風に、そして確かな筆致で描いた歌。リズムも美しいです。「あれし」は「生れし」か。読み手に歌意がすっと入ってくる心地よさもあるが、それゆえもう一歩踏み込んで欲しかったという意見もありました。

はいいろのとりのかたはねぬれてありひとなきはまのゆきのおもてに   十谷あとり
全てひらがなによる表記、謎めいた「はいいろのとり」により、読む人ごとに情景の解釈が多様となった歌。哀切なものは各人共通して読み取れたようですが、もう少しはっきりした軸になるものが欲しかったと思う方もいたようです。

立春の碧きみ空を一瞬にチャンスグネアが覆い尽くせり    新井蜜
「チャンスグネア」は作者の空想から生まれた羽虫のような生き物。定形の縛りの大きい短歌ということもあり上手く参加者に伝わらなかったようですが、青空を覆い尽くす謎の生物そのものの異様さは伝わっていたようでした。連作の中に含まれると活きるかもしれません。

紙面の都合上、「多様な解釈」等ぼかさざるを得なかった表現があります。そこのところをもっと読みたい方、遠方だけど歌会には参加したいという方、新しいメンバーも増えて一層活発になったかばん関西MLに是非お問い合わせくださいませ。(サカイミチカ/記)
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by kaban-west | 2014-03-03 18:29 | 歌会報告


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