2014年 05月 05日

4月歌会報告

【かばん関西4月オンライン歌会記】

参加者は左記のとおりです。〈参加者〉18名
雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有岡真里(飛聲/購読)、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、サカイミチカ、佐藤元紀、せがわあき(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、那由多、福島直広、ふらみらり、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線(かばん/塔)、茉莉(ゲスト)
※所属記載の無い方は「かばん」正会員。

兼題の部での高い評価を与えられたのは
※うたの初句・(作者名/姓のみ・点数)
いとしいしと(文屋:9)凧の糸(紀水:6)あほやなは(せがわ:6) むすびめを(とみいえ:6) ゆき違う(福島:6)  

◎ 兼題の部(「いと」を入れること)
01秘めたままいとしいとしといふこころ高瀬川へと散りゆく桜  
有岡真里  (5点)
□ 「戀」⇒「いとしいとしといふこころ」。初句と下の句とはよく響き合っています。「秘めたまま」(完了) 「散りゆく」/『戀』 あまやかな情動にみとれるばかりです。

02 冷たいと言はれたことを思ひだし生駒の山に沈む陽をみる      新井蜜    (3点)
□ 「冷たい」の程度の差によって作者の「思ひ」の表出も変化するでしょう。『たまたま、「思ひだし」たまでの話だよ』的な感傷の空気感を感じます。『そう、思いたければ思やイイ』と、言いたかったのか?

03 いと、いととおかしうつくしもの尽くし清少納言『枕草子』       雨宮 司    (1点)
□意味は通じるが、「いと」と「し」の羅列では、それでどうした・・・ということも、判らない。「いと」が「をかし」、「うつくし」に前接しているのだろうか?このうたの云わんとしている「をかし」の正体は連作で見せて欲しいところです。

04 いとけなき頃の夢見ぬ七たりのかず数へねど亡き妻笑まひき     兵站戦線   (4点)
□ よくある夢の話です。「七たり」一人、二人、みたりから七たりと云いたかったのです。「ななにん」と書く方が親切かもしれません。夢の中では時間は止まっているようです。

05 今日中にメールしないと腐りそうスマートフォンに乗せた言葉が    サカイミチカ  (4点)
□ 「腐る」と「腐れる」、「腐りそう」と「腐れそう」、「腐らない」と「腐れない」前者は五段で、後者は下一段。 両者に意味の差違はなし。「腐る」とは利用価値がなくなることですね。「腐りそう」に生々しさを感じます。わざと寝かせる情報もありますが。

06 わが寝息たれかは聴かむ東雲を待つともなしに鶏頭のあお      蔦きうい    (1点)「いと」の所在は、ここ。「鶏頭」⇒「けいとう」。
□ 青鶏頭と云う植物を知っていることがまず脱帽です。周りの自然の中に詩の素材を見つけることは、大いなる「見つけ」と云えます。「健やかな寝息」と「鶏頭のあを」とを対峙させる自然体がいい。結句の「あお」は正しくは「あを」、蛇足ですが。時制からのしばしの離脱のようなムードが漂います。

07 短いと思いませんか五線譜の裾模様なる白いスカート        有田里絵      (4点)
□ 「五線譜の裾模様なる白いスカート」の方に目が点の釘付けのようで、主題の「スカートの丈の長さ」には話が弾みませんでした。作者は少なくとも、そちらが気になったようです。

08 繋ぐ手がほしいななんて迂闊にもわたしの気持ち知らずにあなた  黒路よしひろ(3点)「いと」の所在は、ここ。「繋」 「いとへん」。
□ 作中主体は、彼からの決定打を待ち望んでいる。「迂闊にも」が、利いています。彼はとっくに見破っている。「わたし」の焦れを楽しんでいるようです。

09 ゆき違う人の流れを受容れて暮れる水都に灯かりが浮かぶ     福島直広   (6点)
「いと」の所在は、ここ。「水都」 「すいと」
□ 大阪が、人間の哀しみや欲望のすべてをなにもかも、受け容れてくれるような懐の深さがあるように思います。

10 むすびめをさがしつづけるひとがふと泣くときそっと糸風【いとかぜ】は吹く  とみいえひろこ     (6点)
□ いとかぜ(糸風)という呼び名、はじめて聞く言葉ですが違和感なく素敵な言葉です。日本では風の表現が2,000を超えるそうですが。「ふと」「そっと」の配置に「くどさ」の指摘も。「むすびめ」には、結び目論という数学理論があるそうです。

11 服につく糸屑みたいな執着心からまりからまれからみあいいきる   那由多   (1点)
□ 初句だけが5音であとすべてが一音づつ字余りですのでせめて結句を七音にしたらと思います。「からんでいきる」・・。ですが作者の狙い目もそこ?ドロドロ、ごろごろ感を出したいのかもしれません。定型への反抗でしょうか。

12 今日もまた苦しみの糸紡ぎつつ春と戯る【たわむる】うたかたの夢  ガク   (3点)
□ 「春と戯る」の視点を「今」という時間をどう反映したらいいのか。 「退屈さとおもしろさ」という軸にある作者の肯定感と自尊感情はことばの展開に自信を与える。ニヒリズムでは、現代は括れません。

13 濃紫の糸のえにしのふかぶかと暮れなづむ世をおまへに生きむ  
佐藤元紀  (5点)
□ 「濃紫・・・暮れなづむ」というラインと、「暮れなづむ・・・生きむ」というラインが交差しています。「おまへ」という人称代名詞が妻、愛人を当てるのなら相聞、「濃紫の糸のえにし」なら言挙げと見ます。

14 あほやなはいとしと同義わかるやろ頭を撫でる手のやさしさで  
せがわあき  (6点)
□ 「同義」という漢語だけが浮いています。「あほ」や「ばか」の使い方で東西の感覚の違いといわれますが、その典型でしょう。どちらかの連れ合いに説明している情景では。

15 自分史のタイトル決めて章立てに迷っていると、もうバスが来た    ふらみらり  (3点)
□ 実景かもしれませんが、「迷っていると、もうバスが来た」人生の次のステージに移らねばならない情景に、選のポイントがありました。

16 凧の糸ゆるめてしまつた悔やんでももうわからないどこかの空へ    紀水章生   (6点)
□ 失恋の歌なら「糸ゆるめて・・・・・わからない」は、厳しい現実です。こちらの歌会での読解は「相聞をまづ疑え」が基本です。それからユーモア。

17 いとしいしと、と唱へつつゆく火口まで 狂へるほどの恋はなかつた 文屋亮  (9点)
□ 初句、標準語では「愛しいしと」なのですが、九州弁(ただし一部)では「ひ」は、「し」に変換されます。つまり、「愛しい人」なのです。「火口まで」は「愛しい人」に還ってゆくのです。実は、かつて苦しいほどの恋をしたのです。

※ 自由詠の部での高得点歌
飾られたままの女雛は切れ長の目をみひらいて夜を見てゐる
(新井 蜜:11)  
金平糖ほどの昏さを乗せたまま片目をつむる男が居たり 
(とみいえひろこ:9) 
饅頭に似てゐる赤子が禅問答の答へのやうに大の字になる    
(文屋 亮:7)
 やがて来るきみが天使であることを拒絶する日思ひて背を撫づ  
(せがわ あき:6)

※ 関西エリア以外からも参加しています。どうぞお気楽に・・。 
花の縁 珍しがりの犬の縁                (文責:兵站戦線)
[PR]

by kaban-west | 2014-05-05 21:33 | 歌会報告


<< 京都たゆたい      3月歌会報告 >>