かばん関西歌会

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2014年 06月 08日

奈良吟行歌会記

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かばん関西歌会 奈良吟行歌会記

【参加者】雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有岡真里(飛聲/購読)、有田里絵、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、十谷あとり(日月)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広の十名。東京から来られた佐藤さんと新井は初参加。

六月一日(日)奈良県文化会館にて。午前中は猿沢池、興福寺、春日大社参道、新公会堂、東大寺二月堂、東大寺南大門のルートで散策し、歌を詠んだ。当日、奈良は34℃と、とても暑かった。なお、個別にデートを楽しんだ組もあった模様である。
総合幹事を有田さん、詠草清記、投票取りまとめを十谷さん、吟行の案内、歌会の司会を蔦さんにして頂き、つつがなく進行した。
歌会での一部の歌をご紹介します。

二月堂さみどりつよくシャツの人すれちがいざまボタンをはずす  有田里絵

当日の暑い様子がよく表されている。「すれちがいざま」が効いている。なお、「さみどり」と「つよく」が合わないのではないかとの疑問に対し、若葉の生命力の強いことを表現したのだろうとの反論があった。

人待ちのilly【イリー】コーヒー顔を上げるたびに誰かがさよならをして  とみいえひろこ

雰囲気がよく表されている。なお第三句以降をこの場の情景と読まず、この世界ではいつも誰かがさよならをしているという読みも魅力的である。第三句の6音に賛否両論があった。

ほととぎすさつきみなづきぎらぎらの緑がおまへの眸にこもる  佐藤元紀

季節感がよく表現されている。「こもる」という言葉がうまい。「ほととぎす」=「おまへ」かどうかに両論があった。なお、作者から、上句は<ほととぎす五月水無月わきかねてやすらふ声ぞ空にきこゆる(国信)>からいただいて序詞としたものとの解説があった。

縣だとかむつかしい字は分からぬがいろは屋下のポストは赤い  福島直広

町歩きをして色々なものに目を止めている楽しい気分がうかがえる。「縣」という旧字体と「いろは屋」、「赤いポスト」の取り合わせが良い。

悟りなどそうそうあってたまるかと僧を横目に会場へ急ぐ  雨宮司

気が急いているときには「悟りなど…」という気持ちになりやすいものである。吟行の歌という前提がないと「会場」が何を意味するか理解できないのではないか。「そうそう」と「僧」の音が響き合う。

天と地と二本の線にはさまれて奈良絵かわいし赤膚の碗  黒路よしひろ

赤膚焼きの器で天と地を示す二本の線が引かれ、地の線の上にかわいい奈良絵が描かれているものがよく知られている。二本の線を実際の天と地と読むと雄大な景が見えてくる。なお、「かわいし」は疑問。

やがて来る初めての夜、枝越しに若き牝鹿は様子うかがふ  新井蜜

吟行の後の懇親会を「初めての夜」とした挨拶歌だろうという解釈もあった。「様子うかがふ」という擬人的表現でなく、牝鹿そのものの直接的描写をした方が良いという指摘があった。

袖山の折り目さやけき夏服に駅員は鋭く笛を吹きたり  十谷あとり

「折り目さやけき夏服」、「鋭く笛を吹きたり」から、爽やかな季節感やきびきびした駅員の様子がうかがえると好評。

京終【きょうばて】という星へゆくバスを待つ紅いサガンの文庫かたてに  蔦きうい

10人のなかで8票という最高得票を集めた歌。「京終」という地名が効いている。京終ー星ーバスー紅いサガンという言葉の組み合わせもとても良い。なお、吟行の歌としてこれでいいのか?という疑問が出された。

歌会の後、駅の近くの店で懇親会を行った。場所も料理もとても良かった。幹事の有田さん、宴会を取り仕切って下さった有岡さん、感動するお話を聞かせてくださった福島さんを始め皆様に感謝致します。
(新井蜜 記)


追記(6/10):
黒路さんの私的な歌会報告もweb上にアップされています。
合わせてご覧ください。(外部サイトになります)
→蔦班吟行私記
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by kaban-west | 2014-06-08 21:49 | 歌会報告


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