2014年 10月 05日
かばん関西二〇一四年九月オンライン歌会 【参加者】 あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有岡真里(飛聲/購読)、有田里絵、小野田光、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、小坂井大輔、小松才恵子(ゲスト)、佐藤元紀、塩谷風月(未来、レ・パピエ・シアンⅡ)、十谷あとり(日月)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広、ふらみらり、茉莉(ゲスト)、山下りん(ゲスト) 天高く馬肥ゆる秋となった九月、塩谷氏から出された兼題は「靴」。足元を見ると人となりがわかると言いますが、個性的なかばん関西の面々、どんな靴を履いてどこへ向かっていったのでしょうか。まずはご覧あれ。 静かなる紫色のパンプスが昨日はあった扉を閉じる 塩谷風月 紫色と閉じる扉が呼応して静かな情景が浮かび上がる。読んだ人それぞれが扉の向こうの世界に想いを馳せることができる一首です。 特大のサンダル探す骨折の足指かためてゐるひとのため 紀水章生 既視感があるとの意見もあったが、「心が暖まる」「LOVEですね」などのコメントのとおり「特大のサンダル」に作中主体の健気な愛と思いやりが感じられる一首。 スニーカーもからりと乾きひとりでに駆け出しそうな秋がまた来る 小松才恵子 清々しい秋の気配、心地よさがストレートに読み手の心に響いた最高得点歌。逆に失恋や物寂しさを思い浮かべたコメントもありました。 パンプスもサンダルも合わぬ吾が足の武骨なる様心より愛す 茉莉 無骨な吾が足をどう捉えるかで意見の分かれた一首。作中主体が男性か女性かでも様々な意見がありました。 脱いだ靴は揃へなさいと叱【いさか】ふこゑつめたくとほくなつかしからず 十谷あとり 「音読すると静かなのに過去との葛藤が迫ってくる。」との意見もあった歌の原点である音の大切さを感じさせてくれる一首。「叱【いさか】ふ」の使用方法に意見が分かれました。 革靴の底には柔き砂の上に我の重みを感じつつ海 あまねそう リアルな身体的感触が感じられる一首。「助詞の使い方に再考が必要」「効果を狙った使い方だ」と相反する意見がぶつかりました。 風のないあしあとだらけの月面ではじめて素足に砂噛むヒトよ 小野田光 月面で素足に砂を噛むという発想が面白い、近未来的な世界観が詠われていて素敵な一首。素足では靴が出てこないとの意見に対し、素足をだすことによって存在しない靴を詠ったのだとの意見も。 爪先と踵を厚く施した男のフォーマル五本指だぜ 福島直広 五本指とフォーマルのギャップを捉えた面白い一首。ワイルドスギちゃんの「だぜ」を思い浮かべたり男らしい潔さを感じた読み手もいました。 靴ひもを結ぶ間に信号は青に変わった雨が降り出す ふらみらり 結句の「雨が降り出す」が日常の様々を表した秀逸な表現か、はたまた平凡な表現かで評価の分かれた一首。皆さんはどう感じますか。 カーテンにヒールが消えてゆくまでを書きさしてゐる恋文の秋 佐藤元紀 思わず映画のワンシーンが浮かんでくる映像的な一首。「雰囲気は伝わるが状況がよく分からずもやもやが残る。」との意見もありました。 天井についた靴跡くのいちのあの娘【こ】が僕に恋した九月 黒路よしひろ メンバーの多くが「あの人」を思い浮かべた、ある意味とっても分かりやすい一首。かばん関西ファンのあなたにも分かりますよね。 いい靴はいい場所を知るものだよと祖母は言いおり敬老の日来 有田里絵 下句の通り敬老の気持ちが伝わる一首。「いい」靴、場所を是非教えて欲しいとの希望多数。 カタカタと僕のうしろでハイヒール片方だけのカタカタカタカ ガク なぜ片方と分かるのかと全うな意見多数の一首。「カタカタ」のオノマトペに、いらつく音、後をつけられている音など違った解釈がありました。 別れなど何でもないさ茜さすBlue Suede Shoesの音量上げろ 新井蜜 それぞれが、明るさ、虚勢、疾走感など様々な感情を受け取った一首。Blue Suede Shoesを知らなかったという読み手もいたが、曲を聴いてからもう一度読んでみると違った感情が湧き出てくるかも。 偉人さんに連れていかれて赤い靴時代の一歩を踏み出して行く 山下りん 有名なあの童話の本歌取り、初句がこの文字になったことで読みが広がった一首。結句に具体性があった方がいいとの意見がありました。 つい靴をふんだ立秋その日からあずさの瞳にはにかむ翳り 蔦きうい かばん関西のアイドル「あずさちゃん」を詠ったあずさ歌その一。「あずさちゃん」について詳しくは過去の歌会記をご覧ください。 靴べらに深くお辞儀をするように人差し指で作る靴べら 小坂井大輔 日常の何気ない動作の一瞬を切り取った一首。それにしても靴べらがあるのに使わないなんて不精というか間抜けというか、作中主体のズボラ感がユーモラスに表現されています。 あずさ姫きっと本当は待ちぼうけよし君早く硝子の靴を 有岡真里 あずさ歌その二、メンバーはどんだけあずさちゃんが好きなのでしょうか。「待ちぼうけさせたりしていないでいい加減行動にうつせ」というのがメンバーの総意。(ねぇKさん) ヒールへと釘を打ちつけ複雑なリズムを刻むフラメンコダンサー 雨宮司 ダンスの靴音が響き、赤々と燃える情熱があふれだす一首、フラメンコの靴を知らない者には理解しづらいとの指摘も。 ひどい靴の履き方だったさらわれたままの魚の尾びれ冷えゆく とみいえひろこ 多くの者が人魚を思い浮かべる中、お魚盗られたサザエさんの歌との評をした人もいた。想像が様々に広がる一首です。 ここでご紹介しましたのはメーリングリストのほんの一部、かばん関西はいつでもどこでもあなたをお待ちしております。 (ガク/記)
by kaban-west
| 2014-10-05 22:23
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