2015年 02月 05日

1月歌会報告

かばん関西二〇一五年一月オンライン歌会記

【参加者】あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん、塔)、有岡真里(購読)、有田里絵、岩崎陸(購読)、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、小松才恵子(ゲスト)、佐藤元紀、塩谷風月(未来、レ・パピエ・シアンⅡ)、十谷あとり(日月)、杉田抱僕、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広、不思議童子、ふらみらり、三澤達世、山下りん(ゲスト)

新年となり初めての歌会です、今月の兼題は進行係の塩谷さんより「雪でゆきなさい」との指令が下されました。さあ皆さんはどんな雪の歌を降らせるのか、ご覧下さい。

兼題の部「雪」

眩しさに眼【まなこ】とづればしんしんとひとりになつて初めての雪 新井蜜
一人になった事に寂しく思う気持ちと、ほっとした気持ちと両方が感じられる、ひらがなと漢字のバランスが絶妙で美しいと好評だった歌。色んな要素は足りているのに何か物足りないとの意見もあった。

いつの間に積み重ね来しか粉雪が街に光の穴を開けたり とみいえひろこ
積み重ねた雪が生きてきた人生にも読めて深みが感じられる。「光の穴」は詩的で格好良いとの評価の反面、イメージとして分かりにくいとの意見も多数あった。街を上から俯瞰して見ているのだろうか。
 
詰めこんだ結果はやはり大雪崩【なだれ】押入れからは無精が見える 雨宮司
兼題を巧く活用して雪と関係のない歌を詠む発想が独創的だ、ユーモアと共にほんのりとした淋しさも味わえる。全体的に説明的かも、との意見もあった。「男おいどん」のさるまたけを思い出します、と蔦氏。

降りしきり積もり積もったこの思いとけてなくなれとけてなくなれ 不思議童子
下句のリフレインが強い思いを際立たせていると、多くの共感を得た反面で直情的すぎる、何か具体的な思いが表現されていたら下句の呪文のような願いも生きる、との意見もあった。

疎らなる拍手のごとく雪は落つショーの終わりしアシカプールに 十谷あとり
上句の喩えが寒々と寂しい光景をよく伝えていて、閑散としたプールにアシカが前足をパチパチとしている光景が浮かぶ。淋しい旅は冬の水族館から始まるのだ。兼題の部での最高得票歌となった。

西側のいちばん下の屋根にのみ雪を残した東寺たたずむ 有田里絵
陰影の描写に細かな観察が見られて素晴らしいと高評価だった。反面で「東寺たたずむ」の表現に少し無理があるんではないかとの意見もあった。上句がやや説明的だったか。

雪解けを赤いブーツが二度転ぶ図書委員の君えくぼの滑神【すべしん】 有岡真里
上句の表現がキュートな女子高生をイメージさせる。滑神が分からないとの意見が多数あったが、新しいものを作ろうとする心意気は良いとの評価もあった。言葉を欲張り過ぎ、もう少し整理した方が良いとの指摘もあった。

眼と耳と鼻が奪われ貴方色のモザイクが散る雪中行軍 岩崎陸
八甲田山の雪中行軍を詠んだ歌だろうか、「貴方色のモザイク」に人体がバラバラになって飛び散るようだ、とか意味が取りづらい等に意見が分かれた。吹雪の中、貴方の背中だけを見つめ進んでゆく、全てを委ねた強さがある、との意見もあった。

見上げればからだ広げた雪花が私めがけて高い点から ふらみらり
天空の一点から円を描くように降ってくる雪が、ふわっとひろがる様子が目に浮かぶ魅力的な歌だ。もう少し表現をしぼれたら「私」という小さな点と、「高い」異世界の点とが繋がるような不思議な世界に近づけそう、との意見もあった。

「ユキ!ユキ!」と庭駆け回る20歳アリーの国にはなかった白だ 杉田抱僕
南国出身のアリーが初めて見る雪に、はしゃぎまわっている様子にほのぼのとなる一首だ。どこかステレオタイプで作られた感もあるが、笑顔が想像できる素直な詠いぶりに好感が持たれた。

サクサクと踏む音だけが聞こえてるだぁれもいない冬の朝だね 塩谷風月
誰もいない状況を孤独でなく、雪のような柔らかな優しさとして表現されているところが好評だった。また、「だぁれも」が甘くなりすぎとの意見もあった。白秋の「君かへす」を連想する参加者も多数いた。

きぬぎぬの桂大橋おときえて雪野を無蓋貨車はとおい弧 蔦きうい
上句の調べと、それに添えられた下句のイメージがうるわしく、絵画のような描写だと高評価を集めた。また、声に出して読んだ時に無蓋貨車と言う文字的にも音的にも重いものを、「弧」と言う一字で支えられているかどうか、との意見もあった。

暗渠には雪は降らない生温い水のにおいが鼻を掠める 三澤達世
ぐっとくる景を切り取ってみせた発見の歌、暗渠とは心の内部を表しているのだろうか。暗渠と雪、白と黒、冷たさと生温さの対が効いているとの高評価の反面、暗渠の中の匂いはもっと強く迫ってきてもいいんではないかとの意見もあった。

神様の言うとおりなどおどけつつ新雪を踏む確信犯で 山下りん
「確信犯」がキーとなり様々な意見が交わされた、まっさらな新雪に踏み込む何かを犯すような罪悪感を、わざとふざけてごまかしている、とガク氏が言えば、世の中には新雪を踏める人と踏めない人がいるが、踏める人の方が人生楽しめるだろうなと、ルーキー小松氏は応える。

手を触れれば消えてなくなる淡雪の君のうなじは紅色に染む ガク
「触れれば消えてなくなる」を雪と君にかけているところが切ない。結句が型にはまっているとの意見もあったが、なよなよとしたところが魅力的な絵になる歌だ。
 
さらば愛別 しまく雪野の白よりも白きおまへに深く埋もれて 佐藤元紀
「さらば愛別」の初句が力強い心惹かれる一首、今月も情熱的で濃厚で、純粋な「おまへに」の思いに心打たれる。吉永小百合主演の映画のよう、と十谷氏は乙女の瞳になっていた。

「ごっつぉーさん」「まいど三百万お釣り」藍染めはらりはらはらり雪 福島直広
上句のやりとりには大阪を感じるが、他の地方の人には分からないんじゃないかとの指摘もあった。暖簾をめくるはらりと、雪の舞うはらはらりが自然につながっているとの評価の反面で、字数合わせに思えたとの意見もあった。

理解されないまま帰るみぞれ道ふくらますガムミントが苦い 小松才恵子
理解されない事が何なのか心情が述べられていないところが好きと言う意見と、何が理解されなかったのかが気になるとの意見とに分かれた。みぞれ道とガムミントとがお互いイメージを殺し合っているとの意見もあった。句またがりが苦さを巧く表している。

傷負いしきみをなぐさめ降る雪がまろげて白き日々をみちびく 小野田光
白き日々が傷の癒えた世界のようで心に沁みる、雪は心の傷を隠すのだ。「まろげて」という表現は好評だった反面で、用法についての指摘もあった。

雪だるまだけが見ていた初めての口づけきみは絵の具の匂い 黒路よしひろ
結句の意外性が逆にリアルだと好評だった。四句目までの甘さが結句によって抑えられているようにも感じられる。「きみ」は描かれた絵ではないのかとの意見もあった。

降る雪が街のノイズを消してゆくこのまま全部止まってしまえ あまねそう
下句に作中主体の憤りが凝縮されている。街の音がノイズに聞こえる程の苦悩が痛々しく、やりきれなさが伝わってくる。また、下句はあまりにもそのままでしょうとの意見もあった。

かばん関西は所属、居住地を超えた自由な仲間達です、興味のある方はお気軽にメーリングリストへ。

福島直広:記
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by kaban-west | 2015-02-05 21:51 | 歌会報告


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