2015年 12月 13日

11月歌会報告

■かばん関西2015年11月オンライン歌会

★参加者一覧(五十音順)>> 雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有田里絵、岩井曜、岩崎陸(購読)、泳二(ゲスト)、小野田光、黒路よしひろ(ゲスト)、ガク(購読)、佐藤元紀、塩谷風月(未来、レ・パピエ・シアンⅡ)、橘さやか(ゲスト)、雀來豆(ゲスト)、土井礼一郎、とみいえひろこ(選のみ)、東こころ(かばん/未来)、福島直弘、ふらみらり、兵站戦線(購読/塔)> (計19名)> ※所属表記なしは「かばん」正会員です。

 今回有田女史から出されたテーマは「あ」で始まって「る」で終わる歌。さて、かばん関西のメンバーは何を始まりとし、何で終結させたのだろうか。

アップリケ大きな膝にはずかしさ隠せないまま冬がはじまる  小野田光
 「大きな膝」ということは、大人の人なのだろう。ああ、またこのアップリケズボンの季節かとうなだれる大柄な男性。アップリケは人の手によって施されるものなので、膝の部分に針を通した人(母親?妻?)の存在も浮かび上がらせて、あたたかい気持ちになる。

アンタレスなくなったからきみはもう蠍じゃないよ初めての夜  有田里絵
 アンタレスがなくなって蠍じゃなくなった元蠍って?星座の話なのか、ゲームの世界なのか、初めてとは何が初めてなのか?たくさんの謎を内包しているが、かわいい人にささやいているような不思議な歌。

「あの人はどこへ行ったの」菜園で茄子を掴んだまま、固まる  岩井曜
 あの人とは誰か。そしてこの状況は置き去りにされて深刻なのか、それとも畑で立ちすくむ女性の滑稽さなのか、読んだ印象は人によって異なっていたけれども、奇妙さが味わい深い。読点の使い方で面白いバランスになっている。

あきらめたことひとつあり、白くまのうんちは白くないことを知る  土井礼一郎
 白くまの白いうんちが見たかった子どものかわいい願望と成長の歌という解 釈が多い中で、白いものから黒いものが生み出される不思議さと驚きの歌なのでは、という読み方も。

足音もなくだーれだと目を隠す遊びのようにさよならは来る  泳二
 どういう別れなのかいろんな想像が寄せられた。四句目までの説明のようなひとつながりの表現が、結句のさよならという一語に向かっている。「だーれだ」というあまい言葉遣いに着目(疑問、肯定とも)した読み手が、多数あった。

安静にしときなさいと先生に言われた夜に月はまんまる  福島直広
 具合が悪い日の満月。満月だから出かけたかったのだろうか、という読み方もあった。ただ安静にしていた日ではなく、「先生に言われた」という縛りが効果を上げている。

アフォリズム「 安保イズム」はかたすぎる「アホなリズム」ですっと覚える ふらみらり
 リズムは悪くないが歌意がよみとれない、前半の固さに比べて「アホなリズム」がくだけすぎ、俗っぽさが際だっているという意見が出た。「安保イズム」は唐突で浮いているという評も複数あった。

愛なれば八十路の坂も気遣ひて生きたればこそけふのゆるゆる  兵站戦線
 前半のきまじめさに比べて結句のくだけたかんじが面白くて、ふっと心がほぐれる。
他者なのか自分自身なのか、対象を思いやりながら、坂道を上がるように生きてきたから、見晴らしのよいところでゆっくり身体をのばせる「けふのゆるゆる」という意味だろうか。

ありし世のなごりばかりを山風にとざし檀の紅葉しぐる る  佐藤元紀
 百人一首に出てきそうな歌。檀【まゆみ】の木に何かを象徴させたかったのだろうか。
「ありし世のなごりばかり」とははかなげな息づかいを感じる。美しくて幻想的な歌。

あの夜の歌がきこえてしまうから12月だけスクロールする  東こころ
 やはり、クリスマスソングのことだろうか。いやな思い出があるのか、クリスマスソングそのものが嫌なのか。即座に思い浮かぶ条件反射のような連想を跳ね返すぐらいの異分子のような言葉が入れば、もっと面白い歌になると思う。

あてどなく空のまほらで鳥たちは終の棲家を探しつづける 雀來豆 
 飛ぶ鳥たちの姿が目に浮かぶ、情景的な歌。自由を謳ったのか、ゴールのない旅に絶望してい るのか。人生や難民を連想する読み手もいた。手に入らないものを手にいれようとする悲しさでは?という鋭い見方も。ただ、「まほら」とは「すぐれた良い場所」という意味なので、そういう場で終の棲家を探し続けるとは、違和感があるという意見もあった。

あめ玉を口と口とで口移し舐れば君のれもん味する  黒路よしひろ
 「口」という言葉が三回も繰り返されるのは意図的なのだろうか。「口移し」「舐れば」などの気持ち悪さと「れもん味」のさわやかさがあいまって何とも不思議な味わいの歌。

あなたには失望しました。幼児が母に言われて見るアルタイル  塩谷風月
 大人びた幼児だと思う。ただ叱られているのではなく、「失望しました」という言葉を母親 に投げつけられ、漠然と星空を見るのではなくアルタイルという一点の星を凝視している。ただ庇護されているのではなく、思考する幼児の心の裡を読み手に探らせる歌。

あいしてるそれだけでいいナンテコト砂漠のうえ泡のままでいる  岩崎陸
 自分が「あいしている」という事実だけでいいとうそぶく気持ちを、ナンテコトというカタカナでちゃかして、「砂漠の上の泡」のようにはかない自分の存在を客観視している。切ない歌だけれども、芯の強い女性像だと思う。

ありありとあなたの顔が星のない碧い夜空にはりついている  橘さやか
 シンプルで強い気持が伝わる。ただ、憎しみや恨みはないのか、夜空に見える顔はどういう表情かなど、作者と「顔」との関 係に手がかりがあれば、もっと深みが出たと思う。

あなたから離れたくない秋の夜の月の明かりがしんしんと降る  ガク
 「しんしんと」とは雪を連想させるので、雪のように灯りが降り注ぐ様子が浮かんで来る。並び歩く二人も何も喋らず、静寂が二人を包んでいる。

紅い花流されてゆくせせらぎをニーソックスが凝視してゐる  新井蜜
 「紅い花」「ニーソックス」という名詞によって歌の世界に入りやすく、ニーソックスに人物を象徴させて心情を語らせている。つげ義春の「紅い花」を連想する読み手も複数いた。

青空へアルマジロ投げあざとさにああもう嫌とあなたを殴る  雨宮司
 全句が「あ」で始まる不条理歌。もやもやとした言いよ うのない感情を「あ」で始まる言葉を選んでつなげて表現されている。

 わたしはいつもどんな兼題が出るのか、楽しみにしている。そして、テーマのとらえ方が人によって全く違うことに毎回驚いている。そんなかばん関西をこれからもご注目ください。

(ふらみらり 記)
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by kaban-west | 2015-12-13 15:32 | 歌会報告


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