かばん関西歌会

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2007年 03月 13日

2月歌会報告

**かばん関西歌会 二〇〇七年二月二十四日(土)**

【歌会出席者】雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月・玲瓏)、棉くみこ
【オンライン参加者】大澤美枝子、笹井宏之(未来・かばん購読)、蔦きうい(玲瓏)

いつものようにメーリングリストを使って詠草を募集しました。十谷さんの提案により、兼題は「春の食べ物」。魚介類あり、菜の花あり、合計21首集まり、市場のような(?)歌会に。同時に自由詠も募集しましたが、今回は題詠中心にまとめます。

○野菜売り場から

菜の花は薄めの衣くぐらせててんぷらにする あなたすきです 大澤美枝子

「菜の花」は人気の食材で4名さまが詠われました。
この歌は、なかでも素直によまれた歌。上句が丁寧につくられていて、美味しそうなてんぷらが浮かびます。「あなたすきです」のカタコト感が面白いとの評がある一方、全体に軽すぎる、解釈が幾通りもできてしまうとの意見も。

菜の花をうどんにのせて竹薮のなかゴルバチョフ邸に配達 蔦きうい

菜の花から意外なところに飛躍した作品。一つ一つの言葉に現実感があり、読者を一気にゴルバチョフ邸へさらっていく勢いがある。

肺病みの荷風が女と別れぎわ採った土筆を玉子でとじる  蔦きうい

「肺病み」「荷風」「女」「別れ」から、どろっとした生卵まで、湿っぽい素材に徹底して詠った点が成功している。しばし永井を気取ってみたくなる歌。

煮込みには向かぬきみどり春キャベツはらはらはがし花と並べる 有田里絵

「花と並べる」が春キャベツの形容にぴったりで、後半のハ行の続く調べも楽しい。欲を言えば、上句が多少理屈っぽいかも。

天井と電気のかさの暗がりに独活伸びている留守番の家  棉くみこ

ほら、あんなところに独活が……と、不気味さを感じる歌。「留守番の家」はやや矛盾があるので、「留守番の刻」とか「無人の居間に」とか変えてみてはとの意見が出された。

○魚介売り場から

麦わらと呼ばれる前に何としても竿を片手に桜鯛追う  雨宮司

「何としても」の字余りに本気さを感じるが、「麦わら」が不明との意見が。「麦わら鯛」という、旬を過ぎて味の落ちた鯛のことを言いたかったと作者より。うららかな釣りの情景は浮かぶ。

ゆびさきのするどいひとに握られてさわらをさばく春の包丁  笹井宏之

詠い出しにドキッとし、「春の包丁」にスパッと焦点がさだまっていく小気味いい歌。「ゆびさき」「するどい」「さばく」などのひらがな使いが巧みとの意見も多く、4点歌となった。

名と顔の一致せぬ人おもひゐて歯にかみ当つるはまぐりの砂  十谷あとり

じゃりっという音が聞こえそう。上句の違和感と下句がとても上手くつりあっている。だれしもが共感できる歌で、これも4点歌に。

しゅぱしゅぱばかたことがたことおもり揺れいわし生姜煮できました 大澤美枝子

オノマトペが効果的で圧力鍋でつくっている臨場感が伝わる。字足らずや読みにくさで多少評価が分かれた。

○昭和40年代のたまご屋

たまご屋のたまご眠らす春の風もみがらの波ゆたにたゆたに  十谷あとり

票を入れた人からは、「たまごの静ともみがらの穏やかな動が、絶妙にからみあって、春の寂しい感じを切なく歌い上げている」と大絶賛。「ゆたにたゆたに」の語感が「ねむらす」「はる」「もみがら」「なみ」の、どの語句とも響き会っているとの評もあり。今回の中でもっとも春らしい歌かも。



毎年毎年花粉にくるしむ春ですが、今年はたっぷり春の食材をたのしんでみようとおもいます。(棉くみこ記)
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by kaban-west | 2007-03-13 12:18 | 歌会報告


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