2006年 11月 12日

2006年11月歌会

■かばん関西歌会 二〇〇六年十一月歌会 報告記■                 

 今月は、恒例のメーリングリストでのオンライン歌会と、有志による「日月」西日本歌会へのゲスト参加を平行して行いました。

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◇かばん関西十一月オンライン歌会

【参加者】雨宮司、有田里絵、大澤美枝子、笹井宏之(購読)、十谷あとり(日月・玲瓏)、山下りん(ゲスト)、棉くみこ

 今回の兼題は「ない」。題なし、ではなく「何もない」の「ない」からイメージをふくらませて詠むというもの。兼題・自由詠合わせて三十六首の作品が寄せられた。

☆兼題「ない」より

・この世にも別の世にも他になし絡み重なる足のぬくもり      大澤美枝子

・歌にするもののないとき「ない」ということそのものを詠んで「あり」とす  有田里絵

・きみのこと飲み干すことで私には生み出せぬことひたひた満たす   山下りん

・4、9、14のない駐車場どことなく親切であり傲慢である     棉くみこ

・無気力の群れが背広を身につけて青信号に従っている        笹井宏之

 一首目、性愛のみならず、家族愛とも読めるあたたかい世界。二首目、「親切であり傲慢」の部分にうなずく意見が。三首目、性愛のイメージが水に託されていて美しい。四首目、詠われ方がスマートで、「 」も効いている。五首目、わかりやすい景ながら、さまざまな詠みが広がる。
「ない」というエンプティな題から、「ぬくもり」や「上機嫌」などの明るいイメージを引き出された作品が印象に残った。

☆自由詠

・雪虫が淡き夕【ゆうべ】を飛びちがう長野県からは冠雪の報   雨宮司

・CDを吐きだす動きべかんこうのごとし機械の四角四面に    十谷あとり

・魚煮れば×字の切れ目ぱっくりと開きて嬉し煮汁かけかけ    大澤美枝子

・心地よい奴隷となって縛られるアから始まる五文字の鎖     山下りん

 一首目、季節の移り変わりを丁寧に歌っている。二首目、どことなく可笑し味がある。三首目は得票数が一番多かった歌。具体的に表現したことで、美味しそうな煮魚と、作る人、それらを取り囲む家族のあたたかさまで感じられる。四首目、謎かけの歌がリズミカルにまとまっている。

 今回は兼題・自由詠の部を通して、なまめかしい愛の歌から「ただごと歌」調日常詠、また手堅い自然詠を目指す路線まで、多様な作品が出揃い、読み応えのある詠草集となった。

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  ◇「日月」西日本歌会

 十一月十二日(日)、大阪・中之島の中央公会堂展示室にて、「日月」秋の西日本歌会が行われ、かばん関西より雨宮司さん、有田里絵さん、棉くみこさんの三人がゲストとして参加して下さいました。当日出席者は二十名。三十代から七十代まで、幅広い年代の集まる歌会で、参加者最年少は有田さん。自由詠一首をあらかじめ提出し、当日会場で五首選、意見交換を行いました。

・一心にみどり児を覗きこむ鹿よおさなきこころを乗せて駆けだせ  雨宮司

・幸せの真中【まなか】なりせば見えぬらし虹の根元に走りゆくバス 有田里絵

・切りたての生地ふくよかに一斤のトースト卓に垂直に立つ     棉くみこ

・きつね妻に帰る里ありわが前に揺るる薄のかなた蒼闇       十谷あとり

選歌の結果、棉さんの作品が九票獲得で見事一位を獲得されました。おめでとうございます!
まず歌を自分で読み解く。続いて他者の読みを聞く。その上であらためて作品と向かい合って考える。歌会は、批評の上に批評が積み重ねられて、読みが深まってゆく場だということを再認識しました。

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今回は日月の歌会にお越しいただき、ありがとうございました。日月の会員の方々からも「ぜひまたいらして下さい」との声が出ておりました。短歌を通じて、さまざまな交流が深まるとうれしいですね。
今年ももう残すところ一ヶ月少し。あわただしい日常の中にも、うたうこころを忘れることなく、新しい年へ向ってゆきたいと思います。     (十谷あとり)
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by kaban-west | 2006-11-12 15:37 | 歌会報告


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