2007年 05月 01日
*かばん関西 二〇〇七年四月オンライン歌会 報告記* [参加者]雨宮司、有田里絵、大澤美枝子、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、福田貢一、山下りん(ゲスト)、棉くみこ ◇兼題「線」◇ 今回は有田さんより、新年度の始まりにあたり、スタートラインの意をこめて「線」という題が出された。熟語にしやすい文字だったこともあり、さまざまな「線」の歌が集まった。 ・君の目の水平線を染めてゆく太陽というさみしい組織 笹井宏之 今回の歌会でもっとも人気のあった歌。魅力はやはり「太陽」を「組織」と表現したところにつきる。「君の目」という一点から、水平線に沈む太陽という雄大な景へと広がるイメージもうつくしい。 ・放物線に頭垂れゆく桜ごと美しく咲く明日になりたし 山下りん 上句、やや情景を読み取りきれない部分もあるが、下句の切実な気持ちが心に響く。 ・東雲の長崎本線おとうとの無言がしみる卑弥呼上洛 蔦きうい 「線」と言えば鉄道。鉄道・地理に詳しい作者ならではの歌。「長崎本線」と「おとうと」と「卑弥呼」の取り合わせは実はよくわからないのだが、わからないなりに納得させられ、旅情まで感じさせられてしまった。 ・「白線の内側へ」ってどっちなの境界上にひとりたたずむ 雨宮司 日常から詩を切り出してきた。あたりまえへの疑いから生じるあやうさが一首にまとまっている。電車のホームの白線とそのアナウンスについては他にも詠まれてきているので、もっとひりひりする、きわどい方向へ踏み出して欲しいとも思う。(あくまでも歌の上で。) ・与えし名は芙美子と晶子自らの意思と力でまっすぐに生きよ 大澤美枝子 こどもに名前を付けることは、こどものしあわせを祈ること。芙美子と晶子のように、との親の願いは一本の線のようにまっすぐで強い。作者発表後、作者のお子さん方の実際のエピソードであるとお聞かせいただく。感動! ◇自由詠◇ ・何かわすれものはないかと振り返る 朝日に光る魚の鍋敷き 棉くみこ 朝、家を出掛ける時のあわただしさ、このあと無人となる部屋の空気が、「鍋敷き」という具体でくっきりと描かれている。振り返ってから鍋敷きの輝きに気付くまでの一瞬の「間」がうまく表現されている、との評も。 ・冬越しの製氷皿をときはなつこれで何かを終わらせている 有田里絵 長く手をつけられなかった「なにか」を思い切ってリセットする時の爽快感。その情感を表現するため、「冬越しの製氷皿」という具体を持って来たところがよい。 ・六字明王のメッカで出家得度せし保坂尚希あはれなるかな 福田貢一 芸能界の旬の話題をうまくまとめて、少し皮肉っぽいユーモアも感じられる歌。こうしてみると「保坂尚希」という名前、佐藤義清ではないが武士めいて見えてくる。藤原龍一郎さん如何でしょう。 ・まつすぐに打てば手首に来る重さ白き羽根【シャトル】の そしてこころは 十谷あとり * 次回、二〇〇七年五月の歌会は、メーリングリストでのオンライン歌会と、五月二十六日(土)、大阪市立弁天町市民学習センターにて行われる「レ・パピエ・シアン&かばん関西合同歌会」の二本立てとなる予定です。 (十谷あとり 記)
by kaban-west
| 2007-05-01 09:14
| 歌会報告
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