◆◆関西歌会◆◆ 平成十九年五月 オンライン歌会
【参加者】赤キノコ(ゲスト)、雨宮司、有田里絵、大澤美枝子、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、福田貢一、山下りん(ゲスト)、棉くみこ
今月のオンライン歌会も参加者がふえて盛況。題詠、自由詠あわせて五十首集まりました。
☆題詠「音楽のある歌」
・単純な和音のままでいましょう、とあなたは朝のひかりの中で 笹井宏之(5票)
かんたんな言葉で、カンタンではない関係を詠ったセンスに票が集まり、高得点歌に。
・ジャズよりも雨音えらぶ疲れあり歌も詠めたり詠めなかったり 有田里絵(4票)
疲れたときほど雨音がここちよいもの、と共感を呼びました。
・ラジオからポルシュカポーレ業平がたらいで洗たく背には幼な子 蔦きうい(4票)
業平の主夫ぶりが楽しい歌。ポルシュカポーレとのミスマッチも独創的。作者の自作コメント「幸福感を伝えたい」という気持ちが伝わってきます。
・さやさやと春風そよぐ日曜日「Air」の澄みたる音色ふさはし
一読して心地よさに包まれる歌。「Air」には清涼な響きが感じられ、アーティスト名かアルバム名か知らなくてもイメージが伝わるとの評も。
・家中がその一曲を覚えけり受験課題はハイドンのソナタ 大澤美枝子(2票)
受験生を見守る家族像がうかぶ。ハイドンがBGM化していく点がユニーク。
・エアコンのつぶれた黄色いシビックで上田正樹を聴いた歌つた 十谷あとり(2票)
ノスタルジーに駆られまくりとのコメントが多数。
☆自由詠
目を伏せるすがたは今も胸の奥たまごの殻のしずみたるよう 有田里絵
大小の事典が並ぶ奥に座すユニコーンの背を撫でんがために 雨宮司
トランプが一枚二枚とふってきて我にもの言う口にペタンと 赤キノコ
親指が何度も訪ねる携帯の真夜中にしか開けられぬドア 山下りん
橋を描く画家の心にいたるまで夏の土手から橋を見つめる 棉くみこ
一首目、比喩のうまさに票が集まり、自由詠の高得点歌に。瞼そのものを「たまごの殻」と捉えた読み手もいて、新鮮!でした。二首目、意味はわからないがとても惹かれる、と選んだ人のコメントが一致。三首目、トランプの動きがシュールな、切り口が面白い歌。「我にもの言う」は、トランプが我に警告を発している? 四首目、「ドア」の喩えによって、携帯画面が一気に立体的に。五首目、この風景を収めたいという作者の心情がわかる歌。
*一首一首に対するコメントが毎回丁寧さを増しているようで、オンラインながら濃い歌会だわ、としみじみです。
(棉くみこ記)