かばん関西歌会

kabanwest.exblog.jp
ブログトップ
2007年 11月 30日

11月歌会報告

[二〇〇七年十一月かばん関西オンライン歌会]

〈参加者〉天昵聰・雨宮司・有田里絵・石川游・大澤美枝子・大橋謙次(ゲスト)・笹井宏之(購読・未来)・十谷あとり(日月・玲瓏)・関川洋平・蔦きうい(玲瓏)・福田貢一・山田航・山下りん(ゲスト)・棉くみこ

※歌会参加者の増加に伴い、今月は兼題・自由詠ともに提出は2首以内。それでも各々十四名参加、提出二十六首ずつという盛況ぶりだった。参加して間もない方が多いこともあってか、選歌はいつもより多い5首選。もはやドンチャン騒ぎである。

〈兼題「布」〉

※これだけ人数が集まるといろんな発想が出てくるもので、多種多様な布の歌が詠まれた。さて、反響は……。

〔風呂敷〕

三日月をちょっと大きめちりめんの風呂敷包みで借りていこう  大澤美枝子

きみのためならばわたしはいつだって変幻自在の大風呂敷に   有田里絵

一首目。第二句が冗長、リズムの崩れが気になるという意見もあったが、発想の面白さ、ユーモラスな歌い口が肯定的に評価された。
二首目。口上か実際の風呂敷かはっきりしない点があるものの、一方で結束力の堅さ、恋の駆け引きの難しさが上手く出せているとの意見があった。

〔救急箱〕

血を吸いしガーゼのごとき夕雲を追わん僕らの傷包むまで  山田航

包帯の少女に淡い思慕を抱き碇シンジはエヴァに乗りこむ  雨宮司

一首目。比喩が怖くないか、上句に既視感がある、との見解があった。一方、小池光の本歌取りで受動性を能動性に転化させたのではないか、夕雲の色を思い出しているうちにグロテスクさを感じなくなった、青春を感じる、との肯定的な意見もあった。
二首目。そのまんますぎやしないか、と、使徒【エヴァファン】からの非難が集中。初回の放送から十年経ってもエヴァ論争が根深くなるのは何かの業? いいえ、「アニメ歌は本歌どりと同じ配慮が必要」との笹井氏の意見がおそらく正しいのです。ちなみに私は「新章・序」を観そびれました。他は全部観ています。

〔白〕

白き布にかくかくと燃ゆる日輪の国旗拝みし高校生のわれ  福田貢一

白布とメモを貼られた白布が白さあらわに棚に収まる  棉くみこ

最初から白旗を振る少年の旗を奪った恋愛ゲーム  大橋謙次

あるいは鳥になりたいのかもしれなくて夜をはためくテーブルクロス  笹井宏之

干し竿に敷布二枚がひるがへる小春の空に糊の香放ち   石川游

一首目。キナ臭い、純粋と狂気の狭間、戦中までさかのぼる感覚もある、と、時代詠の様な評価が相次いだ。大人になってからの行動・思索を知りたい、という声もあった。
二首目。しつこいまでの「白」の反復がおかしみを出している、貼った人と違和感をもった人の双方にユーモアを感じる、純白の感じが伝わって爽やか、と好意的な評が相次いだ。
三首目。恋愛ゲームへの参戦さえ許されないのが切ない、少年があまりに消極的、との声がある一方で、奪ったのが別の少年だと、好かれたくない少女から告白された少年が白旗を奪い合う滑稽なシーンが連想される、という卓抜な読みもあった。
四首目。初句でいきなり心を奪われる人が多かったようだ。テーブルクロスに生命感や自由への渇望など、多様な読みが連想される点が高い評価を受け、今月の最高得点歌となった。
五首目。写生の上手さに好感をもつ者多し。そのうえで更なる向上を求める声もあった。

〔包む・くるむ〕

くるまればきみのたいおんにがさずにゆめのまにまに泣かせてください  山下りん

舞ひあがりやすきたましひ みどりごは一枚の布につつみておかむ    十谷あとり

一首目。ひらがなの多用に賛否両論。身体感覚を多くして論理的読解を拒んでいる、典型的な右脳歌だという評もあった。
二首目。一字空けまででハートをわしづかみにされる人、多数。生命力の儚さをつなぎとめる包むという動作が、呪術的な側面を持った行為にも思えるという評もあった。兼題の部では惜しくも次席。

〔その他〕

青年の頸からさがる風見布【ネクタイ】は戦がずここは閉鎖空間【キャンパス】なれば   関川洋平

もうストールが要りそうだねと諮るとき水面の月をよぎる横雲   蔦きうい

力織機【りきしょっき】発明者問う問い光る「1アークライト 2カートライト」    天昵聰

一首目。熟語にインパクトを感じる人と、拒否反応を示す人に二分された。筆者が調べた限りでは、両方とも当て字の可能性が高いようだ。
二首目。「諮る」が硬いと感じる人もいるにはいたが、この一語で相談をしている様子がダイレクトに伝わってくると賞賛する声が多かった。
三首目。「アークライト」を人の名前のように出してくる(もちろん、アーク灯のことです)点は見事ながら、「問う問い」に違和感を覚える人も。さらにはアークライトを人名と勘違いする人も若干名。センスはあるから、次からは誤解されにくい歌を詠んでください。

※実は、題材として最も多かったのは、キルトやパッチワークでした。敢えてその項目を作らなかったのは、どうしても重複する者が出てしまうからです。やはり機会は平等に作らないとね。

〈自由詠〉

※もはや群雄割拠です。個人的に気に入った歌を数首挙げるに留めます。

青い邑へ子どもの影が帰るころ酸っぱい地球がのっそり浮び  蔦きうい

コーヒーにミルク混ぜつつ冷えてゆく宇宙と君の裸体を思う   関川洋平

泣きそうな顔であなたが差し出したつきのひかりを抜くピンセット  笹井宏之

       *

具沢山の味噌汁を飲んでいるようなオンライン歌会でした。みんなここまで元気だと、充電しているのか漏電しているのかわかりません。十二月は年末特番として、十二月二十三日(日)十三時~十七時、大阪市立難波市民学習センター第一会議室でオフライン歌会を実施します。どなたさまもご参加いただけます。ご希望の方はメールにてお問合せ下さい。それでは。 
 (雨宮司 記)

       *

わが窓に冨士見ゆる日の澄み澄みて五感をかける冬の跫音  石川 游

埼玉から見える富士山です。(写真/石川游)

f0135430_21512757.jpg

f0135430_21514976.jpg

[PR]

by kaban-west | 2007-11-30 13:40 | 歌会報告


<< 12月歌会報告      10月歌会報告 >>