かばん関西歌会

kabanwest.exblog.jp
ブログトップ
2008年 04月 03日

3月歌会報告

かばん関西歌会 二〇〇八年三月オンライン歌会

【参加者】天昵 聰、雨宮 司、有田里絵、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、山田 航、石川 游(購読*選のみ)、岩本久美(購読)

○題詠:文具
入学シーズンにちなんで、お題は「文具なんでも」。

岡村に貸してかへらぬペン、はさみ、ドナルドダックの尻の消しゴム  十谷あとり

畳みかけが効いた歌。ペンもはさみも消しゴムも返さない「岡村」の人となりが、くっきりと浮かび上がると好評。「ドナルドダックの尻の」消しゴムって頭から使ったとか?

やつあたりばかりでごめんシャーペンの頭を腕の内側で押す  有田里絵

この動作を一度やってみた人、多し。しぜんとシャーペンを包みこむ形になるのが上句とあいまって、やわらかな歌に。作者のちょっとしたクセがわかるのもよい。

便箋に眠る言葉を散り散りに思ひ出さうとする河川敷  山田航

バカボンのママからとどく封筒にただ東雲【しののめ】がしたためられて  蔦きうい

お手紙セットを準備したくなる二首。一首目、「眠る」の意味や「散り散りに」のかかっている言葉がやや曖昧だが、河川敷へと読み手を連れ出したのが秀逸。風通しのよい歌に。二首目、いつも固有名詞使いが楽しい作者の歌。次は何を出してくるかと気にしていますが、今回はバカボンの「ママ」という意外性が妙味。

口の重い役割だけをあてがわれ水平に在るセロテープ台  岩本久美

「水平に在る」がそのままか。セロテープ台が高倉健のよう、とも。

○自由詠
今回の自由詠は、作者の方の持ち味がより濃く感じられたように思います。

おくゆきがほしいときには煙突をイメージしたらいいんじゃないの  笹井宏之

回想はさやかにおこり目のふちをあたためてゆく小魚の群れ

やわらかな韻律のなかに鋭さがひそんだ二首。漢字ひらがなの選択もうまいなーと思います。一首目、突き放したような言い方とシュールさが売り。二首目、作者独特の比喩表現が、じわーっときいてきます。

びょうびょうと鵺の鳴く夜は恐ろしい心地がすると青い目が言う  雨宮 司

端正な歌い方ながら「青い目」などとドキッとする言葉も。状況がよくわからないぶん、かえって怖さが増した。

「本日はダイヤが乱れておりますが、お気になさらずお帰りください」  天昵 聰

中吊りの週刊誌へと迷いこむ 次は 終点 新宿 新宿

ふだんの通勤時(もしくは出張時?)、ちょっとした異界に紛れ込んだような二首。一首目、耳がとらえた違和感にウケた人と、やや物足りない人と。二首目、スペースのとり方で意見が分かれたものの、感覚的によくわかる歌。

君の歩幅が徐々に小さくなりやがて踵をそろへ雲を見てゐた  山田 航

せつない「君」の歌がいつも印象的な作者。映画のワンシーンを見るように、読み手も「君」から「ふたり(ぼくら)」へ、ゆったりと心を移していく。小さくなる歩幅、雲をみる動作が、はかない。

(岩本久美 記)
[PR]

by kaban-west | 2008-04-03 12:37 | 歌会報告


<< 4月歌会報告      NHK短歌 TV&雑誌 >>