かばん関西歌会

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2008年 09月 04日

8月歌会報告

■かばん関西歌会8月歌会記■

参加者:天昵 聰、雨宮司、有田里絵、、笹井宏之(購読/未来)、十谷あとり(日月/玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)(選歌のみ)、山田航

「短歌で昆虫採集をしませんか」。かばん関西オンライン歌会の8月のお題は「昆虫」。虫とり網を握った6人の作者が、蝉、ナナフシ、蝶、蜂、クワガタ、カゲロウ、カブト虫、すずむし、トンボ、たくさんの昆虫を集めてきました。

●つやのない赤いビートルゆるゆると転がしてゆく君の左手 有田里絵

この「ビートル」はカブト虫ではなくフォルクスワーゲンのビートルでしょう。ビートルを運転している男に対する女性の視点ではないかとの指摘もある中、ミニカーではないかとの読みも。転がしているのは子どもかもしれませんね。

●草を刈り終える 巨大なナナフシが御影石まで来て静止する 雨宮司

一字空けが、視点の移り変わりや時間の流れを効果的に表現しているとの意見が多数ありました。ナナフシと御影石のとりあわせも鮮やかです。

●古家にアルミの脚立倚るところ庇に近く蜂の影過ぐ 十谷あとり

兼題の部の最高得票を得た歌。しっかりと風景を捉えた歌いぶりが魅力的な一首です。名詞の多さが近代短歌っぽいとの意見もありました。

●亜熱帯植物園の黒揚羽マリンバの音帯びて飛び交う 天昵聰

黒揚羽のはばたきとマリンバのトレモロの取り合わせがよいとの意見がある一方で、単語の雰囲気が近すぎるとの指摘もありました。

●すずむしの死にゆく声にひっそりとふくらんでゆく夜のカーテン 笹井宏之

寂しいけれど暗すぎず美しい。「死にゆく声」をカーテンがそっと受け止めて、すぐれたポエジーになっています。

●静かだなそして愚かだな夜更けつてひとりぼつちのとんぼなんだな 山田航

つぶやくような不思議なリズムのある一首。「複眼に映るたくさんの景色も、結局は一匹のとんぼが見ているもの。多様化されすぎた都市の夜更けをぽつんと見守るしかない、無力感漂う視点が感じられた」との評が光ります。

つづいて、自由詠の部より。

○自転車を一旦止めてこぎ出せるような重さで月曜が来る 天昵聰

「こぎ出せる」を「こぎいだす」にしたらどうかという意見が多くありました。改作の余地がありそうです。

○路地裏にハンチング帽子投げ込めば虹はしづかに笑って消えた 山田航

「笑って」が心地よいとの意見が多数ありました。虹の濃淡も鮮やかに描かれてるようです。

○バカボンの父亡くなれどパパ不滅「本当ですか」「これでいいのだ」 雨宮司

時事詠としてちょっと弱いとの指摘もある一方で、赤塚さんが「自分は今亡くなったが、これでいいのだよ」と言っているように聞こえて心に響いてくるとの好意的な意見も。ご冥福をお祈りします。

○海にしか吹かない風があるならば我にしかない風もあるはず 有田里絵

「我にしかない風」が分かりにくいとの意見もありましたが、希望に満ち、しっかりとオリジナリティーを感じるとの意見もありました。

○八月六日紅茶に落とす牛乳の雲あめつちのさかしまびやうぶ 十谷あとり

紅茶に落とすミルクとキノコ雲のイメージの結びつきに納得。突然「あめつち」と古事記を思わせる言葉が入ってくるところに、作者が歴史とつながっていこうとする覚悟のようなものを感じるとの意見もありました。

○世界からゆっくりと剥がされた日は青い観覧車でねむること 笹井宏之

詩性豊かな一首。上の句から疎外感を、下の句から孤独感を感じ、痛みのある一首になっています。

今月はいつもより歌が少なめでしたが、その分一首一首をじっくりと読み込んだ充実したコメントが多数集まりました。いよいよ秋の虫の声が心地よい季節です。(天昵聰/記)
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by kaban-west | 2008-09-04 12:42 | 歌会報告


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