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2015年 09月 12日

8月歌会報告

かばん関西8月オンライン歌会記

〈参加者〉あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有田里絵、岩井曜、岩崎陸(購読)、泳二(ゲスト)、小野田光、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、塩谷風月(未来/レ・パピエ・シアンⅡ)、杉田抱僕(ゲスト)、橘さやか(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏・選歌のみ)、土井礼一郎、とみいえひろこ、浜田えみな(購読)、ぱん子(ゲスト)、福島直広、ふらみらり、兵站戦線(かばん/塔)、山下りん(ゲスト・選歌のみ)

※兼題は「少年」。夏は少年が活発に動く季節。あまねそう氏の出題に、二〇首の短歌が寄せられた。今回は五首選だが、そのうち一首のみは特選歌として二点を入れねばならない。予想に違わず、多様な読みが提示された。

01 磐ヶ根に少年のごと腕組めば大地を舐る野火の広がり  兵站戦線
02 恋をしに行くのは蝶を捨ててから あなたも争いも父も憎んだ  とみいえひろこ
03 僕の中の十五の少年だけが君のことを今でも好きだと言った  土井礼一郎

一首目。少年の持つ野望や根拠なき自信などが伝わるという意見と、挙動からは少年らしさが伝わらないという意見に二分された。壮大な感じを評価する声もあった。
二首目。下句の座りの悪さを気にかける意見と、幼年期との別れと愛憎の芽生えを評価する意見があった。やっぱり、憎むのは愛するからでしょうかね。
三首目。大人の仲間入りの準備をする年齢のみが愛情を残しているのを評価する意見もあったが、変則的なリズムに異を唱える者が多数を占めた。リズムを意味ではなく文節で切れば、まだ読みようはあると思うのだが。

04 りゅうせいは水鉄砲へまっしぐら自分が少年だとは知らずに  有田里絵
05 少年は少年同士愛し合い美少年はもう残っていない  橘さやか
06 ときつかぜ巫女吹く笛のねもころに少年よわが腕【かひな】に眠れ  黒路よしひろ
07 いつだつてBでしかない僕だつた少年Aには決してなれず  新井蜜

一首目。「りゅうせい」は流れ星と男の子の名前を掛けているのだろうか。迷いに迷う者が続出。自分は少年だという自覚がないのが少年の証、との意見も多かった。
二首目。BL的という意見も少なくなかったが、世界的に同性愛が認められつつある時期にこの短歌を詠む意義は何かという提言もあった。美少年といえば竹宮恵子や萩尾望都を連想する世代からは、類似性を感じるという意見もあった。
三首目。いつもは趣味の世界に走りがちな作者がついに本気を出した。文語を使いこなした流麗な短歌だが、残念なことに佐佐木幸綱氏の「泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんと我が腕に眠れ」との類似を指摘する声があった。
四首目。主役になれなかった人物を詠んだ短歌との考察が相次ぐ。「少年A」との記述から、犯罪や時事との関連を踏まえる意見もあった。

 もうどこか行ってしまった 木洩れ日をうけた心に立っていたのに  岩崎陸
 倒れないよう押しあって僕たちは真夏さびしい思念となりぬ  ぱん子
 いたずらに飲んだビールが美味くなり未来の縁は遠く離れた  ふらみらり
 少年は荒野を目指すものなんだたとえ幻の地であっても  雨宮司

一首目。上句と下句のどちらを重視するかで意見が分かれた。一字空けの効果を疑問視する意見もあった。
二首目。具体がほとんどない点、また「さびしい思念」という語をどう評価するかで意見が割れた。
三首目。上句と下句の結びつきに納得できない者が多かった。特に下句でなぜ「遠く離れた」のか理解に苦しむ者、多数。
四首目。フォーク・クルセダーズの「青年は荒野を目指す」を思い出す者が多かった。まあ、知らなくてもベタなフレーズなわけですが。断定の受け取りようで評価が変わるとの指摘あり。

 着替えだすプール授業の五時間目「うわ!つよっちゃんちん毛生えとる」  福島直広
 初めての夢精で醒めた夏の朝それが何かも知らずに恥じて  塩谷風月
 産毛とも陰ともつかぬ淡いひげ不意に気づいて二度見する朝  浜田えみな

性徴三首。一首目。直截的なまでにストレートな表現をどう評価するか。一大事件の瞬間だけに終わっては勿体ない、妙にぼかすよりはいい、状況説明に終わったのが惜しい、明るいのがいい、等の評価があった。
二首目。夢精をどう詠むかが問われる。醒めた眼で記憶を掘り起こしている、題材の割には爽やか、下句が少年期特有の軽い混乱を記している、等の肯定的な意見に対し、下句でもっと混沌を表現できないか、どこかで聞いた感じ、等の意見があった。
三首目。髭がうっすら生えてきた。作中主体は男子当人でも男子を見る大人でもいい強みがある、との指摘の一方、男子ならほとんどあるある系の短歌、髭ではインパクトに欠ける、髭は成長した感慨よりも面倒くささが先に感じられる、等の意見があった。

 夏いろは坂のいきぎれ見あぐればまはる日傘の笑顔の匂ひ  小野田光
 ぬかるみで発見された少年の靴跡は僕ではなかったか  泳二
 ツバメ高く飛び去るように朝は来て今日はナツ子と遊ぶ、砂場で  岩井曜

一首目。夏の日の美しいひとコマを切り取っているという意見、多数。おそらく日傘の主には憧憬に近い感情を持っているのだろう。二句と結句で体言止めが使われているのが標語のようだという意見もあった。
二首目。靴跡が何を意味するのか。作中主体はもう少年ではない、問いかけ文体に弱い、ぼんやり考えるには合った文体、揺らぐ心こそ少年のもの、という肯定的な意見があった。「僕」が何かに巻き込まれているのではないかという意見、複数。
三首目。言葉にするよりもずっと速く確信する少年の生命力に惹かれる、ナツ子は女子であると共に夏を擬人化したものか、「砂場」で少年より幼く思える、上句の比喩が気持ちいい、等の意見があった。

 夭く稚く熱く冷たき夏がある理屈ぢやないと叫ぶ眸に  佐藤元紀
 カルピスのイメージカラーは茶色だと瓶で育った叔父さんと夏  杉田抱僕
 窓二枚隔てた我と少年と夕立見つつたまに目が合う  あまねそう

一首目。自分で処理しきれない世界を懸命に見ようとしている、恋愛を知ってしまったのか、言葉にできない灼熱の塊を内包していてぎらぎらしている、との意見があった。「夭」という字は若死にという意味があり不吉、わかったようなわからないような表現、読みが難しい、上句の言葉の並列の必然性・関連性がつかみにくい、等の指摘もあった。
二首目。上句の爽やかさと茶色や叔父さんのイメージとのギャップが面白い、イメージは青と白だった、ジェネレーションギャップの捉え方が面白い、等の意見があった。一方、夏がとってつけた感がある、広告のコピーみたいな感じが気になった、等の指摘もあった。
三首目。最高得点歌。我と少年とのシチュエーションがいい、「我」が少年と同年代の少女か年上の男性かで印象が変わってしまう、向かい合う二軒の建物の窓から外を眺めているのか、「我」と少年との間に色々な関係性が想像できる、「我」は女性か、自身の少年期との邂逅か、等の意見があった。一方、これからドラマが始まるのでは、ボーイ・ミーツ・ガールの典型、等の指摘もあった。

 以上、八月のオンライン歌会の要約をここに記しました。

 かばん関西は年齢・性別・職業・居住地不問の自由な集まりです。興味を持たれた方は、お気軽にメールでお問い合わせください。(雨宮司・記)
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by kaban-west | 2015-09-12 23:28 | 歌会報告
2015年 08月 07日

7月歌会報告

◆◇◆ かばん関西七月オンライン歌会記 ◆◇◆

<参加者> 雨宮司、新井蜜(かばん・塔)、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩崎陸(購読)、泳二(ゲスト)、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、杉田抱僕(ゲスト)、十谷あとり(日月)、橘さやか(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏)、土井礼一郎、とみいえひろこ、浜田えみな(購読)、ぱん子(ゲスト)、福島直広、ふらみらり、兵站戦線(かばん・塔)、文屋亮(玲瓏)、山下りん(ゲスト)

黒路歌会進行役から「黒路さんへの恋歌」という、職権乱用…じゃない、斬新で、楽しいお題が出されました。参加者の黒路さんへの想いや如何に。

好きなふり見せたばかりに黒犬につきまとわれるソックスな僕 橘さやか

「ソックスな僕」が 効いている。「僕はボクっ娘ならソックスよりも学校の上履きが似合うと思うんだけど…ああ、上履き履いたボクっ娘に踏まれたいなあ。」黒路氏談。

よし野にてひろひし仔犬鞭打てばもつともつとと擦り寄りてくる 新井蜜

「擦り寄りてくる」がいじらしすぎる。「『よしひろ』の名を分解して詠み込んだ上の句が面白い。この仔犬は黒路さんをイメージしてのものなのだけれど、『もつともつとと』の表現がなんとも可愛くて素敵です。」黒路氏談。

ずぶぬれになりても今は山川の滾つこころに茅の輪潜らせ 兵站戦線

茅の輪くぐりというモチーフに、真摯な想いが伝わる。「黒路さんへの恋の涙に『ずぶぬれ』になる様と、恋ごころの『滾つ』激しさを山川の様に譬えて素敵な一首。」黒路氏談。

沓脱によしひろの沓傘たてによしひろの傘 戦争遥か 蔦きうい

あるべき処にあるべき物があって、それが平和。「おそらくは女性の家…どこか学生運動的な危険な香りもして、その怠惰な雰囲気に惹きつけられる。」黒路氏談。

嘘をつく君が好きだよ 隠してることがほんとの真実だから 岩崎陸

矛盾したロジックが恋の深刻さを表している。「隠している真実…それはたぶん、黒路さんの人間としての一番弱い部分なんだと思う。そんな弱い部分を隠さずに見せられる女性に、いつか出会えるものでしょうか。」黒路氏談。

燃やしましょうあなたとずっと共にいるこの部屋以外の存在を今 雨宮 司

これくらい情熱的な人の方がいいのか。「自分たち以外のすべてを排除しようとする狂気は恋の究極なのかも知れない。そう思う一方ですべて燃やされても困るなあ~と思う冷静な黒路さんも居たりする。」黒路氏談。

羽根があれば、と万葉人も詠んだでせう やさしいあなたは西国の人 文屋亮

「山上憶良ですね。正確には『翼があれば』」雨宮氏談。「『やさしいあなた』の表現に世辞っぽいものや、誰に対してでも贈れる歌のようなものを感じながらも、こう詠われて悪い気はしない黒路さん。」黒路氏談。


はすのはなちるひとひらのしづむまでゆきませうひるのひぢのみなもを 十谷あとり

すべて開いたところに、相手へのやさしい心が表れている「『ひぢ』は『秘事(ひめごと)』のことだろうか。『蓮の花』が散って沈むとはなんだか不吉な気もするが、共にあの世までもとの思いが感じられて素敵な恋歌のように思う。」黒路氏談。


万葉の言の葉たどる明日香路の花の名前を君は教えむ 浜田えみな

「黒路さん花の名前とか知ってんのかなあ。」福島氏談。「未来を想像して詠んだ一首なのだろう。一緒に明日香路をデートしましょうとのお誘いな訳だが、ただ、残念ながら僕は花の名前をまったく知らないので、人に教えることは出来ないかも。」黒路氏談。

ぬばたまのポメラ携え君はまた道なき道を照らして歩く 泳二

ポメラニアンかと思ったら。「『ポメラ』とはキングジム社が開発した乾電池駆動の携帯ワープロのような文章入力マシンなのだ。うん、『道なき道』が『わが道を行く』みたいでなんとも自分勝手な黒路さんらしくって素敵です。」黒路氏談。


はにかまずとも赤い頬をまもりたくプラネタリウムに祈るいのるよ ぱん子

黒路氏の「リンゴ病」を「赤い頬=庇護される幼き者」として詠み込んだ反射神経が見事。「『まもりたく』に年甲斐もなく黒路さんはキュンとしてしまいました。ああ、ほんと、女の人にまもってもらいたいなあ。って、男としてあかんやろそれでは。」黒路氏談。

破りたいのに破れない液晶に浮かぶ微笑をデリートしない 小野田光

「おそらくこの作者はパソコンの液晶に黒路さんが微笑する写真をいつも表示しているのだ。そして毎晩、黒路さんにお休みのキスをしてからパソコンを閉じて眠るのだ。って、なんだか自分で書いていて恥ずかしくなってきたのでこの辺で止めときます。」黒路氏談。

『あなたから愛してくれれば愛します』初恋未満の私の宣誓 杉田抱僕

自分を守る気持ちが先に立っている感じがリアル。みんな、愛したくないけど、愛されたい。「わおっ、僕も愛してくれたら愛しますよ~~って、二人ともそんなこと言ってたらいつまで経っても恋に発展しませんがな。」黒路氏談。

眠くなるほど君が好き 道玄坂下りればそこが渋谷だったね 土井礼一郎

「地名の入った歌はその地への想像が広がっていいですね。上の句はなぜ好きになると眠くなるのかよくわからないけれど、それが個性と言えば個性のようにも感じられて面白い恋歌のように思います。」黒路氏談。

空想の路地に逃げても見えてるよちゃんと見つめて よしひろのバカ 福島直広

「バカ」に愛情がこめられている。最高至高の告白用語。「空想の路地だが妄想の路地だかは知らないけれど、隠れている黒路さんをも見つけてしまう恋のセンサーが素敵な一首。」黒路氏談。

恋知らぬ人うらやまし心臓を押しつぶされることもなければ ふらみらり

「恋知らぬ人を『うらやまし』と言いながら、作者はそんな心臓の押しつぶされそうな恋をしている自分を幸せに思っているのだ。ああ、こんなにも女性を苦しめる黒路さんて罪な男やなあ。」黒路氏談。

うつむける笑顔の翳の奥深くにほふ君こそゆかしかりけれ 佐藤元紀

黒路さんのシャイな部分がよく出てる。「『ゆかし』は気品、情緒などがあってどことなく心引かれる様。そんな、まさに黒路さんへの恋心をそのまま詠った素敵な一首だ。と、冗談でも自分で書くと恥ずかしいなあ…」黒路氏談。

黒鍵の半音あがるキー探し未知の声色かき鳴らす君 山下りん

「『半音あがる』や『未知の音色』、『かき鳴らす』などの何気ない言葉の連なりがどことなくエロスっぽくて素敵だ。ああ、僕もいつかほんとに君という名の楽器の黒鍵をかき鳴らしてみたいものです。」黒路氏談。

暗き路たどれば届く我が思いひとよばかりの月にはあらじ ガク

余裕と切実がごっちゃになっている感じ。「『ひとよ』は『一夜』と『一世』の両方の意味か。一時の恋心ではなくずっと思い続けてきた恋の切なさを表現しているのだろう。そんな黒路さんへの一途な恋の思いが月夜の暗き路を通して素敵に詠われている。」黒路氏談。

ぬばたまの「黒路さま」とわが背子の名を幾たびも呟ゐて恋ふ 黒路よしひろ

「どストレートの恋歌オブ恋歌というところですね。」泳二氏談「『わが背子』はちょっとくどいです。ともかく黒路さんが喜びそうですね。で、喜んで終わる。」有田氏談。

「弘子」って呼んでくれてもいいけれど下の句をくれるように、だったら とみいえひろこ

「自身の名を呼ぶ相手の声を『下の句をくれるように』と表現した感性が素敵に思います。たしかに下の名前を呼び捨てって、やはりちょっと特別な感じがしていいですよね。あと、短歌に自分の名前を入れてくるこの自己主張の強さも素敵。」黒路氏談。

黒ならばもてる時代は終わったとから騒ぎして女は眠る 有田里絵

「歌としては面白くて素敵なんですけど、どこらへんが恋歌なのかがちょっと分からなくて判断に困ってしまった。まあ、ほんとに困ったのは今回のお題を出されたみなさまのほうだったとは思うけどね。」黒路氏談。「あはは、ふられてやんの!黒路時代の終焉だなー。」蔦氏談。

と、こんな風に、他では味わえないエキセントリックな歌会が、繰り広げられる、かばん関西ML。皆様も一度、しびれてみませんか。って、今回のお題、まとめづらいわっ!

有岡真里/記
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by kaban-west | 2015-08-07 21:19 | 歌会報告
2015年 07月 09日

6月歌会報告

◆◇◆ かばん関西六月オンライン歌会記 ◆◇◆

<参加者> 雨宮司、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩崎陸(購読)、泳二(ゲスト)、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、酒井真帆(未来)、佐藤元紀、杉田抱僕(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏)、土井礼一郎、とみいえひろこ、浜田えみな(購読)、福島直広、新井蜜(かばん・塔)、橘さやか(ゲスト)、ふらみらり、兵站戦線(かばん・塔)、山下りん(ゲスト)

今回のお題は「A:とっても自分らしい歌」と「B:今まで試みたことがないような、自分の殻を破った歌」の二つ。Bについては新境地のリズムやテーマ、他人になりすましての作歌という例が示されました。

自分らしい短歌ってどんな短歌だろう……? 自分らしさと自分らしい短歌は同じ……? なんてグルグル考えて、各十九首計二十一名の歌が出そろいました。

【チーム自分らしさ:A】

試合後に芝へと倒れこむ悪童 ボルグよ、今は笑うがいいさ  雨宮司

毎月お馴染みのテニスシリーズは「これぞ自分らしさ!」の評価。これまでがあるから『悪童』=マッケンローの了解が形成されているのが良いとの意見も出ました。

お化粧も終わってポーチにもちゃんとおぶらでぃおぶらだ焼海苔五枚  小野田光

まさかの実話から作られた一首。お化粧ポーチから焼海苔が出現したのだとか! 『おぶらでぃおぶらだ』が呪文のようで楽しい、『焼海苔五枚』もなんだか楽しい、とみんなウキウキ。ビートルズの「オブラディ・オブラダ」のリズムと歌詞が背景に流れます。

留守番にビールを飲めば天井にヤモリを見つけまた見失う  泳二

小物の使い方が上手いとの意見多数。孤独感を受け取る人もあり、一人の留守番も悪くないと思う人もあり。さて、ヤモリは孤独を増幅するのか埋めてくれるのか……

純白のブラウスの奥に透ける夏うなじに匂うくちなしの白  ガク

エロスだったり、触れたいけれど触れられない清らかな思いだったり、匂いと色から広がるイメージ。『純白』と『白』は重ね過ぎとの指摘も。

孔だけで鳴るはずもない石笛【いわぶえ】は恋しくて泣く 波、風、月に  浜田えみな

幻想的な情景と浪漫、そのなかに浮かぶ岩笛の孤独と悲哀。美しい言葉で作られた一首です。結句『波、風、月』は雄大さを評価する声あり、意外性がないとする声あり。

忌々しい瑠璃子は風呂へ 夏にひく風邪はだいたい夏風邪だろう   土井礼一郎

『瑠璃子』は妻? 娘? 妹? 風邪のウィルス? とても直線的なようでいて、想像の余地がたっぷり残された一首。舌打ちでも聞こえてきそうな力強さと負け惜しみ感が大好き。

恥ずかしい姿みせても目をつむることができない魚あなたは  橘さやか

『恥ずかしい姿みせ』るのは私かあなたか。官能的な雰囲気と『目をつむることができない魚』という着眼点が高評価でした。この歌が「自分らしい」作者はきっとS、恥ずかしい姿を見せるのも確信犯との分析。

真緑も黄緑もみなかぶさりて夏まみれなりかくれんぼ  山下りん

結句の字足らずに引っかかる人多し。しかし『なりかくれんぼ』と句またがりのように読める、三句からが五七五であることで違和感はあまりないとの意見も。『夏まみれ』のインパクトと二種類の緑で鮮やかに夏が描かれました。


【チーム殻破り:B】

姉さんが縛られてゐるゆふぐれの納戸にすべりゆくやまかがし  新井蜜

SMチックな淫靡さを感じる一方で、幼い『姉さん』がお仕置きされていたという弟妹の思い出なのではという読み方も。「読み手がヘンタイかどうかを判定するリトマス試験紙みたいな歌」(by土井)との評が面白かったです。

好きなのは夏とあなたのTシャツの胸のワーゲンバスの彎曲  蔦きうい

女性の胸のふくらみによってTシャツにプリントされているワーゲンバスが彎曲している光景と思いきや、男性の胸元をワーゲンバスの前面(彎曲)にたとえているとの読みも登場。『彎曲』に評価の集まったストレートで爽やかな夏の一首。

「だからさあさっきからずっと言ってんじゃん」男の声をすりぬけてゆく  佐藤元紀

短歌もその他連絡も普段は旧かな表記の佐藤さんの一首。『すりぬけてゆく』の効果なのか、『男』と私を通りすがりの他人とする読みが主流になったのが面白かったです。街中で偶然出会った一瞬が短歌として魅力的に切り取られました。

毬、毬、毬 雨のあがりし三室戸寺青、紫、赤 毬、毬、毬  有岡真里

三室戸寺は紫陽花の名所。繰り返される『毬』の文字が視覚的に紫陽花を表しています。また音にも独特のリズムを感じたり、作者の名前を連想したりする人も。視覚的な効果を狙うなら『三室戸寺』と『青、紫、赤』は連続しない方がいいのではという指摘がありました。

ふるさとは遠くにありて帰る場所「ただいま」「おかえり」それだけの場所  杉田抱僕

「ふるさとは遠きにありて思ふもの」は室生犀星の詩の冒頭。本当に『それだけ』とも、逆説的に『それだけ』ではないのだとも取れる望郷の一首。ふるさとに対して素直になる勇気を「殻を破った結果」とする見方がありました。

生まれたよおめでとうありがとうああそうかそうだったのかわかった  岩崎陸

生まれるとはどういうことかへの気づき、生まれたという事実そのものへの了解、親が子を大切に思う気持ちへの実感、当たり前のように誕生を祝うことへの改めての意識――イメージが広がりを持つ一方で、何がわかったのか分からないとの声も少なからず上がりました。


【チームなりすまし:B】

あまりにも馬蹄な蟻が身を寄せるタイムトンネル夢なき眠り  兵站戦線

『馬蹄』は先月の難波歌会での新井さんの歌から登場。名詞+「な」の造語法はすぐにでも日常化しそう、とは兵站戦線さんのコメントでした。『馬蹄な』の意味、そして引用の是非についてコメントが集中。

準決勝で負けた朝荷ケツしてたろ、おまへ何時からマツケンラフと  福島直広

『マツケンラフ(マッケンロー)』は雨宮さん、『荷ケツ』とマッケンローの組み合わせは蔦さん、『おまへ』および旧かな表記は佐藤元紀さんからで、これでもか! となりすまし要素が詰め込まれました。その詰め込み方を面白いと取る人あり、食傷気味に思う人あり。個人的にはお題に対するノリの良さが楽しい一首です。

B組の岩田耕治の消息を誰か知らんかピラニアの件で  ふらみらり

岩田耕治――これはかつてかばん関西を騒がせた?雨宮氏が創作した架空の人物なのだ(黒路さんのコメントより)。懐かしさに盛り上がる古参メンバー、正体を知らないまま楽しむ新参メンバー。今さら登場させるのは雨宮さんくらいだろう、という黒路さんの予想はハズレ。ふらみさんが楽しく作った一首でした。

断定のできない的な彼女かもみたいなとかね僕もそうです  有田里絵

「えーい、はっきりせんなあ、これは誰かが黒路さんに成りすましているんでしょう、イッ!てなるもうイッ!て。」(by福島)
「社会からは認められない駄目な部分を認めてみようとの勇気が感じられて、一読して受ける印象以上に生真面目な歌のように感じた」(by黒路)

カッコンとししおどし二人を鎮めて 淋しいね、ぼくら結婚しよう  とみいえひろこ

「黒路さんを装った、独身の方の歌かしら。」(by有田)
「まあ、僕は淋しい者同士の結婚というのは淋しさが倍になるだけのように感じて、じつはあまり好きではないのだけれどね。」(by黒路)
いやいや素敵なプロポーズじゃないですか。きっと淋しいというのは建前で、本当はそんなに淋しくないはずという私の思い込み。


【殻を破って自分らしく:A&B】

丈夫【ますらを】と思ひしわれがソックスの少女【をとめ】の足に踏まれ悦ぶ  黒路よしひろ
妹【いも】よその足で踏みませその足で蹴りませ吾【われ】を犬なる吾を  黒路よしひろ

唯一こんなにも潔くA、Bを共通させて作ったのは黒路さん。調べの美しさ、上句と下句でのルビの対応、文語とSMチックな内容の取り合わせに評価が寄せられました。
「そのままでいったら黒路さんの歌っぽいけど、「B」やからなあ、誰かなりすましてる気もする。」(by福島)
とのコメントに本人は「あんたの頭の中では僕はいったいどんなイメージやねん」とお返事。でも分かってもらえてるってすごいことだと思いますよ!

以上、六月のオンライン歌会の様子の一端をお届けいたしました。

かばん関西は年齢・性別・職業そして居住地不問の自由な集まりです。興味を持ちましたら、是非お気軽にメールでお問い合わせください。 (杉田抱僕/記)
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by kaban-west | 2015-07-09 22:52 | 歌会報告
2015年 06月 09日

五月難波歌会記

かばん関西 五月難波歌会記
日時・・・二〇一五年五月二十三日(土曜日) 午後一時から五時まで
場所・・・大阪市立難波市民学習センター 第一会議室

<参加者> 雨宮司、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩井曜、泳二(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、十谷あとり(日月)、杉田抱僕(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、ぱん子(ゲスト)、浜田えみな(購読)、福島直広
<詠草のみ参加者>新井蜜(かばん・塔)、橘さやか(ゲスト)、ふらみらり、兵站戦線(かばん・塔)

今回は、事前に自由詠を一人一首募集しました。当日くじ引きで決定したお二人に、歌会体験記を書いていただきました。


●かばん関西オフ会de難波  有岡真里

 五月二十三日土曜日。
 大阪は難波にて、かばん関西オフライン歌会が、開催されました。かばん関西。そう、そこは、かばんを始め、結社、同人、所属無所属、ネット、新聞投稿一切関係ない、ただひたすら短歌が好き!好きなの!大好き!と、いう歌人【うたびと】の集いなのです。たくさんのお菓子をつまみながら、和気あいあいと、しかし夏が近づいてるせいか、熱く熱く、一首を鑑賞し、読み解き、時に想像を膨らませ、時に妄想を暴走させ、感性と肉声をぶつけ合う場所。小さな会議室は、さながら密林のようになり、年齢も性別も関係なく、短歌を語り合うのでした。
 また、今回詠草のみ参加の方、会場に実際集まった方、どちらにも自註があり、中には解説中に、同性との甘いときめき体験のカミングアウトや、日々の暮らしの中での心身の疲労を、切切と歌にした経緯や、なんども歌に登場する女性との関係に突っ込んで聴いたり、今は小学校の給食は、先割れスプーンではないなどの、衝撃的真実を知るなどして、更に歌の詠み方に、そして、読み方に深く寄り添えた気がしました。今後、遠くにいながら歌会に参加出来るという、オンラインならではの特性と、オフライン歌会でしか、味わえないダイレクトな意見交換の融合が、なんらかの形で、実現出来たら、こんな素敵なことはないでしょう。ちなみに、得点は、かばん関西メーリングリストに詳しく記載されていますので、ご興味のある方はこの機会に、是非一度、のぞいてみませんか?


●歌会はビュッフェ  浜田えみな

初めて歌会に参加しました。

配付された無記名の詠草集は、見たことも食べたこともない料理のようです。

まず全体を眺め、お皿を手にとり、香りをかぎ、口にいれ、咀嚼し、味わい、素材や料理法を分析しつつ、好きなものを選び、どんなふうにおいしいかということを、誰にでもわかるように短い時間でまとめて言葉で伝える! という〈神業的なこと〉が、どんどん続くのです。先輩がたの胸を打たれる歌評。指名されて、しどろもどろになる自分。その繰り返しの中で、「詠むこと」と「読むこと」について、幾つものスイッチが押されていきました。

帰宅し、さっそくMLの発言を読み返したり、「かばん」をめくっていくと、不思議不思議! 歌会でお会いした方々のお名前や歌や発言は、文字が3Dになり、声が聴こえてくるのです。嬉しくて、おもしろくて、楽しくて、気がつけば、バックナンバーを、どんどんめくっていました。

 そして、一番の大きなギフトは、自分の歌がどんなふうに味わってもらえるかを、リアルタイムに目と耳で感じられることです。次のレシピにつながっていく体験です。

詠草が小皿のお料理なら、歌会はビュッフェ。

いろんな味があり、スタイルがあり、歓談し、味わい、お代わりして、お持ち帰りできます。いただいた詠草集は、時と場所を変えると、別の味わいが醸し出されます。ありがとうございました。


★詠草一覧(掲載希望者のみ)
手渡されティッシュのように受け取ったあなたの気持ちもう返せない  橘さやか
すべり台すべり終えれば時と砂 わたしのうちに速さ籠れり   とみいえひろこ
折からの雨の乱舞にぞくとして君の声音【こわね】の静かに入り来【く】 兵站戦線
へらへらと歩道橋からぶちまけたカラー広告踏みしだかれる       雨宮司
曇天にヘリコプターの音がして馬蹄な想ひ運びつつあり         新井蜜
梅雨近き緑に息の詰まりつつ言葉に疲れ果てて日の暮れ        佐藤元紀
マッケンローがボルグと荷ケツで湖へなかぞらそよぐ甘いためらい   蔦きうい
弱くても君は守れるものがある豆腐くずさずつかめるちから   有田里絵
たらちねの遺しし種を夫と植ゑ育てつづける君影草を         有岡真里
梅壷で塩をかぶった青い実の曼荼羅にさえ問いかけている       浜田えみな
白シャツを透かす光を浴びてまた目覚めろ、私の夏の細胞        岩井曜
そのむかし私がはなった歌声を取り返したい取り返したい      ふらみらり
あの夏を冒険しよう――すれ違うトトロはきっともう見えないね    杉田抱僕
二丁目に立つ灰色の鉄塔を子らは東京タワーと呼べり           泳二
夏かげは空木の路地に 投げられて取り落とさるるバトン、少女に  十谷あとり  
駅裏の月の届かぬ公園に軋むブランコ膝にのる猫           福島直広
自意識を過剰なまでに尖らせて少年は故郷を憎んだ        黒路よしひろ
 
以上
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by kaban-west | 2015-06-09 00:04 | 歌会報告
2015年 05月 10日

4月歌会報告

かばん関西 二〇一五年四月オンライン歌会記

[参加者]あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん、塔)、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩井曜、岩崎陸(購読)、小野田光、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、塩谷風月(未来/レ・パピエ・シアンⅡ)、十谷あとり(日月)、杉田抱僕(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、ぱん子(ゲスト)、福島直広、ふらみらり、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線(かばん、塔)

今月のお題は「雨」。
歌会係の塩谷氏の提案により、正選だけでなく、逆選をも取り入れたかばん関西初の今回の試み。
逆選を文字通りのマイナス票とした者。
正選とは別の魅力を感じた歌に投票した者。
歌詠みという名の気の弱き者たちに強いられた逆選という名の緊張感が、如何なる結果を世に生み落としたのか…
以下、かばん関西に降った四月の雨の記録をお楽しみください。

兼題の部「雨」より
■なめまわす春の雨かと午前五時をんなの為すがままに冷えゆく  兵站戦線

良くも悪くも「なめまわす」のインパクトが読み手を引きつけた一首。
ここは女が実際に男の身体をなめまわすエロスと取った解釈が多かったが、歌会を終えて冷静に読むならあるいは素直に春の雨の描写と読むべきであったのかも知れない。
また「なめまわす」は旧仮名なら「なめまはす」では、との指摘もあった。
正選の票のみでコメントのなかった十谷、岩井の女性二氏が、どのような意図でこの歌を評価したのかも個人的には興味のあるところだ。


■真っ白に濁りゆきたし春が雨をどんどんどんどん降らせ来る ついに  とみいえひろこ

清明な自分を否定してみたいとの思いの歌か。
あるいは世の中から隠れたい、自分を晒したくないとの意味では、と解釈をする者もいた。
また、右の歌との並びで配信されたこともあって性愛の歌ではないかとの読む者もおり、それぞれの解釈で好意的な票が集まった一首だ。
一方で、「真っ白」と「濁る」の相反する詩の言葉に上手く乗り切れないとの逆選もあり、歌意を曖昧にしたことによる掴み所のなさが好みを分けた一首ともなった。


■ふたりしてあの日あのとき来たやうに雨に潤んだ森へ帰らう  新井蜜

押しつけがましくない優しさと表記のバランスを評価する意見など、森という存在の包容力に惹かれる票が多く集まった一首。
アダムとイヴの物語を連想し、原始の世界に思いを馳せる者もいた。
一方で、「雨に潤んだ森」の詩的さを認めながらもそこに至までの高揚感の欠如を指摘する意見や、「あの日あのとき」の定番的すぎる表現に推敲の余地を感じる者も少なからずいた。


■車窓へとこぼれかかった雨水はふるふる蠕動【ぜんどう】しつつ流れる  雨宮司

走る車の車窓の雨粒に子供のころの記憶を蘇らせた者が何人か居た。
まさにあれは「ふるふる蠕動しつつ流れる」としか言いようがない、との手放しの正選があった一方、逆選としては、発見の歌でありながら発見の妙に至っているかを疑問視する意見も。
総評としては、鑑賞力を評価しながらもそこから何が立ち上がってくるのかが見えないとの疑問を感じた者が多かったようだ。


■パリに降る雨も変わらぬ音だろう目を閉じたまま今を忘れる  あまねそう

「変わらぬ雨」でなく「変わらぬ音」とした聴覚への集中を評価する票。
オシャンティ(若者言葉でおしゃれの意らしい)を感じさせてくれるなどの正選を多数得たあまね氏の作。
ただ、恋人がパリにいるのか?などの想像を膨らませる評があった一方で、実際にはパリに行ったことがないと感じさせる唐突さを指摘する逆選もあった。
個人的にはなぜこの歌の評の時だけ雨宮氏が甘えた言葉遣いになったのかが最大の謎として残った一首だ。


■積乱雲ぬけたあたりに縹渺と消えた邑あり嫁ヶ渕てふ  蔦きうい

「邑」は「ゆう」と読んだものが多かったが、これは「むら」で文字通り村のことらしい。
実景とも虚構とも取れる表現に惹かれる票が多く集まった。
物語を秘めているような地名。視点の変化と物語の始まりを感じさせてくれる高揚感など、ショートムービー的な魅力の一首だとの評も。
歌会後の自註によると、道路標識の「嫁ヶ渕」との地名から想像が広がり、嫁が次々に身投げして人がいなくなり集落が消えてしまったのだ、との作者の妄想が生んだ一首だったらしい。


■わたくしの一言がをさなごを曇らせてたちまちに雨ざあざあの家  文屋亮

雨が屋根に降るのではなく家の中で土砂降りになっている構成のおもしろさを評価する者。
「雨ざあざあ」でありながらむしろそこに楽しさを感じたとする者など、それぞれの解釈の評が集まった。
二句目の字余りについてはおさなごを曇らせた「一言」の強調として活きているとの意見があった一方で、下の句のリズムがよいためにかえって上の句の破調が気になるとの意見も。
「曇らせてたちまちに雨ざあざあ」の過剰な比喩表現への指摘もあり、一人の感性ではたどり着けない読みの世界を見せてくれる歌会の魅力をあらためて感じさせてくれる一首でもあった。


■ふたりきりステンドグラスの折々の花と日照雨【そばえ】の祝福を受く  有岡真里

ステンドグラスと日照雨(狐の嫁入り)、祝福などの言葉から、教会でのふたりきりの結婚式を想像した正票の集まった一首。
一方で穏やかな老夫婦の日常を連想する者もいて、意図的に曖昧にした表現ゆえの歌の広がりを感じさせてもくれた。
この手の曖昧な表現の歌は独りよがりに終わってしまうことも多いが、この歌ではおおむね成功しているとの好意的な評価を得たようだ。


■ひとつかみの春雨を湯へ 箸先に透きとほれかしわが恚【ふつく】みも  十谷あとり

「恚み」という言葉にであえたことの喜びを感じたなど、日常から詩が生まれる瞬間を評価する意見が多く、正票の高得点を獲得した一首。
透明できれいな春雨を食べれば我が身も浄化されるだろうとの願望。
「箸先に」という表現に何か祈りも込められているように感じた者もいて、作者の思いはほぼ読み手に正確に伝わったようだ。
一方で「恚み」という言葉についてはそこだけ浮いてしまってもったいないと感じた者もいて、「恚【いか】り」のほうがよかったのではとの指摘も。


■傘をさす君を初めて見られそう雨予報さえ喜ぶ娘  有田里絵

「君」=「娘」との解釈で親のあたたかな視点を評価する意見が集まった一首。
傘デビューのわくわく感が可愛らしいなど、その素直な喜びが胸に響いてくるとの共感も多かった。
しかし作者のほんとうの歌意は、「君」=「彼」で幼い子供の淡い恋心を詠ったものだったようだ。
実際に幼い子を持つ母親や、かばん関西最年少の杉田氏にはにそんな正確な歌の意味を読み取れていたようで、今時の子供(若者)と遙か遠き日に子供だった者たちの間のジェネレーションギャップを感じさせてくれた一首だ。


■久しぶり傘を持って出かけたなもう雨には濡れたくないんだ  ふらみらり

二句目の字足らずに作者の心の内が表れているとの共感があった一方で、字足らずが印象をぼかしてしまっているとの評も。
どちらの意見でも「雨」が実際の雨だけでなく主体の心情や世相を象徴しているのでは、との読みでは共通していた。
また直前の黒門市場吟行で詠まれた塩谷氏の「濡れながら歩くのは誰のせいでもなくて傘が嫌いなだけ本当に」を連想する者もいて、先入観が歌の読みに与える影響についても考えさせられた。


■ぐしよぬれの影さらしつつ雨音の白の向かふへあくがれてゆく  佐藤元紀

雨音を色で白と表現した感性を評価する正票の集まった一首。
一方で白は雨に煙る町の表現と取る解釈もあり、観念的な内容ゆえの読みの広がりも見せた。
牧水の「けふもまたこころの鉦をうち鳴らし鳴らしつつあくがれて行く」を連想するものもいて、希望をもとめてさすらう主体の姿に共感する参加者が多かったようだ。
また「向かふ」は名詞であるなら旧かなは「向かう」では、との指摘もあり、逆選としては「雨音の白の向こう」という表現の解りにくさを指摘する意見もあった。


■束の間を知らず咲き零れる花を冷たく照らす四月の雨は  福島直広

「束の間を知らず」の回りくどい表現に戸惑う者の多かった歌だが、一方で、花が束の間を知っていたならもっと控え目に咲くのだろうか、との共感もあり読み手の心の中に強い何かを残す一首となったようだ。
「知らず咲き零・れる花を」の句またがりのリズムの心地よさへの評価。
動詞の多さとその方向性の違いが視点をぼやけさせてしまっている、との指摘などもあり、それぞれの感性での評が分かれた一首だ。


■哀しみを潤すように雨は降りきみを見下ろす異教徒の像  黒路よしひろ

作者の立ち位置を曖昧にしたために読み解きの難しい歌になっているとの評価が多かった一首。
「異教徒の像」は異教徒の神の像、あるいは異教徒が作りし像の意味であったがやはり表現が性急すぎたようだ。
神に意志を作り出すのは人間の側であり、神そのものはただそこに存在しているだけであることを表現したかった作者としては、歌会の中でそれぞれの読み手がこの歌からどのような神の意志を作り出すのかを知りたかったのだ。


■細やかなみず落ちきたり飛び跳ねて潤ほつてゐるわたくしたちは  岩崎陸

全生命や非生命さえも内包するような「わたくしたち」という言葉のくくりの広さに惹かれる票が多く集まった一首。
「潤ほつてゐるわたくしたち」という捉え方、雨を肯定的に捉えている姿勢にも共感を呼んだようだ。
一方で「飛び跳ねて」が水の動作なのかわたくしたちの動作なのかが解らないと指摘する意見もあり、主語を曖昧にすることの是非が分かれた一首でもあった。
また、「みず」の旧仮名は「みづ」では、との指摘も。


■半端ない修羅場のシーンが用意されたのに五月雨 豪雨がこない  小野田光

修羅場に五月雨であることの物足りなさを詠ったユニークさを評価する者がいた一方、「半端ない」という言葉を短歌に使うことの抵抗を感じた者との間で評価の分かれた一首。
上の句の説明がまったく為されないことへの疑問を感じる者もいたが、それ故に時代劇の撮影や恋愛の修羅場などさまざまな想像が広がったこともたしかなようだ。
句またがりについても不自然さを感じる者がいた一方で、「たのに五月雨」の音感を評価する意見もあり、それぞれの感じ方に学ぶところも多かったのではないだろうか。


■戯れても抱きしめていても落ちていく雨を見送る風のさびしさ  塩谷風月

横に吹く風と縦に落ちる雨。そこに風と雨の交差を見、さびしさを見た作者の感性を評価する者。
自由に生きている人間が、下へしか落ちようとしない人間を見守るせつなさを詠った歌と読む者など、それぞれの解釈を持って多くの正票を獲得した一首。
一方で、雰囲気が可視化してしまっている感があるとの意見や、「さびしさ」という言葉を使わずに「さびしさ」を表現して欲しかったとの意見もあり、読み手の側の感性の多様性にも気づかされた一首だ。


■現在地わからないねと地図の前ささやく声がもれる雨傘  岩井曜

一瞬の決定的瞬間を切り取った写真のような見事なスケッチ描写。
ただ雨が降っている中を傘をさして地図を見ているだけの二人を詠ったものだが、その雰囲気がよいとの共感の票を多く集めた最高得点歌。
顔が見えず声だけが聞こえる雨の日の情景に着目した作者の感性を評価する意見も多かった。
一方で、場面そのままを詠っただけのように思えるなど、短歌としての淡泊さを指摘する意見もあり、手放しでほめるだけでは終わらない歌会の醍醐味を見た。


ここまで、兼題「雨」に集まった短歌の紹介でした。
以下に自由詠の高得点歌も一部紹介しておきます。
■わたげでもとんでったかな気懸りがあちこち雑草みたいに生える  小野田光
■しやべれないけどまう歌ふのね恒星も波長で歌ふといふ噂だし  文屋亮
■くちびるの皺をなぞればゆく春の空におまへがちりばめられて  佐藤元紀
■名を知らぬ黄色い鳥たち集い来てブルーベリーを食い尽くし去る  ふらみらり
■この場所で人を傷つけたのでしょう桜の幹が膨らんでるわ  岩井曜
■切ないほどお腹が空いてああ早くカツ丼と両想いになりたい  杉田抱僕
■海を見る眼差しはみな美しく祈りのように何かを許す  あまねそう

以上、かばん関西四月雨の歌会記でした。
かばん関西では関西在住者に限らず広く参加者を募集しています。
興味のある方は、ML係までお気軽にご連絡ください。

(記:黒路よしひろ)
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by kaban-west | 2015-05-10 23:58 | 歌会報告
2015年 04月 15日

黒門市場吟行記

かばん関西 春の雨黒門市場吟行記
二〇十五年四月五日 於 大阪市中央区日本橋 黒門市場

 桜もそろそろ満開かも、という頃、「お花見吟行でもしたいなあという方、よかったらご参加ください。」というメールがかばん関西MLに流れました。当初の予定は、「当日ドタキャンあり・子連れ恋人連れお友達連れOK・参加者に会えても会えなくてもそれはそれでOK・天保山公園で午後吟行しましょう」というアバウトな内容。
 天候のくずれが懸念された週末、吟行は黒門市場に変更しますというメールが流れて、春雨の午後。日本橋でなんとなく待ち合わせ、自分が異国のひとであるかのような居心地の悪さをやや抱えながら、いろんないい香りのする黒門市場を歩く、食べる、歩く、話す、黙って歌を詠んでみる、待ち合わせる。そして、参加者塩谷さんの案内で、「地下喫茶」とでも呼びたくなるような喫茶店に入り、なんとなく批評会がはじまりました。
 当日参加者は四名。アーケードを歩きながらそれぞれメモしたものを、とにかく歌にして、いきなり批評しあおう!
 最初は、ぱっと見せられたものに反応することの難しさを感じながらの批評会でしたが、とても有意義なものになりました。席に着いたときも歌は出来ておらず、アイスコーヒーを飲みながらメイドカフェの話をしていた方が、ふいに何首もさくさくと歌をつくられたり。
 ゲイバー、メイドカフェ、プロレス、男の子がレゴに夢中になる時期、まじめにかばん関西MLの運営について(本誌会員とかばん関西MLだけに登録している会員が入り混じっているかばん関西。それぞれいろいろな背景があるから、その混沌もおもしろいんですね。また、オンライン参加者が、ありがたいことに最近はほんとうに多くなったので、選歌コメントの編集配信どうするよ、けっこう大変だよ、という話なども)、ワードの文字のズレ、みんながしあわせそうな顔をしている感じを詠みたかった話、うわさ話少々…などが交わされた、不思議な午後でした。
 *
 参加者四名の、それぞれの名言。
「出し切れ!」
「あたしの暴力性が目覚める」
「いっつも否定から入りますよね」
「ホストがある方が好き」
 *
以下、春の雨黒門市場吟行 詠草集より、個人的に好きな歌をそれぞれ二首ずつ選ばせていただきました。

お花見にゆこうよ春の小雨降る商店街のアーチの向こう
ゲイバーでバイトしていた塩ちゃんの過去の話を聞く地下喫茶
黒路よしひろ

ふぐみりん干しいつまでもひとの母おとこはいつの間に育つもの
しわくちゃのモノクロームのスーツゆくアーケード下のホストの乾き
とみいえひろこ

人あまた行きかふ街に空間をかかへて永きピカソビルあり
弘子さんがブリキの鞄に匿しもつ手紙あるいはまぼろしの蝶
十谷あとり

珈琲がいつも濃すぎる黒門の伊吹珈琲名店なれど
濡れながら歩くのは誰のせいでもなくて傘が嫌いなだけ本当に
塩谷風月

記・とみいえひろこ

・・・・・・

黒路さんのホームページでも当日の様子が!
▼黒門市場吟行2015
(関西歌会ブログを離れます)

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by kaban-west | 2015-04-15 21:08 | 歌会報告
2015年 04月 07日

3月歌会報告

< かばん関西 二〇一五年三月オンライン歌会 >

[参加者]あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん、塔)、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩井曜(小松才恵子改め・ゲスト)、岩崎陸(購読)、オカザキなを、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、小坂井大輔、佐藤元紀、酒井真帆、杉田抱僕、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、ぱん子(ゲスト)、福島直広、不思議童子、ふらみらり、兵站戦線(かばん、塔)、三澤達世、山下りん(ゲスト)

 今回有田さんから出されたお題は、「は」から始まって「る」で終わる歌。自由詠はなし。計7点の持ち点制で、一首につき2点まで入れることができる。点は使い切らねばならない。波乱の予感の中、二十四首が集まった。

浜辺へと打ち寄せひかる波に濡れうつすらひらくきみの唇 新井蜜 【7点】
ハンカチを忘れたきみはびしょびしょの両手伸ばした幽霊になる 有田里絵 【9点】
はてさてと問われるままに川向こうご先祖様がいっぱいの春 岩崎陸 【9点】
「は」ではじめ「る」で終わる歌詠めという恋文めいた指令のめーる 黒路よしひろ 【5点】

 一首目。上句の幻想的な感じが唇の艶やかさを一層生みだす、圧倒されて無心になった時の呆然とした唇は素敵だ、等の好意的な評価が目立つ。一方で、動詞が多い、エロス感としては手垢がついている、等の指摘もあった。二首目。よくある情景を幽霊にまで飛躍させた点が好評を得る。一方で、あるある感だけで終わってしまってはもったいない、生の言葉に乏しい気がする、等の反論もあった。三首目。のほほんとした歌いっぷりとおおらかな気持ちにさせる点が評価される。一方で、上句が分からないという意見もみられた。四首目。お題を逆手に取った内容と「恋人めいた指令」という表現が好評だった。「めーる」のひらがな表記には賛否両論があった。

はるかなり家族生活いまにして思ひいづるは彼のなゐの夜 兵站戦線 【3点】
歯無しゆえ今日も小さく赤ん坊の口先尖ってぴよめいている オカザキなを 【7点】
はだかとは怜悧な服罪いたさをもきもちよさをも預け目を見る 蔦きうい 【3点】
ハイチュウの歯ごたえが好き目を閉じて食べさせあえばほら春が来る 岩井曜(小松才恵子改め) 【4点】

 一首目。特定の震災に限定せずに普遍性を見出す評や、地震の時に頼りとなる家族がいない喪失感を評価する意見があった。一方、上句からは切実さが感じられない、「はるかなり」と「彼の」は重複していないか、等の反論も多かった。二首目。「ぴよめいている」という表現に高評価が集まる。「歯無しゆえ」が粗く、説明っぽいという意見もあった。三首目。第二句の「怜悧な服罪」の硬さと、それとは対照的なひらがな表記。評価は二分された。熟語の硬さを必然と見る者、逆に散文的と感じる者が、それぞれの意見を開陳した。四首目。いやらしさが増幅され、奇妙な歪みが感じられる、素直な詠みぶりがいい、擬似キスを思わせる確信犯、等の評価がある一方で、結句を「好き」 という 感情だけで語ろうとするのは安直ではないか、という意見もあった。

はしきやし炎かつかつ焼き尽くす時もろともおまへを抱き締むる 佐藤元紀 【2点】
はみ出してしまう、しまうよ つかれきて春を告げくるラジオを捨てる とみいえひろこ 【7点】
春雨の向こうに見える雪の山屹度あえるねあんでるたある 福島直広 【8点】

 一首目。「はしきやし」とは「愛おしい」を意味する古語。普段はお目にかかれない言葉を使いこなしながらも下句のリズムが整わなかったのを惜しむ声、多数。女性性というイデアを抽出したいのではないか、という意見もあった。二首目。何がはみ出すのか。全く不明ながらも切迫感からの疲労の結果としてなら理解できる、という声が多かった。一方、何故ラジオを捨てるのかという意見も多かった。三首目。だんだん呪文めいてくるという意見が出るほど、下句に破壊力がこめられた短歌。七七で読むべきか、六八で読むべきか、塚本邦雄が生きていたら喜びそうな意見が百出した。ちなみに、一部で記されていた「アンデルタール人」は実在しません。

花の香のかすかに匂う川べりに君と二人でうずくまる夜 ガク 【5点】
花びらを朝露に濡れてひらきをり春の吐息に紅梅めざむる 有岡真里 【3点】
花筏ひとひら食べた深海魚眠りは遠く燐光の夜 雨宮司 【12点】

 花三首。一首目。賀茂川だろうか。懐かしさを感じる者、情景に自然に溶けこめると言う者、川べりの部屋でのひとコマではないかと言う者などがいた。一方、自然に読めすぎている、妄想ではないか、なぜかべたな感覚がある、という意見もあった。二首目。「すけべえ」「べったりエロス」との評が出る。それほど堅実な花の歌ということか。花はエロスを内包する旨の指摘もあった。三首目。幻想的な作風をどう捉えるかで評価は割れた。花筏と深海魚との意外な取り合わせに美を感じる者と、細部の齟齬に違和感を覚える者。おまけに花筏は二種類の意味に分かれる。点はとれたが課題も残った。

母親に叱られている子ども見て知らずと母に子どもにもなる ふらみらり 【3点】
半月のひかりを受けてくちびるが(進めない、戻れない)ふるえる 酒井真帆 【11点】
はげしさにしがみつくよりほかなくてあえぐまもなくびりびりはてる 不思議童子 【7点】

 一首目。こういう状況をよくみるが確かに自分もこうなっている、まだ整理できる気がするが詠まれた感情は静かな共感を誘う、との肯定的な批評があった。一方、下句の表現の甘さを指摘する意見も目立った。二首目。男女の関係が背景にあるのか。表現技巧が全体の調子に合っている、心中語が初句と呼応して感傷を生んでいる、( )内が葛藤や花占いの様だ、との評があった。目立った否定のない短歌だった。三首目。アダルト短歌、心をつかまれるのは並んだ言葉の激しさだけではない、等の好意的な評価があった。そのままの感じが強い、常套句で構成されている、図式的に見える、等の批判が目立った。

初めての夢をみつけた夜だから一人で寝るの幼いフール 杉田抱僕 【3点】
初めての手づくりマヨネーズであえる新じゃが好きのきみが来る夜 小野田光 【4点】
はじめての半袖日和に届きおり「件名:キリンレモン」のメール あまねそう 【15点】
はじめての思い忘るなただ一度一度きりなり君の春来る 山下りん 【5点】

 「初めて」四首。一首目。加点した人もしなかった人も、フールとは何かという問いを発するのは変わらなかった。海外の童話の様だ、夢を言葉で説明できるぐらい成長したのでは、夢を見つけたのならもはやフールではない、等の意見が目立った。二首目。破調だが好ましく感じられる、「きみが来る」からこその初々しさが楽しい、マヨネーズを手作りにするこだわりがいい、という肯定的な意見が目立った。恋人に初めてふるまう料理ではないかという推測、多数。三首目。初夏らしい爽やかな短歌という評価が大勢を占めた。「キリンレモン」の語の爽快感は日本人でないと解からないのでは、という意見もあった。今月の最高得点歌。四首目。思春期か、生の一回性か、人生の節目 でのエ ールか。決定的な読みが出ないまま、区切れの必然性がない、リフレインの効果が感じられない、上から目線、具体的な何かが読み取れるヒントがほしい、等の批判があった。

張り出した窓に積まれたぬいぐるみこちらを向いて色褪せている 三澤達世 【10点】
張りぼてのわたしは他人の目をすっと定型にしてはにかんでいる 小坂井大輔 【10点】
刃物をも心にかくす15歳が泣く甥のあしを丹念にみる ぱん子 【1点】

 一首目。ノスタルジーを覚える者、色褪せたぬいぐるみにせつなさを感じる者、心の底を見られていると感じる者、視線に怖さを感じる、等の意見が目立った。背景事情が一切書かれていない為、飾った人がどうなったのか案じる意見もあった。二首目。「張りぼてのわたし」「他人の目をすっと定型にして」という表現に共感の声が集まる。自身の感情よりも他者が世界をどうみているかを想像しているのでは、歌詠みとしての視線をシニカルに表現している、苦しさを感じる、なつかしい感情、等の意見が目立った。一方で、意味のとりにくさを指摘する評もあった。三首目。思春期を上句のように表現したのにしびれる、という好意的な評があった。詠み手の視点が定まらない気がする 、作者 の意図が甥に害を加えたいのか泣く原因を除きたいのかどちらにも取れてしまう、助詞はある程度除いてもいいのでは、上二句の表現が露骨、等の指摘もあった。

 かばん関西は所属・居住地に捉われない自由な集まりです。興味のある方はお気軽にメーリングリストまで。

 (雨宮司・記)
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by kaban-west | 2015-04-07 20:02 | 歌会報告
2015年 03月 06日

2月歌会報告

かばん関西二〇一五年二月オンライン歌会記

【参加者】あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩崎陸(購読)、オカザキなを、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、小坂井大輔、小松才恵子、佐藤元紀、塩谷風月(未来/レ・パピエ・シアンⅡ)、杉田抱僕 、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、ぱん子(ゲスト)、福島直広、ふらみらり、不思議童子、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線 (かばん/塔)、山下りん(ゲスト)

駆け足で過ぎ去る、二月。進行の蔦きういさんから、出された兼題は、「服装の思い出」どんな、過ぎ去りし日の思い出が、詠われるのか。

≪兼題「服装の思い出」≫

制服を改造せずに着ていたら転校生とまちがわれるの  ふらみらり

無添加少女だった日。どんな荒れた学校か。また、そのまま過ぎる、との声もあった。しかし、自然な呟きのような「の」がかわいい。結句のかわいい七音の言葉で、景が際立った。

光る波見たくて夜の浜辺へと走る。セーラー服の手を取り  新井蜜

青い春を疾走した日。句点の有無に、意見が集中したが、「光る波」「セーラー服」は、まぶしい特別な魅力あるもの。あえて、服装だけを描写する事で、人物像を生々しく想起させている。

草野球皆でそろえたユニフォーム三戦三敗タンスに仕舞う  福島直広

もう一度熱くなれた日。誰の人生の中にもひとつはありそうな一場の夢。「三戦」でやめる事に意見が集中。さnせnさnたnと、リズムの良さが、そのまま主体の諦めの良さを表現している。

忘れたい恋がありますブレザーのポッケの中で少年のまま  黒路よしひろ

手離せない日。「ポッケ」は幼児語、違和感がある、との声もあったが、「ポッケ」に、容れっぱなしにしたまま、という表現が、好評。中身は、恋か、少年のままの心か、過去の自分か、想像が膨らむ。

シャツを着る人のうつむきかなしかり雪を聴きたりその熱き耳  とみいえひろこ

今もなお忘られぬ日。後朝の別れの男性の姿を想起する。匂わせ方が上品。しかし、「かなし」に、古文形容詞の連用止めを用いる事には、疑問の声があった。

道場のにほひ染みたるミリタリーコートと君が冬景色でした 文屋亮

君だけを見ていた日。「ミリタリーコート」の主が誰なのかで、景が変わる。直接的な言葉は使わず、終わった恋を、感傷をとりのぞきつつほのめかす事で、記憶の中の「冬景色」は際立った。

「似合ってる?」黒いドレスを着た君に無邪気に問われ失恋確定  雨宮司

小悪魔に翻弄されていた日。「失恋」がどこから導かれたのかがよく分からないとの、声多数。しかし、会話の調子から間接的に魅力的な人物像、関係性を、読者が特定出来る、楽しさがある。

白い羽ダウンジャケットから抜けたいつか手放すものらをまとう 有田里絵

無常と知った日。着るものたちは全ていつか手放すもの。抜けた羽根が教えてくれた。それは、人生で得てきた全ての物を対象にしているようだと、概ね全員の解釈が、シンクロした。

「嫉妬とは心に受ける重力のごときものなり」白衣ゆらめく  岩崎陸

一つの真理を知った日。括弧内のハッとさせられる言葉は、著名人の言葉を引用したものか。「白衣」の主は、医療関係者、教師、花嫁か。発言は男性的、結句は女性的、神秘的等、活発なコメントが集まった。

新しい服を買ったの純白の一生守ると言ってほしくて  不思議童子

誓いの言葉を待ち続けた日。「純白の」がどこに係るか解かりづらい。ひねりが欲しい。と言う意見が目立つものの、主体の健気な、切実な思いが滲み出ていると、共感する声も多数あった。

心して赤いシルクを滑らせば君に重ねてできる上書き  山下りん

決意して愛に踏み出した日。「上書き」が、わからない。歌意が解けない、と言う声多数。しかし、具体的な言葉を省き、動作によってのみ、新たな愛の記憶を刻むのだと、ほのめかす事で、読者を引きつけた。

襟元の紅を点せるしののめに君の羽衣にほふきぬぎぬ  佐藤元紀

天女との美しき愛の日。下句が、ややくどいとの意見もあったが、「襟元の紅」に情念が感じられる、「羽衣」から天女を連想する、日本画のよう等、美しい世界観が際立ち、好評だった。

桃色のタートルネックで目をほそめ「また逢へますか」 とけゆく根雪  有岡真里

きみとの恋の始まりの日。「目をほそめ」が、不気味との意見も。「桃色」の服装の主が、女性か男性かで、全体の印象が変わる。下句に、ぽつんと置かれた隠喩は、そのまま主体の心情を表す。

マフラーをわざと外して走り出し結局風邪引く中坊男子  ガク

パワー全開だった日。「結局」が説明的で、残念。だが、主体であろう中学生男子の照れや見栄が、ユーモラスで、かわいらしい。「わざと」から好きな女の子が、横を通ったとの、仮説も。

月給をはたいた光るスカーフで敵に止血を施す兵士  小野田光

命と向き合った日。実際の戦場か、戦場なら「光るスカーフ」の存在をどう、捉えるべきか。そこに意見は集中した。現代的風俗のなかに、戦場がすんなり紛れこめてしまうと言う、現代の怖さを示した作品。

日曜日発掘したのは肩パッドもりもりの服と遠きバブル期  オカザキなを

ジュリアナ東京が遊び場だった日。コメントした十五名中、十四名が、それぞれのバブル時代の思い出や、感想で盛り上がるという、今歌会で最も共鳴、共感を得た作品。「発掘」と言う表現が、好評。

夏休み少年の靴下のなか一万円札じっと汗ばむ  小坂井大輔

お金の価値に純真だった日。状況がはっきりしない、と言う意見もあるが、圧倒的に、男性が共感した作品。実際に主体と同じく、靴下に忍ばせた事のある人も。自分を客観的に少年といった事で臨場感が出た。

おもひでのベレーをふたつ入れてをり逝きし日の午後寒くはないか  兵站戦線

大切な人を見送った日。「逝きし」が早いのではと、文法に対しての疑問があったが、「棺」という言葉を使わずに控えめに表現した事や、結句に、さみしい内容だが、優しい気持ちになると、好評だった。

キャミソール姿の従姉が奥の間で李白朗読ふれえぬおきて  蔦きうい

淫夢を見た日。何故「李白」と言う疑問も出たが、距離感、結句の制約が色っぽい。国語の家庭教師と恋仲等、読者の妄想を掻き立てる。手を出してはならないものを組合せて、妖しい雰囲気を醸し出した。

四年前ということだけは覚えてる年子の兄との最後の「おそろい」  杉田抱僕

少し大人に近づいた日。状況、心情の情報が、もう少し欲しいとの意見もあるが、「四年前」の事実以外、他の記憶がないところにリアリティがあり、好評。字余りは、心情を反映させたとの声も。

「ボディコン」を「ボディー・コンプレックス」と思い込み失言重ねて今の我あり  あまねそう

青い青い若者だった日。バブル期を知らない世代は、取り残されてしまうが、やはりコメントした各自が、懐かしく、楽しく盛り上がり、共感した作品。笑える歌だったとの、評価も。

ポケットをタクシーおやじかき混ぜて「あげるよ」とチョコちょっとやわらか  小松才恵子

人情が温かかった日。「タクシーおやじ」という表現に、疑問が上がった。しかし、「チョコちょっと」が言葉遊びのようで読んで楽しく、情景も温かみがあり、着眼点の面白さが好評。

かばん関西は、歌会以外にも、全員が平等に短歌について、自由に語り合える場。一度覗いてみませんか?

有岡真里 記
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by kaban-west | 2015-03-06 00:53 | 歌会報告
2015年 02月 28日

如月阿波座歌会記

◇ かばん関西 如月阿波座歌会記 ◇

〈日時〉 平成二十七年二月十五日(日)十三時半~十七時
〈会場〉 大阪府立江之子島文化芸術創造センター・ルーム6
〈参加者〉雨宮司・新井蜜(かばん/塔/紙上参加)・有岡真里(ゲスト)・有田里絵・岩崎陸(紙上参加)・ガク(ゲスト)・黒路よしひろ(ゲスト)・小坂井大輔(紙上参加)・小松才恵子(ゲスト)・塩谷風月(未来/レ・パピエ・シアンⅡ)・十谷あとり(日月)・蔦きうい(玲瓏)・とみいえひろこ(紙上参加)・ぱん子(ゲスト)・福島直広・ふらみらり(紙上参加)

 久々のオフライン歌会。当日参加者は十一人だったが、有田さんの密かな呼びかけに応じて下さる方があり、他に五人が紙上参加となった。
 今回は奈良からぱん子さんが初参戦して下さった。自分の納得のいく歌会を探しておられるとのこと。よろしければ、これを機会にまたいらして下さい。
 前半は十谷さんが、後半は蔦さんが、それぞれ進行役を務め、時に和気藹々、時に丁々発止のやりとりが展開された。主な詠草と作者、および点数を左記しておく。

ねむる頃まばたきをせぬ眼球の夜に浮かびて潤みていたり  とみいえひろこ  9点

基本いつも苦しそうだね君の顔口のすぼんだ花瓶だまるで  小松才恵子  5点

落花生きざみそこねてとんだ先きみの歯を見る春の風くる  有岡真里  8点

あによめと逢えるかそけき一刻を有馬鉄道きりさめ間近  蔦きうい  6点

店を出て左向かいの丑の部屋子機と焜炉と炬燵とコハル  福島直広  6点

吉野家はご飯がやわらかすぎて嫌 泣きながら食べたひとの声して  塩谷風月  6点

また飲みましょうと言ったね年下の君 赤ちゃんをあやすみたいに  岩崎陸  4点

壁ドンをされてみたいな壁ドンをされたら胸がときめくだろう  黒路よしひろ  1点

冬ざれの静寂【ルビ:しじま】ラインをただ一台突っ走ってく俺の軽四  雨宮司  4点

まだ朝き新聞配りの自転車のライトに光る雪の結晶  ガク  無点

爆弾のひかりのなかに黒々と浮かぶあなたの首のマフラー  新井蜜  3点

ショッピングカート一台濡れている押されなければ動けない脚  有田里絵  6点

ひねくれたテレビだ修理の人が来た時に限って映りやがって  小坂井大輔  1点

平日の裏道向いて草を食む動物園のきりんの夫婦  ふらみらり  7点

おほははの閩語はりはりと照るごとくうたふがごとくわれに響けり  十谷あとり  6点

 互選歌会の結果発表後に、各自の好きな歌や文章を披露する場が設けられた。亡き師の絶詠を涙ながらに詠む者や、松任谷由実の歌詞を詩吟の声調で発表する者など、会場は時にしんみり、時に八方破れな空気に包まれたのでした。
 オフ会終了後には懇親会が開かれた模様。私は不参加だったから、どの様なぬかるみの世界が展開されたのか知る由もない。

 かばん関西では、関西在住者に関わらず、広く多くの参加者を常に募集している。見学のみの参加も可能。興味のある方は係の方までお気軽に御連絡ください。

(雨宮司・記)

・・・・・・

今回も黒路さんのブログに歌会の様子が掲載されています。
→W-ZERO3 短歌的活用術
(かばん関西歌会blogを離れます)

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by kaban-west | 2015-02-28 23:55 | 歌会報告
2015年 02月 05日

1月歌会報告

かばん関西二〇一五年一月オンライン歌会記

【参加者】あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん、塔)、有岡真里(購読)、有田里絵、岩崎陸(購読)、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、小松才恵子(ゲスト)、佐藤元紀、塩谷風月(未来、レ・パピエ・シアンⅡ)、十谷あとり(日月)、杉田抱僕、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広、不思議童子、ふらみらり、三澤達世、山下りん(ゲスト)

新年となり初めての歌会です、今月の兼題は進行係の塩谷さんより「雪でゆきなさい」との指令が下されました。さあ皆さんはどんな雪の歌を降らせるのか、ご覧下さい。

兼題の部「雪」

眩しさに眼【まなこ】とづればしんしんとひとりになつて初めての雪 新井蜜
一人になった事に寂しく思う気持ちと、ほっとした気持ちと両方が感じられる、ひらがなと漢字のバランスが絶妙で美しいと好評だった歌。色んな要素は足りているのに何か物足りないとの意見もあった。

いつの間に積み重ね来しか粉雪が街に光の穴を開けたり とみいえひろこ
積み重ねた雪が生きてきた人生にも読めて深みが感じられる。「光の穴」は詩的で格好良いとの評価の反面、イメージとして分かりにくいとの意見も多数あった。街を上から俯瞰して見ているのだろうか。
 
詰めこんだ結果はやはり大雪崩【なだれ】押入れからは無精が見える 雨宮司
兼題を巧く活用して雪と関係のない歌を詠む発想が独創的だ、ユーモアと共にほんのりとした淋しさも味わえる。全体的に説明的かも、との意見もあった。「男おいどん」のさるまたけを思い出します、と蔦氏。

降りしきり積もり積もったこの思いとけてなくなれとけてなくなれ 不思議童子
下句のリフレインが強い思いを際立たせていると、多くの共感を得た反面で直情的すぎる、何か具体的な思いが表現されていたら下句の呪文のような願いも生きる、との意見もあった。

疎らなる拍手のごとく雪は落つショーの終わりしアシカプールに 十谷あとり
上句の喩えが寒々と寂しい光景をよく伝えていて、閑散としたプールにアシカが前足をパチパチとしている光景が浮かぶ。淋しい旅は冬の水族館から始まるのだ。兼題の部での最高得票歌となった。

西側のいちばん下の屋根にのみ雪を残した東寺たたずむ 有田里絵
陰影の描写に細かな観察が見られて素晴らしいと高評価だった。反面で「東寺たたずむ」の表現に少し無理があるんではないかとの意見もあった。上句がやや説明的だったか。

雪解けを赤いブーツが二度転ぶ図書委員の君えくぼの滑神【すべしん】 有岡真里
上句の表現がキュートな女子高生をイメージさせる。滑神が分からないとの意見が多数あったが、新しいものを作ろうとする心意気は良いとの評価もあった。言葉を欲張り過ぎ、もう少し整理した方が良いとの指摘もあった。

眼と耳と鼻が奪われ貴方色のモザイクが散る雪中行軍 岩崎陸
八甲田山の雪中行軍を詠んだ歌だろうか、「貴方色のモザイク」に人体がバラバラになって飛び散るようだ、とか意味が取りづらい等に意見が分かれた。吹雪の中、貴方の背中だけを見つめ進んでゆく、全てを委ねた強さがある、との意見もあった。

見上げればからだ広げた雪花が私めがけて高い点から ふらみらり
天空の一点から円を描くように降ってくる雪が、ふわっとひろがる様子が目に浮かぶ魅力的な歌だ。もう少し表現をしぼれたら「私」という小さな点と、「高い」異世界の点とが繋がるような不思議な世界に近づけそう、との意見もあった。

「ユキ!ユキ!」と庭駆け回る20歳アリーの国にはなかった白だ 杉田抱僕
南国出身のアリーが初めて見る雪に、はしゃぎまわっている様子にほのぼのとなる一首だ。どこかステレオタイプで作られた感もあるが、笑顔が想像できる素直な詠いぶりに好感が持たれた。

サクサクと踏む音だけが聞こえてるだぁれもいない冬の朝だね 塩谷風月
誰もいない状況を孤独でなく、雪のような柔らかな優しさとして表現されているところが好評だった。また、「だぁれも」が甘くなりすぎとの意見もあった。白秋の「君かへす」を連想する参加者も多数いた。

きぬぎぬの桂大橋おときえて雪野を無蓋貨車はとおい弧 蔦きうい
上句の調べと、それに添えられた下句のイメージがうるわしく、絵画のような描写だと高評価を集めた。また、声に出して読んだ時に無蓋貨車と言う文字的にも音的にも重いものを、「弧」と言う一字で支えられているかどうか、との意見もあった。

暗渠には雪は降らない生温い水のにおいが鼻を掠める 三澤達世
ぐっとくる景を切り取ってみせた発見の歌、暗渠とは心の内部を表しているのだろうか。暗渠と雪、白と黒、冷たさと生温さの対が効いているとの高評価の反面、暗渠の中の匂いはもっと強く迫ってきてもいいんではないかとの意見もあった。

神様の言うとおりなどおどけつつ新雪を踏む確信犯で 山下りん
「確信犯」がキーとなり様々な意見が交わされた、まっさらな新雪に踏み込む何かを犯すような罪悪感を、わざとふざけてごまかしている、とガク氏が言えば、世の中には新雪を踏める人と踏めない人がいるが、踏める人の方が人生楽しめるだろうなと、ルーキー小松氏は応える。

手を触れれば消えてなくなる淡雪の君のうなじは紅色に染む ガク
「触れれば消えてなくなる」を雪と君にかけているところが切ない。結句が型にはまっているとの意見もあったが、なよなよとしたところが魅力的な絵になる歌だ。
 
さらば愛別 しまく雪野の白よりも白きおまへに深く埋もれて 佐藤元紀
「さらば愛別」の初句が力強い心惹かれる一首、今月も情熱的で濃厚で、純粋な「おまへに」の思いに心打たれる。吉永小百合主演の映画のよう、と十谷氏は乙女の瞳になっていた。

「ごっつぉーさん」「まいど三百万お釣り」藍染めはらりはらはらり雪 福島直広
上句のやりとりには大阪を感じるが、他の地方の人には分からないんじゃないかとの指摘もあった。暖簾をめくるはらりと、雪の舞うはらはらりが自然につながっているとの評価の反面で、字数合わせに思えたとの意見もあった。

理解されないまま帰るみぞれ道ふくらますガムミントが苦い 小松才恵子
理解されない事が何なのか心情が述べられていないところが好きと言う意見と、何が理解されなかったのかが気になるとの意見とに分かれた。みぞれ道とガムミントとがお互いイメージを殺し合っているとの意見もあった。句またがりが苦さを巧く表している。

傷負いしきみをなぐさめ降る雪がまろげて白き日々をみちびく 小野田光
白き日々が傷の癒えた世界のようで心に沁みる、雪は心の傷を隠すのだ。「まろげて」という表現は好評だった反面で、用法についての指摘もあった。

雪だるまだけが見ていた初めての口づけきみは絵の具の匂い 黒路よしひろ
結句の意外性が逆にリアルだと好評だった。四句目までの甘さが結句によって抑えられているようにも感じられる。「きみ」は描かれた絵ではないのかとの意見もあった。

降る雪が街のノイズを消してゆくこのまま全部止まってしまえ あまねそう
下句に作中主体の憤りが凝縮されている。街の音がノイズに聞こえる程の苦悩が痛々しく、やりきれなさが伝わってくる。また、下句はあまりにもそのままでしょうとの意見もあった。

かばん関西は所属、居住地を超えた自由な仲間達です、興味のある方はお気軽にメーリングリストへ。

福島直広:記
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by kaban-west | 2015-02-05 21:51 | 歌会報告