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2007年 09月 04日

8月歌会報告

*かばん関西 二〇〇七年八月オンライン歌会 報告記*

[参加者]雨宮司、有田里絵、笹井宏之(購読・未来)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、福田貢一、文屋亮(玲瓏)、山下りん(ゲスト)、棉くみこ

◇兼題「火」◇

 兼題は有田さんより出題。「火」は来年の歌会始のお題でもあるとの由。八月という季節と、火ということばの組み合わせから、さまざまな歌が生まれました。まずは夏の風物詩、花火をモチーフとした歌より。

・大輪の花火散りゆく方々へ命火を継ぐ家々の屋根  山下りん

・花火には行けなかったが背泳ぎを教えてもらった百日紅沸つ  蔦きうい


一首目、華やかな打ち上げ花火の下に静まる家並み。その一軒一軒に暮らす人の命は、種火のように受け継がれてゆくという。大輪の花火と、生命の息吹である「命火」との対比も美しい。二首目、夏の日の思い出。背泳ぎを誰に教わったかによって、こども時代の追憶の歌と読む人と、なつかしい恋の思い出と読む人に分かれた。

・火のついた宿題抱えたまま過ぎてペンキをぶつけたような青空  棉くみこ

・そのゆびが火であることに気づかずに世界をひとつ失くしましたね  笹井宏之


一首目、毎年悩まされた夏休みの宿題。でも大人になった今の方がヘビーな宿題を抱えているのかも。「ペンキをぶつけたような」と作者独自の表現できちんと言いとめているところがいい。二首目、「笹井さんの歌だ!」と歌会参加者を喜ばせた作品。「指先の火」とは人間の業?あるいは核兵器のように地球を滅ぼす火?どれも当たっているようで、それだけではない深い意味があるような気もする。

・散歩終え右手のライターに火をつけて煙草味はふ朝のたまゆら  福田貢一

 こちらは煙草の火。嫌煙家、ノンスモーカーの読者にも、ほっとひと息つく一瞬の心境は伝わるのでは。「心地よい、確実に踏む一歩」のような歌、との評も。

・少年の目に見ゆる火はとことはに優しき火であれ終戦記念日  文屋亮

・煮炊きの火ながめ一日を終わらせむテロのニュースに聞き入りしのち  有田里絵


八月の「火」ということから戦争をテーマとした歌も多く寄せられた。一首目、具体的にことばでは提示されていないが、空襲空爆の業火を見つめる少年、また紛争地帯に銃を持つ(持たされる)少年兵を想像させられた。二首目、ニュースの孫引きのようなテロの説明をせず、また自分の感情を直にあらわにせず、日常の自分の行為のみにひきつけて詠んだところがよい。二首ともに、落ち着いた表現の中に平和への祈りがふかく込められている。

◇自由詠◇

・絵手紙の筆のにじみやみずみずし胡瓜一本目の前にあり  山下りん

 胡瓜を目の前に置いて、今から絵手紙を書くところ?それともいただいた絵手紙に描かれた胡瓜?ここは後者だと読みたい。「下手でいい、下手がいい」と言われる絵手紙の絵、素朴な線のにじみに感じたみずみずしさの表現に、手紙を受け取った時の喜びもあらわれている。

・奈落とはかく美しき場所なのか万緑茂る谷筋をゆく  雨宮司  

 緑うつくしい夏の谷を「奈落」と看做したところが作者の発見。山歩きの情景、作者のこころ躍りが感じられる。「奈落」という地獄、どん底を表す暗いことばにあたらしい解釈を与えている点、音のやわらかさに注目した点、「万緑」との好対比など、好感のこもった評が集まった。

・身体髪膚これ父母に受く桐下駄のおもてに残る趾【あしゆび】のあと   十谷あとり       *

 記録的猛暑の八月でしたが、歌もコメントも盛りだくさんで、元気いっぱいの歌会となりました。次回九月は恒例のメーリングリストでのオンライン歌会、そしてその次は十月二十八日(日)午後、奈良県文化会館集会室Cにて歌会を行う予定です。お天気がよければお散歩吟行にも行きたいと思います。どなたさまもご参加いただけますので、ご希望の方はメールにてお問合せ下さい。 (十谷あとり)
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by kaban-west | 2007-09-04 08:32 | 歌会報告