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2008年 01月 05日

12月歌会報告

◆◆かばん関西歌会◆◆

二〇〇七年十二月二十三日(日) 於 大阪市立難波市民学習センター第一会議室

【オンライン参加者】天昵聰・雨宮司・有田里絵・石川游・大橋謙次(ゲスト)・大澤美枝子・笹井宏之(購読・未来)・塩谷風月・十谷あとり(日月・玲瓏)・関川洋平・蔦きうい(玲瓏)・文屋亮(玲瓏)・山下りん(ゲスト)・山田航・棉くみこ

【当日参加者】雨宮司・有田里絵・塩谷風月・十谷あとり・棉くみこ

 今回はイブイブ当日の開催ということもあってか、新趣向がいくつか見られた。
①兼題は公募制。「星」「聖」「箱」「鏡」が提案され、どれか一つ以上を詠みこめばいいことになった。むろん、全てを一首に詠みこんでも構わない。
②作品評を、開催日よりも前にネット上で発表した。参加者は手の内を既に他者に見せたうえで会場に臨むことになる。より深い読みが成立するか否かが当日の鍵となる。

 今月は兼題三首以内、自由詠二首以内の提出である。各々十四名参加、提出は兼題が三十六首、自由詠が二十六首という盛況ぶりだった。選歌は先月に引き続き五首選である。

◆兼題「星」「聖」「箱」「鏡」

 これだけ兼題が多く、しかも詠み手が大人数だと、いろんな思惑が絡んでくるようだ。一首の中に何としてでも兼題をすべて放りこんでみようとする者と、一首に無理なく兼題を入れていこうとする者に大別された。

〔一種類を詠みこむ〕

ひとしきり戸惑う顔も見たことだし目を逸らさせてあげる「あっ星」  山田航

牧童とキスするゆうべ水星の沈むあたりに神の鼾が  蔦きうい

うつむいてあなたが星になるまでを冬のシンクにしたたるひかり  笹井宏之

もみの木の一番上から見下ろした星の視線に酔いしれる雪  大橋謙次

冬の街に太陽の尾を追いかけて聖者とバンで走れるのみだ  棉くみこ

ヤドリギの向かうの坂をハロゲン光降り来て聖夜夫が帰る  文屋亮

針箱にいろいろごちゃごちゃある中に並べたボビン美しきかな  大澤美枝子

星座図で鼻をかんだら全天に両手かかげて十【とお】の星差せ  関川洋平

聖堂の楷の紅葉【あかば】のひとひらは合格一人の身代わりに散る  天昵聰

微笑めば微笑む泣けば泣き顔に合わせ鏡の君等を包み  山下りん

オリオンの星のかたちをたどれる子ミトンの中の人差し指に  十谷あとり

 一首目。選を入れた男性4名はどうやら作者を女性と考えていた様だが、選ばなかった女性陣は作者を男性と考えていたらしい。いったいどこからこの齟齬が生じたのかという点に議論
が絞りこまれ、「~だし」「~させてあげる」等の言葉遣いに起因するのではないかということで落ち着いた。
 二首目。牧童に人気が集中。ハイジのペーターを連想する者、井辻朱美氏のハイファンタジーと共通する世界観を感じてしびれる者、ひたすら思考をまとめようと必死になる者など、各人各様の反応がみられるユニークな状況となった。
 三首目。笹井調は今回も健在。「うつむいて」から「したたるひかり」を涙と捉える者、「星」から距離・時間の果てしなさを連想する者など、多様な読みが提示された。最後の「ひかり」に関しては、会場で「あえて『したたるひかり』と詠むことで、読みを限定させないようにしている」との意見も出された。今月の最高得点歌である。
 四首目。雪が星の視線に酔いしれるというのがなかなかない視点だという者、アンデルセンの『絵のない絵本』を連想する者など、好意的な評が出る一方、作り物の星の視線に酔ってしまうとは、広く遠くを見渡している星なら視線が合わないのでは、など、疑問を投げかける意見もあり、見解が割れた。
 五首目。バンという選択が突然の逃避行を連想させる、聖者とバンで走るところが現代的な感覚である、バンという選択がいい、という評が多くを占める中、全体を口語調に統一しても良かったのでは、という意見もあった。オフ会では「太陽の尾」という表現が何を指すのか、また「聖者」が何を指すのかに意見が集中した。「太陽の尾」は傾いてどこからか差しこむ陽射しを、「聖者」は時候がらサンタの扮装を連想させる、という指摘がなされた。
 六首目。なぜヤドリギが出てくるのか、という疑問が出されたが、西洋のクリスマスの習慣にある、という指摘に一同納得。下句を詰めこんだ感じがする、「ハロゲン光」は自動車を連想させる、「ハロゲン光」はヤドリギと異質なようだがキャンプで使うと雰囲気があるのでいいと思えるようになった、だんなさま帰宅の景が神々しさをもって歌われている、などの評が寄せられた。
 七首目。日常の些細な部分に美を見出す視点がいい、「いろいろごちゃごちゃ」から整然と並ぶボビンへ焦点が定まる感じがいい、口語の軽い感じから「美しきかな」へ移る際の温度差がいい、意外性に詩を感じる、等の評があった。
 八首目。奇想にあてられる人が続出。星座図で鼻をかむという飛躍はいかにも「かばん」らしい、上二句でぶっとんだ、という評が出される一方、「星差す」ではなく「星指す」ではないかとの指摘もなされた。
 九首目。聖堂や楷が学問向上・合格祈願の喩としてうまく機能している一方、結句がおおげさではないか、「紅葉」は素直に「こうよう」と読ませた方がいい、など、細かい指摘も目立った。
 十首目。「合わせ鏡の」と続けて読むか、「合わせ/鏡の」と切って読むかで意見が分かれた。「合わせ鏡」なら三面鏡などに囲まれているイメージ。「合わせ/鏡の」なら、表情に注目してほしいという作者のメッセージが立ってくる。また、「君等」が子どもたちなのか鏡に映った一人の人物を指すのか、という問いかけもあった。
 十一首目。ミトンに人気が集中。星座を正確にたどれるかどうかはともかく、様子が目に見えてきそうだという好意的な評が目立った。三首目と並び、今月の最高得点歌となった。

〔複数個を詠みこむ〕

戦争に聖なるものはあらずして地球といふ星いまだ火燃ゆ  石川游

聖夜には一番星が映るらし鏡張りなる真鍮の箱  有田里絵

銅鏡の裏に聖なる星刻み杉の香満ちる箱へとしまう  雨宮司

 一首目。結句は定型に落ち着かせることができそう、字足らずに効果を感じない、と主に技術面に対する辛口の批評が目立った。内容そのものに関しては、詠いつくされたようにも思えるがそれでも詠っていかねばならない、聖戦や正義をいくら主張しようとも民間人を巻きこむことに変わりはない、など、肯定的な意見が目立った。
 二首目。「星が映る」と言い切ってもいいのでは、とりあえず四つのお題を全て入れてみたという感じを受ける、との評がある一方、題を全て読み込んでいるのに静謐で自然な感じがする、との肯定的な意見もあった。
 三首目。星を刻んでいるのは死期を予知した卑弥呼では、「杉の香満ちる」が全体に現実味をあたえている、との意見があった。一方、全部のことばがきれいなものづくしで同じ力加減になってはいないかという辛口の評もあった。

※全体にバランスを欠いた歌会記になってしまっているようです。実際にはもっと多様な複数個題詠があったことを明記しておきます。

◆自由詠

 二首に絞りこんだことで、秀歌が目立ちました。おまけに五首選にしたことで激戦の様相を呈しています。特に選の多かった作品三首を記すことで、評に代えたいと思います。

トラックは橋を渡りぬ横風に幌の肋をあらはにしつつ  十谷あとり

飛行形静かに保ち白鳥ら見えぬ航路を今渡り行く  文屋亮

放課後の窓の茜の中にいてとろいめらいとまどろむきみは  山田航

                      (雨宮司)
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by kaban-west | 2008-01-05 09:34 | 歌会報告