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2008年 10月 07日

9月歌会報告

かばん関西九月歌会  歌会記              

[オンライン歌会]参加者=天昵聰、雨宮司、有田里絵、岩本久美(購読)、笹井宏之(購読/未来)、十谷あとり(日月/玲瓏)、蔦きうい(玲瓏=選歌コメント参加)、山田航[オフライン歌会]九月二十七日(土)於・奈良県文化会館情報コーナー 参加者=雨宮司、有田里絵、十谷あとり

七人の方から兼題の部十三首、自由詠の部十一首の作品が集まりました。

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《兼題の部》 「角」「思い出」

・ストロボのあまた滴る街角に僕は立つてた痛みのやうに  山田航

・三条通西へ下れば角振町駄菓子屋の辺に夕日は暮れむ  十谷あとり

・思い出がしおれてしまいそうなときあなたが貸してくれた霧吹き  笹井宏之


一首目、上句「ストロボ」が「滴る」、下句「痛みのように」「立つてた」と、表現の巧みさが光る。何の現場に居合わせたのか、想像をかきたてられる。二首目は奈良の三条通。「駄菓子屋」と「夕日」の組み合わせはやや安易。三首目、一読、やさしさでこころが潤うような歌。岩本さんの「思い出はやっぱりウエットよね」というコメントに納得。

・釘のごと曲がる細道その角に剥製屋あり窓のくらがり  岩本久美

・思い出の豚の角煮の決め手ならコップ一杯のコーラなんです  雨宮司

・特急がトンネル抜ける瞬間の鼓膜を街の気圧に合わす  天昵 聰


一首目は作者以外全員の選を集めた歌。細道から剥製屋へ、その窓の暗がりへと迷うことなくいざなわれる。二首目、『サラダ記念日』を思わせる乙女さびた歌いぶり。三首目、誰しも経験のある身体感覚が、無駄のない表現で伝わってくる。

《自由詠の部》

・山寺の道々に立つ仏さま あゝ青空が見えてきました  天昵 聰

・あかさたな浜に満ちくる潮さえ苦き記憶を留めるというに  雨宮司

・風船が落ちていました白い紐は私のほうを向いていました  有田里絵


一首目、「静謐」「熊野古道のよう」「思わず手を合わせたくなる」と非常に好感度の高かった作品。二首目、忸怩たる思いを静かに見つめる心境。「浜」を引き出す枕詞としての「あかさたな」に対する評価は分かれた。三首目、笹井さんの「どうにかして、助けられたかもしれない、でも、どうすることもできなかった、たくさんの命への哀悼歌。白い紐は、いつも、誰のほうをも向いているのだと思います。」というコメントによって、歌の世界がより深まったように感じた。

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かばん関西のオフライン歌会は、出席者の減少により、当分の間定期開催を見合わせることとなりました。今後は出席希望の方が複数集まり次第、臨機応変に開催してまいりたいと考えております。
メーリングリストによるオンライン歌会は今後も変わりなく継続してまいります。関西在住に限らず、また会員外の方も歓迎いたしますので、みなさまどうぞご参加下さい。   (十谷あとり記)
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by kaban-west | 2008-10-07 10:23 | 歌会報告