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2009年 07月 06日

6月歌会報告

かばん関西6月歌会記

[参加者]安部暢哉、あまねそう、雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月/玲瓏)、月下燕(購読)、西井美子(購読)、福田貢一(北摂短歌の会)、法橋ひらく、松山真実(購読)、山田航

6月歌会は、出詠のみや選歌のみを含め11人が参加。兼題の部では「数」「砂」というお題のためか、無常観が感じられる歌が多かった。2つお題が出た場合、選ばなかった他方の題にも発想力が刺激されるのだろう。

◇兼題「数」「砂」

●さてもさても砂粒ほどの私【わたくし】よ造り主にぞ御用ききたき 西井美子

「さてもさても」のS音が「砂粒」を見事にひきだしている。上の句からは仏教的な無常観がうかがえるが、「造り主」という言葉からは「旧約聖書」が連想されるとの意見も。読み手によってさまざまな世界が広がる一首。

●受話器から砂がこぼれる 凪の日の白帆のようなあしたにさめて 法橋ひらく

「受話器から砂がこぼれる」という比喩が好評で、題詠最多得票となった。下の句は意見が分かれ、リズム感に好感を持つ人もいる一方で、上の句の印象を弱めてしまうとの評もあった。

●砂粒のごとき軽さの我人生大いなる風と共に消えたし 安部暢哉

いさぎよさが心地よいとの好意的な意見がある一方で、自嘲的な作風に対し「生きていけるだけですばらしい」との激励も。

●砂時計のやうなかたちの世界地図ひろげて時をさかのぼる旅 山田航

「世界地図」は「古地図」だろうとの解釈が多数。空間的な広がりと時間的な遡及感の対比があざやかな一首で、4票獲得。

●七夕の夜空晴れるかどうかよりパパの帰りを気にしてくれる 有田里絵

読み手によって視点が異なったおもしろい一首。「七夕が距離の遠さをしっかりと暗喩してますね。パパが作中主体だったら面白いのですが」「子どもとはどこにも書かれていないのに、この存在感」。

●弥勒様が来るまで落ちる砂時計何だか無性に叩き割りたく 雨宮司

焦燥感やじれったさを感じると多くの共感を得た一首。「叩き割りたく」という言いさしが妥当かどうかとの指摘もあった。

●迷路から一度も迷わず抜け出した僕らのデートは散々だった 月下燕

初デートなのかある程度慣れた関係なのかによって、今後の2人の展開が変わってくるとの深い読みがあった。「散々」な中に微笑ましさを感じる。

●5・15 9.11 2・26 6つの数字で最高4億! あまねそう

数字(事件)の用い方に疑問をもつとの意見が多数。「用い方を間違えた刃物は単なる兇器」との厳しい指摘も。「狂った社会」をシニカルに表現したいという作者の意図は表現として出てこなかった。


◇自由詠

●ちはやぶる神の国にて不動尊わが運命のレールをしきぬ 福田貢一

仏教をテーマに歌を詠み続ける作者。「他者に理解されにくいのが信心だと思うのですが、この作者は愚直なまでにまっすぐに向き合っています」とのコメントもあり、この作風は一つの個性として受け入れられている。

●通りには出てはいけない警告をぼくだけ知らないような夕暮れ 松山真実

誰もいなくなってしまうことへのおそれや、ホラームービーのような恐怖感を感じるとの意見あり。夕暮れは郷愁へとつながっているだけではなく異界へも続いているのだ。

(あまねそう 記)
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by kaban-west | 2009-07-06 09:03 | 歌会報告