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2009年 08月 06日

7月歌会報告

「かばん関西7月歌会記」

<参加者>安部暢哉、あまねそう、雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月/玲瓏)、月下燕(購読)、法橋ひらく、文屋亮、三澤達世、山下りん(ゲスト)、山田航

今月のお題は夏に負けないよう「熱」、この漢字を詠み込むという指定がありました。
兼題に19首、自由詠に10首が集まりました。

まず兼題から何首か紹介します。

☆悩ましき案件胸に乗車する電車の窓に浮く熱気球        文屋亮

高得点歌。案件は熱気球と対比されているが詳細は書かれておらず、本当に悩ましいのかどうか不明な点が面白い。困っているけれど(怖いけれど)、わくわくする気持ちか。

☆熱気球りんごのやうにふくらんで空といふ木にとはのみのりを     山田航

同じく熱気球を詠んだ歌で、これも高得点。表記の巧みさが光り、情景が目に浮かぶ。最後は下に降りてたたまれてしまうものを選んだセンスも評価された。

☆忽然と埼玉県の県道に熱塩加納米直売所        三澤達世

初参加の作者。固有名詞の力加減に評価が集まった。字面に興あり。そのぶん、初句に推敲の余地があるのではとの声も。

☆誰からも習わないのに微熱もつ少女はすでに火を知っており     法橋ひらく

モチーフの選び方を評価された。微熱の内容は思春期特有の悩みだろうか。読み手に任されているところが良い。

☆この家のこの部屋だけが熱帯夜ノラはどこにも行けないままに     山下りん

ノラがイプセンのノラか犬猫なのか書かれていないが、前者であろうという声と、両方重なっているという声があり、興味深い。上句の限定する表現から息苦しさが伝わってくる。

☆細路地に郵便バイク現れてよごれた熱を配りつつ行く        十谷あとり

最高得点歌。リアリティが際立っている。不思議さを感じながらもこのダークな魅力に惹かれてしまう参加者が多いのは、この歌会の傾向を示しているのかもしれない。

続いて自由詠からです。

☆クマゼミようるさくないか己【おの】が声自分のことで狂いはせぬか      安部暢哉

そのままのようでそうでないところに評価が集まり、高得点歌となった。参加者の頭の中でもクマゼミの鳴き声が思いっきり響いただろう。

☆親の泣く顔 顔のある岩 岩の扉 扉のなき発芽体         あまねそう 

ユニークな句切れ、しりとりのような表現が印象に残る。不思議なリズム。句またがりを受け入れる人とそうでない人とに分かれた。

☆他人とは好き勝手言うものなれどゴーヤはすべてそれぞれ苦い      有田里絵

他人の言葉をゴーヤに重ねている。食料自給率を上げるため自宅のベランダで栽培中です。

☆夏を受け止めてください 巣から出たばかりで上手く飛べないのです   雨宮司

みずみずしさが印象的。句またがりがあまり気にならないのは青春歌のような雰囲気のためか。一字空けも熟考されている。

☆「パパが嘘つくはずないもの」居間からの声は迷わず我を規定す     月下燕

高得点歌。子供の言葉のすばらしさに感動すると同時に、我が身をふりかえってどきっとしてしまう。大人になってもこのストレートさを保っていられたらいいのに。

今月は久々に歌会係を担当しました。かばん以外の方もたくさん読んでいるので良い緊張感があり、コメントがすぐに返ってくる嬉しさと内容の充実度にはいつも刺激を受けます。今後も盛況でありますよう。(有田里絵・記)
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by kaban-west | 2009-08-06 14:40