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2009年 11月 08日

10月歌会報告

かばん関西10月歌会記

【参加者】雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月/玲瓏)、瀬波麻人(購読/未来)渡口航(短歌人)、三澤達世(選歌・コメント参加)、山下りん(ゲスト)

 今回の兼題は有田さんご出題の「手紙」。思えば、一首の歌そのものが、誰かに届けたい思いの手紙なのかもしれません。
「手紙」といえば、まず連想するのは「ラブレター」でしょうか。

・取り扱いに御注意くださいこの手紙とても甘くてすぐに溶けます   雨宮司

・降り積もる雪のせいですごめんねではじまる手紙が白くて読めない   瀬波麻人

 一首目、紙せっけんのようにもろく、角砂糖のようにはかない、こんな手紙をもらったら、こころまで溶けてしまいそうになるでしょうか。それともダリの絵のように、とろけた手紙めがけて蟻がやって来るのでしょうか。
 二首目、積雪に乱反射する光がまぶしくて、手紙が読めない。本当はそうではなくて、「ごめんね」ということばが辛すぎて、先へ読み進めないのです。手紙を手にしたこの人は、もし涙がこぼれても、(雪が溶けただけだよ)と強がってしまうのでしょうか。
 二首ともに、若々しい恋の雰囲気に満ちた歌ですが、「ロマンが少し安っぽい」との意見もありました。「ラブソングの歌詞みたいな甘さ」とは言わせない、一行の「相聞歌」へ。難しいかもしれませんが、そこを目指していけたらと思います。

・話しかける人のないとき自分への手紙を書きぬ 日曜、昼間  有田里絵

 孤独感、寂寥感が伝わってきます。「自分への手紙」とは、ひょっとして歌のことでしょうか。少し漠然としている、何を書いたのか、もうちょっと具体的なことが出て来てもよいのではとの意見もありました。

・炙り出されることなどないから何度でも実験してみる好きと書くこと   山下りん

 こどもの頃やってみた「炙り出しの実験」。火にかざさなければ書いた文字は誰にも読まれません。秘めた思いの強さは炙り出しの火の強さと同じでしょうか。「実験」ということばの斡旋には好みが分かれました。

・いきいきと人の悪口綴る文読み了へてのち畳むさやさや  十谷あとり

 「人の」ではなく「われの」「僕の」ではどうだろうか?悪口を書いた手紙と「さやさや」というさわやかさにはギャップがあるのでは?「さやさや畳む」ではどうだろうか?などの意見がありました。

自由詠より

・かかるものなき浴室の床なればくるくる回るかなぶんあはれ   渡口航

 日常の中の小さな出来事と、それを目にした時のこころの動きをうまく掬い取った歌。情景も過不足なく伝わってきます。この後、かなぶんは無事外へ逃がしてもらえたそうです。

 〆切に追われて歌を詠み、詠草を読み、選歌をしコメントを書き……毎月の繰り返しの中に、作歌の小さなヒントが見つかったり、おっ、これはいいなと思える表現と出会ったりと、よい刺激をいただいています。これからも、こつこつ詠んでまいりましょう。(十谷あとり 記)
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by kaban-west | 2009-11-08 22:15 | 歌会報告