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2010年 02月 12日

1月歌会報告

かばん関西一月歌会 歌会報告

[参加者]安部暢哉(選歌のみ)、あまねそう、雨宮司、有田里絵、岩本久美(購読)、十谷あとり(日月・玲瓏)、蔦きうい(玲瓏/選歌のみ)、渡口航(短歌人)、文屋亮(玲瓏)、三澤達世

二〇一〇年最初の歌会には、十名の方が、合計三十二首の作品をお寄せ下さいました。兼題は、渡口さんご出題の「玉」と、十谷出題の「天」の二つ。今回のお題は、比較的連想を広げやすかったようです。

■兼題の部より

・玉ねぎに透かしたような日の射して『藤村詩集』読み了わりたり  あまねそう

冬の淡い日差しを「玉ねぎに透かしたような」と表現して人気を集めた歌。島崎藤村を斡旋したところ、「了」の表記など、細部まで丁寧に詠まれています。

・登山口駅前の店玉子丼天丼の文字うまさうに見ゆ  十谷あとり

欲張ってお題を二つ詠み込んだ割には内容のない歌。「ひなびた定食屋の貼り紙はなぜあんなに字がヘタなのか?」「いやあれはヘタだから魅力的なのでは?」など、意見交換も「小盛り」でした。

・家の先にごわごわ並ぶ天草がつぶやきあって夏、帰り道  岩本久美

久し振りにご参加下さった岩本さんの歌。磯の匂い、海藻が乾燥してゆく音が身体に直に感じられるようです。これからも〈久美リアリズム〉で、読者をいろんな世界に連れて行って下さい。

・ぬけがらのお年玉袋の影のびて机の上にありやがてかなしも  渡口航

お正月、どこの家でもありそうな一風景を、大真面目にアララギ風に詠むことで、静かなユーモアが生まれました。

■自由詠の部より

・ぽつねんと更地にひとつ遺された門を律義に犬は潜れり  三澤達世

今回最高得点の作品。「猫ならもっと面白い?」「この歌は絶対犬がいい!」「取り残された門の悲哀と犬の習性の組み合わせが見事」「一月だけに、震災も連想する」など、意見も活発に出されました。

・乳精を水に落とした靄からは鉄路をなでる列車の音が  雨宮司

霧の中を列車が通過するさまを詩的に表現した一首。「乳精」ということばが、インパクトはありつつも、はっきりとしたイメージでは捉えづらかったようです。「鉄道ファンには『好きなもの尽くし』でたまらない」という声も。

・トポロジー的に語れば一個のドーナツの我ドーナツの群れにて悩む  文屋亮

トポロジーとは位相幾何学のこと、と辞書を引いてもいまひとつピンと来ませんが、人間を一本の管と規定し、そこから「人間=ドーナツ」と連想をふくらませたところがユニーク。「とぼけたいい味」「ドーナツ関係に悩むドーナツって面白い」「音のリズムがユーモラス」「最後の『悩む』はなくてもよいのでは」など、読み手もおおいに楽しめた一首でした。

・完全に一人になれた三十分女王ほほえむスタバ入口  有田里絵

忙しい日常の中で、ようやく確保した自分のための時間。乾いた心に恵みの雨がしみ込むような気持ちでしょうか。女王様気分もほんのひとときなら許されますよね。下句、少し言い急いで舌足らずになった感も。

今月は笹井宏之さんの一周忌でもありました。笹井さんが地上におられないということが今でもどこか信じられず、また歌会にもひょっこり参加して下さりそうな気がしてなりません。(十谷あとり 記)
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by kaban-west | 2010-02-12 09:26 | 歌会報告