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2011年 07月 31日

7月歌会報告

かばん関西七月歌会 報告

[参加者]雨宮司 有田里絵 黒路よしひろ(ゲスト) 蔦きうい(玲瓏) 十谷あとり(日月)

暑さの続く中、五人の方が七月歌会にご参加下さいました。日常の中の小さな発見が歌を生むことに因んで、今月の兼題を「見つけた」といたしました。詠草は「何かを見つけた歌」と、「見つからなかった歌」に大別されました。部門別に一部をご紹介いたします。

■[見つかった部門]

・子を背負い夕暮れの野を歩んだら「いちばんぼーしーみーつけたー」  雨宮司

童謡の中の一情景のような作品。雰囲気はよいが、上句が説明口調では、下句は台詞でない方がよいのでは、と表現に関して意見が出されました。

・目をとぢて見つけしものは足ながき蜂、のうぜんの花のうちらに  十谷あとり

「のうぜん」は「凌霄」と漢字表記の方がよいのでは、また、語順が逆のため状況がわかりづらいのではとの意見がありました。

■[見つからなかった部門]

・星ふるまで原っぱはえど見つからぬひとのこころを覗くルーペが  蔦きうい

人気の集まった一首。星降る野原と「こころを覗くルーペ」というドラえもんの道具のような小物の組合せがチャーミング。「はえど」は「這えど」と漢字表記にした方がわかりやすいとの評がありました。

・五十回会ってもいまだ見つからずきみのいちばん感じるところ  有田里絵

平淡なことばづかいで、官能的な想像をそそる恋の歌。必ずしも性愛の歌とは限らない、「五十回」という具体的な数字がこの場合ふさわしいかどうか、などの意見が出されました。

・悠君に見つけてもらえないままの隠れん坊もう二十五年だ  黒路よしひろ

人名に存在感がある、シンプルながらかわいらしく、切ない気持ちを呼び起こす、と好意的な読みが集まりました。個人的には手塚治虫の短編『雨降り小僧』を連想しました。

■自由詠

・五百円入れなばすぐに計算しお釣りをくれる自販機の怪  黒路よしひろ

「ただごと歌」のような、まさに日常の中の嘱目から生まれた歌。「怪」と言い切る結句は読者の好みが分かれました。

・君となら1+1は∞【むげんだい】有効期限はこの夏限り  雨宮司

率直な恋歌。上句のイメージの膨らみと下句のシビアさの落差が大きすぎる、ルビを外すと文字面が短く貧弱になる、などの評もありました。「これが女性から男性への歌なら大いに許せるが、男性から女性への歌なら願い下げだ」とは、恋愛の達人蔦氏のコメント。

・折りたたみ傘で出かけるぎりぎりの曇天恋の背景となれ  有田里絵

降りそうで降らない曇天と、ふたりの間の心模様が重ね合わされているのでしょうか。「ぎりぎりの曇天」という表現に独自性がある、結句の命令形が魅力的との意見がありました。  (十谷あとり 記)
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by kaban-west | 2011-07-31 07:44 | 歌会報告
2011年 07月 25日

7月オフライン歌会 報告

かばん関西 七月オフライン歌会報告

[参加者]雨宮司 有田里絵 黒路よしひろ(ゲスト) 十谷あとり(日月) 瀬波麻人(未来・購読) 
七月十日(日)、大阪市中央区のボタン店にて、四ヶ月ぶりにオフライン歌会を催しました。午前中は当日持ち寄った詠草による歌会、午後はかばん新人特集号について意見交換を行いました。

[歌会]上位作品は左記の通りです。
三点歌
・川の中ビニール傘の柄のささるネッシーを見たことにしておく  有田里絵
二点歌
・夕立がもうすぐどっと落ちてくる一回馬鹿にされちゃえば楽  有田里絵
・護りたい人がいたから少年の僕は戦うことを選んだ  黒路よしひろ
一点歌
・をさな日にひたに怖れてをりしもの血、オノ・ヨーコ、箪笥の引き手  十谷あとり
・太陽が眩しかったらわたくしと踊りませんか殺人ルンバ  雨宮司

[新人特集号についての意見交換]一番よく読み込んで来られた雨宮さんの選歌をたたき台とし、それぞれの連作に対する感想、よいと思った歌とその理由、外部内部の評を読んで思ったことなどを自由に出しあいました。ごく一部を左に記します。

あまねそう「切り絵だったのかもしれない」より
雨宮選
・白色に濃さのあること思いつつ牛乳を飲む 雨の降る朝
十谷選
・川べりの工場を染める夕まぐれ どうして誰もいないのだろう

オカザキなを「あかい頭巾がほどける日まで」より
黒路選
・お祖母さんは狼でした。足が疾く吠えながら母を産んだといいます
雨宮選
・血はにがく流れつづけて舌先で探れば抜糸痕という欠損
有田選
・「今だってここにいるけど生と死の違いがやっぱりわからないんだ」
・「いまメールしてるうちらも死んでたり? 今度焼肉食べに行こうね」

白辺いづみ「夜の惑星」より
雨宮選
・息をする夕焼けの息が肺に入る わたしに入ってこないでください
有田選
・朝風呂の窓うつくしく頭から水にほどけてひらがなになる

陣崎草子「呼び声」より
瀬波選
・靴下を脱ぎつつ君に訴える 1+1を8にしたい

三澤達世「植物歌」より
雨宮選
・逆光のタバコ畑に残された茎は無名の墓のようなり
黒路選
・はるの陽はこぶしに射してはるの陽をこぶしは返す白く訳して

山田航「珈琲牛乳綺譚(ミルク増量Ver.)」より
雨宮選
・つむじから風は螺旋に身をくだり足にはぼろぼろのコンバース
黒路選
・金曜九時。落ち合ふ先は禁猟区。逢瀬と呼んで構ひはしない――

短歌作品以外も、山田さんの回文の迫力に圧倒されたり、三澤さんの「サナエさん」を面白く読んだり、読み応えのある新人特集でした。内容が濃く、短い時間で語り尽くせるものではありませんでしたが、この場で交わされた意見や感想を、各自が再び読みを深めていくきっかけにできたらと思います。
かばん関西のオフライン歌会、次回は九月開催の予定です。(十谷あとり記)
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by kaban-west | 2011-07-25 09:12 | 歌会報告
2011年 07月 06日

6月歌会報告

かばん関西六月歌会記

<参加者>雨宮司、有田里絵、黒路よしひろ(ゲスト)、こまつかおり、
十谷あとり(日月/玲瓏)、蔦きうい(玲瓏)、野間亜太子、三澤達世

今回の兼題は「木」。自由詠と合わせて8名の方から合計33首の作品をお寄せいただきました。
初夏の太陽を目指して勢いよく延びてゆく木の枝のような、それぞれに個性ある歌をご紹介してみたいと思います。
まずは兼題の部から。

ユーカリを燃やすダイナモほらこんな…きみの踝ぬくめてあげる  蔦きうい

エロティックでありながら不潔な感じがしないところがよい、などの全体的に高評価を得た一首。
反面、途中の言いさしがあまり効果的に機能していないなどという指摘もあった。
ユーカリを燃やすダイナモについては、発電機であるダイナモを暖炉と勘違いしているのではとの指摘と、これはユーカリを燃やして発電する架空のダイナモなのだという読みをする参加者の間で評価が分かれ、ひとりの読みだけでは気付けない歌の本質を皆で読み解いてゆく歌会の重要性をあらためて認識させられた。

歌詞のなきうたばかり吹くおとうとの後ろ姿も夏の柳だ  十谷あとり

おとうとの後ろ姿もまた夏の柳なのだと捉えた感性が美しい一首。
意外な喩だがそこがいい。実の姉から見てもつかみどころがない弟って面白い。など、おとうとという対象が歌のイメージとマッチして読み手のこころに爽やかな印象を持って受け入れられたのではないだろうか。
スレンダーでしなやかなスイング。口笛、あるいは楽器を吹いているから歌詞がないのか、インストゥルメンタルなのか。ともあれ、歌詞の意味性に邪魔されず流れる音楽は夏の柳のようであり、それはまたおとうとの後ろ姿の生命力にも通じていくのだ、などの評価もあり高得点につながった。

ものすべてくっきりとした夕方の窓を彩るセコイアの影  三澤達世

季節とその日の天気で、夕日がスポットライトのように周りを照らし出す時があり、自分もその時間帯がとても好きだ。よんでいて、その感覚がリアルに思い出されたなどの評があり、セコイアがやはりいい。勢いのある輪郭線。今日みたいな暑い日に読むと特に、ぐんぐん近づいてくる夏を感じる、などの女性陣を中心に共感を得た高得点歌。
反面、完成度は高いが驚きが足りない気がする。一首全体として見たときに広がりが感じられず、小さくまとまってしまった感じがするのは残念なところだ、との男性陣の指摘もあり、男女の感性の微妙な違いのようなものも感じられて面白かった。

台風で倒れちまった棕櫚【しゅろ】の木を三人がかりでも運べない  雨宮司

台風の威力に対する素直な詠嘆の一首。
「棕櫚【しゅろ】の木」というアイテムや「倒れちまった」の少し乱暴な口語調の表現に作者の工夫の跡が見えて共感出来るのだが、共感と同時に作為的な醒めた感覚をも感じてしまう、といった指摘や、このままじゃ海の家がオープンできないわ、とでも言われれば面白いのですがなど、事実のみになってしまっていることを指摘する意見があった。
また三句目の助詞が「を」では伝わらない。ここにどんな助詞を使うかで、全体が変わってくるとの意見も。
その反面、下の句は句またがりでそのまま読んでしまうと単調な報告文にすぎないのだが、定型に句切って読むと独特の「調べ(リズム)」が生まれてきて短歌という形式の持つ力にあらためて気付かされる、との作者の定型の力を信じた歌なのだとする意見も出た。

他に兼題「木」にお寄せいただいた歌もまとめてご紹介しておきます。

夜毎けずる楡の十字架おとうとを括って縛ってこのぽけっとに  蔦きうい

知らずうち濃くなり行く緑の下で我が影は淡くぼやけて  こまつかおり

銀の木は群青色の紙に映え『一握の砂』につきたる栞  有田里絵

校庭の隅っこの木に刻まれたあいあい傘のとおるとえみこ  黒路よしひろ

以上、兼題「木」についてでした。つづいて自由詠の部のご紹介です。


銭湯の古ガラス越し傾いた陽は柔らかく産毛を透かす  三澤達世

今回の最高得点歌。
古ガラスというアイテムが銭湯という絶滅寸前の営業施設らしい雰囲気をよく表していて素敵な一首だ。
無駄のない描写に色っぽさを感じます。とにかく情景が美しい。「産毛」を持ってきたところが要です、などの意見や、あのせつない陽は、古い銭湯でこそなのだ、など視覚的なイメージを喚起させられた参加者も多かったようだ。
また、順当に読めば人であるのでしょうが猫かもしれないし、何の産毛なのかがものすごく気になって仕方ありません。との猫好きの方の意見もあり、なかなかに読みの広がりも見せた。

広辞苑並みの厚切りカステラをぺろりと食べてしまってひとり  有田里絵

こちらも高得点歌。
家族がいれば、普通、こんな食べ方はしないという男性意見に対して、食べるわよぉ普通に、との女性のたくましい意見も見られてなかなかに面白いコメントが寄せられた一首。
広辞苑を配置したことで、カステラの具体的な質量が迫ってくる、など広辞苑を譬えに出した感性を評価する意見も見られた。
結句の表現に関しては「咳をしてひとり」を連想した方や、「ぺろり」、「ひとり」、という音の響きが、歌に流れる明るさを肯定している、とした意見。
おなじく「ひとり」が効いているとの意見があった反面、逆に結句を甘い、としとした評もあった。どちらにしても、現代の女性らしい開き直ったようなたくましさを感じさせてくれる魅力的な一首といえるだろう。

漫然と繰り返される励ましは社交辞令と何が違うの?  こまつかおり

震災後の「がんばれ東北」「がんばれ日本」へのアンチ、もしくは被災地の人々への「がんばれ」という励ましが時間を経るごとに形骸化し心を伴わなくなって来ているのではないかとの疑問の一首。
上句で実際のやりとりを記す手もある、といった技法面での指摘や、社交辞令だと思うが、もっと言いたいのに周りに合わせて同じ励ましをしてしまう人もいるかもしれない、という安易な励ましにも理解を示す意見もあった。
この歌、一見、無責任に励ます人々への反感の歌のようにも取れるが、作者自身の自問の言葉のようにも思われて、おそらくは表面から受ける印象以上に深い一首なのではないだろうか?

純白のチラリと見えたあれなんて言うんだっけなスカートの中  黒路よしひろ

純白のチラリと見えたもの…それは一反もめんですよ。などのとぼけた回答や、考えてしまうぐらいなのだからパンツではなく、ペチコートとか、ドロワーズやではないか?など真剣に考えた予想外の回答もあり、最終的にはパンチラについて熱く語る自称パンチラ博士まで召喚してしまった怪しげな一首。あと半歩ずれたらやらしいオッサンっぽくなる危うさを感じた、などのごもっともな指摘も頂いた。
いや、詠んだ本人はただ真面目なかばん関西のみなさま方に、「パンツ」だの「パンティー」だのと言わせてみたかっただけなのです。
申し訳ない…(笑)

響よき陸前高田に降る雪は冬蛍ぞへ我も哀しゑ  野間亜太子

被災地、陸前高田に降る雪を冬蛍に譬えた震災の鎮魂歌。確かに陸前高田は響きがいい、初句がいい、などの意見とともに、当然祈りはこめられているのだろうが、もっと前面に持ち出す必要があるとの指摘も。また、方言である「ぞへ」がわからなかったことを残念とする意見もあったが、その反面、意見が分かれるだろうとしながらも「へ」と「ゑ」のおなじ音の繰り返しを評価する意見も見られた。
もともと儚いイメージのある雪を冬蛍に譬えることの必然性が感じられず、結句の「哀し」も字面ほどの緊迫性を伝えてくれていないように思う、とする厳しい意見も見られたが、被災地を思う作者のこころはしっかりと伝わってくる一首ではないだろうか。

他に自由詠にお寄せいただいた歌もまとめてご紹介しておきます。

間違えて図書館級の知恵を書くとても寡黙なフクロウが飛ぶ  雨宮司

我さえも冬蛍故死後の墓問ふ人もなし誰かおらぬか  野間亜太子

木には木の空には空のかなしみのあり時として鳥はよりそふ  十谷あとり


以上、六月歌会についてのご報告でした。

今回は、初参加のこまつかおりさまに素敵な歌とコメントをお寄せいただきました。かばん関西では、関西在住の方に限らず、広く短歌を愛する方の参加を心待ちにしております。歌歴や経験などは一切問いませんので、興味のある方はぜひお気軽にご参加ください。

(黒路よしひろ 記)
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by kaban-west | 2011-07-06 10:04 | 歌会報告