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2011年 08月 30日

8月歌会報告

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[かばん関西二〇一一年八月歌会記]

〈参加者〉雨宮司、有田里絵、黒路よしひろ(ゲスト)十谷あとり(日月/玲瓏)蔦きうい(玲瓏・選歌のみ)紀水章生(中部短歌会/塔)三澤達世[五十音順]

今回のお題は「身体」。具体的な部位のみを詠んでもいいということで、百家争鳴の感を呈することとなった。混迷のレースから抜け出したのはどの作品か。類似の主題を選んだ短歌はそれぞれどの様な評価を受けたのか。また、今回初参加の紀水氏の短歌の行方は如何。乞う御期待。

〈エロス対決〉
変形は出来ないけれど合体は出来るよ夜のらぶらぶマシン  黒路よしひろ 1点
ガードする間もなく熱くなる胸をひとりのために開く夜もあり  有田里絵 2点

片やキッチュでポップな作風で乾いた感性を前面に押し出した短歌。片や与謝野晶子ばりの浪漫路線で抒情を表に出した短歌。好対照な作品の競演となった。「変形もできるのでは」「釣り○カ日誌かと突っ込みたくなる」と酷評される一方で「エロスもこれぐらい蒸留されるといい味になる」「どろどろとしたいやらしさがないところが好き」と高評価も受ける黒路作品。「『開く夜もあり』で全体が弛んでしまった」「ユーモアには勝てない」と評されながらも「女は胸で恋をするのか」「恋というのはガードする間なんてない」と確実に点を稼ぐ有田作品。結果は頭ひとつの差で有田氏が競り勝ったが、どちらに軍配が上がってもおかしくない名勝負だった。

〈ラジオ体操対決〉
身体の発育うながす逓信省【ていしんしょう】ラジオ体操のみ生きのびる  雨宮司 無点
逆光のラジオ体操長くながく伸びたる影は海へと届く  十谷あとり 3点

 ラジオ体操の由来を軸に据えた短歌と、ラジオ体操の情景を叙情的に捉えた短歌。いずれ劣らぬ……、と言いたいところだが、趨勢は一方的だった。「上句がPRのようで下句とつき過ぎ」「上句が説明的」と上句の不備を指摘される雨宮作品。一方で「夏特有の長い影が非常に印象的」「結句に少年たちの姿と海の夏の無限の可能性の融合を感じさせる」など、好印象が相次ぐ十谷作品。「位置関係が曖昧」という指摘を受けつつも、圧倒的な力量の差を見せつけ、十谷氏の勝利となった。

〈ナスの尻〉
黒光りする曲線の艶めきてまがつたナスの尻あまた見ゆ  紀水章生 2点

今回初参加の紀水氏。「今回、見立ては選ばない」との意見もある中、篤実に写生句を詠んだ。「丁寧すぎる描写が少々説明っぽい」との指摘はいいとして、「みんな同じ服装をしている就活の女性たちを想像した」という妄想系の意見まで飛び出す混乱の中、「眼前のナスに徹底しても面白かったのでは」「ナスの尻という表現が独自のテイストを作り出している」との好意的・建設的な評もしっかりと押さえ、無難な船出となった。

〈焦燥〉
血管を見つけられない看護師の額に浮かび始める焦燥  三澤達世 4点

 今回の最高得点歌。「具体的に情景が想像できる」との肯定的な意見もあるなか、肯定しつつも「焦燥」の語が何とかならないかという意見が相次いだ。瑕が解かっていながら点を集められるのは、潜在的な短歌の力が強い証拠。

 続いて自由詠を一名一首ずつまとめて紹介いたします。

かぶとむしゼリーは虫の食べ物よ今日三度目の説明をする  三澤達世 5点
しゃっくりを百回したら死ぬという今まだ二十五回目だけど  黒路よしひろ 無点
ソンシツとカタカナ書きができぬ子が増えているらし ンンシシ・ソソツツ  雨宮司 1点
翳りある午後のひととき抱きかかへ花より花へとうつりゆく蝶  紀水章生 2点
砂洲公園のどけからまし堤防の外の四海波静かなりせば  十谷あとり 1点
ただいまの声聞いてからコーヒーをアイスにするかどうか決めよう  有田里絵 1点

 今回は突出した短歌が少数あり、それらを追う短歌への票が分散するという傾向が顕著にみられた。悔しいが、実力のある短歌にはその感情もこめて素直に頭を下げねばなるまい。なお、今回の対決は当初から意図して為されたものではなく、偶然類似題の短歌が送られてきた結果、編者が仮想対決を行なった結果だと付記しておく。いずれは追われる立場になりたいという思いを籠めつつ、今回はここでペンを置きたいと思う。
                                             (雨宮司・記)



写真は有田家の収穫、白ゴーヤーです。(十谷)
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by kaban-west | 2011-08-30 08:34 | 歌会報告