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2011年 11月 01日

10月歌会報告

かばん関西十月歌会 報告

[歌会参加者]あまねそう(詠草のみ)、雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト 詠草のみ)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、十谷あとり(日月/玲瓏)、月下桜(コスモス 選歌のみ)、蔦きうい(玲瓏)、那由多(ゲスト)、野間亜太子(詠草のみ)、ひろこ(ゲスト 選歌のみ)、文屋亮(玲瓏)、三澤達世

[いちご摘み参加者]雨宮司、ガク、紀水章生、黒路よしひろ、こまつかおり、十谷あとり、月下桜、那由多、ひろこ

今回の兼題は進行係担当の雨宮司さんご出題の「虫」。「奇をてらわず常識を踏まえても充分にいい歌が詠める」との出題者のコメントのもと、十二名が正面から「虫」と向き合い、兼題の部二十八首、自由詠の部十八首、合計四十六首を出詠しました。まず兼題の部より作品をいくつかご紹介いたします。

・商店のしぼんだ浮き輪 蝉しぐれ 三浦半島 8月20日  あまねそう

夏の終わりの寂しさを、地名を含めた具象を並べることによってうまく描きだした歌。三浦半島という地名が効果的、全体の調べや下句のハ音の並びが気持ちいい、との評がありました。

・放射能を恐れて過ごししこの夏の窓より一度だけ見たるホウジャク  文屋亮

放射性物質への不安に窓を開けることもできず、かといってクーラーをつければ節電が気になり……と、心の晴れない二〇一一年の夏を振り返った歌。ホウジャク(蜂雀=スズメガの一種)という、地味ながら身近な虫を斡旋したところに作者の観察眼の確かさが感じられます。

・金粉が舞い立つように川面【かわも】へと揺れては動く蚊柱の夕  雨宮司

風情のある情景を切り取った作品。上句の直喩がよい、細かい表現がよいとの評を集めました。結句「夕」での体言止めや、ふりがなの必要性、動きの表現が忙しいのでは、と、表現に関する意見も出されました。

・あめんぼの作る波紋に揺れている世界はどこか歪なかたち  黒路よしひろ

あめんぼの小ささから、世界の大きさへと広げてゆく手法がよいと好感を呼び、互選八点を集めました。水面の歪さや世界の歪みに、何か象徴的なものを感じるとの評も。

・闇出でて月の光を呼吸する野に鈴虫のこゑ響きたり  紀水章生

月の夜に鳴く鈴虫という、古くから詠みつがれてきた題材に正々堂々と向き合い、歌いおさめた作品。静かな描写がよい、奇をてらわず丁寧にまとめているとの読みが出されました。初句は「闇に」とした方がよいのではという意見もありました。

・ゴキブリを捻り潰したあの人の目を見て少し怖くなる夜  那由多

今回の兼題に(害虫の歌ばかり出ていたらどうしよう)と、いささか不安もあったのですが、ゴキブリの歌が二首だけでほっとしました。閑話休題。ゴキブリよりも怖ろしいのはヒト?という一光景を切り取った歌。「叩き潰す」ではなく「捻り潰す」としたところから「あの人」ひいては人間の中に潜む凶暴性が伝わってきます。

・月光に輝く病棟繭のごと内に消えゆく魂もあり  ガク

安部公房の「赤い繭」を月夜に置き換えたかのような一首。病棟の中で、湯の中でほどかれる繭玉のようにすーっと消えてゆく魂があるとしたら、と、想像力を刺激されました。繭のように内に消える魂とはどういうことかわかりづらい、繭と魂の消失という組合せは相応しくないのではという意見もありました。

・山葵香の生ハムランチ秋晴れのクスコ濠町蜻蛉亭にて  蔦きうい

ことばを自在に遊ばせて世界を構築した歌。生ハムに山葵、秋晴れとクスコ、濠と蜻蛉という取り合わせもお洒落。ただ下句の情景は虚構味が強すぎて想像が追いつかず、読み手を置いてきぼりにする傾向も。長崎オランダ村、志摩スペイン村のように、どこかにクスコ村があるのかもしれません。

・秋晴れに何も干さない銀の竿戻っておいで昨日のとんぼ  有田里絵

とんぼとに呼びかけるやさしさが素直に伝わる作品。無骨なステンレスの物干し竿も「銀の竿」と呼べば実に詩的。童謡「赤とんぼ」を彷彿とさせる、とんぼとの心の交歓がすてき、切ないところがよいとの評が出されました。

自由詠より、作品の一部のみご紹介いたします。

・よく晴れた選挙の朝だドッグランを公約にする候補は無視で  三澤達世

・台風にベランダ並ぶ生首を次に備えて1 部終へり  野間亜太子

・届いている未来を投げ捨て生きる日々魚座の私は泳いで生きる  那由多

・偽りのすがたを映す鏡からちひさな星のかけらを拾ふ  紀水章生

また、歌会進行の合間に、メーリングリスト上で「いちご摘み」を行い、九名の方から四日間で三十一首の作品をお寄せいただきました。

おかげさまでこの秋より新しいお仲間も増え、メーリングリスト歌会もますますにぎやかになってまいりました。また年末年始にオフライン歌会も催したいと考えております。どなた様もご参加いただけますので、どうぞお気軽にお問い合せ下さい。
かばん関西歌会が、これからもずっと、参加者のみなさんにとって、歌うモチベーションや刺激を得られる場、そして何より気持ちよく歌を楽しめる場でありつづけるよう、参加者のみなさんとともに盛り上げていきたいと思っております。(十谷あとり)
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by kaban-west | 2011-11-01 12:46 | 歌会報告