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2012年 02月 03日

1月オフライン歌会報告

かばん関西一月オフライン歌会報告

[参加者]雨宮司 有田里絵 黒路よしひろ(ゲスト) 十谷あとり(日月)

一月二十九日(日)、大阪市中央区のボタン店事務所にてオフライン歌会を行いました。2012年上半期の歌会運営の打ち合わせ、特別企画の経過報告、歌会とプチ朗読会を行いました。歌会の互選上位歌は左記の通りです。

・英文法正誤問題解き終えてバツが五つのわたくしなりき  有田里絵
・秘密裏にすべては進む比類なき僕の「明るい家族計画」  黒路よしひろ

朗読会では、雨宮さんが穂村弘『にょにょっ記』、有田さんが『福田かおりさんの小さなおしゃれのアイデアノート』、十谷が『伊東静雄詩集』・絵本『てぶくろ』をそれぞれテキストとして使用しました。三名が他者のテキストを朗読する中、黒路さんは自作短歌の連作を熱を込めて披露して下さいました。自作を声に出して読むことの大切さをあらためて感じました。またこのような機会も設けていきたいと思います。

今回は会場に、蔦きういさん(玲瓏)が、お子様と一緒にお立ち寄り下さるというサプライズがありました。いつもメーリングリストで歌について意見を交わしている方と、実際にお会いして親交を深めることができ、とてもうれしかったです。
次回のオフライン歌会は五月頃を予定しております。(十谷あとり 記)
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by kaban-west | 2012-02-03 18:02 | 歌会報告
2012年 02月 03日

1月歌会報告

[平成二十四年一月かばん関西オンライン歌会記]

〈歌会参加者〉雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、十谷あとり(日月)、月下桜(コスモス)、蔦きうい(玲瓏)、冨家弘子(ゲスト)、那由多、文屋亮(玲瓏)、三澤達世

今回の兼題は進行係担当の不肖・雨宮の出題「松」。「必ず題を詠みこむこと」というコメントの下、十二名が兼題と向き合い、兼題の部二十一首、自由詠の部十一首、計三十二首の盛会となった。まず兼題の部から作品をいくつか紹介しよう。

〈松子って、誰。〉
・云ひたきを云ひて脹るる五體なら引き倶しい行け松子絢爛  十谷あとり 3点

短歌のイメージに合う松子が誰なのかが読みの重要な争点となった。多くの者が「嫌われ松子の一生」の主人公だと主張する中、ひとり雨宮が「マツコ・デラックスでしょう」。コメント発表後の十谷氏のタネ明かしは、マツコ・デラックス。だって結句を英訳すれば、そのまんま名前になっちゃう。原文って重要ですね。

〈歌枕対決〉
・末の松山やはり津波は越えざりきと多賀城の人【ひと】声を強くす  文屋亮 3点
・来ぬ人を松浦【まつら】の姫の一途さに『万葉集』の頁を閉じる  雨宮司 無点

片や百人一首であまりにも有名な歌枕となった「末の松山」。片や万葉集の佐用姫伝説の舞台となった「松浦」。好対決になるかと思いきや、結果は一方的に。社会性をさり気なく織りこませた文屋氏に対し、「来ぬ人を松浦」は藤原定家が既に使っていると、チェックの甘さを指摘される雨宮。帰趨は明らかであった。

〈高得点歌〉
・海鳴りの底にたゆたうひと妻の名を松風が運び去りにき  蔦きうい 7点
・雪うさぎ松葉のひげを自慢げに陽だまりのなか吾子と跳ね飛ぶ  ガク 6点
・遠回しに言われて母を問う夕べ松いつまでもとんがっている  冨家弘子 6点
・宿題で松ぼっくりがいるという娘と日暮れの歩道を探す  三澤達世 6点
・この松はおまえにやると爺ちゃんに言われ戸惑う幼き僕は  黒路よしひろ 5点

一首目。津波に架空(と思われる)の事象を織りこませ、詩情のたゆたう、否、漂う短歌となった点に評価が集まった。「ひと妻」がポイントだという指摘もあった。
二首目。雪で作った兎か本物の兎かという点で見解は分かれたものの、楽しそうな一首だという点では衆目が一致した。どっちなんでしょうね。
三首目。なぜ「母に」ではなく「母を」なのかという意見が散見された。「母の死が暗示されている」、「母に会いに行く」など、様々な説が出された。下句に関しては、「全体の統一感を損ねている」との厳しい評がある一方で、気持ちが的確に表されているとの好意的な評も目立った。
四首目。「音がすぽすぽ壺にはまる」との意見も出るほど、自然に情景が流れている。親子の微笑ましい様子に心を和ませる意見も多く、順当な上位入りとなった。
五首目。盆栽か庭木かで見解が分かれたものの、祖父の孫に対する情と、唐突に松を譲られた孫の戸惑いに、理解や、感覚のずれを楽しむ意見が目立った。なお、作者によれば、本当は祖父ではなく祖母に言われたとのこと。

自由詠より、一部の作品を紹介いたします。

・新幹線のりばに入れば新幹線だけしかこない白い車両の  月下桜 3点
・音楽が好きで良かった同じ朝に起きても異なる歩幅で歩く  那由多 1点
・後悔はもうしたくない朝イチにコピー用紙の束しならせる  有田里絵 5点
・傾いたワインの角度を修正すトロッコみたいに危なつかしい  紀水章生 2点

一首目。奥村晃作氏のただごと歌を髣髴とさせる短歌。白い車両だけしか走らない路線区間は限られている、という指摘もあった。
二首目。「異なる歩幅で歩く」で夫婦生活の危機を連想する者、多数。違いを認めつつ互いに歩いていく、という連想は、実は非常に少なかった。ちなみに作者は「これは夫婦について詠んだ歌ではなく、音楽によって自分の様変わりしない日々の景色が様々に変化していく……」という自分自身の経験を元に詠んだあくまで個人的な歌である、と言っている。
三首目。朝から気を張って仕事に向かう姿が、様々な方から好感をもって迎えられた。具体的な内容の手がかりが欲しい、との指摘もあった。
四首目。ワインやトロッコを描いているようで、実は関係性の危うさを描きたいのではないか、また、この世の中は危なっかしいものに満ちている、という読解が相次いだ。中には、ワインセラーが自宅にあるのでは、という豪快(?)な読みも。

 おかげさまで、かばん関西のメーリングリスト歌会も盛況を保っています。常識をわきまえている方ならば、どなた様も御参加いただけますから、どうぞお気軽にお問い合わせください。
 モチベーションの維持は意外に大変なものですが、かばん関西では詠草やコメントの作成を面白がる気風が古くからあり、みんなで盛り上げていこうとする空気で満ちています。これからもこの気風を楽しむ人々であふれる場であり続ける様、現状に驕ることなく、しかし遊び心を忘れずに、皆で活動を続ける所存です。     (雨宮司)
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by kaban-west | 2012-02-03 18:00 | 歌会報告