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2012年 05月 20日

5月中之島吟行歌会

♪♪♪ かばん関西五月 中之島吟行歌会記 ♪♪♪

<日時>平成二十四年五月二十日(日曜日)午後一時から午後五時五十五分まで
午後五時までの予定でしたが延長しました。

<場所>地下鉄御堂筋線淀屋橋駅一番出口下に集合 → 中之島周辺散策 → ボタン王子のお店(大阪市中央区)

<出席者>雨宮司、十谷あとり(日月)、黒路よしひろ(ゲスト)、
蔦きうい(購読・玲瓏)、塩谷風月(お店から合流)、三澤達世、有田里絵

四ヶ月ぶりのオフライン歌会が開催されました。
今回は埼玉の三澤さんがご参加下さるとのことで、数週間前から皆わくわくしておりました。
女子三人が合流して淀屋橋に到着すると、既に雨宮さんと黒路さんの姿がありました。
蔦さんもほどなくご登場、ゆるやかに中之島吟行が始まりました。

それでは皆様の歌とともに、散策の様子をお伝えしてまいりましょう。
当日は淡く雲のかかった空模様でした。雨の心配もなく、暑すぎもせず、
紫外線を気にしながら外歩きをする女子にはうってつけの気候でした。

☆紙せつけん透かすがごときとのぐもり裸像の指は空に触れをり  十谷あとり

この歌は「とのぐもり」という言葉の詳細がわからなくても雰囲気の伝わる歌です。
ノスタルジックな「紙せっけん」の儚さとまろやかさは、裸像がおそらくブロンズの女性像であり、
指を空に向けてふわりと(ぴしっとではなく)伸ばしている様子を想像させてくれます。

☆歌なんか詠んでる場合か麗らかに川も仲間もやさしげだから  蔦きうい

実はかばん関西のリアル歌会には初参加だった蔦さん。カメラを首にかけながら歩いておられました。
最初からこの歌の心境でいらしたのでしょう。
手帳とシャープペンシルをしっかり握っていた私が「何も書かないんですか」と質問したら、
「書かない」と一言。
手作りクッキー、やさしいお味でとっても美味しかったです!ごちそうさまでした。

☆気をつけてくれなきゃ困ります僕が迷子になってしまわぬように    黒路よしひろ

道に迷うことがけっこうあるという黒路さんは、歌碑の撮影が趣味でいらっしゃいます。
迷子になりながら集めた写真コレクションは必見です。
「困ります」がコミカルで、「しょうがないわねえ」と連れて行ってあげたくなります。
コーヒーの差し入れありがとうございました!

☆ある程度目をつぶろうと決めたときまるいメガネの広告に合う  有田里絵

中之島図書館の前辺りで、通行人のマダム(オフホワイトのジャケットを着ていた)が
「ある程度目をつぶろう」と言ったのが聞こえた後、たまたま学生アート展の広告が目に入りました。
その二つをつなげて出来た歌です。
何に目をつぶるのか何も書いていないところが良いという意見や、
「合う」は「会う」ではないだろうかという意見が出ました。

☆ばら園のばらの揺れゐるひとところ鋏を使ふ作業着のひと  十谷あとり

大阪市主催のガーデニングに関するイベントがあり、その人出の中を一同歩いていきました。
バラはいちばんの見頃を迎えていました。
こんもりと葉の茂ったあちこちで、手入れをするボランティアさんの姿が見られました。
「ひと」の平仮名のリフレインが、作業する人の手の動きと優しさを思わせます。

☆街川に佇みて想うみなもとの麦の穂波は風に揺れしか  塩谷風月

久方ぶりにお会いできた塩谷さん。メールをいただいていたのに気付かず大変失礼致しました。
大阪の街の真ん中を流れる淀川ですが、もともとは琵琶湖から流れ出た水です。
この歌には、自然の営みの不思議や「あなたはどこから来たの」という素直な感覚があります。
いま実際に淀川の水源を見たらどんな気持ちがするのでしょう。

☆難波橋ライオン像は西阿形【あぎょう】東吽形【うんぎょう】のまま凍りつく  雨宮司

そして一行は難波橋(なにわばし。浪速橋とも)を渡り、オフィス街へと分け入ります。
この歌は橋のたもとで対になって座っている石の獅子像を詠んだ作品です。
結句の「凍りつく」が時間の経過を感じさせます。しかし、あの口に手を入れたくなるのは私くらいでしょうか。

☆自転車は止まっていても主張する「母の介ゴに必要です」か  有田里絵

放置自転車満載の大阪市内。
荷物はほとんど載らない小さな籠がついただけの古い自転車でしたが、
真横に太マジックで直接「撤去しないで下さい。母の介ゴに必要です」と書かれていました。
撤去逃れなのか本当に介護に必要なのか判断できませんでした。

☆難読の地名多くて外国の人に向けたるローマ字を読む  三澤達世

旅先で地名の漢字が読めず、先にローマ字を読んで理解することはよくありますね。
後で三澤さんに伺ったら「道修町(どしょうまち)」のことでした。

☆変わらぬは川面のひかりゆらゆらと変わりたる吾おだやかに見つ  塩谷風月

私が初めて歌会に出席した時も塩谷さんにお会いしました。既に七年前です。
その時も川面は同じように光をたたえていたのでしょう。
川も人も、穏やかに時が過ぎることを願っています。

☆私の身代わりとなり割れたのだ携えてきた草加煎餅   三澤達世

そしてボタン王子のお店に到着しました。
三澤さんがお土産に草加煎餅をご持参下さいました。ごちそうさまでした!
すっきりした歌いぶりで、「割れたのだ」の言い切りの形が高評でした。

早速ばりばりと音を立ててお煎餅をかじり「邪魔しに行く」と言った蔦さんの先には、
戸口に立って推敲に励む黒路さんの姿がありました・・・。

以上のように吟行詠草の選歌と意見交換の後、それぞれ最近良かった本を紹介しました。
一時間近く延長となりましたが、
お店のシンボル、白クマ王子に見送られながら一同心地よくお店を後にしたのでした。
十谷さんには毎回場所をご提供いただき感謝致しております。ありがとうございます。

皆様、長時間お疲れさまでした!今回も発見いっぱいでしたね。
この歌会記でかばん関西の充実度を少しでも皆様にお伝えできれば幸いに存じます。(有田里絵/記)
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by kaban-west | 2012-05-20 10:25 | 歌会報告
2012年 05月 07日

4月歌会報告

[平成二十四年四月かばん関西歌会・歌会記]

 今回の兼題は若葉の「若」。この漢字を使っていればどの様な慣用読みでも良しとした。難しかったのか出足は不調だったが、最終的には十名が、題詠十首・自由詠十首、計二十首の詠草を投歌した。また、選歌・コメントには一名増の計十一名が熱い思いを記して下さった。

■参加者
  雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、十谷あとり(日月)、蔦きうい(購読/玲瓏)、冨家弘子(ゲスト)、那由多(選歌のみ)、野埜百合、紀水章生(中部短歌会/塔)、三澤達世

■兼題「若」の部

〈頂上対決〉
 桜咲く薪能にて金色【こんじき】の業ゆらめかす般若の瞳  雨宮司  7点
ひととせをまた旧りぬれば花の下野鯉の鰭は若らかに揺る  十谷あとり  8点
片や実力よりもムラッ気が先に立つへっぽこ歌人・雨宮。片や毎月の如く完成度の高い作品を詠み続ける実力派・十谷氏。ムラッ気が恐ろしい方向に作用し、共に大多数の支持を集める激戦となった。「幽玄だ」「まとまりがある」といつにない高評価の雨宮作品。「格調高い」「目に浮かぶようだ」など、コンスタントに評価を集める十谷作品。互いの作品に加点するという状況の中、双方一歩も引かない展開に。決着をつけたのは、最後に選歌した三澤氏の1点だった。

〈若さって、〉
エッチなるDVDに保存されこのまま若くあれ椎名りく  黒路よしひろ  3点
風邪やねとおずおず諮る若先生が過去をつよがる鰈のタトゥ  蔦きうい  2点
「シタモサバン」若いふたりの遅ごはん「明日も朝番」「お箸ちょうだい」  冨家弘子  1点
人を待つ時間の岸辺 若かつたあの頃ならば駆けだしてゐた  紀水章生  5点
一首目。毎月エロス歌に挑戦している黒路氏。今回は「エッチなる」という言葉に評価が集まった。「俗に過ぎる」との辛い評もあったが、「妙な可笑しさがある」「男の子なら一度は通る道」など、好意的な評が多かった。ちなみに、椎名りくはAV女優らしい。
二首目。「若先生」よりも、「鰈のタトゥ」に衆目の関心が集まった。「蝶の間違いでは」「鰈とは珍しい」との意見が出る中、「若先生」と「タトゥ」とのギャップへの言及も少なからず見られた。
三首目。「シタモサバン」の謎に全員が挑む展開に。「解からない」と頭を抱える者も少なからずいる中、第四句「明日も朝番」を食事しながら話した時の声をそのまま表記したのでは、という見解が優勢に。
四首目。「時間の岸辺」という表現に対し、「既視感がある」「歌のイメージが分散する」という評も見られた一方で、「主題に合っている」「年齢をある程度重ねた者の歌とすると深みがある」など、高評価もあった。

〈表現いろいろ。〉
一昨日も食べたセットのコーヒーをアイスに変えて若夏のカフェ  三澤達世  3点
しんぷから与えれらえたるキスの味死刑若しくは無期懲役  ガク  1点
若王子【にやくわうじ】から銀閣寺肩よせて西田幾多郎思索しし径【みち】  野埜百合  2点
花のあと正しく若葉ひろがりぬ1たす1が4になった日  有田里絵  1点
一首目。「若夏」に高評価が集まるものの、辞書に載っていない点を気にする者もいた。若夏とは沖縄で季節を表す言葉らしい。カタカナの多さへの指摘もあったが、軽い調子に合っていると肯定的に捉えられた。
二首目。「神父」か「新婦」か。どうやらどちらにも掛けているらしい。結婚が死刑宣告だとはまた古風な。「若しくは」は確かに、言われてみるまではなかなか思いつかない用法。
第三首。若王子という地名を使い、哲学者・西田幾多郎ゆかりの哲学の道を導きだす手法はなかなかのもの。……だったが、「思索しし」が文法的に間違っているのが大きな減点対象に。短歌はやはり、ひと言が恐ろしい。
第四首。下句の謎に論点が集中した。はて、「1たす1が4」とは? 事情を知っている者は家族が増える様をある程度容易に想像できたようだが、言語表現は多くの者に伝えられてこそのもの。元のかたちそのままでは、少し伝わりづらいと思う。

■自由詠の部
 自由詠は小党乱立の感があった。比較的評価の高かった詠草を掲載する。敢えて評は載せない。皆様もあれこれ推察してみてほしい。

非対象のセーター一枚畳みかね首をかしげる夫を眺むる  三澤達世  6点
 ※歌会終了後、作者から「非対象」は「非対称」の誤変換だったとの申し出があった。
春の疎林くすぐりながら飛びまがふしじふからお前に話がある  十谷あとり  5点
酸欠の金魚のやうに水滴のつたふガラスの空へ貼りつく  紀水章生  4点
死してなお謀殺説が口の端にノーマ・ジーンの長き夕影  雨宮司  4点
少年が伏目のおくで醸すのはピアノ教師の秘せるきたかぜ  蔦きうい  4点
冷蔵庫に桃の缶詰冷やしあるあなたの好きなわたしの好きな  野埜百合  4点

 今月も盛会だった。詠草を出して下さる皆様の協力があって初めて成立する会なので、こうやって歌会が成立し続けていることには感謝しなければならない。興味を持たれた方は、よろしければ一度参加していただきたい。必ず、何か得るものがあると断言できる。お待ちしています。(雨宮司・記)
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by kaban-west | 2012-05-07 09:15 | 歌会報告