かばん関西歌会

kabanwest.exblog.jp
ブログトップ

<   2012年 10月 ( 1 )   > この月の画像一覧


2012年 10月 17日

9月歌会報告

かばん関西9月歌会報告

<参加者>雨宮司・有田里絵・ガク(ゲスト)・川村有史・紀水章生(中部短歌会/塔)・黒路よしひろ(ゲスト)・十谷あとり(日月)・月下 桜(コスモス)・蔦きうい(玲瓏/購読)・冨家弘子(ゲスト)・福島直広・ゆるら(ゲスト)

今月、三人のかたが新しく参加されました。ようこそ、華麗・多彩・大胆な「かばん関西」へ!

さらにパワーアップした今月の歌会、原稿用紙九十一枚分のコメントが集まりました。編集の有田さん、お疲れ様でした。有田式編集手順を確立されたとか。さっそく特許を申請しましょう!

さてお題は「月」。定番テーマですが、いろいろな角度からの月が集まりました。まずは恋愛ものから。

【月に絡む恋】

●なんとなく二人並んで歩いてたただ月だけが見ていた夜だ  福島直弘

何ということのない恋愛情景、気を衒わないシンプルな表現が好意的に受け取られました。下句については、言葉の使い方の細かい指摘がある一方で、二人の気持ちの前進を表現したものだという卓抜な読みもありました。

●ほうつておいてやつてくださゐこの恋はひかりに変はる月の恋です  冨家弘子

一夜限りの恋か、光になって淡く消えていく恋か。そのやさしいフレーズが魅力的な歌です。表記に誤りがあるものの、ひらがなと旧仮名の表現はもたついている自分の気持ちをあらわしているのでしょう。

●波乱めく男をふった悔いがふいに月の寝息のまひるま襲う  蔦きうい

あまい夢を追いかけて破滅の道をつき進んでゆく昭和の時代の男を連想させてくれます。三句の字余りと、下句の強引さ・粗雑さに批判が集中しました。

●天窓の光に青く照らされる君の小指の爪の三日月  ガク

「天窓」から「爪の三日月」へと細部に流れる視点がここちよく、恋人の存在が、幽玄で、壮大で、官能的に表現されています。天窓のある屋根裏部屋で貧しいふたりはトランプをしているという空想的読みも…。

●ホ別2でどうですか?って誘いくる満月の夜にオオカミ少女  黒路よしひろ

「2万円、ホテル代は別」という安い値段で襲ってくるオオカミ少女が、せつなくて、かわいい。「オオカミ少女」と名付けたのは襲われたい男のほうなのだという鋭い指摘もありました。

●ラジオから「月がとっても青いから♪」私は家路を急ぎますので  雨宮司

ノイズ混じりの甲高い歌声が聞こえてきそうです。月を見上げる余裕もなくなってしまった現代人の、「急ぎますので」という冷め具合がユーモラスで、コミカル。しかしこの懐メロ、何人歌えるのでしょうか。

【月と色彩】

●薄雲にうすくれないの円なして真中に白き月の定まる  月下 桜

 「定まる」と表現した結句の月の収まりの気持ちよさや、「う」の頭韻など、細かな表現でこころに残る一首。「円なして」に工夫が必要、満月の時刻に「うすくれない」はおかしいとの指摘も。

●月色のけものなめらかに路地に消ゆ銭湯のあかり消ゆるころほひ  十谷あとり

月色のけものとは? イタチ三票、猫二票、野良犬一票でした。「消ゆ」の繰り返しは、否定的な意見もあったものの、あかりが消え、人も消え、昭和も消えてゆく夢幻の美しさを奏でるのに成功しているという見方が圧倒的でした。今回、票が割れたなかでの最高得点歌です。

【月と自分】

●Uターンいまはできない欠けたまま空の深みをすべりゆく月  紀水章生

欠けたままのぼっていく月に、あともどりできない自らの思いを重ねているのでしょう。「きっと近づいていますよ」という励まし、「作者の輝く明日はあるのだろうか」という懐疑、両方ありました。

●そうなのか私は泣きたかつたんだ月影のびてふところに入る  ゆるら

月影にてらされてはじめてじぶんの裡(うち)の気持ちに気が付くという歌。月の影がそっと、でも強く手を引いて導いてくれたような、不思議な感覚があります。「そうなのか」は賛否両論ありました。

●しやがんでは月に尿をかく我の性癖を犬猫に教ふる  川村有史

しゃがんで月に尿を懸けるという変わった性癖を持った御仁がかばん関西に居たとは…と騒然となった話題作。アナーキーでロマンチックで弱くてメチャクチャで、でも骨のしっかりした、生命感に満ちています。

次に自由詠から、高得点歌および新加入のみなさんの歌を紹介します。

●みづからを持せよ入庫の列車すら西日にあかく耀ふものを  十谷あとり

●花びらの行方を追うてゆきしままもどらぬわれの爪の半月  ゆるら

●しくしくと泣くこと覚ふ子の背【せな】に触れたればもう飛び立ちさうで  冨家弘子

●場所場所を水溜の如隆起さす月面に当てる月光ないか  川村有史

●熱帯びた風まだ残る海岸に寄せて返して右のビーサン  福島直弘

●かくれんぼするとき声のこだまする小さい秋の小さい時間  紀水章生

●四面のテニスコートに四脚の審判の椅子西に向きたり  月下 桜

今月も、大満足の歌会となりました。みなさん、ありがとうございました。

                       (蔦きうい/記)
[PR]

by kaban-west | 2012-10-17 10:59 | 歌会報告