かばん関西歌会

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2013年 06月 30日

6月歌会報告

かばん関西6月オンライン歌会記

[参加者]あまねそう、雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、サカイミチカ、佐藤元紀、十谷あとり(日月)、冨家弘子、福島直広、ふらみらり、兵站戦線、三澤達世  

今回は十四名が参加しました。兼題は「巷」。普段意識して詠むことが少ない題であるだけに、皆さん詠みこみ方に苦労されたようです。
以下に兼題「巷」の投稿歌を紹介していきます。

・液晶の巷の民にフランベをされた醜聞吾には蜜の香 サカイミチカ

露悪趣味を描いた一首。インターネットにおける炎上を「フランベ」と表現するのが効果的であるという意見がある一方、歌意が難解である、詰め込みすぎとの意見も多く出ました。

・誰のせいでもないさただ北口の七色の灯が俺を呼ぶのさ 福島直広

「紅灯の巷」からの連想か、今回は夜の街を思わせるお歌が多く見受けられました。そのなかの一首です。格好をつけてはいるけれどどことなくコミカルに思えるという評もある一方、何について「誰のせいでもない」のかわかりづらいとの意見も。

・抜かりなくジェルネイルした爪先で君は出て行く「ちょっとそこまで」 有田里絵

シンプルな表現の中にどことなく陰が見いだせる一首。初句の持つ含みによって主体の複雑な心境が描き出されています。主体の立ち位置をもう少し明確にすればより伝わりやすいとの意見も出ました。

・(運命の分かれ目だった)脳内でアテレコが付く君に手を振る 三澤達世

アテレコとは、テレビなどで自身が演じていない役の映像に声を当てること。発想が面白い、もう少し具体があればより活きてくるのでは、という意見が出ました。誰の声なのかによって運命の色合いが変わりそう、との感想もありました。

・行く先は左ごくらく右ぢごくちまたの神の思うがままに ガク

あえてひらがな表記で「ごくらく」「ぢごく」としたことで、どことなく飄々とした雰囲気となった一首。オーソドックスに題に挑んだ印象のある一方、もう一捻りが欲しかった、何かオリジナルの表現が欲しかった、という評がありました。

・さらさらと空【ルビ:くう】を流れている霧の密度の濃さにふれる街角 兵站戦線

幻想的な風景を描いた一首。全体が何かの比喩なのでは、という意見もありました。的確な描写によって写実が成されている一方で、説明的でどこに焦点をあてれば良いのかわからないという評も。

・さんずいのない港にてフレッシュを注ぐ、花言葉〈嘘つき〉だって 冨家弘子

「さんずいのない港」というかたちで題を詠みこむ手法が面白い、という声が多かった一首。下句の破調も嘘つきらしくてよい、との意見もありました。コーヒーフレッシュと花言葉については一度で繋がらなかった方もいらっしゃったようです。

・先はいさ足下こそ我が道なれと港に喇叭飲みするブロリオ 佐藤元紀

海に落ちないように気をつけて、と主体へのメッセージが寄せられた一首。映画のワンシーンのような格好良さ、主体の無頼な男らしさが良いという意見の一方で、題の詠みこみ方に賛否両論が出ました。

・繁忙の蟻の巷で往来の草など抜けば大惨事なり ふらみらり

高得点歌。人間ではなく蟻の暮らしを詠むという視点、想像に難くない大惨事の内容、あえて文語でまとめることで強調されるユーモアが票を集めました。助詞の「の」が多い、という意見も。そもそも蟻のことなのか、人間社会にも同じような光景があるのではないか、という疑問もみられました。

・巷にはウワサが絶えない葉を喰つた犯人は鴉かそれとも鹿か 紀水章生

深刻な事態ではありますが、どこかユーモラスとも思える一首。獣害に悩む人々と、作物を荒らす動物の関係性が描かれています。中には破調が気になる、歌としてはもっと突飛な事件のほうが面白いとの意見も見られました。

・コンビニでお握り二個とお茶を買い我ようやくに陋巷に在り 雨宮司

「ようやくに」と強調しなければならない程の主体の隔絶感と、自らの存在への実感が読み取れる一首。買い物の内容やコンビニという舞台、陋巷という熟語が説得力をもたせる一方で、「陋巷に在り」という完成された言い回しに引きずられてしまったのでは、という評もありました。

・巷にて流行れる歌のように火を岩田耕治よ跳び越えてこい 黒路よしひろ

関西オンライン歌会で度々目にする謎の人物岩田耕治と、現在放送中の朝の連続テレビ小説に登場する歌をモチーフとした、かばん関西流の時事歌。三島由紀夫の潮騒を思い浮かべたという評も。歌としては固有名詞の持つ説得力と、定形に収めるために語順がすっきりしないとの意見が出ました。

続いて自由詠から高得点歌を中心に紹介します。

・藻 ゆらゆら オレンヂが降る とまる泡 おちる泡 藻の糸がきしんで  冨家弘子
・初物のキュウリとんとん輪切りにす些細なことは断ち切られゆく  有田里絵
・既読だと告げるLineに返事なく朝顔の種埋めてはほじる あまねそう
・うちしめりかをるおまへを龍安寺の庭に歔【ルビ:な】かせてゐる皐月晴れ  佐藤元紀

かばん関西6月オンライン歌会報告は以上となります。
毎回熱いコメントが山のように寄せられるかばん関西歌会。関西在住の方以外でもメールの送受信が出来れば参加可能です。興味のある方は是非かばん関西ML係までご一報を。

(サカイミチカ/記)
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by kaban-west | 2013-06-30 22:33 | 歌会報告
2013年 06月 04日

5月歌会報告

「 かばん関西五月オンライン歌会記 」

<参加者> あまねそう、雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、久真八志、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀(選歌のみ)、十谷あとり(日月)、冨家弘子、福島直広、サカイミチカ、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線

今回のお題は「こども」でした。こどもの日があるから、という単純な理由で出題しましたが、実生活において子持ちの人にとっては詠みやすく、そうでない方にはやや詠みにくかったようです。

進行係を有田が担当したのですが、詠草一覧を作成する際に転記ミスをしてしまいました。
ご提出くださったメールの詠草部分のみ、フォントが他と違っていたので、
それを揃えようとして手入力で転記しているうちに間違えてしまったのです。
次の歌が、有田のミスで誤植となった歌です。

★ 保育所のひほひをまとはせ帰りくる子にたまりゆく見知らぬ時間

ところが、この歌が最高得点歌となりました。

ほとんどの方(子持ちに限らず)が「にほひ」だと分かったのは、全体を流れる素直な母性が伝わったからだと思います。女性陣並びに育児経験のありそうな方からは共感を述べる意見が主でした。

男性陣からは、「二句目の助詞『を』を外して字余りを避けるほうがいいのでは」という意見や、「『たまりゆく』と『見知らぬ』の主体が違うので、この二つの語を同時に『時間』にかけてしまうと意味の流れがすっきりしないのでは」という意見がありました。そうそう、「集団生活に入ると平気で『ウンコ』とか言うようになる」という声もありましたね。

「こども」って、終始ごちゃごちゃしているものです。こどもとの暮らしは、いらないものがくっついたり、欲しいものに手が届かなかったり、あれもこれもごった煮になった毎日。そこに放り込まれて、なんとかやっていくのが育児の実質であります。少なくとも有田にはそうなので、この歌の表現技法や表記は気になりませんでした。

短歌の読み手になるとき、たいていの場合は自分の経験をふまえて読み進めます。この歌のコメントを読み返して、歌の中から実感を掴む読みの力の大切さを感じました。もし歌の内容が未経験だったとしても、「そうなのか!私に置き換えてみたら、あの件が近いな」と想像する力がいるのだな、ということです。また同時に、実作者として我が身を振り返りたくなりました。自分にしか分からない歌(意図的な場合は除く)を詠んでいないかな、と。

★ 保育所のにほひをまとはせ帰りくる子にたまりゆく見知らぬ時間   文屋亮

この「にほひ」が正です。
キーボードではNの上にHがあるので「ひ」と「に」を誤入力した可能性大です・・・。
文屋さん、本当に申し訳ありませんでした。改めてお詫び申し上げます。

続いて、兼題よりもう一首。

★乳を知らぬ子らを抱きよせ汗ばんだアリサの耳に首に潮風       冨家弘子

このアリサという女性について、不明ながらも惹かれる人が多数いました。耳と首が並立なのでどちらかひとつでよいという意見も複数。冨家さんの自作註によると、蔦きういさんの左の歌を元にしているそうです。

★アリサよ、わけのわからん理由にて男を捨ててどないすんねん    蔦きうい
(第一歌集『似偽地理学者伝』抄より)

こうして更に不明瞭になったアリサでしたが、今月の歌会をお休みされた蔦さんへのメッセージとなりますよう、七夕さまに願っております。

以下、みなさんの自由詠を挙げます。
初めて読まれる方、四首選ならどの歌を選びますか?再読の方、今ならどの歌を選びますか?

● 恋愛のイロハを通り過ぎてから久々に泣く東京映画   有田里絵

● もう少しだけ騙されてみようかな彼女のタバコ見てみないふり  黒路よしひろ

● 大部屋に入院まずは自己紹介「どこ悪いねん」「痔瘻ですねん」   福島直弘

● 神様のサラダのやうな新緑を食べに行こうか扉をあけて    文屋亮

● 野放図でオーケストラには合わないと岩田耕治がバンドを渡る   雨宮司

● エンジンを止めて峠に息つけば「凍結注意」ただ光おり    あまねそう

● 赤い傘さして屈んで泣いてゐた小さなあなた躑躅だつたの   十谷あとり

● (雲が)「ほら、また聞いてないママの話。反省してるの? ねえ」(動いてる!)  冨家弘子

● 夕立に犬は駆けゆく雨粒の一つ一つを目に追いながら     久真八志

● いつまでも何うでもいいこと憶えてる忘れることを忘れた人だ  兵站戦線

● 天の川わたる小舟の見えさうな青き夜未生のわたしに出逢ふ   紀水章生

● フロートの黄色の連鎖記憶より拾い上げたるすべての海へ    サカイミチカ

● バリスタが淹れる珈琲満ちてゆくカップになって眠りゆく夜    ガク

ご覧のとおり、バリエーション豊かなかばん関西歌会です。
どうぞお気軽にご参加ください。楽しみにお待ちしております。(有田里絵/記)
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by kaban-west | 2013-06-04 12:46 | 歌会報告