かばん関西歌会

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2013年 09月 28日

初秋江之子島歌会報告

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かばん関西歌会 初秋江之子島歌会報告

[参加者]雨宮司 有田里絵 ガク(ゲスト 詠草のみ) 黒路よしひろ(ゲスト) サカイミチカ 塩谷風月(シアンの会) 十谷あとり(日月) 田中素奈(ゲスト) 蔦きうい(玲瓏) 冨家弘子 福島直広 ふらみらり

九月八日(日)、大阪市西区の江之子島文化芸術創造センターにてオフライン歌会をとり行いました。
今回オフライン歌会に初参加して下さったのは、サカイミチカさん、田中素奈さん、冨家弘子さんのお三方。二回目のふらみらりさんも加わり、ここ数回で次々と新しい仲間をお迎えして、出席者十一名という賑やかな歌会となりました。
今回は吟行ではなく、事前に用意した詠草を当日互選・批評する型式とし、帰省のおみやげや手作りのパンなど差し入れを美味しくいただきながら、真剣に楽しく読みを分かち合いました。
詠草の一部をご紹介いたします。

・ステップに落ちたプリクラ踏みしだく人数えればみんな革靴  サカイミチカ
・聴覚が雨に溶けゆくしょびしょびとやむあてもなく降り継ぐ中で  雨宮司
・はろばろと別れたひとの子をあやす漁村ほしくずラヂオ汐騒  蔦きうい
・もっともっともっとしずかな夕暮れに流れついてホラ貝として居る  冨家弘子
・四貫島の〈バッカス〉に行けば会えるとふどんな星でも呑み込むをとこ  十谷あとり
・塾のバス土曜の暮れを走りゆく地蔵盆にも止まってあげて  有田里絵
・びりびりと皮膚が帯電してるから浮遊している言葉が痛い  ふらみらり
・ギギギギと言いながらひとは燃えるのかはだしのゲンに教わった夏  塩谷風月
・夏なのでええ夏なので言いますが「基本的には谷間は好きです」  福島直広
・夕焼けに紺がじわりとしみわたり世界の終わり三日月光る  ガク
・エロっちい本をひろったカズくんがぼくらの秘密基地の隊長  黒路よしひろ
・ここにいていいんだよって包まれる感触に酔う君との別れ  田中素奈

次回のオフライン歌会は二〇一四年二月頃を予定いたしております。



画像は蔦きういさんによる「阿波座大研究」散策マップです。

(十谷あとり 記)
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by kaban-west | 2013-09-28 18:29 | 歌会報告
2013年 09月 27日

8月歌会報告

かばん関西8月オンライン歌会記

〈参加者〉
あまねそう、雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、川村有史、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、十谷あとり(日月)、鈴木牛後、田中素奈(ゲスト・詠草のみ)、蔦きうい(玲瓏)、冨家弘子、福島直広、ふらみらり、兵站戦線、三澤達世

〈題詠の部「地」〉
今回の兼題は「地」。特に詠みこむ必要はないのだが、個人的には難題だったと思う。もっともそれは各人各様だったらしく、様々な「地」が詠まれた。さて、いかなる詠草が寄せられたか。

大佐亡き夏のつれづれ何となく焦土に飽いてひとと別れぬ  蔦きうい
我の立つところを地平線と呼び我が中心より日を昇らせよ  鈴木牛後
弟かと思ひ名を呼び近づいたがよく見てみると広野であった  川村有史
うわ着、靴、くつ下、ぱんつ、胸ぱっど、地に投げ捨てて飛び込めわたし  黒路よしひろ

一首目。先月に引き続き、大佐夫人を詠みこんだ蔦氏。退廃的な雰囲気に好感を抱く者が少なからずいた一方で、SF的な設定についていけないと述べる者も。二首目。オレサマ感が強い、傲慢、自己中心的、ジャイアニズムっぽい、神様か、等の意見が出される。それでもマイナスの評価が致命的にならないのは、恥じることが全くない姿勢にある、また、男らしい崇高な意気込みにあるという指摘がなされる。「地平線」が主体の立ち位置を曖昧にしている、まだ未来の大人の姿の自分に嘘をつく必要がないから言える、との見解もそれぞれ出された。三首目。「広野」はおそらく「こうや」だろうとの見解が多数を占める一方、兼題がなければ誤読するとの見解もあった。スケールの大きさに好感を抱く者がいる反面、動詞を整理する必要があるという指摘もあった。四首目。ものづくしだけで終わらず、その後の清々しいダイナミズムに惚れこんだ者が多かった。インドアを連想する者もいたが、「地」の一言でアウトドアでの出来事と受け止める者が大半だった。衣服を投げ捨てる順番の違いを指摘する者や、読点の使用にやんわりと異議を唱える者もいた。

波の立つ市営プールではしゃいでる盆地っ子達の蒸し暑い夏  福島直広
足下の道はかの地と続いてる しゃがんで撫でるアスファルトの熱  ふらみらり
歌ひとつ奪はるる世にあかあかとあめつちのたえはてむ日の見ゆ  佐藤元紀
羽ばたきは輝く白い矢に変はる地より天へと昇りゆく鷺  紀水章生

一首目。「盆地っ子」という言葉への好意的な意見、多数。市営プールとの取り合わせも好意的に受け取られた。そのうえで、結句は別の終わらせ方もあったのではという意見も複数出された。二首目。足下のアスファルトの道が「かの地」へとつながっているという認識がよい、との意見が多かった。一方、感慨深く撫でるには暑すぎるのでは、かの地がイメージできない、等の指摘もみられた。三首目。歌が無くなったらこの世は絶える、生きることはあめつちから言葉を奪い続けるいとなみであったと思うことなのか、短歌が自由に詠めない世はロクな時代じゃない、等、内容に深く突っ込んだ意見が多くみられた。四首目。すっきりとした美しい歌、鮮やかな詩である、との意見が寄せられる一方、逆光になるので黒い矢に見えるのではないか、鳴き声(確かに美しくはない)を聞くと幻滅する、という意見も。鷲と読み違えて解釈した微笑ましい分析もあった。

あこがれにあこがれをかさね寝転がり地につつまれて空へ、心を  田中素菜
夕暮れが生成されるかの地では葡萄実る頃アカとアオが死ぬ  冨家弘子
iPhoneの地図を操る指先で愛撫をされる人のあること  三澤達世
歩くたび地面に落ちるため息は風にころがりちりぢり消える  ガク

一首目。身をあえて大地に委ねて広大な空へと憧れる主体の心情が率直に伝わる、青春を謳歌している歌、啄木の「空に吸われし十五の心」を連想する、渇望する感じはよく伝わる、等、心象を重視する意見が圧倒的に多かった。一方で、結句の弱さを指摘するコメントもあった。二首目。不思議な理屈を納得させるSF的抒情がある、宮沢賢治作品のような幻想的で不思議な世界観が魅力となっている、春日井健へのオマージュがあるのではないか等、読み手の想像力を掻き立てる意見が目立った。反面、結句の弱さや無理な押しこみを指摘する声もあった。三首目。新たなエロスの発見の妙がある、指先が色っぽい等、エロスに言及する意見が大半を占めた。結句については、流している、生臭さが抑えられていると、意見が分かれた。エロスが幼びていて直喩的すぎるという意見もあった。四首目。ため息が消えることが全然救いになっていないところが肝、無用のエロティシズムを出さない為には吐息でなくため息である必然がある、ため息の対象を言わないところがいい等、ため息に共感する意見が目立った。一方、ため息は地面に落ちずに空中を漂うのでは、という意見もあった。

究極の地産池消は腕の中妹はまた乳を飲ませる  有田里絵
地中には守られるべき命あり真夏の土はひんやりとして  あまねそう
エネルギー地産地消をこの国の木質ペレットメンテも楽で  兵站戦線
炎熱の地平は揺らぐ夕暮れの山吹色の陽が落ちるまで  雨宮司

一首目。母乳を与えて子を育てる様子を地産池消と述べたことに、議論が集中した。着眼点がユニーク、母性には勝てない、と肯定的な意見がある一方で、味気ない感じもある、キャッチフレーズっぽい、究極よりも的確な言葉があるのではないか、腕の中が表現を急ぎ過ぎた感があるのでは等、表現に関する指摘も多かった。二首目。目に見えない世界に言及されると世界が広がった気がする、命が何なのか限定しないで歌に広がりを持たせる表現は上手いと思う等、手法への言及が多かった。反面、全部読者の想像に任せてもいいのか気になったという意見もあった。三首目。言わずもがな、表現が甘い等、結句に関する苦言が集中した。一方、しらじらしさを歌いたかったのではないかという見解もあった。四首目。景色の後ろの作中主体の感慨が迫ってこない、夕暮れと陽が重複している等、苦言が目立った。大胆な表現の省略が求められるのでは、との示唆がステップアップの道標かもしれない。

〈自由詠〉
かばん関西では自由詠を毎月募集している。高得点歌を中心に紹介したい。

悔悟とは何の謂ぞや熱帯夜の閨におまへと十字架をなす  佐藤元紀 
笑つてゐるやうにも見える政治家のポスターに吹く風 熱帯夜  鈴木牛後
「吻我・」の右側にある「キスして。」を人さし指でなぞる七月  川村有史
朝の犬 腰を落として用便す 我を見上げて「すまんね」と言う  ふらみらり
寺町のビフテキ店で知り合ったヴィオラ奏者の指が冷たい  蔦きうい

かばん関西8月オンライン歌会報告は以上となる。
毎回熱気あふれるコメントが大量に寄せられるかばん関西歌会。メールの送受信ができれば関西在住でなくても参加可能だ。興味のある方は是非かばん関西ML係まで御一報を。  (雨宮司・記)
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by kaban-west | 2013-09-27 18:16 | 歌会報告