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2014年 02月 03日

1月歌会報告

かばん関西2014年1月オンライン歌会

[参加者]あまねそう、雨宮司、新井蜜、有岡真里、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、サカイミチカ、佐藤元紀、塩谷風月(レ・パピエ・シアンⅡ)、十谷あとり(日月)、鈴木牛後(購読)、せがわあき、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広、ふらみらり、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線、三澤達世

 今回の題詠は「温」。寒さ増す季節に参加者21名が拾い上げた「温」を紹介したい。

緑濃き蛇の岬に温風の稀ならざるを誰か知るらむ  兵站戦線

 「蛇の岬」が実際の地名なのか、何かの比喩、あるいは創作されたものかわからないという意見が多かったが、そこから想像をふくらませる手がか りになっている。

温石【おんじゃく】を胸の谷間にそっと抱く乳をふふますことはなけれど  雨宮司

 「温石」「ふふます」という語彙に惹かれる読み手が多数現れた。この歌をエロスと読むか、切ない、哀感、あるいは乾いた明るさなのか、味わい方に各人分かれた。

温室のガラスの世界に揺れてゐる春へみぬちで羽化することば  紀水章生

 最高得点歌。「~ぬち」は「~の中」という意味だが、「みぬち」の意味について質問が続出した(わかる人はわかってらっしゃる)。温室の中で育つことばという、心象風景を幻想的にとらえた歌。

ハーブティーゆず茶とチャイをはしごして温まったってひとりなんだし サカイミチカ

 さびしそうだけど孤独を楽しんでいて、ぼやいてるけどほ どよく脱力していて、一人の自分を客観視してうまく描写している。    

あたたかい星をめざして(ぼくの手を離さないこと)方舟に乗れ  新井蜜

 ( )の使い方が効果的で、アニメや少女漫画、SF小説のような世界に惹かれた感想が多かった。(ぼくの手を離さないこと)という台詞が好評だったが、男性陣には「手をはらいのける」「命令口調」「オットコマエ」と、気障に感じる人もいるようだった。

「ウイスキー、ホットで一つ」肩の雪払う人影低き声にて  ガク

 かっこよさが出来すぎのようでもあるが、作り上げた感のむんむんする人物像が面白い。バーの様子を思い描く感想もあり、それぞれに妄想できる歌。

ふるえつつ二年参りの足を止めすする甘酒沁みる思い出  有岡真里

 甘酒が情景をよみがえらせるアイテムとして作用している。思い 出の具体例を挙げるなどして、より深みと手ごたえのある歌になる余地がある。

手のぬくみ手のおおきさに比例せず吾子の両手が背中を包む  有田里絵

 平易なことばを使って、親の気持ち、子どものいたいけな様子を再現させたあじわい深い歌。親が子どもに頼ることもある。視点が冷静なことも情景の魅力を引き出している。

ポスターのをんなのうなじ目でたどる湯けむりの中きみが消息  せがわあき

 色っぽくレトロな雰囲気を醸し出している。「ポスター」と「きみ」とがどう結びつくかわからない、これが混浴ならつじつまが合うなど、自由に世界をふくらませられた。

スナックの二階の炬燵ママさんの姉とふたりで七ならべ。ねえ  蔦きうい

 「スナックの二階」「ママさんの姉 」など、作りこんだ道具立てに妄想をかきたてられる。最後の「ねえ」が後を引くかんじで、次の展開を匂わせてぞくぞくする。

夜に優しいひとの足のうらやわらかく地べたの温み知り抜くように  とみいえひろこ

 いつも優しい人なのか、夜になると優しくなるのかで、下句の解釈が変わってくる。視点が面白いという意見も複数あった。

冬ざれた川面を玻璃にひからせる薄い夕日のわずかな温度  三澤達世

 冬のはりつめた空気を、夕日を映す川が乗せている情景が目に浮かぶ。「冬ざれ」「玻璃」などのことばの使い方で、空気の純度の高さをよみがえらせている。

平らなる水面破り飛び込めば温き衣が身にからみつく  ふらみらり

 飛び込んだのは温水プール、寒中水泳、あるいは投 身自殺?など、何に飛び込んだのかわからないという意見が多かった。「温き衣」も、衣服なのか、水なのか、「彼氏といちゃいちゃした後の熱気」(蔦きうい氏)など、混乱がみられた。

水槽におでこくっつけ熱冷ます体温何℃だろうこのクラゲ  あまねそう

 くらげの見た目のかわいらしさと水槽におでこをくっつける愛らしさがうまく呼応している歌。穂村弘さんの歌を連想させるとした方が2名いた。

みどりごを抱きて野獣になれる妻を君は微温湯のやさしさで包む  文屋亮 

 みどりご、妻、きみ、そして作者の位置関係を考察するコメントが多かった。「微温湯」を「ぬるま湯のようなやさしさ」「緊張や刺激のない生活の比喩」という見方もあった。

せつなさに豆炭あんか抱きしめて眠 れば恋の低温火傷  黒路よしひろ

 「せつなさ」「抱きしめて」「恋の」と特定の路線を想起させる言葉が並ぶが、「豆炭あんか」「低音火傷」が甘くなりすぎるのを防いでいる。

冬の樹の幹の日影に身を寄せてこころの和毛ふくらませをり  十谷あとり

 冬の木陰で丸まっているのではなく「日影とは日光のこと」(作者より)。うららかな日向で春を待つ小動物に、人間社会から逃避する人物を連想した評もあった。

ブラックが胃に染む午後の三時頃、オーレも微糖も吐く息は白  福島直広

 飲み物の色に関係なく、吐く息は白いということか。その日によって飲むものを変えた定点観測。「三時頃」の「頃」の使い方を疑問視する声もあった。

かさねこし別れの果てのうつそみを暁月夜の 湯にしづめけり  佐藤元紀

 文語調が功を奏している。そのため、「別れ」ということばが生々しく浮きあがってくるが、それが作者の狙いなのか。

雪雪雪雪降る夜に手をつなぐ二人のあいだの雪あたたかく  鈴木牛後

 雪を強調して温かさを表現する描き方が新鮮。こういう経験をしたかった。

もう二度と逢えないきみと思ってたてのひらに融けるひとひらの雪  塩谷風月

 現代社会ではどんな所にも情報の網は広げられている、「二度と逢えない」は現実的ではないという意見があった。フォークソングや同名の小説など、既存の作品を連想させるが、もう一歩踏み込めば作者ならではの世界観が出来る。

 今や例年にない参加者数で盛り上がっているかばん関西のオンライン歌会。興味 を持たれた方、参加してみませんか。その後、年に数回行われるオフラインにも参加して、自分の中で組み立てたキャラとのギャップによる衝撃と感動を味わってほしい。ぜひ!(ふらみらり記)
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by kaban-west | 2014-02-03 18:27 | 歌会報告