かばん関西歌会

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2014年 07月 23日

東京

かばん関西有志による地方歌集シリーズの第5弾、
PDF歌集『東京』が公開されました。

遠くて近い、近くて遠い、東京の歌。

全51ページ、ダウンロードしてゆっくりおたのしみください。

▼PDF歌集『東京』はこちら

(参加者)
あまねそう/雨宮司/有岡真里/有田里絵/小野田光/ガク/紀水章生/黒路よしひろ/酒井真帆/佐藤元紀/蔦きうい/とみいえひろこ/那由多/福島直広/ふらみらり/茉莉/三澤達世
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by kaban-west | 2014-07-23 23:21 | こんなの作りました
2014年 07月 05日

6月歌会報告

かばん関西オンライン六月歌会

〈参加者〉二十名
あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有岡真里(飛聲/購読)、有田里絵、ガク(ゲスト)、紀水章生(中部短歌会/塔)、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、塩谷風月(未来短歌会/シアンの会)、十谷あとり(日月)、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、福島直広、ふらみらり、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線(かばん/塔)、茉莉(ゲスト)、三澤達世、山下りん(ゲスト)
※所属記載の無い方は「かばん」正会員。


今回の兼題テーマは、「手紙・メール」。「手紙やメール自体、ドラマ性のある言葉ですので、みなさんのドラマが読めるかなとも思いました。あるいは何かの喩として使うか、それも読んでみたかった。」という、あまねそうさんの期待以上に、どきどきドラマが大集合しました。梅雨という季節感ただよう歌が多かったのも感じました。

眠れないヒステリックな紫陽花の手紙がとどくドアが開いて  新井蜜

紫陽花「から」手紙が届いたのだろう。ドアからのぬるっとした風が想像できる。確かに、花は夜眠っていないのだろう。昼わたしたちが見かける花なんて、いちばん気の抜けた姿なのかも。

恋人のメールの末尾が濡れているたましいが少し重くなる梅雨  とみいえひろこ

恋人からの悲しい気持ちを伝えられたメールを、末尾が濡れていると表現したのが魅力的。梅雨時の重い気分と主体の心を結びつけた下の句も、上の句をうまく受けている。

別れた日すべて燃やした恋文がいま妻の手に「これは何なの」  雨宮司

過去の恋か、浮気な恋か、どっちにしても恋の痛む傷。その上奥様にこっぴどく怒られて。二次災害。怒る女性には小さな花束と色とりどりのケーキでなだめましょう。

文字たどり液晶越しに寄り添ひてしのびねかはすこと座とわし座   有岡真里

液晶が星空となって限りなくロマンを感じさせ、うっとりする。メールの文字と星は意外と親和性がある。「今年どうするー?」とか絵文字キラキラのメールしてるのだろう。

シンクへと夜空の星を沈めてたきれいなゆびに書かれた手紙  紀水章生

流し台に夜空の星を指で沈め込むという、上品さも感じられるこの空想が素敵。手にはきっといまでもたくさんのメモ書きが素敵な詩のように記されているのだろう。

メールではざわざわの木が泣いたこと伝えられないもう日が沈む  有田里絵

風に揺れて葉が擦れ合う木をざわざわの木と名付けた感性が素敵。伝えられる言葉よりも伝えられない言葉が、歌にはそんなマイナスなイメージが必要なのだろう。

おやすみのメールを交はすこれからも老いて恋せよ闇なればこそ  兵站戦線

お休みメールって、いいと思う。その一言を交わし合うだけで、あたたかな気持ちに、幸せな気持ちになって、今一緒にいられなくても、それが大きな力になるのだろう。

図らずも邪になる指先を滑らせて打つキミニアイタイ  山下りん

キミニアイタイは会いたい人がいる皆の共有知的財産。初句二句の言葉と結句片仮名書きが本心を隠す形になり、独特の孤立した感じを醸し出している。

返信はあしたあけぼのゆつくりといくたびも読むおまへの言葉  佐藤元紀

即答する人、しばらく空ける人。その時間差も含めてのメールだとお互い分かっている間柄なら、読み返すうちに「今頃、向こうも返信を待っているのかな」と思ったりする。

前触れといえばかすかな妄想のにじみがついたれもんの消印  蔦きうい

背景や意味はとれないものの「れもん」の平仮名が不気味。れもんの消印から何かが始まるのだろうが、悲しい未来を暗示しているようだ。

本日は手紙を配布しましたと学校からのメールが届く  三澤達世

学校からの単なる連絡メールだが、どうせなら手紙の内容もメールで伝えろよとツッコみたくなった作者の思いにおもわず共感してしまう一首。

伝えたい言葉は文字に出来なくて遥かな時の逢瀬を想う  ガク

あなたが伝えたいのは、もう会えない人なの?文字に出来ないのは、ぴったりな言葉が見つからないから?それとも言葉にしてはいけないの?なんて言ってしまいたくなる歌。

封筒に鱗が一枚入ってた足を失くして最初の便り ふらみらり

足を失くしても追いかけてくる、「私」のしるしとしての「鱗」を押し付けてくるうっとうしさ、分かってよとでも言いたげな陰険さがよく表現されていて、せつなすぎる。

憎しみも愛も吸い込む青い空しゅるしゅるしゅると文字は飛び交う  福島直広

電子メールの文字となって空を飛び交う様子を個性的なオノマトペと詠って素敵。実際には同じでものある憎しみや愛が青い空に吸い込まれていく様子が想像できる。

抽斗の似合う手紙を書こうかと。字は下手だけどそれでいいから  あまねそう

引き出しが美しい。いつまでもしまっておきたくなる手紙なのか、とりあえずしまっておきたくなる手紙なのか。読まずに即しまいこんで後日落ち着いてから読む手紙になるのか。

「永遠の怠惰ですね」と記された紙ひこうきが飛んでくる夏  黒路よしひろ

「永遠の怠惰」な生き方がいい。長いながい夏休みのような。詩みたいな味わいがある。おかえしの紙ひこうきを飛ばしてみたい気分。「こんどいっしょにジン・トニックでも」とか。

さやならってなんだよ最後の言葉ぐらいまともに打てよなんださやなら  塩谷風月

せつなくてグッとくる。最後の言葉は、心残りで、なんでもない言葉。結句「さやなら」のたまらない余韻、相手の使った言葉で終えるという優しさ。

クレヨンの線ぐいぐいとはみ出してなんてことのない初めての手紙  文屋亮

子供の書く初めての手紙の活き活きとした様子が目に浮かんでくる。「なんてことのない」という表現は、もちろん作者にとっては最大級の感慨なのだろう。

自由詠からも二首、紹介します。

売れ残る胡瓜の苗の百本もトレーの水に浸りて穏し  十谷あとり

トレーの水で生きる小さな世界と「穏し」という言葉の持つ大らかさ、広々とした感じが、日常という舞台で気持ちよく生きている。作者の目の優しさ、愛情のようなものも。

牧水も悩みし歯痛に歌いたしせめて豆腐の柔き事など  茉莉

歯の痛みは気力を奪う。負け惜しみというより、その逆境のなかで如何にいい歌を詠へるかを懸命に模索する主体の辛さが響いてくる。「歌いたし」でなく実際に歌ったらどうだろうか。

(蔦きうい 記)
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by kaban-west | 2014-07-05 22:56 | 歌会報告