かばん関西歌会

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2015年 01月 12日

兵庫、すずろに & 滋賀のうつつの

かばん関西有志による、PDF地方歌集。いよいよ第6弾、7弾ができました。
ついに関西をひとめぐりです。


『兵庫、すずろに』
参加歌人/有田里絵、伊庭日出樹、黒路よしひろ、酒井真帆、佐藤元紀、十谷あとり、とみいえひろこ、福島直広、ふらみらり
バラを買う ポケットに手を突っ込んで打ち明け話めく高架下
咲き急ぐさくら夙川はやくこそすずろに君をおもひそめしか
そのむかし琵琶湖の土地が吹き飛んで落っこちたのが淡路島です
ゆくりなく思ひいだせり尼崎 王将のキムチ辛かりしこと
六甲から見下ろす街のこの中に君がいるって本当だろうか


『滋賀のうつつの』
参加歌人/雨宮司、有田里絵、黒路よしひろ、酒井真帆、佐藤元紀、とみいえひろこ、ふらみらり、三澤達世
みなそこに百年前の駅沈む琵琶湖の水はあれはうわずみ
すぐそばにおおきなみずがあるところ夜露豊かに舗道を濡らす
朝焼けに深く影差す浮御堂日暮れ束の間やさしく光る
あふみの海いにしへはいさ夕映の金色におまへを啼かせをり
右耳を西の言葉が舐めてゆきもう戻れない北の漁村に

・・・・・・

下記よりダウンロードしてお楽しみください。(PDFファイルになります)


『兵庫、すずろに』

『滋賀のうつつの』

(プリントアウトもできますが、文庫本サイズのファイルなのでA4やB5の用紙に原寸で出るように、設定をたしかめてください)
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by kaban-west | 2015-01-12 23:33 | こんなの作りました
2015年 01月 06日

12月歌会報告

かばん関西二〇一四年十二月オンライン歌会

〈出詠者〉安部暢哉・あまねそう・雨宮司・新井蜜(かばん/塔)・有岡真里(購読)・有田里絵・岩崎陸(購読)・小野田光・ガク(ゲスト)・黒路よしひろ(ゲスト)・小坂井大輔・小松才恵子(ゲスト)・佐藤元紀・杉田抱僕・蔦きうい(玲瓏)・とみいえひろこ・不思議童子・ふらみらり・茉莉(ゲスト)・山下りん(ゲスト)の二十名。〈選歌のみの参加者〉福島直広

十二月のお題は「忘れる」。二十首の「忘れる」が集まりました。

雪降りて冬の厳しさ極まれり酷暑の夏を忘るるほどに  安部暢哉
酷暑を経験した後に冬の寒さが急に訪れた印象があるため、酷暑の夏を忘れるほどだということに対しては多くの共感を集めたが、説明調でそのままな感じという評もあった。

後悔を重ねることでその一つ前の後悔を消してゆく  あまねそう
詠われた内容については賛否の意見が並立した。人生とはこういうものだという諦念が感じられる。定型に収めることも可能だと思われるが、作者は歌の内容に合わせて敢えて破調にしたのだろうか。

ぼんやりと杯を重ねど面影を忘れられない片恋の人  雨宮司
心からの呟き、あわーい感じ、せつない発想など女性陣から好評。演歌調という評もあり。「重ねど」は「重ぬれど」が正しいのではないか?

目覚めると思ひ出せない歌のやうだ日の暮れどきの僕らの恋は  新井蜜
大人の味わい、淡い淡い恋、美しく甘やか世界など好意的な評がある反面で三句目の「だ」を削って定型に収めるべきだという意見もあった。

指つなぎ愛しい記憶で埋めたい 凍てつく公園刃の接吻  有岡真里
道ならぬ恋であることが暗示されており気が狂いそうな恋の切迫感が秀逸。「刃の接吻」については過激で唐突との評もあった。

ゆうちゃんもサンタの手紙忘れたのツリーより背が高くなるころ  有田里絵
「ツリーより背が高くなるころ」で成長を表現しているところがよい。子供の成長に一抹の淋しさを感じていることがうまく表現されている。上句が誰の言葉なのか分かり難いところがある。

空ひかり君と登った丘きみと見た花みんなみんな忘れる  岩崎陸
「君、きみ」「みんなみんな」のリフレインによるリズムが好評。「空ひかり」の解釈の仕方により、離別の歌という解釈と、原爆や戦争の悲劇という解釈とに分かれた。

いま生きるならその陸を踏みしめろいつか忘れてしまうのだから  小野田光
熱くて青臭くても前向きな歌。上句の命令形は、力強さを生む反面、気取り過ぎという評も。「陸」という表現については疑問が呈された。

忘れたと思ったころに受信する君のメールは堕天使の地図  ガク
「堕天使の地図」とは退廃的な生活への誘いということか?「堕天使」という言葉のせいかアニメ的という評もあった。

君とした高二の夏の約束は忘れ去られて煌めきの中  黒路よしひろ
「高二の夏」がいい。誰にも甘く切ない高二の夏の思い出があるもの。「忘れ去られて」と「煌めきの中」がうまくマッチしないように思われる。

香水の匂いにあわてて振り返りゆっくり顔を思い出してる  小坂井大輔
匂いはどんな感覚よりも鮮明に記憶を刺激するもの。そのことがうまく表現されている。

友人が置き去りにしたのど飴を届けるだけが予定の土曜  小松才恵子
重要ではない予定のある土曜日ののんびりした感じ、とりとめのなさが良い。

忘れめや難波の葦の仮寝ならぬひとよのはての露のあけぼの  佐藤元紀
式子内親王の「忘れめや」の歌と皇嘉門院別当の「難波江の」の歌が連想される。古典的表現に頼り過ぎの感がある。

あの夏に君とさよならした僕は忘れな草の色を知らない  杉田抱僕
「あの夏」には既視感があるが「忘れな草の色」という表現が良い。ただ「忘れな草の色を知らない」の意味することが「忘れないでなんて思わない」ということなのか「忘れることができない」ということなのか解釈が分かれた。

一緒にはかへれぬ家路に山冴えてしのびねにほふ空ぞ忘れぬ  蔦きうい
「一緒にはかへれぬ家路」という表現が読者の心をつかんだ。下句については式子内親王の「ほととぎす~空ぞ忘れぬ」の歌の本歌取りとして評価する声と上二句の口語調・説明調とうまくマッチしないという声とがあった。

そのたびに川を名付けては呼びてみつ忘れ合うことわすれあうこと  とみいえひろこ
下句の漢字表記とひらがな表記のリフレインが好評。リフレイン部分については読者によりさまざまに解釈されている。上句と下句の関連について分からない、リフレインが効果をあげていないという声もあった。

もう来ないあなたの代わりにそっと置く忘れていった銀のライター 不思議童子
「銀のライター」についてフィクションの色がするという評もあるが、「あなた」への思いを物で表現したところが良い。

保険証忘れた理由を待合いにいる人皆で聞き入る師走  ふらみらり
高得点を集めた歌。場面がありありと想像できる。他人の言い訳は興味があるものである。

電飾に彩られたる裸木【らぼく】には失いし葉を忘る夜【よ】のあり  茉莉
「失いし葉を忘る夜」という裸木の擬人化、電飾によって失った葉を忘れるなど技巧的表現が目立つ。歌意については「電飾に彩られた裸木」の描写という解釈とそれを人間関係の暗喩とよむ解釈があった。

逝くための大切もあり年ごとに荷物を下ろす母の健忘  山下りん
年老いていく母を優しく見守る子の愛情が感じられる歌。健忘を「逝くための大切」と捉える大らかな視点が良い。

題詠の部は以上です。以下自由詠の部の好評歌をご紹介します。

ああ私ゾンビのようだ泣きじゃくりあなたの膝にまとわりついて  小松才恵子
革マル系まえがみ垂らした曽根理実子そのみみうらのファ音のほくろ  蔦きうい
廃業のパチンコ屋指して「あれはねぇ、サンタの工場」って若い母親  ふらみらり
俺が今ここに生きをる理不尽の湯豆腐喉をすべり落ちゆく  佐藤元紀
わたくしの骨の居場所はどこでしょうさっきまで覚えていたけれど、 岩崎陸

(記/新井蜜)
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by kaban-west | 2015-01-06 21:41 | 歌会報告