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2015年 04月 15日

黒門市場吟行記

かばん関西 春の雨黒門市場吟行記
二〇十五年四月五日 於 大阪市中央区日本橋 黒門市場

 桜もそろそろ満開かも、という頃、「お花見吟行でもしたいなあという方、よかったらご参加ください。」というメールがかばん関西MLに流れました。当初の予定は、「当日ドタキャンあり・子連れ恋人連れお友達連れOK・参加者に会えても会えなくてもそれはそれでOK・天保山公園で午後吟行しましょう」というアバウトな内容。
 天候のくずれが懸念された週末、吟行は黒門市場に変更しますというメールが流れて、春雨の午後。日本橋でなんとなく待ち合わせ、自分が異国のひとであるかのような居心地の悪さをやや抱えながら、いろんないい香りのする黒門市場を歩く、食べる、歩く、話す、黙って歌を詠んでみる、待ち合わせる。そして、参加者塩谷さんの案内で、「地下喫茶」とでも呼びたくなるような喫茶店に入り、なんとなく批評会がはじまりました。
 当日参加者は四名。アーケードを歩きながらそれぞれメモしたものを、とにかく歌にして、いきなり批評しあおう!
 最初は、ぱっと見せられたものに反応することの難しさを感じながらの批評会でしたが、とても有意義なものになりました。席に着いたときも歌は出来ておらず、アイスコーヒーを飲みながらメイドカフェの話をしていた方が、ふいに何首もさくさくと歌をつくられたり。
 ゲイバー、メイドカフェ、プロレス、男の子がレゴに夢中になる時期、まじめにかばん関西MLの運営について(本誌会員とかばん関西MLだけに登録している会員が入り混じっているかばん関西。それぞれいろいろな背景があるから、その混沌もおもしろいんですね。また、オンライン参加者が、ありがたいことに最近はほんとうに多くなったので、選歌コメントの編集配信どうするよ、けっこう大変だよ、という話なども)、ワードの文字のズレ、みんながしあわせそうな顔をしている感じを詠みたかった話、うわさ話少々…などが交わされた、不思議な午後でした。
 *
 参加者四名の、それぞれの名言。
「出し切れ!」
「あたしの暴力性が目覚める」
「いっつも否定から入りますよね」
「ホストがある方が好き」
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以下、春の雨黒門市場吟行 詠草集より、個人的に好きな歌をそれぞれ二首ずつ選ばせていただきました。

お花見にゆこうよ春の小雨降る商店街のアーチの向こう
ゲイバーでバイトしていた塩ちゃんの過去の話を聞く地下喫茶
黒路よしひろ

ふぐみりん干しいつまでもひとの母おとこはいつの間に育つもの
しわくちゃのモノクロームのスーツゆくアーケード下のホストの乾き
とみいえひろこ

人あまた行きかふ街に空間をかかへて永きピカソビルあり
弘子さんがブリキの鞄に匿しもつ手紙あるいはまぼろしの蝶
十谷あとり

珈琲がいつも濃すぎる黒門の伊吹珈琲名店なれど
濡れながら歩くのは誰のせいでもなくて傘が嫌いなだけ本当に
塩谷風月

記・とみいえひろこ

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黒路さんのホームページでも当日の様子が!
▼黒門市場吟行2015
(関西歌会ブログを離れます)

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by kaban-west | 2015-04-15 21:08 | 歌会報告
2015年 04月 10日

かばん関西歌会へのお問い合わせ

かばん関西歌会では、月に一度メーリングリストを使用したオンライン歌会を行っています。
また、年に数回実際に顔を合わせてオフラインの歌会も。
歌誌「かばん」の関西在住会員がおもなメンバーでしたが、
現在は「かばん」会員ではない方も、関西在住ではない方も多くみえます。
歌を詠みたい、読みたい、という方ならどなたでも
お気軽にお問い合わせください。

kansai●kaban-tanka.jp (担当:有田)
※●を@にかえてください
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by kaban-west | 2015-04-10 22:57 | お問い合わせ
2015年 04月 10日

午前三時の庭

とみいえひろこさんの企画・編集によるネットプリント(折本)『午前三時の庭』が発行されています。
かばん関西歌会の参加者も何名か参加していますので、ご紹介します。
なお、ネットプリントの出力番号につきましては、期限がございますので、
ここではPDF版をご紹介いたします。ぜひご一読ください。

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桜が咲き始める頃、おもにツイッターで募ったメンバーの連作によるネプリ短歌集を制作しました。

『午前三時の庭』

闇の粘度のきわまりのとき。
ぬったりとした、
秘密めいた短歌作品集を
折本でお楽しみください。
32名の歌人による六首連作。


▼まとめてPDFダウンロードはこちら
(A4原寸で出力推奨)


(以下参加者名、敬称略・順不同)
庭に はな
ナタカ/一葉/あまねそう/三上りょう/七海奏一郎/稲泉真紀

庭に かぜ
笛地静恵/福山桃歌/小宮子々/加子/宮嶋いつく

庭に とき
さはらこあめ/紫苑/真篠未成/佐藤元紀/たかはしりおこ/春森糸憂/ルイド リツコ/笹谷香菜/土筆みを/月下 桜/月丘ナイル

庭に やみ
千原こはぎ/望月万里葉/長月優/たえなかすず/とみいえひろこ/生田亜々子/草野浩一/有村桔梗/子夜(しや)/嶋田さくらこ


(企画・編集・デザイン とみいえひろこ)
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by kaban-west | 2015-04-10 22:49 | こんなの作りました
2015年 04月 07日

3月歌会報告

< かばん関西 二〇一五年三月オンライン歌会 >

[参加者]あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん、塔)、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩井曜(小松才恵子改め・ゲスト)、岩崎陸(購読)、オカザキなを、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、小坂井大輔、佐藤元紀、酒井真帆、杉田抱僕、蔦きうい(玲瓏)、とみいえひろこ、ぱん子(ゲスト)、福島直広、不思議童子、ふらみらり、兵站戦線(かばん、塔)、三澤達世、山下りん(ゲスト)

 今回有田さんから出されたお題は、「は」から始まって「る」で終わる歌。自由詠はなし。計7点の持ち点制で、一首につき2点まで入れることができる。点は使い切らねばならない。波乱の予感の中、二十四首が集まった。

浜辺へと打ち寄せひかる波に濡れうつすらひらくきみの唇 新井蜜 【7点】
ハンカチを忘れたきみはびしょびしょの両手伸ばした幽霊になる 有田里絵 【9点】
はてさてと問われるままに川向こうご先祖様がいっぱいの春 岩崎陸 【9点】
「は」ではじめ「る」で終わる歌詠めという恋文めいた指令のめーる 黒路よしひろ 【5点】

 一首目。上句の幻想的な感じが唇の艶やかさを一層生みだす、圧倒されて無心になった時の呆然とした唇は素敵だ、等の好意的な評価が目立つ。一方で、動詞が多い、エロス感としては手垢がついている、等の指摘もあった。二首目。よくある情景を幽霊にまで飛躍させた点が好評を得る。一方で、あるある感だけで終わってしまってはもったいない、生の言葉に乏しい気がする、等の反論もあった。三首目。のほほんとした歌いっぷりとおおらかな気持ちにさせる点が評価される。一方で、上句が分からないという意見もみられた。四首目。お題を逆手に取った内容と「恋人めいた指令」という表現が好評だった。「めーる」のひらがな表記には賛否両論があった。

はるかなり家族生活いまにして思ひいづるは彼のなゐの夜 兵站戦線 【3点】
歯無しゆえ今日も小さく赤ん坊の口先尖ってぴよめいている オカザキなを 【7点】
はだかとは怜悧な服罪いたさをもきもちよさをも預け目を見る 蔦きうい 【3点】
ハイチュウの歯ごたえが好き目を閉じて食べさせあえばほら春が来る 岩井曜(小松才恵子改め) 【4点】

 一首目。特定の震災に限定せずに普遍性を見出す評や、地震の時に頼りとなる家族がいない喪失感を評価する意見があった。一方、上句からは切実さが感じられない、「はるかなり」と「彼の」は重複していないか、等の反論も多かった。二首目。「ぴよめいている」という表現に高評価が集まる。「歯無しゆえ」が粗く、説明っぽいという意見もあった。三首目。第二句の「怜悧な服罪」の硬さと、それとは対照的なひらがな表記。評価は二分された。熟語の硬さを必然と見る者、逆に散文的と感じる者が、それぞれの意見を開陳した。四首目。いやらしさが増幅され、奇妙な歪みが感じられる、素直な詠みぶりがいい、擬似キスを思わせる確信犯、等の評価がある一方で、結句を「好き」 という 感情だけで語ろうとするのは安直ではないか、という意見もあった。

はしきやし炎かつかつ焼き尽くす時もろともおまへを抱き締むる 佐藤元紀 【2点】
はみ出してしまう、しまうよ つかれきて春を告げくるラジオを捨てる とみいえひろこ 【7点】
春雨の向こうに見える雪の山屹度あえるねあんでるたある 福島直広 【8点】

 一首目。「はしきやし」とは「愛おしい」を意味する古語。普段はお目にかかれない言葉を使いこなしながらも下句のリズムが整わなかったのを惜しむ声、多数。女性性というイデアを抽出したいのではないか、という意見もあった。二首目。何がはみ出すのか。全く不明ながらも切迫感からの疲労の結果としてなら理解できる、という声が多かった。一方、何故ラジオを捨てるのかという意見も多かった。三首目。だんだん呪文めいてくるという意見が出るほど、下句に破壊力がこめられた短歌。七七で読むべきか、六八で読むべきか、塚本邦雄が生きていたら喜びそうな意見が百出した。ちなみに、一部で記されていた「アンデルタール人」は実在しません。

花の香のかすかに匂う川べりに君と二人でうずくまる夜 ガク 【5点】
花びらを朝露に濡れてひらきをり春の吐息に紅梅めざむる 有岡真里 【3点】
花筏ひとひら食べた深海魚眠りは遠く燐光の夜 雨宮司 【12点】

 花三首。一首目。賀茂川だろうか。懐かしさを感じる者、情景に自然に溶けこめると言う者、川べりの部屋でのひとコマではないかと言う者などがいた。一方、自然に読めすぎている、妄想ではないか、なぜかべたな感覚がある、という意見もあった。二首目。「すけべえ」「べったりエロス」との評が出る。それほど堅実な花の歌ということか。花はエロスを内包する旨の指摘もあった。三首目。幻想的な作風をどう捉えるかで評価は割れた。花筏と深海魚との意外な取り合わせに美を感じる者と、細部の齟齬に違和感を覚える者。おまけに花筏は二種類の意味に分かれる。点はとれたが課題も残った。

母親に叱られている子ども見て知らずと母に子どもにもなる ふらみらり 【3点】
半月のひかりを受けてくちびるが(進めない、戻れない)ふるえる 酒井真帆 【11点】
はげしさにしがみつくよりほかなくてあえぐまもなくびりびりはてる 不思議童子 【7点】

 一首目。こういう状況をよくみるが確かに自分もこうなっている、まだ整理できる気がするが詠まれた感情は静かな共感を誘う、との肯定的な批評があった。一方、下句の表現の甘さを指摘する意見も目立った。二首目。男女の関係が背景にあるのか。表現技巧が全体の調子に合っている、心中語が初句と呼応して感傷を生んでいる、( )内が葛藤や花占いの様だ、との評があった。目立った否定のない短歌だった。三首目。アダルト短歌、心をつかまれるのは並んだ言葉の激しさだけではない、等の好意的な評価があった。そのままの感じが強い、常套句で構成されている、図式的に見える、等の批判が目立った。

初めての夢をみつけた夜だから一人で寝るの幼いフール 杉田抱僕 【3点】
初めての手づくりマヨネーズであえる新じゃが好きのきみが来る夜 小野田光 【4点】
はじめての半袖日和に届きおり「件名:キリンレモン」のメール あまねそう 【15点】
はじめての思い忘るなただ一度一度きりなり君の春来る 山下りん 【5点】

 「初めて」四首。一首目。加点した人もしなかった人も、フールとは何かという問いを発するのは変わらなかった。海外の童話の様だ、夢を言葉で説明できるぐらい成長したのでは、夢を見つけたのならもはやフールではない、等の意見が目立った。二首目。破調だが好ましく感じられる、「きみが来る」からこその初々しさが楽しい、マヨネーズを手作りにするこだわりがいい、という肯定的な意見が目立った。恋人に初めてふるまう料理ではないかという推測、多数。三首目。初夏らしい爽やかな短歌という評価が大勢を占めた。「キリンレモン」の語の爽快感は日本人でないと解からないのでは、という意見もあった。今月の最高得点歌。四首目。思春期か、生の一回性か、人生の節目 でのエ ールか。決定的な読みが出ないまま、区切れの必然性がない、リフレインの効果が感じられない、上から目線、具体的な何かが読み取れるヒントがほしい、等の批判があった。

張り出した窓に積まれたぬいぐるみこちらを向いて色褪せている 三澤達世 【10点】
張りぼてのわたしは他人の目をすっと定型にしてはにかんでいる 小坂井大輔 【10点】
刃物をも心にかくす15歳が泣く甥のあしを丹念にみる ぱん子 【1点】

 一首目。ノスタルジーを覚える者、色褪せたぬいぐるみにせつなさを感じる者、心の底を見られていると感じる者、視線に怖さを感じる、等の意見が目立った。背景事情が一切書かれていない為、飾った人がどうなったのか案じる意見もあった。二首目。「張りぼてのわたし」「他人の目をすっと定型にして」という表現に共感の声が集まる。自身の感情よりも他者が世界をどうみているかを想像しているのでは、歌詠みとしての視線をシニカルに表現している、苦しさを感じる、なつかしい感情、等の意見が目立った。一方で、意味のとりにくさを指摘する評もあった。三首目。思春期を上句のように表現したのにしびれる、という好意的な評があった。詠み手の視点が定まらない気がする 、作者 の意図が甥に害を加えたいのか泣く原因を除きたいのかどちらにも取れてしまう、助詞はある程度除いてもいいのでは、上二句の表現が露骨、等の指摘もあった。

 かばん関西は所属・居住地に捉われない自由な集まりです。興味のある方はお気軽にメーリングリストまで。

 (雨宮司・記)
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by kaban-west | 2015-04-07 20:02 | 歌会報告