「ほっ」と。キャンペーン

<   2015年 07月 ( 1 )   > この月の画像一覧


2015年 07月 09日

6月歌会報告

◆◇◆ かばん関西六月オンライン歌会記 ◆◇◆

<参加者> 雨宮司、有岡真里(ゲスト)、有田里絵、岩崎陸(購読)、泳二(ゲスト)、小野田光、ガク(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、酒井真帆(未来)、佐藤元紀、杉田抱僕(ゲスト)、蔦きうい(玲瓏)、土井礼一郎、とみいえひろこ、浜田えみな(購読)、福島直広、新井蜜(かばん・塔)、橘さやか(ゲスト)、ふらみらり、兵站戦線(かばん・塔)、山下りん(ゲスト)

今回のお題は「A:とっても自分らしい歌」と「B:今まで試みたことがないような、自分の殻を破った歌」の二つ。Bについては新境地のリズムやテーマ、他人になりすましての作歌という例が示されました。

自分らしい短歌ってどんな短歌だろう……? 自分らしさと自分らしい短歌は同じ……? なんてグルグル考えて、各十九首計二十一名の歌が出そろいました。

【チーム自分らしさ:A】

試合後に芝へと倒れこむ悪童 ボルグよ、今は笑うがいいさ  雨宮司

毎月お馴染みのテニスシリーズは「これぞ自分らしさ!」の評価。これまでがあるから『悪童』=マッケンローの了解が形成されているのが良いとの意見も出ました。

お化粧も終わってポーチにもちゃんとおぶらでぃおぶらだ焼海苔五枚  小野田光

まさかの実話から作られた一首。お化粧ポーチから焼海苔が出現したのだとか! 『おぶらでぃおぶらだ』が呪文のようで楽しい、『焼海苔五枚』もなんだか楽しい、とみんなウキウキ。ビートルズの「オブラディ・オブラダ」のリズムと歌詞が背景に流れます。

留守番にビールを飲めば天井にヤモリを見つけまた見失う  泳二

小物の使い方が上手いとの意見多数。孤独感を受け取る人もあり、一人の留守番も悪くないと思う人もあり。さて、ヤモリは孤独を増幅するのか埋めてくれるのか……

純白のブラウスの奥に透ける夏うなじに匂うくちなしの白  ガク

エロスだったり、触れたいけれど触れられない清らかな思いだったり、匂いと色から広がるイメージ。『純白』と『白』は重ね過ぎとの指摘も。

孔だけで鳴るはずもない石笛【いわぶえ】は恋しくて泣く 波、風、月に  浜田えみな

幻想的な情景と浪漫、そのなかに浮かぶ岩笛の孤独と悲哀。美しい言葉で作られた一首です。結句『波、風、月』は雄大さを評価する声あり、意外性がないとする声あり。

忌々しい瑠璃子は風呂へ 夏にひく風邪はだいたい夏風邪だろう   土井礼一郎

『瑠璃子』は妻? 娘? 妹? 風邪のウィルス? とても直線的なようでいて、想像の余地がたっぷり残された一首。舌打ちでも聞こえてきそうな力強さと負け惜しみ感が大好き。

恥ずかしい姿みせても目をつむることができない魚あなたは  橘さやか

『恥ずかしい姿みせ』るのは私かあなたか。官能的な雰囲気と『目をつむることができない魚』という着眼点が高評価でした。この歌が「自分らしい」作者はきっとS、恥ずかしい姿を見せるのも確信犯との分析。

真緑も黄緑もみなかぶさりて夏まみれなりかくれんぼ  山下りん

結句の字足らずに引っかかる人多し。しかし『なりかくれんぼ』と句またがりのように読める、三句からが五七五であることで違和感はあまりないとの意見も。『夏まみれ』のインパクトと二種類の緑で鮮やかに夏が描かれました。


【チーム殻破り:B】

姉さんが縛られてゐるゆふぐれの納戸にすべりゆくやまかがし  新井蜜

SMチックな淫靡さを感じる一方で、幼い『姉さん』がお仕置きされていたという弟妹の思い出なのではという読み方も。「読み手がヘンタイかどうかを判定するリトマス試験紙みたいな歌」(by土井)との評が面白かったです。

好きなのは夏とあなたのTシャツの胸のワーゲンバスの彎曲  蔦きうい

女性の胸のふくらみによってTシャツにプリントされているワーゲンバスが彎曲している光景と思いきや、男性の胸元をワーゲンバスの前面(彎曲)にたとえているとの読みも登場。『彎曲』に評価の集まったストレートで爽やかな夏の一首。

「だからさあさっきからずっと言ってんじゃん」男の声をすりぬけてゆく  佐藤元紀

短歌もその他連絡も普段は旧かな表記の佐藤さんの一首。『すりぬけてゆく』の効果なのか、『男』と私を通りすがりの他人とする読みが主流になったのが面白かったです。街中で偶然出会った一瞬が短歌として魅力的に切り取られました。

毬、毬、毬 雨のあがりし三室戸寺青、紫、赤 毬、毬、毬  有岡真里

三室戸寺は紫陽花の名所。繰り返される『毬』の文字が視覚的に紫陽花を表しています。また音にも独特のリズムを感じたり、作者の名前を連想したりする人も。視覚的な効果を狙うなら『三室戸寺』と『青、紫、赤』は連続しない方がいいのではという指摘がありました。

ふるさとは遠くにありて帰る場所「ただいま」「おかえり」それだけの場所  杉田抱僕

「ふるさとは遠きにありて思ふもの」は室生犀星の詩の冒頭。本当に『それだけ』とも、逆説的に『それだけ』ではないのだとも取れる望郷の一首。ふるさとに対して素直になる勇気を「殻を破った結果」とする見方がありました。

生まれたよおめでとうありがとうああそうかそうだったのかわかった  岩崎陸

生まれるとはどういうことかへの気づき、生まれたという事実そのものへの了解、親が子を大切に思う気持ちへの実感、当たり前のように誕生を祝うことへの改めての意識――イメージが広がりを持つ一方で、何がわかったのか分からないとの声も少なからず上がりました。


【チームなりすまし:B】

あまりにも馬蹄な蟻が身を寄せるタイムトンネル夢なき眠り  兵站戦線

『馬蹄』は先月の難波歌会での新井さんの歌から登場。名詞+「な」の造語法はすぐにでも日常化しそう、とは兵站戦線さんのコメントでした。『馬蹄な』の意味、そして引用の是非についてコメントが集中。

準決勝で負けた朝荷ケツしてたろ、おまへ何時からマツケンラフと  福島直広

『マツケンラフ(マッケンロー)』は雨宮さん、『荷ケツ』とマッケンローの組み合わせは蔦さん、『おまへ』および旧かな表記は佐藤元紀さんからで、これでもか! となりすまし要素が詰め込まれました。その詰め込み方を面白いと取る人あり、食傷気味に思う人あり。個人的にはお題に対するノリの良さが楽しい一首です。

B組の岩田耕治の消息を誰か知らんかピラニアの件で  ふらみらり

岩田耕治――これはかつてかばん関西を騒がせた?雨宮氏が創作した架空の人物なのだ(黒路さんのコメントより)。懐かしさに盛り上がる古参メンバー、正体を知らないまま楽しむ新参メンバー。今さら登場させるのは雨宮さんくらいだろう、という黒路さんの予想はハズレ。ふらみさんが楽しく作った一首でした。

断定のできない的な彼女かもみたいなとかね僕もそうです  有田里絵

「えーい、はっきりせんなあ、これは誰かが黒路さんに成りすましているんでしょう、イッ!てなるもうイッ!て。」(by福島)
「社会からは認められない駄目な部分を認めてみようとの勇気が感じられて、一読して受ける印象以上に生真面目な歌のように感じた」(by黒路)

カッコンとししおどし二人を鎮めて 淋しいね、ぼくら結婚しよう  とみいえひろこ

「黒路さんを装った、独身の方の歌かしら。」(by有田)
「まあ、僕は淋しい者同士の結婚というのは淋しさが倍になるだけのように感じて、じつはあまり好きではないのだけれどね。」(by黒路)
いやいや素敵なプロポーズじゃないですか。きっと淋しいというのは建前で、本当はそんなに淋しくないはずという私の思い込み。


【殻を破って自分らしく:A&B】

丈夫【ますらを】と思ひしわれがソックスの少女【をとめ】の足に踏まれ悦ぶ  黒路よしひろ
妹【いも】よその足で踏みませその足で蹴りませ吾【われ】を犬なる吾を  黒路よしひろ

唯一こんなにも潔くA、Bを共通させて作ったのは黒路さん。調べの美しさ、上句と下句でのルビの対応、文語とSMチックな内容の取り合わせに評価が寄せられました。
「そのままでいったら黒路さんの歌っぽいけど、「B」やからなあ、誰かなりすましてる気もする。」(by福島)
とのコメントに本人は「あんたの頭の中では僕はいったいどんなイメージやねん」とお返事。でも分かってもらえてるってすごいことだと思いますよ!

以上、六月のオンライン歌会の様子の一端をお届けいたしました。

かばん関西は年齢・性別・職業そして居住地不問の自由な集まりです。興味を持ちましたら、是非お気軽にメールでお問い合わせください。 (杉田抱僕/記)
[PR]

by kaban-west | 2015-07-09 22:52 | 歌会報告