かばん関西歌会

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2015年 10月 08日

9月歌会報告

かばん関西2015年9月オンライン歌会記

★参加者一覧(五十音順)
あまねそう、雨宮司、新井蜜(かばん/塔)、有田里絵、岩井曜、岩崎陸(購読)、小野田光、黒路よしひろ(ゲスト)、佐藤元紀、十谷あとり(日月)、杉田抱僕(ゲスト)、橘さやか(ゲスト)、土井礼一郎、とみいえひろこ、浜田えみな(購読)、ぱん子(ゲスト)、東こころ(かばん/未来)、福島直弘、ふらみらり、兵站戦線(かばん/塔)、三澤達世、山下りん(ゲスト)

今月も前月に続き兼題一本勝負。初の本歌会進行となる岩崎陸さんから出された「石」の題は、かばん関西の面々の技巧を導き出すごとくオンライン上に見事に置かれた。その石を打ち鳴らす二十二首は次の通り。

青丹よし奈良の都に秋の雨賽の河原に石積むいのち 兵站戦線
河原に石を積むという内容が軽やかながら丁寧に表現された一首。言葉がきれいだが力点がわかりにくいという意見も。

目鼻立ちすでに朧ろな石地蔵背負って歩く次の守【も】り番 雨宮司
懐かしい情景が浮かぶ、物語がある一首。説明的な表現がないにもかかわらず、表現以上のものを語っている。

街があり流れゆくことなんだってつぶて言葉と血の合いの子の とみいえひろこ
どこで切れるのかを楽しむことができ、重層的な読み応えも評価された。一方で、意味が取れないという声も。

木津川の河原で拾つた真つ黒な石はわたしの親父ではない 新井蜜
高得点歌。不思議な味わいに魅力を感じたという意見多数。肉親に対する愛憎に思いを馳せる読みもあった。

深海に青いひかりがとどくときわたしは透明な石となる 橘さやか
「深海」に神秘的な魅力を感じる一首。きれいな表現への評価の声がある一方で、作中に決定打がないという意見も。

石ころといえば石ころなのでしょうきみにもらったひかりのかけら 東こころ
高得点歌。透き通ったまっすぐな気持ちが伝わってくる一首。他人にとっては石ころに見えるという冷静な視点も備える。

実家にはいつもの猫が石段に香箱作る帰ってきたよ 有田里絵
「香箱」は猫のうずくまるポーズ。実家に帰ってきた実感が伝わるという意見が多く、あたたかい気持ちになれる。

千六百万年前と五億年前の地層の間【あい】をゆく蟻 三澤達世
写生のお手本という評価もあり、上の句の巨大な年数と下の句のミクロの視点の対比が魅力の一首。

ぶつかって痛い痛いをくり返し残りしものよ君がてのひら 山下りん
しみじみと感じ入るという評価がある一方で、いまひとつ像が結びにくいという声も。

みどうすじウルフクリニック犬田医師、俺の腹から岩を取り出す 土井礼一郎
荒唐無稽の力強さなどからくる楽しさを評価する声が多く、石を「岩」と表現した点にもユーモアを感じる一首。

山道のお地蔵様のなだらかな頬に紫陽花影を落とせり 岩井曜
シンプルにきれいな描写が胸に響く美しい叙景歌。「お地蔵様」の頭、「頬」、「紫陽花」から丸い気持ちになれるという意見も。

熱々の石をまぶたに押し当てて「謎はすべて解けた」と言ってよ 岩崎陸
不思議に惹きつけられるという評価あり。「名探偵コナン」や結句から東直子の「電話口で~」を思い出すなどの意見も。

西よりの風に吹かれて笛が鳴る石焼き芋に夕暮れていく 福島直広
夕暮れの情景がとてもきれいな一首。素直な実景に評価が集まる一方、もう少し表現を整理できたのではという意見も。

台風の後から石売りやって来る今年の石を購いにゆく ふらみらり
つげ義春「無能の人」や寺山修司の虚構を思い出す意見やファンタジーとして評価する声など世界観がポイントの一首。

未通女【をとめ】らが腰掛けてゐし磐石【いはいし】を見ればふやけた顔に見えたり 黒路よしひろ
「ふやけた」に意見集中。固い石との対比に面白さを感じる意見の一方、乙女に失礼だ、スケベ親父の顔だという声も。

手にのせた剥がれて碧い結晶にあなたは地球だったねと訊く 浜田えみな
大きなスケールが手にのせられる発想が評価された一首。映画的な時間感覚だと評する声も挙がった。

家移りの荷に見つけたり曽て子が二上山に拾ひし石鏃【やじり】 十谷あとり
地味ではあるが、石の持つ時間的価値を表しているという評価も。歴史やロマンを想起させる一首。

文明はあるけどなくて限りなく野蛮でだから ”最初”はグー だよ 杉田抱僕
今月の最高得点歌。理知と感覚の巧みな融合で読み手をノックアウト。穂村弘の「驚異=ワンダー」を想起したという感想も。

敷石を一刷毛ほどに濃く染めて通り雨ゆく紅葉修善寺 あまねそう
通り雨が敷石を濡らしていく表現に関して評価の声が挙がった一首。繊細さが秋の修善寺と引き合う。

鉱石のごとおしだまり肩寄せてきみのジョバンニになりたいのです ぱん子
初句がばっちりはまっているロマンチックな一首。「銀河鉄道の夜」という外部作品を持ち込んだだけに、新たなイメージを創る難しさも。

霜降を焼いた河原で胸焼けていよいよ石の丸みに気づく 小野田光
ユーモアがあるのがいい、なんだか面白いという意見の一方で、下の句の意が取れないという声多数。

白砂に石と語りてぽつかりと胸のうつろの秋ぞ深まる 佐藤元紀
言葉の選択が巧みな一首。特に「ぽつかりと」と「うつろ」の響き合いに評価の声が。白砂に枯山水を連想する感想も。

今回も多様な歌が集ったかばん関西は、全世界から参加可能なオンライン歌会を毎月開催中。ぜひ、皆様も奮ってご参加ください。

(小野田光/記)
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by kaban-west | 2015-10-08 22:20 | 歌会報告