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2016年 03月 09日

うた新聞[弥生作品集]×三澤達世

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Birthday    三澤達世  (かばん)

新緑の匂いににじりよられてもかまわず薄く生きる日もある
いくつもの五月の果てにおとずれた五月たたずむ南改札
盛会となりますようにと書き置いて水の粒子にまみれて森へ
五月には五月のひかり記憶より少し冷たい空気は仕様
パーソナルデータを一行削除する季節の裏に生まれたひとの

(平成28年3月 弥生作品集掲載)
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by kaban-west | 2016-03-09 18:17 | こんなところに出ました
2016年 03月 09日

うた新聞[卯月作品集]×十谷あとり

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  水影               十谷あとり (日月)

こころ凪ぐひと日を来たり大阪の小さき店に善哉を待つ
北庭に木多くして枝の間にさむざむしきは川の水影
川を見る子の淋しさをまたひとつ呑みて膨るるラバー・ダックは 
この橋を渡り育つたこどもらの数だけ投げよ折り紙の舟
おほさかをうたてみやことよびたがる みやこはいづれほろびむものを

(平成27年4月 卯月作品集掲載)
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by kaban-west | 2016-03-09 18:12 | こんなところに出ました
2016年 03月 06日

如月阿波座歌会報告

かばん関西 如月阿波座歌会

二〇一六年二月二十八日(日) 於 大阪府立江之子島文化芸術総合センター
             
【参加者】雨宮司、有田里絵、泳二(ゲスト)、黒路よしひろ(ゲスト)、塩谷風月(未来/レ・パピエ・シアンⅡ、選歌のみ)、十谷あとり(日月)、杉田抱僕(ゲスト)、とみいえひろこ、浜田えみな(購読)、福島直広、ふらみらり
[詠草のみ参加]新井蜜(かばん/塔)、ガク(購読)、ミカヅキカゲリ

 十谷あとりさんを司会進行役とし、事前に募集した詠草を元に歌会を行いました。当日不参加の方からも詠草を募集し、ひそかに選歌をしていただき、当日参加者の選歌に加える方法を取りました。
かばん関西のオフ会にかかる経費は、企画者が室料やレジュメ代を立て替えてから、当日の参加人数で頭割りして集金し、企画者に精算するという方法でまかなっています。今回はおひとりさま三百五十円でした。毎回どなたかがお菓子を差し入れてくださって、おやつも楽しい歌会です。今回は、チョコクッキー・もみじ饅頭・こんぺいとう・チョコレートでした。
 
 今回の兼題は「茶」。十谷さんの出題です。出題前に「茶」または「菜」のどちらがいいかとのご質問をいただいて有田が即「茶」を選んだのは、きれいな歌もそうでない歌も集まりそうだと考えたからです。歌会案内から締切までは二週間。十三首の作品が集まりました。

いやなひと 紅茶カップのふちの熱冷めずにきょうの夕暮れとなる  とみいえひろこ
「いやなひと」と作中主体との関係がいくつか想像でき、男女の歌とも女性同士であるとも読める。男女であれば「もう、嫌な人ね」というだけで実際は好きなのではないかという意見や、赤の他人で本当に嫌な人という読みもあった。また「熱」について、目の前の紅茶カップではなく一緒にいたときの熱が残っているという読みに惹かれた。歌の中を流れる時間と現実にある物のもつ時間との間にズレを感じるが作者も意図していたかもしれない。

ぶり返す発作みたいな悔しさの今日のスイッチ紅茶だったよ  ふらみらり
「みたいな」はどうしても舌足らずな印象で甘さが出てしまうが、共感を誘った歌。心の内に抱えている地雷のようなもののスイッチが今日はどれなのか、後からわかるという怖さ、切なさ。それでも日々がいとおしくなる。様々な歌をご自身の日々にぐいぐい引きつけてビターに読み解くふらみさんは、まちがいなくかばん関西の目玉です。

愛はわれをさいなみしのみ 茶の薫りゆびに残して絣脱ぐひと  新井蜜
一時空けの後で大きく飛躍していて参加者を大いに悩ませた歌。お茶の香りが指に残るためには直接手で触れなければならないだろうという理由から、茶摘の女性が仕事着の絣を脱ぐという意見に半数が賛成した。しかし茶摘の女性と知り合える人は少ないだろう。新井さんは歌集や短歌誌で出会った歌や手法を取り入れることもあるそうで、この歌も何かほかの歌が背景にあるのかもしれない。

異国からはじめ薬と伝わったお茶を想えばとおい心地す  ミカヅキカゲリ
高得点歌。ゆったりした豊かな気持ちでお茶を飲まなければこうは詠めないという意見が複数あった(気が遠くなるという意見には笑いが起こった)。いつでも自販機やコンビニで買えるお茶が、高価な薬だった時代もあったのですね。

訪ねても話すことなどないだけど彼女の煎れるお茶が飲みたい  浜田えみな
この歌も人間関係が何通りか推測される歌。別れた男女であるとか、近所のママ友であるとか。煎茶の「煎」だから日本茶なのだろう。「などないだけど」の部分からもどかしさが伝わる。作者によると、こちらから連絡するほどの接点はないけれど、お茶のおいしさだけは強く印象に残っている女性だという。おそらく彼女は今日も誰かのためにお茶を入れている。

来む春もわれは忘れず「喫茶去」の文字やはらかく書きくれしひと  十谷あとり
手書き文字を思い出して心が和む経験を詠んだ高得点歌。結句は「書いてくれた人」という意味だとわかるが、旧かなで「書きくれる」という動詞が正しいのかどうかが疑問点として挙げられた。五段活用をしてみるとこんがらがってくる。こんなときは、まあ、とにかく、お茶を飲みなさい。

あをによし奈良の町屋の抹茶ぱふえひとり食【は】みをり君待ちかねて  黒路よしひろ
待ちぼうけになりかかっている人が抹茶パフェを一人で食べている様子がありありと浮かんで楽しい。男性が女性を待っていると考えても、その逆でも成り立つが、一人でパフェを注文できる男性の方がおもしろいという声があった。「町家」「抹茶」「待ちかね」の音もリズミカル。そういえば待兼山も思い出される。大阪大学豊中キャンパスは待兼山町にありますね。

赤茶けた水をたたえて長靴はあなたを待っている 夏色の夢  泳二
結句に辿りつくためには読み手が想像力を働かせる必要があるという意見がある一方で、語句それぞれはわかりやすいから全体のイメージを素直に受け止めれば良いのではないかという意見もあった。子どもの長靴だったり、赤錆を伴う仕事をする大人の作業靴だったり。

冷や飯で作った茶漬けは生ぬるくレンジも黙る深夜のキッチン  杉田抱僕
ひとり暮らしの食事風景。黙るのは電子レンジでもあり、作中主体でもある。「生ぬるく」という接続を表す助詞を使うより断定にしたほうがすっきりするのではないかという意見があった。それにしても「お茶漬けっておいしいですよね」と頷き合う参加者のみなさんの表情はあたたかでした。

作り手の今なれば知る吾の骨は茶色いお弁当のたまもの    有田里絵
茶色いお弁当にいやな思い出があったのだろうか、「骨」は心身の真ん中にあるその人の芯を象徴しているという意見があった。前半と後半を比べると語感のバランスのぎこちなさが目立つため、前半をやわらかくするほうがいいという声もあった。

茶の髪ももうすぐ黒く染まる頃春一番が吹き抜けてゆく  ガク
新学期あるいは就職を前に黒髪に戻す学生さんを想像する人が多数。「春一番」で始まりの季節を示すのと同時に、とてもさやわかな気持ちにさせてくれる。離れて暮らす子供へのエールの歌とも読める。「茶の髪も」の「も」は書かれていない何かとの並列を意味していて、それぞれが想像するに任されている。

茶柱がたてば茶パジャマ脱がなくちゃチャンス一番茶番じゃないぞ  福島直広
よくこれだけ「茶」を入れてきたよねえと賞賛された歌。リズムと擬音の名手福島さんの真骨頂でしょう。「ジャ」「ちゃ」「チャ」の韻と「番」の繰り返しも使われており、込み入っているのに短歌として全体の意味が無理なく通っている。「赤パジャマ青パジャマ黄パジャマ」の早口言葉の代わりになりそう。

鼠またネズミの群が地平より尽きることなく近づいてくる  雨宮司
お題に対してたぶん茶色いネズミであろうというところから読みが始まった。漢字とカタカナと両方で表記した意味が不明である、この光景を俯瞰しているならその立ち位置で地平は見えるのだろうかという疑問の声もあった。もっとナンセンスに徹してしまったほうがいいという意見も聞かれた。

 通常の歌会の後、質問コーナーを設けました。
★筆名について、使い始めたのはいつからか(なぜそのタイミングだったのか)、また由来を教えてください。本名の方はなぜ本名のままなのか教えてください。
★横書き主流の現代生活の中で、どうやって最終的に縦書きとなる短歌作品を作り上げているのですか?縦書きにしたときに違和感はありませんか?
★連作を作るためにしていることは何ですか?
 これらの質問について退出時間ぎりぎりまで意見交換ができました。最後に十谷さんから、今回の詠草それぞれに対する返歌集をいただき、閉会としました。すてきなおみやげを手にした参加者は、家路に着いたり、ハンバーガー屋さんに移動したり、それぞれにうるう日前日の夕方を味わいました。
 短歌のことを実際に誰かと話すのは、かばん関西が初めてという方も多いです。人と会うのが苦手な方もたぶん多いのですが、大丈夫です。みなさん笑顔で帰っていかれます。ことばが通じる人に会える歌会を、これからも続けていきたいと思います。  (記/有田里絵)
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by kaban-west | 2016-03-06 15:11 | 歌会報告