2006年 08月 30日

8月歌会報告

[かばん関西歌会 二〇〇六年八月 オンライン歌会]

【参加者】雨宮司、有田里絵、笹井宏之(購読)、十谷あとり
(日月・玲瓏、司会進行)、山下りん(ゲスト)、棉くみこ

八月の歌会はMLを利用したオンライン歌会。
題詠は夏にちなんで「動物園/水族館」。皆さんそれぞれ思い入れがあるようで、印象深い歌が多かった。

☆題詠「動物園/水族館」より

・最前列でイルカのショーをよう見やんぼくの弱気を「好きや」と言うな  十谷あとり(4票)

 関西弁で詠まれた微妙に屈折した心理に好感を覚える評が集まる。一方で、関西弁を抑え気味にした方がいいとの意見もあった。

・やわらかにひらいてむすぶ手を取りて餌を食むラクダの足に近づく  棉くみこ(3票)

・もう一度キリンがいいと言ったのは見上げる君を見ていないから  有田里絵(3票)

・ヤマアラシにもアルマジロにもなる自らを飼い慣らしゆく檻の増えつつ  山下りん(2票)

・頼むからブルーライトはよしてくれ虹色のクラゲを観たいんだ俺は  雨宮司 (2票)

・閉園後、動物慰霊碑のまえで食費を握る老飼育員  笹井宏之(1票)

 一首目、動詞の多さを指摘する声もあったが、恋人や子供と一緒にラクダを観ているとする好意的な意見が多かった。
二首目、素直な詠みぶりに全員好感を持つ。作者によれば、自身の背が高いので、上を見ている人が気になるとのこと。
三首目、ヤマアラシとアルマジロとの対比を面白がる者と、どちらも防御という面では同じだという者に意見が分かれる。作者によれば攻撃的防御と守備的防御ぐらいに考えていたとのこと。
四首目、進歩するテクノロジーと人の夢の象徴と捉える意見もあったが、作者によれば実景から生じた感情を詠んだとのこと。
五首目、一連として読みたい、また、悲しみや憤りを感じるとの意見があった。作者は、戦時中に餓死させられた象の話を詠んだという。しばし黙祷。

☆自由詠より

・コーヒーにあたためられた喉からの声で隣の人があたたまる  笹井宏之(4票)

 季節外れではあるが、密接な関係の人ではなく隣人にあたたかみが伝わる、という点に好感を得た意見が集まった。反復も必然的で、技術的にもしっかりしている。

・(じじ)蝉が(じじ)死にきれず転がって(じじ)足元でばたついて(じじ)  雨宮司 (3票)

・一面の向日葵畑に拾われて笑顔100本ノックしてみる 山下りん(2票)

・走る吾の視界にせり出す時計屋の時計があらぬ時間を示す  棉くみこ(2票)

・残らんもんはみんなきれいね砂浜のあしあとにできる薄い影とか  十谷あとり(2票)

・ざらついた踝ばかり見てしまう心弱い日描く白船  有田里絵(1票)

 一首目、(じじ)の位置や表記に好意的な評が集まる。作者はノイズ感覚を入れてみたかったとのこと。
二首目、底抜けの明るさに惹かれるという意見がある一方、向日葵と笑顔と一〇〇本ノックとのつながりがはっきりせずにグロテスクさを覚えるという意見もあった。作者は向日葵に負けない笑顔を生みだしたかったと語る。
三首目、急いでいる時に景色の一部が視界に飛びこんでくる感覚が上手く捉えられているという、説得力のある評が出される。一方で、「あらぬ時間」とはいかなる時間かという質問も出された。
四首目、関西弁で徹底してほしいという要望が出される一方、「砂浜のあしあとにできる薄い影」も見逃さない観察眼への評価が集まる。
五首目、上句と下句で意味が重複しているという意見が相次ぐ中、工夫をすればいい歌になるという意見も出る。作者によれば川崎洋氏の詩が念頭にあったという。

 詳細は未定だが、9月は奈良市内での吟行を予定している。オンライン歌会とはまた違った緊張感の中、限られた時間の中で歌を詠む体験は、自分の力量を知る上でもいいものだと思う。  (雨宮司 記)
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# by kaban-west | 2006-08-30 11:16 | 歌会報告
2006年 07月 31日

7月歌会報告

*かばん関西歌会 二〇〇六年 七月三十日(日)*
於:大阪市立難波市民学習センター

【当日参加者】 雨宮司、有田里絵、十谷あとり(日月/玲瓏)、日向寺みづほ(購読)、鷲家正晃(ゲスト)、棉くみこ
※オンライン参加/笹井宏之(購読)、やや(ゲスト)、山下りん(ゲスト)

★題は、この季節にぴったりの「南国またはトロピカル」。
歌に読み込まなくてもOK。得票の多かったものをご紹介します

・日常に混ざるマンゴー、タピオカの類知らずに父逝きし夏  日向寺みづほ

・沖縄のおばあさんには太陽がいくつもいくつも入れられている  笹井宏之

・カメハメハ大王さまの砂浜に「もういいよ」って置いてきた嘘  やや

・とりあえずマンゴープリン食べてから考えたって間に合う話  有田里絵

・オウム一羽ブラウスに飼いおおらかに笑う人いて部屋の明るむ  棉くみこ 
一首目、初句の入り方がよい。題を生かしつつ、故人の真面目なお人柄を的確に伝えている。
二首目、「沖縄のおばあさん」が味わい深く表現されていて、豪傑笑いが聞こえてきてきそう。「おばあさん」を方言で表してもよかった。選をしなかった方はみなさん「入れられている」の受け身が気になるとのこと。
三首目、「カメハメハ大王さまの砂浜」と「置いてきた嘘」の組み合わせが絶妙で、さまざまなストーリーを組み立てられそうと一番の話題に。ただ、「もういいよ」の解釈が曖昧との指摘があった。
四首目、作者コメント「2分でできた、申し訳ありません」とあるが、そのスピード感が効果を生み、猛暑に一息つける歌に。
五首目、初句からブラウスの南国風の柄を想像した。下句がありきたりでもったいない。

終了直前、約一分の日向寺さんのサプライズ誕生会を開催(あとりさんのピアニカ伴奏付き)。ちょっとおもしろ関西歌会、みなさんもお気軽にいらしてください。(棉くみこ記)
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# by kaban-west | 2006-07-31 11:11 | 歌会報告
2006年 06月 30日

6月歌会報告

かばん関西2006年6月歌会 報告記

【参加者】雨宮司、有田里絵(司会進行)、笹井宏之(講読)、十谷あとり(玲瓏・日月)、日向寺みづほ(講読)、やや(ゲスト)、鷲家正晃(ゲスト)、棉くみこ

 6月の歌会はMLを利用したオンライン歌会を開きました。題詠はサッカーW杯にちなんだ兼題「足または脚」が19首、自由詠は14首の詠草が出揃い、選歌に苦戦した人も。最高得点は、題詠・自由詠共に5点でした。

■題詠「足または脚」より

(5点歌)
去年から積みっぱなしの三脚を思い出させてくれた夕立  有田里絵

こころにも手や足がありねむるまえしずかに屈伸運動をする  笹井宏之

 一首目、夕立で何かを思い出すのではなく、夕立が何かを思い出させてくれるという語句の転換がおもしろい。「夕立」がこの季節にぴったりの歌。二首目、柔軟で伸びやかなこころ、素直なこころを感じる。ひらがなの使い方が良い。「こころの屈伸運動」という捉え方も新鮮。
 他の注目歌も見てみましょう。行末の(数字)は獲得票です。

あかときの壁わたりゆくピアニシモ蜘蛛よその脚をひらきつくせよ   十谷あとり(3)

ひとあしまたひとあし水を踏む鷺の脚見つむれば瞳は濡れ来   十谷あとり(2)
スタートの乾く一声待ちかねて足という足われもと駆ける   雨宮司(2)

素足率向かいの席は五分の三明日はウエッジソールにしよう   有田里絵(3)

山鳩の声途絶えたる真昼間の汝が足音にも籠もりたる熱   日向寺みづほ(3)

仰向けばもうもどれないだんご虫ゆうやけ色に足さき染めて   やや(1)

両腕を縛るよううに抱き締めて爪先と顎でキスをあげるよ   鷲家正晃(0)

ワインカラーのパンストが重い足のままいるほかはなく 会議室  晴れ  棉くみこ(1)

 十谷作品は今回も人気。一首目は一語も無駄な語彙がなく、「ピアニシモ」から広がる連想も美しい歌。二首目については、歌のリズムが情景と合っているかどうか賛否両論となった。雨宮作品、的確な表現で情景がすぐに浮かぶ。有田作品は「素足率」の表現が面白く、また今年の流行を取り入れた明るい歌。日向寺作品からはこの時期の暑さが伝わってくる。鷲家作品、「ようう」は単純な間違い? と思った人が多く、無点に終わる。棉作品、独特の表現を解釈しかねた人もいたが、どうしようもないけだるさを感じませんか?

■自由詠より

(5点歌)
ひだまりにひらくてのひらくるぶしをくすぐる風は恋人に似て   日向寺みづほ

 ひらがな表記や同じ音の繰り返しが効果的な歌。「ひらひら」「くるくる」といったオノマトペも隠されている? 「くるぶし」が初々しく、また夏に向かう感じも出ている。

ザルカウィ殺害の報に拍手するテロに歓喜を非難せし民   雨宮司(0)

式典で起立せぬ人サッカーの君が代ならば自然に歌う   有田里絵(2)

ああそれが答えであった 水田に映るまったいらな空の青   笹井宏之(3)

生きてゆく 返しきれないたくさんの恩をかばんにつめて きちんと
   笹井宏之(2)

五月闇こそいのちはぐくむ闇ならめ土に樹木の種はあまねし   十谷あとり(2)

持ち物に名前書くようにカレンダー彼と私の誕生日書く   鷲家正晃(1)

放射状に夏のひかりを散らしては蜘蛛の巣揺れる深き側溝   棉くみこ(2)

101匹分の1匹わんちゃんが主を引っ張り駆けてくる初夏   棉くみこ(1)

 雨宮作品、出だしのリズムの乱れや後半のもたつきが読みづらいとの意見が多かったが、それでも詠まずにはいられなかった作者の感情が伝わってくる。有田作品は諷刺の歌の解釈が複数名から。しかし「no music,no life」の作者曰く素直な連帯感を詠みたかったとのこと。笹井作品、1首目はやや自己陶酔の感もあるが、歌い出しや水田に青空を見つける詩情が評価された。2首目を選ばなかった参加者からは具体性のなさを指摘する声が。十谷作品は宇宙のはじまりさえ想起させる神秘的な印象。鷲家作品、助詞に工夫をとの指摘もあったが、二人の関係の確かさが感じられる歌。棉作品、1首目の情景を切り取ってくる視点が評価された。2首目の上句はなかなかユニーク。

 関西歌会はかばん関西ML参加者なら誰でも参加できるオープンな歌会です。特にオンライン歌会は参加者の居住地や都合に関係なく開くことができ、歌会という場が毎月成立することに感謝感謝のこの頃です。興味を持たれた方は是非お問い合わせください。(日向寺 記)
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# by kaban-west | 2006-06-30 11:34 | 歌会報告
2006年 05月 28日

2006年5月歌会

かばん関西五月歌会 歌会記

二〇〇六年五月二十八日(日)、奈良県文化会館集会室Cに於いて、かばん関西五月歌会が行われました。

[詠草参加者]雨宮司、有田里絵、笹井宏之(購読)、やや(ゲスト)、鷲家正晃(ゲスト)、棉くみこ、十谷あとり(日月/玲瓏)
[当日参加者]雨宮司、有田里絵、塩谷風月、日向寺みづほ(購読)、鷲家正晃(ゲスト)、棉くみこ、十谷あとり(日月/玲瓏)

 今回は詠草参加・歌会当日参加を含め合計九名の方がご参加下さり、合計二十八首の作品が寄せられました。作品と意見交換の一部をご紹介します。

◇兼題「飛ぶもの」◇

・一息で飛ばせなかったたんぽぽの綿毛しっかり寄り添っている  有田里絵

六票歌。飛んでいった綿毛ではなく、残った綿毛を詠んだ視点がよい。「たんぽぽ」のひらがな表記も効いている。観察のゆきとどいた歌。

・手のひらから消えてしまうよ文鳥は白い羽ばたきひとつ残して  やや

淡いものをうまく捉え、伝えることに成功している。「白い羽ばたき」が巧み。

・鉄鉢を米俵どもが追いかけて天空を飛ぶ絵巻に見入る  雨宮司

「信貴山縁起絵巻」を詠んだ歌とのこと。絵巻のことを知らない人にも開かれているとの意見が出た。淡々と対象のみを詠んだところがよいと思う。

・おとうとをころした… と啼く鳥のため桐の木は高く花をかかげる  十谷あとり

 「ころした」に関して賛否両論が出た。何の鳥かわからない、また「…」と一字明けの併用はいかがなものかという意見も。

◇自由詠◇

・好きだった記憶はどこか遠近のない空に似てセーターをしまう  棉くみこ

淡い恋のイメージが伝わる。下句、セーターの登場が唐突かという意見もあった。

・繰り返し四つの呪文を口ずさむヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・ムルロア  雨宮司

反戦を語り継ぐ必要はあるが、軽く歌ってしまってよいのか?という意見が出された。軽くしか詠めないことこそが、われわれ戦争を体験していない世代の限界を表しているのかもしれない。

・圧縮と解凍を繰り返されて「aijou.mov」は壊れた  笹井宏之

・サイコロと鍵を続けて英語にて口にしてみる「ダイスキーだよ」  鷲家正晃

歌会初参加の有田さん、鷲家さんを始め、塩谷風月さん、日向寺みづほさんも当日選歌・コメントに参加下さり、にぎやかな歌会となりました。初参加のお二方、お疲れ様でした。鷲家さんが抱く素朴な疑問(「歌会とは?」「選歌とは?」「批評とは?」「短歌とは?」)に、あらためて自分の短歌観を問い直されるような、また忘れかけていた初心を思い出させてもらえたような気持ちになりました。また、ベビーカーを押し授乳をしながらの参加となった有田さん、その熱意がまぶしかったです。ママと一緒に来て下さったお嬢さん、お顔を見せて下さって本当にありがとう!また遊びにいらして下さいね。
かばん関西歌会は「お医者さん鞄」のように大きく「がま口」を開けておりますので、どうぞ気軽にご参加下さい。六月はオンライン歌会、七月は大阪にて歌会を行う予定です。(十谷あとり記)
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# by kaban-west | 2006-05-28 15:41 | 歌会報告
2006年 04月 30日

4月歌会報告

かばん関西2006年4月歌会 報告記

【参加者】雨宮司、有田里絵、笹井宏之(購読)、十谷あとり(日月・玲瓏所属)、やや(ゲスト)、棉くみこ

 かばん関西MLを利用したオンライン歌会。題は春のイメージで白としました。

■兼題「白」

生むように生まれるように真昼間の沸騰水を沈む白玉  笹井宏之

はなびらの白いくつかを留めたる傘たたまれて夜に傾く 十谷あとり

いとけなく母猫を追ふ白猫のあうらあかるし名は桜丸
  
ぴったりを見つけられずに何年が過ぎたのだろう白い綿シャツ 有田里絵

責任を逃れるように丸まって シュレッダーは白の虫かご 棉くみこ

一首目、「生むように生まれるように」の比喩のうまさに評が集まる。晴れた午後の情景が浮かぶよう。二首目、「夜に傾く」傘が鮮やか。しばらく留まって鑑賞していたい歌。三首目、ふだん意識しない猫の「あうら」に焦点を当てた点がユニーク。桜丸の響きも明るく、ドラマ性がある。四首目、実感がこもっているとして2票。「何年が」が大げさとの意見も。五首目、刻まれた紙片が落ちていく様子がわかる。ただ上句の意味が曖昧。
 題詠は全部で十三首あつまった。白玉、シャツ、シロナガスクジラ…とさまざまな白に混じり、はなびらの持つほのあかるい白、メールや本の余白といった白も印象に残った。

■自由詠

一日の始めと終わりつなぐよに右から左はみがきをする  有田里絵

特大のファールボールをあてられてフェンスがわれに返る数秒 笹井宏之

うしろ手に扉しめれば過ぎてきた時がさらさら砂山となる   やや

ムンフバト・ダバジャルガルが理事会の満場一致で大関となる  雨宮司

 一首目、「つなぐよに」は「つなぐように」と直したほうがよいという指摘が出たものの、見立てのよさで高得点歌に。二首目、振動するフェンスを「われに返る」と表現したことで、より真に迫る歌に。三首目、読み手それぞれが違った場面を想像しながらも、共鳴できる歌となった。四首目、事実そのままという意見と、そのままだけどなんとも言えないおかしみがある、との意見に分かれた。

 この歌は棉さんでしょうか……と最近よく当てられるので、今度は意外性のある歌を提出するぞと思ったりしています。
(棉くみこ記)
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# by kaban-west | 2006-04-30 11:32 | 歌会報告