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かばん関西歌会

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2024年 06月 24日

2024年 水無月歌会 於 大阪市立中央公会堂

2024年 水無月歌会 於 大阪市立中央公会堂_f0135430_21485151.jpg

かばん関西水無月歌会記
                           
とき ・・・ 令和六年六月十六日(日曜日)午後一時から五時
ところ ・・・ 大阪市中央公会堂 第二会議室

◆歌会当日までのスケジュール
会場予約、日時の予告 ・・・ 四月二十二日
会場費振込 ・・・ 四月二十八日
会場からの利用許可証の受領 ・・・ 五月八日
正式な案内配信、参加申し込み、詠草募集開始 ・・・ 五月二十三日
詠草提出〆切 ・・・ 六月十三日
詠草一覧配信 ・・・ 六月十八日
当日参加された方だけに選歌結果配信 ・・・ 六月十八日

◆参加者
雨宮司、小川ちとせ(詠草のみ)、久保茂樹、小坂恵(所属なし)、佐藤元紀、雀來豆(所属なし)、十谷あとり(所属なし)、蔦きうい(所属なし)、雛河麦、有田里絵
以上の十名です。筆名の後に特記事項のない方は、かばん正会員です。

 平年よりも梅雨入りが遅れて連日三十度越えの暑さが続く中、八名が会場に集まりました。お菓子を差し入れてくださったり、自作の本や歌集を配布してくださったり、お気遣いありがとうございました。有田の思い付きにより、ホワイトボードに一人ずつお名前を書いていただいたのですが、筆跡だけでなく、赤ペンと青ペンのうちどちらを選ぶかにも個性が感じられました。
 
開始時の挨拶では、有田が「今日、最初に口に入れたものを教えてください」とお願いし、順に答えていただきました。牛乳、バナナ、炒った豚肉、湯冷まし等々、それぞれの暮らしの一端が伺えました。ちなみに有田は常温の水です。かばん関西では「短歌だけではないけれど、かなり短歌である」集まりを続けることを心がけています。もちろんメインは短歌なのですが、その歌を詠んだ人がどんな人なのかを感じる場所でもある、と捉えています。

 詠草は兼題「かさ」で、以下のように配信しました。

☆ 事前募集の詠草について ☆
当日来られない方も、詠草だけ参加可能です。ひとりにつき、兼題と自由詠の合計二首まで、提出できます。どちらの部に提出するか、書き添えてください。
兼題・・・「かさ」の音を詠み込んでください。
「かさ」には、アンブレラ以外にも、けっこういろいろな語句があります。漢字・ひらがな・カタカナ表記は可能ですが、常用以外の文字や英字はナシです。新聞や雑誌で目にしたとき、ルビなしでも読める語句を目安にしてください。

この結果、兼題に十一首、自由詠に八首が集まりました。

 参加者は詠草一覧が印刷されたレジュメと、選歌用紙を受け取ります。レジュメには、作者名は書かれていません。歌会の最後まで、作者名は伏せられています。

 まず、レジュメを音読し(司会者がその場で依頼します)、十分ほど選歌の時間を取りました。今回は兼題・自由詠ともに、三首ずつの選歌としました。選歌は記名の上で用紙に書いて提出します。記名するのは、だれがどの歌を選んだのか分かるようにするためです。ただ、記名のある選歌結果は、当日の参加者のみに直接メールにて送っています。

 その後、司会(有田)が参加者を指名しながら一首ずつ読み進めていきます。

◆兼題「かさ」

美津子さんの子孫ら二十五人なりかさかさの手に守られていた      有田里絵

「二十五人という数字が具体的ですね。あ、子孫だから、子どもと孫だけじゃないんだ」
「でもまあまあ多いですね。ひいおばあさんって感じで」
「こうやって、親戚が集まることって少なくなっていますけど、改めて考えると、一緒に住んでいない人でも、守ったり守られたりしてるんだなあと思いますね」


なぜかしら小首をかしげるようにして考える傘 地軸の角度で       雛河麦

「なぜかしら、が優しい。素直な歌だなあ、と」
「地軸の角度で、がいいですね。開いた傘を地面に置いて乾かしていると、地軸の傾きと同じ角度になって、それが考えているように見える、と」
「えっ」「あ、そうか」(何人かがはっとした顔をしたり、眼を見開いたりする)
「あの、これ、地面に置いた傘なんですか、私は傘をさして、普通に、手に持って歩いているのかと思って読んでいました。でも地面に置いた傘も、確かにそのとおりですね。地軸ですね」
「うん、そうですね、私も先程の読みを聞くまで、傘をさしていると思ってました」
「なるほど。景ががらっと変わりますね」
「わー、歌会に来て良かったですねえ」(一同笑い)
「挙手をしてみましょうか。この歌、傘を地面に置いていると読まれた方は?」(挙手二名)
「ありがとうございます。では、その他の方は傘をさしている、と。うんうん」
(注釈★ここで、参加者全員に挙手を求めるということは、作者本人も挙手するということを意味します。これは私の歌です、とは言わずに進めます。)


上野着の夜汽車に星の馨して母子の傘は霧の入谷へ             蔦きうい

「これは、蒸気機関車かなあ。東京行きの夜行の」
「たぶんそうですね。入谷駅というのが、関西に住んでいる人だと知らないかもしれないけど、上野駅のすぐ近くだったかな」
「上野駅の、一つ隣の駅ですね」
「母子というからには、たぶん母子家庭で、経済的事情のためか何かで、地方都市から上京して働かざるを得なくて、霧の、たぶんごちゃごちゃっとした街中へ消えていく、と読みました。ただ、だからと言って、この歌からはそこまで暗い感じは受けませんでした」
「そうですね。背負っているものは辛いのかもしれないけど、歩いて行こう、みたいな」
「作者の記憶が二重に映し出されていると思いました。蒸気機関車の記憶と、母子の記憶と、それぞれがある。でも全面的なロマンチックじゃなくて、現実感もあるのが良いです」


蹴つた子も転がつてゆく松毬も梅酒色したゆふやけのなか         久保茂樹

「これ、転がっていくのは、松ぼっくりと子どもと両方ですね。梅酒色が何ともいいですね」
「ノスタルジーですねえ」(一同しみじみ頷く)
「結句の平仮名表記がいいなあと思いました。梅酒の色が、ひらがなに開くことで、やわらかく広がっていくのを想像しました。空に染みて広がっていく感じで」
「この『松毬も』の後には、『転がつてゆく』が省略されていて、文法的には一字空けが必要かも、と気になりました。でもそれでも、いいなあ、と」
(今回の最高得点歌。参加者らは何か蹴りながら帰った記憶を辿っていたようです)


きぬずれの闇にもしるきいのちもておまへと俺の襲(かさね)の夜を         佐藤元紀

「この『しるき』は反語ですかね」
「闇に対する反語になっているでしょうね。『しるし』は、はっきりしている、明白だ、という意味ですから」
「私は、やらしい歌だと読みたいですねえ。かさねを着たままなので、着衣のままだからよけいにその下の裸体を想像するわけですよ、~、~。」(もうしばらくその場の雰囲気を持っていく読み方が展開されましたが省略しています。支配する絹、という語は印象的でした)
「重ねるのは、絹の着物、逢瀬、お互いの身体と心、でしょうか」
「まあ、ごちゃごちゃ言わずに黙って読みたい歌ですね」(一同笑い)


大きめの傘持ってきたよというきみといくつもいくつも鳥居をくぐつた     雀來豆

「これは相合傘をしたい女性の歌で、歌い出しは、持ってきた相手の台詞」
「ストレートな歌ですねえ。場所は、京都の伏見稲荷かなあ。あの鳥居って、あまり大きめの傘だと、すーっと通れないかもしれないけど」
「観光客も多いし」(一同やや苦笑い。オーバーツーリズムは本当です)
「相合傘にできなくても、この二人の仲は良さそうですよね。みずみずしい感じがします」


木星に暈かかる朝 妻子もつ男の邸に落書きあらた            蔦きうい

「この漢字、『邸』は、やしき、てい、いえ、どう読むんでしょうね。文字数から考えると、いえかな。上下のつながりがよく分からないのですが」
「木星は、浮気男の象徴でもあるんですよね」
「へー」「そうなんですね」(一同興味を惹かれる)
「とすると、落書きは具体的に何が書いてあったんでしょうか。書いたのは、女性?」
「それもあるし、『邸』ということはまあまあのお屋敷でしょうから、大きい壁もあって、そこに近所の子どもが文字じゃなくてざーっと線を引くとか・・・」
「朝、木星に、かさがかかる(月の笠みたいな)ことって実際にあるんでしょうか?」
(いろいろと細かな不明点を残しました。しかし、それはそれで、まずは楽しんで受け止めようという場の力がありました)


ペデストリアンデッキのうへにすれちがふ開いた傘、畳まれた傘、西寄りの風    十谷あとり

「作者は、街中の路上にいて、上の、デッキを行ったり来たりする人を見上げている、と。人の動きを、傘の描写だけで伝えているのがうまいですね」
「開いた傘と、畳んだ傘は対になっていると思いますが、最後の、風は、別物ではないでしょうか。並べてあるのはなぜだろう、って。傘、傘、と来て、その次に風だから・・・」
(この問いに対して、風は孤独を表しているという意見や、雨が上がるみたいに心もそのうち晴れると励ましているという意見が出ました。結句の『風』を淋しい感じに捉えることも、明るい感じに捉えることも、両方可能であることに気付きました)
「自分に対しての、周りの人の行動のことかもしれない。この私に対して、開いている人も、閉じている人もいるけど、好きにしていいんだよ、と言っている歌なのでは」
「そうすると、孤独も大切なものだ、悪くないよ、と読めてきますね」
「歌の構造としては、その孤独にいちばん重きを置いているから、その上に、傘二種類を持ってきた、と考えることもできそうですね」
(こんなに建設的な!読み方ができるのは、歌会の席上ならではです。大げさではなく、私は感慨を覚えます。一人では、できないことですから)


持っていて良かったけれど差すけれどかたかた揺れる折り畳み傘          小坂恵

「この歌は、『けれど』が二回出てくるところが、実にうまいなあ、と。深刻過ぎない描き方ですね」
「もうちょっとこうだったらいいのになあ、っていうことって、日常生活でよくありますね。妥協というか。でも困りすぎていないところが良いです。淡々と、からっとしている」
「『かたかた』は、すごくよく分かります。買ってから何年も経っているのか、買ってみたもののいざ使ったらかたかたと音がするのか、はっきり分かりませんけど、大切にしているんだな、って」


地面から突き出た茸が開きゆき風もないのに傘反り返る             雨宮司

「散歩の定番ルートなのかなと思って読みました。定点観測を楽しんでいる人。あの、傘がお椀になってしまうのって、おもしろいですよね」
「時間の経過が分かりやすくて良いと思いました。茸についての動詞が三つありますね」
(この歌には、茸を主語にした動詞が三つ、更に風を主語にした動詞が一つ、一首の中に動詞は合計四つあるが、多いとは感じなかった、という意見がありました)
「風もないのに、が肝ですね」
(この辺りで、「安い腐葉土」を使って茸を育てる話題が出ました。一同笑い)


うつむいてユリ科ユリ属夕暮れのカサブランカが考えている         小川ちとせ

「音読すると『ゆ』の音の並びが気持ちよくて、リズムがありますね」
「擬人化ですね。ここまでの、一連の詠草を読んで思ったのは、『うつむいて』という角度の物を見ると、それが『考えている』という発想に行きやすいのかな、と」
(意見を聞きながら、水仙が咲いているのを見たり、トロンボーンが置いてあったりしても、この発想が浮かぶかもしれない、と考えました)
「作者は、カサブランカを見て、さてところで自分は、という想いが沸いてきたのだと思いました。夕暮れが実景かどうかは分かりませんけど、物思いにふけりそうです」
「花弁の厚みや、こっくりとした白さを想像すると、そう感じられますね」

兼題は以上です。ここで十分ほど休憩をはさみ、自由詠を読みました。レジュメの掲載順に挙げます。


◆自由詠

この春はお婆ひとりで世話をするかぼちやは花を朝に咲かせる        久保茂樹

空を見れば大小の熊眠りおり ひかりはきっと答えではない          雀來豆

六月の夏日半袖短パンでこんにゃく炒ってきゅうきゅう鳴かす        小川ちとせ

日曜に『別れの曲』の降りかかる雨粒 おたまじゃくし 帰るよ        有田里絵

子も猫も蔓のあばれる薔薇の木も育ちし五月忘れがたしも         十谷あとり

まだ生きてゐていいんだどしやぶりの五月雨に傘なき身をば歩ませてゐる  佐藤元紀

皿・茶碗・猫・日本海プレートを片っ端からぶん投げている            雨宮司

鈴なりの耳をふるわせどの耳も分かりませんと告げるスズラン         雛河麦


 会場の利用終了時間七分前に、選歌の結果(それぞれの歌に何票入ったか)を口頭で伝え、作者名の入ったレジュメを別途配布しました。その後、時間の許す限り「作者さんに質問コーナー」と称して、作者に歌の真意を聞くことができます。退出時間ぎりぎりまでやりとりをして、全員で会場を片付けました。
会場を後にすると、タイサンボクの手のひらほどの大きさの白い花が四つ、見事に咲いていました。大阪市中央公会堂の隣には、大阪万博のキャラクターとして有名な(はずの)ミャクミャクが出迎えてくれる大阪市庁舎があります。しかし、ミャクミャクのことはすっかり忘れて帰途につきました。次回の歌会の時には、手を振りに行くつもりです。
                                                 


# by kaban-west | 2024-06-24 21:50 | 歌会報告
2024年 03月 31日

2024年 弥生お花見吟行 於 靭公園

2024年 弥生お花見吟行 於 靭公園_f0135430_09283455.jpg
かばん関西桜吟行記
          

とき・・・三月三十日(土曜日)午後一時半から四時半まで
ところ・・・大阪市西区の阿波座駅周辺
 
◆スケジュール
・三月三日(日曜日)おおまかな日時のみの案内を配信
昨年の桜は四月に入るころ満開を迎えていたため、とりあえず昨年の桜吟行(四月四日でした)よりも、一週間早く日程を組みました。

・三月二十五日(月曜日)、最終的な日時と集合場所の案内を配信。
しかし、春分の日前後に寒波が来て、日本列島はほぼ真冬に逆戻り。開花予想は大外れ!桜はほとんど咲いていませんでした。開花速報だけは確認したため、予定通り開催することにしました。下記はその案内文です。

〈週末のお天気は良さそうですので、予定通り吟行を行います。
三十日、土曜、午後一時三十分に、地下鉄阿波座駅の1番出口にてお待ちしています。特に点呼は取らず、5分ほど待ったら出発します。
散歩しながら歌を詠み、途中でお茶でも飲みましょう。歩きやすい服装でいらしてくださいね。
持ち物:筆記用具、飲み物、日焼けと花粉症と黄砂の対策〉

文面からお分かりのように、吟行のときは、事前の参加申し込み制度をとっていません。途中参加も立ち寄り型の参加も、ご自由に、というスタイルです。きまぐれで曖昧ですが、いつもの歌会とは違って、不確定要素を多めにしてみたいという意図もあります。

◆参加者
有田里絵、黒路よしひろ、十谷あとり、蔦きうい

時間通りに四人が集まりました。黒路さんは、早めに着いて地上に出ていらしたそうで、他の三人が立ちつくしている地下鉄の改札前に、一時半ちょうどに降りてこられました。ちなみにかばん正会員は有田のみで、他の三人は所属なしです。しかしながら、かばん関西には十二年以上関わってくださっている方ばかりです。結果として、中年男女二人ずつ合計四人というやや地味な見た目の小集団が出来上がりました。
さて、桜は咲いているのでしょうか。

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吟行の目的地は靭【うつぼ】公園です。テニスコートや昔からのバラ園があり、有名な場所です。魚類のウツボと関係があるのかどうかは四人とも知らなかったのですが、敷地の中ほどに控えめな神社と碑がありました。江戸時代には、この辺りで様々な干物が取引されていたとのことで、ウツボ自体はこの場所にいなかったとしても、海に関係はしているのだと納得しました。

花は咲かなくても長閑なり靭公園浮かれポンチな僕らがゆけば   黒路よしひろ

桜は、咲き始めていました。木によっては早咲きなのか、八分ほど咲いているものもあり、大勢の人が写真を撮っていました。面目躍如といったところでしょう。
そして、かなり多品種の植物が人々の足元を埋めていました。トケイソウ、カラスノエンドウ、タンポポ(日本古来の種も、西洋タンポポも)、他にも名前の分からない草花のいろいろが、春の空気に満たされた喜びを表していました。撮影が苦手な有田はもっぱらメモを取るのみでしたが、他の三人は小まめに植物や立札を撮影していました。梶井基次郎の『檸檬』と丸善について書かれた碑も密かにありました。

歩き方は四人それぞれで、時おり誰かが勝手にベンチに座ったり、横道に逸れたりします。それでもお互いに概ね視界に入りながら、靭公園を端まで歩きました。

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もし「小鳥のさえずりが聞える」ならばもちろん入る「京二ビル田中」  有田里絵

冷やかしに入ってゆけるきみたちが怖くって僕は独り待ち惚け  黒路よしひろ

たこやきじゃなかったつぼの群れだった座りこんだら仲間になれる  有田里絵

芝生エリアにはまだわりと新しい雰囲気の噴水があり、週末の午後を屋外で過ごす家族でかなり賑わっていました。コロナ禍を過ぎ、外で思いっきり遊べるようになった子どもたちのキラキラした目が、水しぶきの向こうにきらめいていました。

健全な好奇心ならとりあえずI CAN転んだっていいじゃん   有田里絵

よもぎの芽はこべの花のうへに落つる模型飛行機こどもの投げた   十谷あとり

ふしだらな多言語が飛び交う靭公園に色とりどりの模型飛行機  黒路よしひろ

その後、一本北側の道をゆっくりと駅方向へ戻り、十谷さんおすすめのカフェに移動しました。カフェまでの途中に、小さな真新しい保育所がいくつもあり、これは先程の家族連れの中で誰かが通っているのだろうと思われました。新旧入り混じった雰囲気の通りを興味深く散策しました。



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カフェマーサは緑に囲まれたダークブラウンの内装で、とても落ち着くお店でした。ノートにみんなで短歌を書き込みました。

にわとりと葱のくった煮にわとりは生きていますか死んでいますか    蔦きうい

Café Marthaの甘いひととき銀杯の上に揺れている焼きプリン   黒路よしひろ

 
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今後もゆったりと短歌をご一緒して参りましょう。  (有田里絵/記)


# by kaban-west | 2024-03-31 09:30 | 歌会報告
2024年 02月 26日

かばん関西歌会へのお問い合わせ

かばん関西歌会では、月に一度メーリングリストを使用したオンライン歌会を行っています。
また、年に数回実際に顔を合わせてオフラインの歌会も。
歌誌「かばん」の関西在住会員がおもなメンバーでしたが、
現在は「かばん」会員ではない方も、関西在住ではない方も多くみえます。
歌を詠みたい、読みたい、という方ならどなたでも
お気軽にお問い合わせください。


[追記]2024年2月26日
2024年現在もかばん関西歌会は活動を続けております。
・メーリングリストによるオンライン歌会
・実際に集まってのオフラインの歌会
いずれも年に数回開催しております。
「はじめて歌会に参加します」と仰る方もよく来て下さいます。
どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。

kansai●kaban-tanka.jp (担当:有田)
※●を@にかえてください


# by kaban-west | 2024-02-26 21:24 | お問い合わせ
2023年 10月 27日

2023年 神無月歌会 報告

かばん関西神無月歌会記
             
とき・・・十月二十九日(日曜日)午後一時半から五時まで
ところ・・・大阪府立江之子島文化芸術総合センター ルーム6
 
◆参加者
雨宮司、有田里絵、小坂恵(所属なし)、雀來豆(所属なし)、十谷あとり(所属なし)、蔦きうい(所属なし、詠草のみ参加)、雛河麦、渡邊千歳(詠草のみ参加)
お名前の後に何も記載がない方は、かばん正会員です。

ハロウィンに合わせて兼題は「かぼちゃ」としました。詠み込み指定にはしませんでしたが、連想しにくい兼題だったかもしれません。〆切前に有田から「かぼちゃください」という件名のメールが送られてきたため、急ぎ詠草を提出してくださった方もおられます。当日参加は六人でした。広々とした会場にて、みんなで椅子と机をコの字型につなげて歌会を行いました。なお、今回は十谷あとりさんのご紹介により、小坂恵さんが初めて参加してくださいました。

以下に詠草一覧を掲載します。詠草の後の会話文は当日の意見交換の様子です。関西イントネーションにて脳内音読が可能な方は、ぜひお試しください。

◆兼題「かぼちゃ」

・ハプスブルク邸の小庭の南京はいつもの皺だマリーが死んでも       蔦きうい

「この漢字の南京って中国の国名なのでは?」
「ああ、これは京でも瓜でも、かぼちゃのことですよ」
「いつもの皴っていうのは、アントワネットが遠く離れた地で首を切られても、実家の畑には淡々といつも通りのかぼちゃが実っているということなんでしょうね」
「そう、関西人の、いもくりなんきん」
「普通の、なんきんのたいたん(=かぼちゃの煮物)」
「そうですね、人が一人いなくなっても日常が続くということを詠みたかったのかなあ」
「ハプスブルクだったら、小庭ってどんな広さなんでしょう。学校の運動場より広い?」
(一同笑い)
「そりゃ広いでしょ」
「たぶん広いでしょう、知らんけど」
(一同再び笑い)

・一度だけ魔法で馬車になりましてガラスの靴を知っております       雛河麦

「この歌は本歌取りかなと。あれですね、山崎方代の・・・、一度だけ本当の恋がありまして南天の実を知っております、の」
「あ、それ違う。南天の実が、ですね」
「ああ、そうか、そうでした」
「かぼちゃは、馬車になって、身体の内側をシンデレラに踏まれたんかな」
「え・・・、ああ、それはまあ、踏まれたかもしれませんけど」
「え、踏まれたい」
(一同笑い)
「確かガラスの靴って、灰かぶりだったシンデレラが、ドレスの姿になってから、最後の仕上げとして魔女にもらったんじゃなかったかな。だから、馬車になったかぼちゃは、シンデレラが足を入れるところを見ていた、という意味かな、と読みました」
「ああ、そうか、それはそうかもしれないですね」

・かぼちゃから抜けなくなった包丁にうつるあなたと私の恋路        渡邊千歳

「これは、実際に二人の人がいるのでしょうか?」
「うん、これはいるでしょう。台所でかぼちゃを切ろうとしたら、『ああ、包丁抜けへんわ、ごめんちょっと来てー』ってなって、『えー、もう、しゃーないなー』ってもう一人が助けに来て、苦笑いしつつなんとかかんとかする、っていう感じじゃないでしょうか。」
(複数名頷く)
「日々のことを、わちゃわちゃしつつも楽しんでそうで、いい関係の二人かな、と思います」
(一同微笑む)

・名を知らぬとほき縁者のかほをしてバターナッツは卓にころがる      十谷あとり

「一読して、巧みな、つくりの上手な歌だなあと思いますね。卓にころがる、がすごくおもしろい。バターナッツという固有名詞に頼りすぎていない、というのもいいし」
(一同頷く)
「バターナッツって、検索したら、細長くて白っぽくて、つるんとしてるんですね。いわゆる和風のかぼちゃと全然見た目が違いますね」
「ああ、なんか顔みたいな見た目ですね」
「普通にスーパーでも売ってるんですけど、ねっとり甘いというか、食感がね、日本の和食のかぼちゃとはだいぶ違うんですよ」
「とほき、かほ、という旧仮名も、視覚的におもしろく見えます」
「食べたくなってきますね」
「ハロウィンにかぼちゃ食べましょうか」

・灰かぶり姫が姫ではなかったときに南京パイを贈った彼氏         蔦きうい

・歯を見せて笑い続けたパンプキンポタージュになる晩が来るまで      有田里絵

・旨ければいいが昼餉の煮かぼちゃはハロウィンの夜のハレを残して     雀來豆

・ねっとりと深い黄色がパリパリに閉じ込められてパンプキン・パイ     雨宮司

「おいしそうですよねえ。ねっとり、深い黄色、パリパリ、というのがとても良いです」
「素直に書いてあるだけに、伝わりやすいですね」

◆自由詠

・カナブンを追い出し数日経った頃玄関の戸に止まるカメムシ        小坂恵

「なんか、こういう面倒なことってありますよね。今年は黄緑のやつが多いし」
「ものすごい困るってほどでもないんやけど、うわ、ってなりそうですね」
「あの、これは、玄関の戸の、どっち側だったんでしょうか。家の中のほう?外?」
「うーん、中かなと思います。カナブンを追い出して、戸を閉めて、家の中が安全になってほっとした。だから、数日後カメムシが中にいて、うわ、ってなったんじゃないかなあ。あ、でも、帰って来てドアノブ辺りについてても、こうなるかもしれないですね」

・してあげたことは忘れてしてくれたことは忘れぬ母でありたし       渡邊千歳

・秋の朝黒板消しで消しかけてやめたかたちの月が出てゐる         十谷あとり

・飲み終えたペットボトルを踏みつぶす怪獣あるいは神の地団駄       雛河麦

「地団太は怒りからくるものみたいですけど、どんな人でしょうね」
「まあ実景としては、リサイクルに持っていくとか、ゴミに出す前に踏んでるんでしょうね」
「子どもだと考えて読んだら、怪獣でも神でもあてはまりそうだなと思いました」

・磯竿が満月となる倒してはまた竿を立て糸巻き上げる           雨宮司

・この歌はこの歌屑はみんな(賢治忌の)真っ暗がりからもらってきたのです   雀來豆

「これ、歌屑が、いいですよねえ。私もいっぱいあります、そういうの」
「リズムは取りにくいというか、ちょっとわかりにくいです」
「うん、そうですねえ。とはいえ、賢治だから、結句は、何かの童話作品から引いてきてるかもしれないですね」
「私は、みなさんが自然に宮沢賢治の世界観を共有できていることに対して、なんというか、ああ短歌の人だなあって思ってしまいました。なかなか、日頃から、・・・まあ純文学だけが文学じゃないしそれぞれのジャンルに良さはあるでしょうけど、賢治忌の一言で、その雰囲気をみなさんが掴んでいるというのが、いいなあ、って」

・初めての電気スタンド一冊の本開きつつ首を曲げし日           有田里絵

 詠草は以上です。
歌会記というものには、議事録として残すために何らかの形式があるのかもしれませんが、今回は実際の会話ができるだけ伝わってほしいという願いから、このように記載しました。短歌の話がリアルでできる貴重な場所です。特に難しいことはありません。その時の自分にできる読み方を教えていただければじゅうぶんです。場の力が働いて、一人で読むときには得られない気づきがあり、参加者はそれぞれ心地よい疲労感と共に家路につくことができます。不定期ながら、これからも歌会を継続してまいります。みなさんのご参加をお待ちしております。         有田里絵・記


# by kaban-west | 2023-10-27 16:16 | 歌会報告
2023年 09月 24日

2023年 長月歌会 報告

かばん関西長月歌会記
             
とき・・・九月二十四日(日曜日)午後一時から五時まで
ところ・・・大阪市中央公会堂 第六会議室
 
◆参加者
雨宮司、有田里絵、佐藤元紀(詠草のみ参加)、雀來豆(所属なし)、十谷あとり(所属なし、詠草のみ参加)、蔦きうい(所属なし)、雛河麦、渡邊千歳(詠草のみ参加)

お名前の後に記載がない方はかばん正会員です。本当に厳しい残暑が続き、どうなることやらと思いながら、当日は五人が集まりました。会場にはエアコンが控えめにしか入っていないのですが、石造りの建築であるためか、快適に過ごせます。

事前募集の詠草は、兼題「満月」限定で、詠み込み指定なしとして出題しました。今年の仲秋の名月は、九月二十九日でしたので、歌会で満月を集めてみよう!という意図に基づいています。自由詠草と合わせてひとり二首としたところ、提出された歌には個人差が見られて、興味深く受け取りました。

詠草一覧の一部を掲載します。

☆ 兼題「満月」

空腹の君の脳に満月はホットケーキか いいよ作るよ             有田里絵

二十時のダブルスチールあざやかにオーロラビジョンの上の満月        雀來豆

追いだした男の遺品。卓上に溢す梅酒に映るまんげつ             蔦きうい

漕いでゆく海に浮かんだ満月へただひたすらにただ懸命に           雨宮司

道長もこんな気持ちか「アメトーーク!」見つつビールとえび満月と     渡邊千歳

君と僕ふたりの月を足してみてバナナも足して今日は満月          雛河麦

望月十六夜立待居待臥待の身の行くすゑをおもふ待宵          佐藤元紀

満月の夜に生まれた子どもらは眠る黄色の眼を閉じて            渡邊千歳

「黄色の目ってあんまりないですよね。あっさり読んでしまいましたが、違和感が残るのではなく、不思議で面白い表現だと思いました」
「月だと、金色とか銀色なら、ありそうですけどね。満月の色が目に映っているのかな。ちょっと絵本的なイメージ」
「大潮に出産が多いっていう話を思い出した」
「あっさり、眼という漢字をまなこと読めてしまうのは、短歌の人だからかな」
 
このように、当日の参加人数が少なめの時は、ほぼ一人一回言及しつつ、意見交換が進んでいきます。リアクションも交えつつ、和やかに進行していきます。自分一人で取り組むときには到達しない発想があり、やはり歌会という場所の力を体感できます。

◆今回の歌会のキーワード「言いさし」
 筆者は、その日の歌会独自のキーワードを捉えようとしながら進行しています。今回は「言いさし」でした。これは関西弁に属し、言いかけた表現のままにしている、という意味で使っています。
 言いかけたまま読者に解釈が委ねられている歌が出てくると、だいたい以下のような反応があります。
1「何が言いたいのかわからない。ヒントがほしい。誰か教えて」
2「これは分からないまま、雰囲気を楽しめばいいタイプの歌だ」
3「自分で、書かれていない部分を補足して読む歌だと思う」
当日の参加者は2と3に分かれました。もっと多くの人に同じ質問をするとどうなるかは分かりませんが、かばん関西では1を選ぶ人は少ない傾向にあります。答えのない文学表現に取り組む以上、いつまでもなくならない問いでしょう。

☆ 自由詠

渡船より自転車を押し降りる人らけんけん乗りに途を急げり        十谷あとり

抱きしむるまにまに俺とおまへには短き秋と冴えゆく冬を           佐藤元紀

もらもらと雲湧き上がる地を離れ錦秋の地を歩き続ける            雨宮司

すぐにまた転校していく子のようにヤクルト1000を見ているヤクルト    雛河麦

凶眼の副園長の眼を盗みぼくらは月兎を解き放つ                雀來豆



# by kaban-west | 2023-09-24 16:12 | 歌会報告