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かばん関西歌会

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2010年 03月 05日

2月歌会報告

■かばん関西二月歌会記

《参加者》雨宮司、有田里絵、岩本久美(購読)、十谷あとり(日月/玲瓏)、文屋亮(玲瓏)、三澤達世、山下りん(ゲスト)

 今回の兼題は「土」「青」。いわゆるニッパチの大変な時期にもかかわらず、兼題十四首、自由詠十首が集まった。感謝。
なお、兼題の部の短歌には☆を、自由詠の短歌には★を、それぞれの冒頭に付けている。

〈ものさし〉

☆二万年前の試料を新しといふ人ら棲む地質教室  三澤達世

「二万年」という時間と、それさえも「新しといふ人ら」のスケールの大きさに好意的な意見が集まる。「棲む」という一語にライフスタイルが顔を覗かせているという指摘もあり。

〈方言のぬくもり〉

☆「黒血寄【くろちよ】る」が通じないので「青あざ」に言ひ換へるとき遠しふるさと  文屋亮

 どこの方言なのか調べにかかる(宮城もしくは熊本の方言だそうです)者と、自身の方言体験に思いを馳せる者とに分かれた。出てくる思い出は各人各様。喚起させる力があるのは短歌に地力がある証拠。

〈季語〉

☆まないたに隠元豆が整列す青嵐のただなかに立ちたし  岩本久美

「青嵐」は初夏の季語では? 隠元豆の季節は? という意見に対し、俳句じゃなくて短歌なんだから大目に見るべきでは?と進行役がなだめる場面もあった。短歌そのものに関しては、鬱屈した上句の感情が下句で一気に払拭される点に高い評価が集まった。

〈巻きぐせ〉

★知ってるわコードの巻きぐせ取る方法冷たく放っておけばいいのよ  有田里絵

「コードのことを言っているようで、実は人間関係の機微を詠んでいるのでは」という指摘がなされた。罪のない悪意があるのがいい、とか、穂村さんの初期作品を髣髴とさせる、という意見も。「『冷たく』が効いている」という意見が相次いだ。

〈花占い〉

★花びらで占うことは恋だけじゃない一枚をぐっと引き抜く  山下りん

 力強く引き抜くからには結構大事な命運のはずだ、という指摘があった。「恋だけじゃない」という主張に、自らの身に引き寄せて考える者も複数。

〈土筆対決〉

☆はるはにがいはるはつめたい笊の目にからまる水と土筆のはかま  十谷あとり

☆ずっしりと春を充填されている土筆の丈はまだ寸詰まり  雨宮司

 片や、「土筆のはかま」から早春の幸一般を連想させる十谷作。片や、「春を充填」から生命力の爆発を想起させる雨宮作。いずれ劣らぬ……、といきたいところだが、明暗は思わぬところから分かれた。雨宮作の「寸詰まり」が常套句になっているという指摘が相次ぎ、十谷氏の短歌に点が集中する結果に。十谷作は今月の最高得点歌となった。あぁ、みじけぇ夢だったなぁ(ナ○シカじゃないっつーの)。

 いつもなら、兼題が複数出た場合には両方とも詠みこむ短歌が少なからず見られるが、今回はさすがに難しかったのか、わずかに一首のみだった。個人的には「土耳古【トルコ】石の青」なんかも考えていたのだが、アイデア倒れに終わったのが残念。その分、皆の実力が伯仲する結果になったのではなかろうか。充実した歌会だった。
                            
     (雨宮司 記)

by kaban-west | 2010-03-05 10:46 | 歌会報告


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