かばん関西 1月メーリングリスト歌会報告
[参加者]あまねそう 雨宮司 有田里絵 黒路よしひろ 十谷あとり(日月/玲瓏) 杉野裕子(水甕) 三澤達世
今回の兼題は、年頭に際し、うたごころを水で浄め、気分を一新したいという願いを込め「水辺」といたしました。兼題の部に十八首、自由詠の部に十一首の作品が集まりました。作品と意見交換の一部をご紹介いたします。
・僕がゆき美絵ちゃんがゆき丸太橋ハジメちゃんだけ落っこちた夏 黒路よしひろ
架空とおぼしき設定ながら、読者のノスタルジーを誘う歌。固有名詞を多用した点については好みが分かれました。
・葱にほふ手のとほくなり高層の金属くさき水掬いをり 杉野裕子
時間、空間、生活の変遷が一首の中に凝縮したかたちで詠み込まれています。歌の大方の意味は伝わりますが、もう少しわかりやすい表現にできる余地があるかも、との意見がありました。
・ひとり分の食器はすぐに洗い終えゆるい蛇口を水が滴る 三澤達世
ことがらを率直に詠んだことで、何気ない日常の孤独が歌を通して伝わってきます。主語~述語のねじれについて指摘がありました。
・勝手口戸棚の上に今もあるワセリンの瓶のふたの真っ青 有田里絵
対象を静かに見つめて詠まれた歌。濃い青色が印象に残ります。
・船頭の歌が聴こえてきたような千住元町養老ホーム あまねそう
江戸情緒の感じられる「千住」という地名を織り込んで好感度の高かった一首。まぼろしの船頭が歌っていたのか、それともホームの居住者の歌声だったのか、想像をかきたてられました。
・雪のなか葦辺に向けてただ一羽降りた白鷺たちまち隠る 雨宮司
オーソドックスな叙景に取り組んだ作品。静かな景なので、「ただ」「たちまち」という副詞を省いた方がよいのではとの意見がありました。
自由詠の部より、一首ずつご紹介いたします。
・ヨノミの木は冬曇天にひらきけり枝なかに見ゆ古巣のひとつ 十谷あとり
・あの猫は僕の姉ちゃん墓場にて転んだあの日猫へと化けた 黒路よしひろ
・カーテンを閉めず乳出す母がいて肩身のせまき授乳室かな あまねそう
・重苦しいプロペラ音に空自かと窓を開ければ白い飛行船 雨宮司
・ひととせをせつない歌で越えゆかむ子らの笑顔と降りやまぬ雪 有田里絵
・夏の歌の収録されたCDが鳥を除けおり冬枯れの庭 三澤達世
(十谷あとり記)