2011年 04月 04日
[二〇一一年三月かばん関西オンライン歌会記] 〈参加者〉雨宮司・有田里絵・黒路よしひろ(ゲスト)・十谷あとり(「日月」/「玲瓏」)・野間亜太子・三澤達世 〈題詠「写真」〉卒業写真や証明写真など、何かと写真に見入ったり御厄介になったりする季節。そんな写真にまつわる諸相を皆様に詠んでもらった。 入学の記念写真に映る子の裸足の子あり下駄の子ありて 野間亜太子 文人の写真に髭を加へつつ遣り過ごしけり現国の午後 十谷あとり 倒れたる家具で立ち入りできぬ部屋まず呆然と写真など撮る 三澤達世 「はい、チーズ」後に一拍間を置いてリラックスした写真をも撮る 雨宮司 変顔と言っていいほど笑いおりあなたが撮った写真のわたし 有田里絵 いまさらに君の涙に気づいたよ7年前のアルバムの中 黒路よしひろ ☆一首目。戦中から戦後復興期を思い起こさせる子どもの足回りに注目した点が、高い支持を受けた。「て」止めになっている点を気にする意見もあったが、生きた証の前では小事でしょう。 二首目。今月の最高得点歌。教科書の写真への落書きが、世代を超えた圧倒的な支持を得た。それにしても、よほどつまらん授業だったんだな、と生徒への同情の声も聞かれた。 三首目。「呆然と」と「写真など撮る」が言葉として矛盾しているのではないか、事実以上の力を感じない、など、辛口の評が目立った。一方、何かしなくてはという凄まじさを覚えたという意見もあった。 四首目。後日も笑えるいい写真が撮れそうだ、とのアットホームな意見が寄せられた。フィルムがもったいなかった時代ではなく、デジタル化された今だからこそ可能な方法だという指摘もなされた。 五首目。幸せそう、心置きなくリラックスした表情を見せることのできる関係性がリアルでよい、との好意見が相次ぐ。「変顔」という言葉のインパクトに言及する者も多かった。 六首目。ほろにがい思い出が理解できる年頃になったのだろう、「7年前」という具体的な時の経過を経て気づいたのがせつない、との意見があった。「7」は漢数字の方がいい、という意見もあった。 こうして並べてみると、「写真を撮る際の人間模様」と「写真を撮ってから一定期間を経た後の感慨」にニ分されることが判る。どちらがいいという問題ではなく、要はそれらにより合った表現がなされているか否かの問題だろう。 〈自由詠〉出詠した方の作品を一首ずつ選んでみた。御堪能されたい。 日は巡り花咲くといふ不思議あり白梅の花遠く離れて 十谷あとり てのひらも右と左でちがうのだ合わせるたびにつくづくと見る 有田里絵 もう一度読みたくなったあの歌は歌集の中にうまく隠れた 黒路よしひろ 喩を知らぬ歌人がひとり坂道を登りかけては転んでしまう 雨宮司 役員で真面目なひとという猫は重宝なのでかぶっておきぬ 三澤達世 新入会員の方々も関西歌会に興味をもって下さっているようです。我々は来る者を拒まず去る者を追わず、大道無門の言葉の下、活動を続けています。千里の道も一歩から。どんな形でも構いませんので、御参加の程をよろしくお願い申し上げます。 (雨宮司・記)
by kaban-west
| 2011-04-04 10:38
| 歌会報告
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