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かばん関西歌会

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2013年 03月 30日

3月歌会報告

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かばん関西2013年3月オンライン歌会報告

■かばん関西3月歌会 [参加者]あまねそう、雨宮司、有田里絵、ガク(ゲスト)、川村有史、紀水章生(中部短歌会/塔)、久真八志、黒路よしひろ(ゲスト)、十谷あとり(日月)、鈴木牛後、蔦きうい(玲瓏)、冨家弘子(ゲスト)、福島直広、船坂真桜、文屋亮(玲瓏)、兵站戦線、三澤達世、山下りん(選歌のみ)

入会して半年、とうとうまわってきました歌会記係、こんな私でいいのだろうか、不安を抱きつつ3月歌会記、始まります~。今月の兼題は「変」、季節の変わり目であり生活環境も大きく変わったりする事の多いこの時期にぴったりの兼題でした。

□兼題の部「変」

流氷の下をくぐればクリオネの変奏曲よ天国に舞ふ 兵站戦線

流氷の天使クリオネの繊細な動きを変奏曲に例えた、透明感があり幻想的で美しいと好評だった歌。初句の‘流氷の下をくぐればに’実際にはありえない状況に説得力が欠けているとの指摘もあった。

専用の握りで投げるスライダー今日こそ君の笑顔が見たい 川村有史

兼題「変」を詠みこまず文字通り変化球で挑みつつ内容は王道な歌となった。‘専用の握り’がただの説明であったり、それが効いてる等賛否が分かれたが、青春の歌として素直に好感がもたれた、君を誰とするかで色々な読みができる歌である。

変なこと変と言ったらお前こそ変と怒鳴られ変な心地す 雨宮司

これでもかと言わんばかりの変づくし、跳ねるような変のリズム感が心地いいが、作者自身が楽しみすぎて読者が置いてきぼりになってしまうとの意見もあった。お題に真っ向から挑んだいい意味で野暮な歌である。

「変だよ」と君に言われし服装の写真を僕の美の規準【ルビ:カノン】とす 鈴木牛後

変をどう捉えるかが大きなポイント、誉め言葉と捉えれば素直な僕だし、逆に素直に捉えればひねくれた僕となる、何か混乱しそうな感じだがそこに技巧が感じられる。基準をカノンと読ませるところには功がある等、好意的な意見が多かった。

「変な子。」とあなたが言うのを好きだった薄目をあけてわたしを見てた 冨家弘子

意味が分かりづらいとの意見が多かったが愛情のある関係が伝わる一首である。「言うのを」が自然な口語で魅力的。筆者の肉声を聞いているよう、と絶賛された反面「言うのが」にした方が良いと言う意見もあった。後に母親との子供のころの思い出の歌だったということが判明した。

声変はりする前のこゑ背伸びして歌つてゐるよ背の低い子が 紀水章生

高い声を出すために実際に背伸びをしてるのか、大人びて見せようと背伸びしてるのか。背の低い子との対比が巧いとの評価が多かった。思春期の嬉しいような恥ずかしいような戸惑いに旧かながぴったりはまっている。

不機嫌な思春期【ルビ:アドレッセンス】の封印として卒業のアルバムはある 三澤達世

誰もが通る道、大人ぶってみたり、まだ大人になりたくないとふてくされてみたり、そう言う不安定な時期を卒業アルバムの中に封印したい、と言う思いが共感を集めた歌、封印でなく解放ではないかとの意見もあった。アドレッセンスという言葉を持ち出す必要があったのか、いやそれがリズムを生んでいると言う意見とに分かれた。

漆黒の殻打ち破り桃色のシフォンへ生まれ変われ乙女よ 船坂真桜

女の子から乙女へと変わっていく感じを詠んだ歌だろうか、漆黒と桃色、殻とシフォンの対比が見事と言う評価の反面、乙女=桃色、シフォンという例えはありきたりだと言う意見も見られた。抽象的で雰囲気に頼りすぎとの指摘もあった。実は就活中の女子大生がリクルートスーツを脱いで私服に着替えた瞬間の歌だった。

越冬を果たせぬ者の冷たさを包んでおくれ春、もう一度 あまねそう


冬を越せずに死んでしまった生命を愛おしむ一首、歌意を読み取りきれないとの意見もあったが冬を越せない者たち全体へのやさしい気持ちがよく表れている、輪廻転生や命がけの渡り鳥への讃歌と読む参加者もいた。

変へらるるもの変へられぬもの見分けむと父の書きたる「様」の字を見る 十谷あとり
 
老いゆく父から来た手紙、親子なのに「様」とつけられる位お互いの年月は過ぎてしまった、だけど父の書く字は変わらない、それが余計に寂しさを募らせる。

きんいろの回転扉抜け出れば事変の予感やまぬ夏なり 久真八志
 
「きんいろ」の響きが美しい、松任谷由美の「時のないホテル」を連想させる素敵な歌だ、「抜け出れば」の部分がやや説明的だったか。

湯の中で物も言はずに凝りゆく白身のやうにあなたも変つた 文屋亮

比喩が新鮮で面白いと好評だった歌、もう戻りようもない二人に哀しさがある。結句にもう一工夫して欲しかったとの意見も目立った。

君のこと好きを嫌いに変換し坂道上がる真っ青な空 ガク

若さいっぱいの爽やかな青春歌、「変換」と言う表現が今風である、失恋の哀しさを乗り越えようとする清々しさが好感を呼んだ。もうこんな歌書けんと遠くを見つめる参加者もいた。

おろしたてインナーをつけ体幹を意識するだけ女は変わる 有田里絵

女性陣から多くの共感を得た歌、どう変わるのかがもう少し具体的に想像できる表現を入れてほしかった、とはエロス短歌のスペシャリスト、黒路氏。

改札で見かけた少し痩せた君「変わらんね」なんて零時のメール 福島直広

見かけた君は自分の事には気づいてないだろうと思っていたが、思いもかけずメールが来た、と言う歌だったが、誰からのメールかが分かりにくいとの指摘が多数あった、「変わらんね」の方言がいいとの意見もあった。

僕だって欲しかったのに変態が盗んだ昌美ちゃんのブルマー 黒路よしひろ

すっかりお馴染みの黒路節、誰の歌かすでにばれてしまってるところが良いんだか悪いんだか、この場は‘さすが’と言うことにしておこう。実行するかしないかで、変態か変態でないか決められるとこに深さを感じた参加者もいた。欲しがってる時点ですでに変態だろうと思うが。


□自由詠の部

黒路じゃなくて蔦だろもし仮にホワイトデイで欠詠するなら 蔦きうい

典型的な内輪ネタ、分かる者には面白いが、ちょっとついていけないとの指摘もあった。「どちらの方でもいいです。(有田)」

自由詠の部で高評価を得た歌

真夜中に薬缶を磨くこの家の良き魔女としてゐられるやうに 文屋亮

老境の教師が円を引く右手【ルビ:めて】にうるおうように馴染む白墨  久真八志

鉄工所跡地に咲ける白梅の 一所不住の父にありけり  十谷あとり

白い皿をパン屑だらけにして今朝もあなたのおしっこの音を聞いてる  冨家弘子


今回も盛大な歌会となりました、かばん関西これからも一丸となって精進して参ります。
関西歌会は毎月募集してます。お家でポチッとオンライン、お住まいにかかわらず今後とも多数のご参加お待ちしております。                                                                                  (福島直広・記)

by kaban-west | 2013-03-30 20:02 | 歌会報告


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