かばん関西歌会

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2018年 06月 01日

2018年5月歌会記

✿ かばん関西五月オンライン歌会記 ✿
<参加者>
雨宮司、新井蜜(塔)、有田里絵、小川ちとせ、 ガク(ゲスト) 、佐藤元紀、雀来豆(未来)、杉田抱僕(ゲスト)、ふらみらり、 本田葵(かばん/塔)
*特に記載のない方は、かばん正会員です。

今月の兼題は雨宮さん出題の「みどり」です。表記は問いませんが「みどり」を詠み込むこと、という条件付きです。十首の歌が集まりました。


★風そよぎ柳の花穂の緑散る「すべて散ったらもうすぐ五月」  雨宮司

端正なつくりで、時間の細かな経過も伝わる歌です。上の句と下の句で全く雰囲気が違い、種明かしのようにも取れるためあっさりした印象です。カレンダー上での五月、自然界のリアルな五月、そして主体の感じる五月、それぞれに当然差異があるという意見がありました。


★花を買う余裕なければさみどりの草を束ねて子らと親しむ  有田里絵

優しさを感じる人が多い反面、すらっと読めてしまう平坦さ、アクセントのなさを感じる人も多かった。「余裕なければ」の理由が書かれておらず、経済・時間・気持ちのいずれにも読める。石川啄木の歌を思い出す人もいました。


★遠き汽笛目に夏緑ひろごりて齷齪を出湯に流しをり  佐藤元紀

各自が「齷齪」を調べて、「あくせく」の漢字表記の面白さに惹かれていました。ごちゃっとした見た目が身体を侵食している悪いもやもやのようで、それを流しているという読みもありました。なんとも爽やかな緑の風景がひろがってきます。温泉でもどこでも、行きたくなったらその場所の歌を詠んでしまえばいいのかもしれません。


★きみの蜂鳥のような緑のマスカラが濡れて剥がれて飛んでいったよ  雀來豆

女性のマスカラが落ちるのは泣いたとき。しかも最近の化粧品は高性能ですからまともに泣かないと落ちません。鮮やかな緑のマスカラを使える女性なら特に落なさそう。初句が大きな破調であるため区切れをどう読むか迷いますが、歌意が取りやすいためそれほど気にならないと評する人が多かったようです。スピード感や力強さが出ています。

★高校の指定ジャージは緑色カエルジャージと今も呼ぶらし  ふらみらり

軽やかな、あるあるの歌です。素直におもしろく読めるのですがどうしても表面上で流れてしまい、短歌としての物足りなさを指摘する意見がありました。作者の地元、もしくは母校のことだとは言い切れないと感じるのは、そこに原因があると思います。


★五月雨は朝露よりも意地悪なみどりの瞳した猫の君  本田葵

ちょっと不思議な歌。モチーフから受け取るイメージがきれいで良いと評されているのですが、歌の構造はわかりにくいという指摘が多かったです。不思議な構造を楽しむ歌というのもあるでしょうけれど、読者に伝わってこそなので、この歌はやや盛り込みすぎたのかもしれません。


★光つてるかがみの破片ルージュ引くほそい指さきみどりのよるの  新井蜜

前出の歌と同様、構造に特徴がある歌で、倒置が頭に残ります。「光つてる」は破片にかかるようですが「引く」も断定の形をしているため、ぷちぷちと区切れているように読めます。漢字とひらがなの使い方に対しては読者によって評が分かれました。「みどりのよる」にはミステリアスな要素や不穏な感じを受けます。


★駆け落ちにはいつでも遠くスコールのラベルの緑を照らさせている  杉田抱僕

スコールは「あ、あの飲料だな」と(おそらくかばん関西の人なら)分かるちょうどいい固有名詞です。「駆け落ちは」ではなく「駆け落ちには」と字余りになっています。クリアな緑のラベルにカップルのみずみずしい雰囲気が出ています。


★迫りくる春のみどりのおそろしきヘイセイヘイセイあかるく歌う  小川ちとせ

今回の高得点歌です。元号改正、ジャニーズのグループ、平静を装う、などの連想を呼びました。簡易なカタカナをリピートしてみるという手法は(手法として意識されたわけではないかもしれませんが)、とても参考になります。


★息上がる峠の道をひた行けばみどりに霞む瀬戸の島々(ガク)

この海が見たいなあと思わせてくれる歌です。淡々とした詠み方に好感を覚える人も、物足りなさを感じる人もいました。海の青、空の青、山の緑。自然はそもそも平坦なのかもしれません。街に暮らしているとこのような景色に入っていくこと自体が少ないですし、季節感も曖昧になりがちですものね。こういう場所で歌会を開きたいです。

兼題は以上です。
最後に自由詠の歌を九首掲載します。

【自由詠】
卵焼き崩してしまうルフランの皿の絵柄の赤が見たくて  有田里絵
日の入りの時刻きらきら延びてゆくパジャマはパジャマの匂いのままで  小川ちとせ
運命はたぶんないからきまぐれに書き換えている未来も過去も  ふらみらり 
怪し雨逃れて庭の生垣に飛びこんでゆく目白のみどり    雀來豆
本人も試験問題この時の作者の気持ち正答出来ず 本田葵
密閉しあはせた部分凝視して繊細になる伸し掛かるとき  新井蜜
水ぬるむなんて言っても近頃は川で遊ぶ子とても少ない  雨宮司
宵闇が明るくてでも涼しくていま夏までのモラトリアム  杉田抱僕
くるしくるほし満身創痍の職場からふらふら身裡に闇のとよもす  佐藤元紀

(有田里絵/記)

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by kaban-west | 2018-06-01 15:17 | 歌会報告


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