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かばん関西歌会

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2024年 11月 07日

神無月歌会報告

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かばん関西神無月歌会記
             
と き ・・・ 令和六年十月二十七日(日曜日)午後一時半から五時
ところ ・・・ 大阪府江之子島芸術文化創造センター ルーム6

◆参加者
雨宮司、久保茂樹、佐藤元紀、雀來豆(所属なし)、十谷あとり(所属なし)、蔦きうい(所属なし)、千葉弓子(詠草のみ)、雛河麦、渡邊千歳、有田里絵
以上の十名です。筆名の後に特記事項のない方は、かばん正会員です。

◆兼題 ・・・ 「あき」の音を使う
今回は「あき」という音を詠み込むという兼題に挑戦しました。例として、秋、小商い(=こあきない)、サーキット(=さあきっと)、を挙げましたが、この時点で既にかなり頭を使わざるを得ない自分がいました。表記は、平仮名・片仮名・漢字に限り、英字は除外。読み仮名は常用範囲内のみと指定しました。

◆兼題「あき」

木の匂ひまき散らし家が立ちあがる建築家【アーキテクト】になりたかつたな   久保茂樹

「建立でも建てるでもなく『家』が、『立ちあがる』のが、いいですね。それに、兼題に対する答えとして出てきたものかどうかはさておき、アーキテクトというのは響きがとってもおもしろい言葉ですね」
「文字の見た目も声に出して読んだ感じも、どこかかくかくっと、飄々としています。きっと、この人は、偉大な建築家じゃなくて、街の大工さんになりたかったのかなと思いました。でも、強い憧れというよりは、ああそういえば大工さんになりたいって思っていたころもあったなあ、という回想の気持ちを感じます」
「そうですね。親しみやすい大工さんのイメージがしますね」
「匂いって、過去の記憶、追憶と結びつきやすい」

大手メーカーの建売住宅ではなく、注文を受けてから丁寧に作り上げていく姿を想像させます。普段の生活の中で、はっきりと木の匂いがする場所にいることはあまりないのだと気づかされました。「じゃあ、どんな匂いなの?」と問われた時に、具体的に言語化しにくい。その点は短歌にしてみたくなる要因の一つではないかと考えました。

あきらめない心をはかる オリーブの枝を乗せれば傾く天秤       雛河麦

「天秤とありますが、この歌の場合は、オリーブの枝と、もう片方のお皿には何を乗せているんでしょうか」
「オリーブは、旧約聖書にも出てきますし、平和の象徴かなと読みました。そうすると、もう片方には、人の心が乗っている」
「じゃあ、諦めないというのは、争いの多い世界情勢のことを鑑みると、平和を諦めないということかな」
「あの、天秤って、重いほうに傾くんですよね。傾いた方に価値がある。だから、どちらかに傾いたら、もう片方を諦めることになるというか」
「諦めないというのは、作者が、諦めないようにしようと考えているという意味ではないでしょうか。天秤の判定ではどちらかを諦めることになったけど、それでも自分はあきらめない、と。だから、希望を持ち続けることが大切だと言っている」

その他、恋の歌であるとも読めますね。オリーブという固有名詞の引っ張る力が強いためか、平和を求める歌であるという意見が多くを占めました。
 
小商い済ませた晩秋あとはもう片思いだけ偲ぶ余生を          蔦きうい

ああきたよ、人面をした機関車が子どもの手脚をぎゅうぎゅうに乗せ   千葉弓子

秋は夕暮れぼくの知らないうすやみをとどけてくれる人は来たらず    雀來豆

「初句の示すとおり、枕草子が下敷きになっているんでしょうね。ただ、両者の違うところは、枕草子は自力を感じる作品だけれど、こちらの歌は『とどけてくれる』という他力の要素があるな、と」
「『ぼく』は、じっと待っているんですね」
「この『うすやみ』に関してですが、暗闇と薄闇って違うものなんでしょうか」
「暗闇は、あやかし、・・・お化けとか物の怪とかいったものがうごめく場所であるというのが通説かな。対して、薄闇は、何にもないところ」

何もないと寄る辺がなくて更に怖いです。とはいえこの歌に恐ろしい印象を持った人はいなかったようです。そういえば初句はかなり字余りですが、特に気になりません。

秋霧のともに立ち出であゆみださんおまへとその先の先まで       佐藤元紀

「これはけっこう前向きな歌なんじゃないかな。迷って、自問自答して、見えないけれどそれでも行こう、と決めている」
「相手は、どう思ってるか分からないけど」(一同笑い)
「もしかして、アユミダさん、っていう名前だったりして」(更に広がる笑い)
「霧って、前が見えなくなるものですけど、今のこの二人にとっては、ちょっとありがたいものでもあるんじゃないでしょうか。世間の目から、軽く遮ってくれる存在でもあるのかな、と。その意味でも、初句に『秋霧』があるところが良いです」

秋茄子の生姜醤油を八角に少し冷めれば頃合いとなる             有田里絵

熱帯の気だるい扇【ファン】は閑なり中森明菜が爪切る背中           蔦きうい

来年は勝てないだろう父は子とかけっこをする秋の陽のなか           渡邊千歳

「この歌の『勝てないだろう』と思っている主語は誰でしょうか」
この問いに対して三種類の意見が出ました。
「横にいる母が主語で、父である夫と自分の子がかけっこをするのを眺めている」
「全くの他人が、公園を通ったときに遊んでいる親子を見かけた歌」
「父親自身が、来年になったらもう勝てないだろうと思っている」

 他人の歌であるとすれば、自分も同じ経験をしたことを思い出してこの歌を詠んだ可能性に行きつき、ほほ笑ましい心情が深まったのかもしれません。しかし、みんなでしばらく考えた後、「母親の素直な感想の歌」という方向に落ち着きました。なぜなら、『来年は』と初句に持ってきている点に重きを置いたと捉える人が多かったからです。二年連続で勝ち負けを確かめることができるのは親だけでしょうし、「秋の陽のなか」と静かにズームアウトするように目に収めることができるのは、走っている父親本人ではなく母親である、と。でも、お父さん、来年もがんばってくださいね。

秋多弁飽きることなく空き箱をあふれてもなお集める言葉           雨宮司

「リズムが愉快ですね。秋、飽き、空き、と。どことなく淡々としているのも良い」
「それもありますし、『あ』が多用されているんですよね。軽やかな感じがします」
「あの、この歌の出だしは、文字通りなら秋には多弁になるという意味でしょうけれど、秋田県の秋田弁とかけているのでしょうか」
 この点には、他の参加者もほぼ気付いていたようでした。文字入力の際にときどき起こる楽しい誤変換!単に突飛なだけでは再読したときにどうしても鮮度が落ちますが、この歌はじわじわと作者の愉悦が伝わってきます。
「箱がいっぱいになっても、あふれても、まだ更に集めるというのがいいですね」
 短歌を続けていくということは、ずっと、このように自分の言葉を集め続けていくことでもあるのだと思いました。

◆自由詠

こんなんでいいわけないと痛感し田蓑橋から小石蹴とばす            有田里絵

食卓は静物ではない息満ちるピエール・ボナールの室内画を見る          雀來豆

螺旋綴じから一枚ちぎりとるときの……紙の抵抗、指【および】の愉悦     十谷あとり

横切った風の馬車にはキンモクセイ どこかで花の婚礼がある         雛河麦

死はいつも俺の隣に寄り添つて十三夜のぼやけたる月高く          佐藤元紀

秋は白 二階の部屋に風が来て壁に貼られた詩を借りてゆく        十谷あとり

「この歌の最後に『借りてゆく』とあるけど、こういうのって、借りたら返さないでしょう」(一同、頷いたり苦笑いしたり)
「壁に貼ってあるし、カレンダーかなと思いました。生活のひとこまを詠んでいる」
「『秋は白』という漢字の通り、北原白秋を連想します。詩というものが持っているポエジーというか、詩情を、しかも風が借りていくという表現を用いることによって、漢詩のような雰囲気で詠んでいる歌だな、と」
    
夕映えと宵の狭間を地平線めがけて落ちる大彗星よ              雨宮司

正面の山ともけふでお別れかつくつく法師鳴いてゐる山             久保茂樹

「今日引っ越すから家の正面のこの景色を見るのも最後だな、と言っている」
「この二つの山は、別の山かもしれない。擬人化されているとも読める」
「ちょっと古風で端正だけど、気持ち良くて、ほっとする夏の終わりの歌」
「具体的な地名が出てきていないから、日々の生活の中で慣れ親しんできた山なんだろうなと思う。確かに淋しいけれど、またここに来れば、いつでも会えるよ、という感覚だと思う」
「心情に沿ったリフレインとして、二回目の山は出てきたんじゃないかな。出そうとして出したのではなくて、ごく自然に出てきた表現。単なる対句ではなくて、偶然っぽくないリフレインだと感じます」

それぞれの青い球体ハイジャンプ虹の向こうへ「さよならのび太くん」      千葉弓子

(のび太くん の部分に みんな とルビあり)

詠草は以上です。みなさん、いつもご参加ありがとうございます。

今秋、かばん関西の有志にて「リトルKANSAI 街」を作成しました。ひとり三首ずつ「街」に基づく歌を詠み、冊子にまとめたものです。これから新しくお会いできるみなさんにもお渡しできるよう、準備中です。ささやかながら、これからもすてきな短歌の街並みを作ってまいりましょう。

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by kaban-west | 2024-11-07 20:42 | 歌会報告


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