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2025年 02月 28日
かばん関西如月歌会記 とき ・・・ 令和六年二月二十三日(日曜日)午後一時から五時 ところ ・・・ 大阪市中央公会堂 第三会議室 ◆参加者 雨宮司、久保茂樹、佐藤元紀(詠草のみ)、沢田二兎(所属なし)、十谷あとり(所属なし)、蔦きうい(所属なし)、千葉弓子(詠草のみ)、雛河麦、渡邊千歳(詠草のみ)、有田里絵 以上の十名です。筆名の後に特記事項のない方は、かばん正会員です。 今回、歌会前半は事前募集の詠草に基づく意見交換を行い、後半は初の試みとなるワークショップに取り組みました。 ◆自由詠 事前に募集した詠草十首から、三首選びました。当日は八人参加しており、それぞれの歌について一人一言ずつ意見を述べていく形で進めました。 つつ走るままにスライドと跳んでゆくトミー・ボーリンの叫び 佐藤元紀 「知らない語があってもあまり調べないようにしているのですが、この歌の人名は調べました。ロックの、夭折したギタリストらしいですね。ということは、『スライドと』とは、ギターと一緒に飛び跳ねる、相棒とか分身とかいう意味かな、と。」 「スライド奏法という演奏方法がありますね」 「私は、映像を映し出すスライドを思い浮かべました」 「それぞれの言葉が、同じ方向を向いている。だから勢いがつくと思う」 朝チュンを説明する時「昔はね、雀っていう小鳥がいてね」 雨宮司 「この朝チュンって、性的なネット用語なんですかね」 「近未来の話なのかなあと想像しました。雀の生息地が減っていて、昔はね、と話しているところ」 「これは、子どもに説明をする時の様子を歌っているのでは。何の気なしに子どもが『朝チュンって何?』と聞いてきたから、スズメの話をしてはぐらかしている」 「うーん、みなさんの話で語彙としては理解できました。でもちょっと難しいです。語句が、ではなく、つまり短歌として何を言おうとしているのかが難しい」 生き過ぎた序でに歌を詠みませうきのふののこりあたためなほす 久保茂樹 「序に」の語に意見が集中していました。 「作者にとってはこれが短歌を詠むということのスタイルだということかなと読みました。というに下の句、全て平仮名で書かれていることに目が行きます」 「短歌は、ついでなのでしょうか」←それでいいのかなあというニュアンスもあり、参加者それぞれ頷いたり首を捻ったり色々反応していました。 「ついでかどうかは、人それぞれだと思います。ただ、作者は、自分の中で歌を生み出すサイクルがスムーズにいっていないのかもしれない」 エアコンを切った途端に羽ばたきをやめる模型の胎内にいて 雛河麦 「物の名前が多いから、映像として頭の中で捉え切れないんですね。エアコンを切った後で部屋にこもっているという意味なら、『模型の胎内』と出てくるのは、やや重い印象を受けます」←胎内は、この世に生を受けて出てくる前の特別な環境だから、エアコンの動きとは釣り合いが取れない気がする、という意見であれば筆者も賛成します。 「模型って偽物ですよね。更にその胎内だから、自分はまだ成熟していないという意味かな、と考えました」 縷々とうらみ、すなおに薊はひらいたの。宇宙作戦隊をぬけだす 蔦きうい 「初句は、るると、ですね。アザミは分かります。しかしなぜここで宇宙作戦隊が出てくるのかが分からない」 「ゼレンスキー大統領を連想しました。ずっと恨んでいたけれど、開くのは、降参することを指しているのかもしれない、と」 「私は、衛星の打ち上げ中継をネットで見ることがあるんです。打ち上げて、下の方を切り離して、ジェット噴射する時って、アザミの花の形みたいにぎざぎざの光が広がることがありますから、その映像と繋がりました」 「突拍子もないとは思うんですが、その突拍子もなさが、さっぱりしている」 とはいえ、結局のところ、どういう歌なのかは読み込めませんでした。 「確かに日本語なんだけど、分からないのは、それなりにすごいことなのかもしれない」という意見もありました。 ゆるしてくださいゆるしてください薄雪の二夜(ふたよ)つづけて見る猿の夢 小川ちとせ このリズムについて、かなりの破調だが生の声という感じがして音が気持ちいいという声が複数あがりました。筆者も同じで、初見では破調であること自体ほぼ意識していなかったほどです。定型を外れているものの、それが成功していると言えるのではないでしょうか。 「何に対して許してと言っているのかは分からないですね」 「『ゆるして』が二回あって、二夜だから、夜も二回続くんですね」 「映画の、猿の惑星を思い出しました」←賛同する人が複数いました。 夢はわれを地下に伴ひ歩ましむ番号のなき出口を見よと 十谷あとり 「深層心理を詠んだ歌かなあと思いました。次の道を探しなさいと言っているような」 「使役が多いんですけど、最終的に、『見よと』というのは、自分で次の道を決めろと言っているだけで、行け、とまでは言っていないと思う」 「番号がないのは、自分だけの道だから、でしょうか」 実は、筆者は、夢の歌を二首並べて詠草一覧を作成していたことに当日の席上で気付きました。これも深層心理に影響を受けたためだろうか、と不思議な気持ちを抱きながらみなさんの言葉を聞いていました。 隻腕も魔手もおやすみ窓際にゴム手袋をまとめて吊るす 有田里絵 職場の歌であろうということはほぼ全員一致していました。 「隻腕とか魔手とありますが、もっとやさしい素直な言葉でも良いのでは」 「隻腕は、片方しか残っていないゴム手袋で、魔手は、すごく分厚いとか能力の高いもの」 「これは、ゴム手袋ではなくて、本当に手の歌なんですよ。眠っている全人類の手を管理している人がどこかにいるんです。ぐっすり寝てるから、その間は手がなくても、本人には分からない。そういう想像の歌」←この解釈の是非はともかく、考え方、受け止め方として興味深いと参加者は感じていたようです。筆者も、星新一の世界のようだと思いました。 肌掛けを洗う 聖母と毒親の間のどこに私はいるか 渡邊千歳 「子どものお布団を洗っているんでしょうね。肌に触れる、子どもにいちばん近いところにある寝具で、しかも寝ているときだから、気を休めている無防備な状態」 「この、聖母と毒親って、対にならないのでは」←確かに、数学のような対称関係にはなりにくいです。力加減や方向性が異なる印象を受けます。同じ土俵の上には乗せにくい。 「作者にとっては、特に問題ないんじゃないでしょうか。そんなに深く考えていない。どっちかなあ、くらいで。普通の人。だから、肌掛けが良いんですね」 「母としてこれでいいのかなあと悩むことはあるけど、そこまで深刻ではなさそう」←自分のその日の子育てにあれこれ思いを巡らせるのも、長い目で見れば、良い時間である、と言えるようになりそうだなと、筆者も思いました。 ◆ワークショップ開催の記録 二月初めに、次のような案内文を配信しました。 当日、会場に兼題のカードを四十枚ほど用意いたします。その中から好きな題を複数枚選び、それに基づいて最初に文章を書いて下さい。詩のような、ミニエッセイのような、思いつきのメモのような、ざっくりしたもので結構です。 ↓ その文章をご自身の声で朗読して下さい。 ↓ 文章をもとに、短歌を詠んで下さい。 十谷あとりさんがカードを作成、当日持参してくださいました。単語を考えたのは、十谷あとりさんと筆者及び、それぞれの家族です。偏りを防ぐために、普段は短歌と関連がない人にもアイデア出しに入ってもらいました。 机上にランダムに広げたカードを各自三枚選び(目を閉じて手探りする人も)、原稿用紙に向かいました。その書く音は室内に響き渡りました!「学校のテストみたい」と笑い合いました。そして、八名全員がひととおり仕上げるまでにかかった時間は、僅か十五分でした!その後、挙手にてそれぞれ発表しました。紙幅の都合上、短歌作品のみ掲載します。 雨宮司 題:お米 グリーンピース 素数 お米には素数の数の神宿るグリーンピースに神はいますか 小川ちとせ 題:マーマレード バームクーヘン 団長 はじまりはおわりのはじめ二時五十五分におやつを並べておくよ 久保茂樹 題:次第 なりゆき 水筒 ふた色の青にはさまれ呑んでゐる漁船のあとを飛ぶカモメあり 雛河麦 題:嫌い 水筒 針 水筒を忘れたわたしにどうぞって彼女は笑顔でしょっぱい麦茶を 千葉弓子 ← 原稿を事前にいただき、有田が代読しました。 題:箸 グリーンピース 刀 刀鍛冶川を下る船にいて吾子の胸の高鳴りを抱く 蔦きうい 題:球 ポテトチップス ボブ ボブゆらし人をまどわすあのちゃんの原始のくゆりポテトチップス 有田里絵 題:商店街 マーマレード 素数 トーストの上で見つけた真実をマーマレードで隠して食べる 十谷あとり 題:商店街 はがき 鯨 にんげんのほろびののちのおほみづにくぢらのひれはいういうとゆく (記/有田里絵)
by kaban-west
| 2025-02-28 21:50
| 歌会報告
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