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かばん関西歌会

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2025年 10月 22日

葉月歌会報告

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かばん関西八月ML歌会記
          

             
 今回はメーリングリスト(=ML)を利用して歌会を行いました。

◆参加者
雨宮司、大中博篤(所属なし)、小林淳平(所属なし)、佐藤元紀、雀來豆(所属なし)、十谷あとり(所属なし)、州崎悦代、蔦きうい(所属なし)、千葉弓子@ちば湯、西田友和、雛河麦、みおうたかふみ、渡邊千歳、有田里絵
…名前の後に特記事項がない方は、かばん正会員。

◆スケジュール記録

7月24日、左記の通り歌会案内を配信 
兼題「旅」・・・おひとり二首まで。詠み込み指定ありません。実際に行ったことがある場所、いつか行ってみたい場所、どちらでも可。ただし、空想上の場所はナシです。それから、「イタリアのナポリ〇〇公園」「徳島市の◇◇通り」など、具体的にどこの場所か分かるように添え書きをしてください。短歌作品の中にはっきり書かれている場合は結構です。

→ 8月10日、詠草一覧(全22首)を配信 → 8月25日〆切にて各自メールで選歌 → 8月27日、作者発表・選歌結果とコメント集を配信、という流れでした。

 以下は、配信済みの内容から抜粋・編集しております。実際にお会いする歌会では、更に会話が広がって時間いっぱいになってしまうことも。短歌の話を生で体験する新鮮な気持ち!その一端が伝われば幸いです。

◆詠草一覧 兼題「旅」 

新大阪駅
河から海へ出るやうだつた改札機に二枚の切符重ねて入れて            十谷あとり

・二枚重ねだから記憶に残ります。
・ぶわっと世界が広がる感じ、これから大阪という大都会でやっていくんだいう高揚が伝わってきてわくわくしました。
・二枚の切符を入れる改札機には私も最初はとても驚きました。初句、二句はそうした驚きの感情についての比喩なのか、それとも改札の向こうに広がるどこかの街のことを指すのか?私は、後者だといいなと思います。
・新幹線の二枚の切符が、「内側の世界から出る」「外側の世界へ入る」を意味していておもしろいと思いました。「海へ出る」感覚が少し掴みにくかったです。
・「河から海へ」という比喩が狭い改札を出て広がっていく様をよくあらわしていて印象的でした。特急券と乗車券の二枚を同時に自動改札に入れるのですが、在来線への乗り換えの際は乗車券だけ出てくる。それが通行手形のように感じたものでした。
・自分の実感にぴつたりあてはまつた一首。ここから淀川を渡る喜びに大阪に戻つてきたといつもおもふ。無駄のない表現もいい。
・初句七音を上手く使っているだけに、中句が六音でもたつくのが残念だ。内容については着眼点の良さが光る。
・新幹線から直接外へ出たればこそ二枚の切符。


ポンヌフ
オレンジの灯りにたたずむポンヌフを みて「ほんものや」と思ったあれは ほんものやった  
 州崎悦代

国分寺
旅ごとに写真をもらう国分寺、青葉、あおなみ、まもなく夏の           蔦きうい


ウインブルドン
白い鳩がこだまのように飛び去ってウインブルドンセンターコート        みおうたかふみ

・真っ白なスニーカーが似合いそうな場所で、全体的にとてもクリーンな感じがしました。
・今から決勝戦が始まる臨場感が伝わってきます。ウィンブルドンは伝統的に白いウェアでしたよね。鳩もマナーを守ってます。平和の象徴が飛び去った後に戦いが始まる。なんとも象徴的。
・これから始まるであろうセンターコートでの試合の緊張感と余韻が、鳩という視覚的イメージとこだまという聴覚的イメージによってうまく表現されているように感じます。テニスは詳しくないのですが、鮮やかな芝のコートが心に浮かびました。

ストーンヘンジ
髭面のオヤジが一人踊りつつ何かを祈るストーンヘンジ                渡邊千歳


山形へ行く
三叉路の先はふたたび三叉路で飛びゆけさくらんぼうの花柄            雀來豆   

・さくらんぼの絵柄が配置された包装紙とか布地かな。確かに三叉路の連続ですね。山形→さくらんぼの連想で詠まれた歌。なるほど、こういうふうに詠んでも良かったのですね。
・さくらんぼうの花柄、ってのがいいですねぇ。
・実の付き方からの連想か。どうもはっきりしないけれど、三叉路がキーであることは理解できる。
・永遠に続く三叉路の何が苦しいかと言えば、常に二択を迫られるということ。余談だが、桃源郷の語源は山形県に由来します。


東京駅
いつの間にか別の世界ができていた東京ばな奈ワールドという            有田里絵


箱根 芦ノ湖
この村に遊覧船が来る頃にざっと降る雨(これは夕立)                大中博篤


巴里 新橋(ポン・ヌフ)袂
こぬか雨いつまで耐ふる一つのみ咲くおほみそかの寒桜              佐藤元紀


屋久島
ふたたびを来ることは無いふたたびを逢うことはない日焼けした腕    千葉弓子@ちば湯


嵐山にて
吹雪く花に茶を出すようなせわしさに茶筅三本ひとつになろうよ         雛河麦


大和西大寺駅
左右の扉同時に開くこの列車くぐればとほく行ける気がした         十谷あとり


旧・徳島県三好郡西祖谷山村(現・徳島県三好市)
父の郷(さと)ひと山越えて谷筋の道を進めば祖谷(いや)かずら橋                雨宮司
 

札幌の時計台
時計台の隣にある商工会議所 風が涼しいから歩きやすい           小林淳平


ドイツ ケルン マリエンブルグ通り
「ロビンソンクルーソだって僕らより上手に彷徨えなかったんじゃ?」       大中博篤

・迷える愉しみがある、大人のフリーな旅ですね。
・「上手に」「彷徨う」というのが新鮮でした。上手にさまようってどういうことなんだろう?上手にさまよっていたら、もはやさまよっていない?などと考えるのが楽しかったです。
・旅先で道にまよふさまをユーモアたつぷりに表してゐるのがをもしろい。

 以上です。新入会の方のご参加もお待ちしております。

(有田里絵/記)



by kaban-west | 2025-10-22 22:41


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